代替医療(だいたいいりょう、)とは、「通常医療の代わりに用いられる医療」を指す用語である。Medicineは医療とも医学とも訳されることがあるので、代替医学とも呼ばれる。近代ドイツ医療社会史専攻の服部伸は、代替医療(オルタナティブ医療)とは、科学的・分析的な近代医学の限界を指摘し、時には霊の力を援用しながら、患者の心身全体の調和を取り戻そうとする医療であり、中国医学や漢方医学、アーユルヴェーダもこれに含まれると述べている。今のところ、通常医療に取って代わるような代替医療は存在しない。帝京大学の大野智は、科学的に有効性が裏付けられた医療は通常医療に組み込まれるため、代替医療という言葉自体に矛盾があるのかもしれないと指摘している。日本でも一部の漢方薬は通常医療に取り入れられている。似た用語に、補完医療、相補医療(ほかんいりょう、complementary medicine)があるが、これは「通常医療を補完する医療」を指す用語である。アメリカでも日本でも、学会等の正式の場では代替医療と補完医療を総称して補完・代替医療(Complementary and Alternative Medicine: CAM) の名称が使われることが多かったが、アメリカでは近年変わりつつある。アメリカの国立補完代替医療センター(現・アメリカ国立補完統合衛生センター)では、2010年頃から研究目的は「病気の予防・治療」から「症状のマネジメント」に変更され、各種施術療法の総称として、補完・代替医療ではなく補完的健康アプローチ(complementary health approaches)という用語を使うようになってきている。通常医療と補完・代替医療の2つを統合した医療は統合医療と呼ばれる。日本の厚生労働省は、統合医療は近代西洋医学と補完・代替医療や伝統医学等とを組み合わせて行う療法であり、多種多様なものが存在すると説明している。これらは元々欧米から発信されている用語であり、欧米での医療の歴史が反映された概念である。世界保健機関は2000年に「伝統医療の研究・評価の方法論の一般的ガイドライン("General Guidelines for Methodologies on Research and Evaluation of Traditional Medicine")において、補完・代替医療を「該当国の伝統に基づいており、かつ主流の医療制度に統合されていない医療技法」と定義している。たとえば欧州ではいくつかのハーブ療法(植物療法)は通常医療となっているが、米国では補完・代替医療とされている。アメリカ国立衛生研究所 (NIH) に属する国立補完統合衛生センター (NCCIH) では、補完的健康アプローチ(補完医療)は、大きく天然物(natural products)と心身療法(mind and body practices)という2つのサブグループに分けられるとしている。。他に、催眠療法などの精神療法、ヒーリング・タッチ(手当て療法)などがある。林義人は、代替医療を全て分類しきることは困難であるが以下の4つのタイプに大まかに分類できるであろうと述べた。ただし、日本では歴史的に見れば漢方医学が主流であり、現在でも一部の漢方薬が保険適応され、医学(現代医学)と共に用いられているので、漢方医学を代替医療に含めてしまうような欧米式の分類は日本の状況には馴染まない点があると指摘する人もいる。欧米の先進国において補完・代替医療の利用頻度が急速に増加している。1990年代以降に代替医療への関心が高まっており、さらに代替医療の科学的研究に大きく予算が配分され政策として実行されてきた。アメリカでは、アメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)で行われた病気の予防・治療を目的とした臨床試験の多くで期待した成果がなかったため、研究対象は代替医療から補完医療(補完的健康アプローチ)へ、研究目的も「病気の予防・治療」から「症状のマネジメント」へと大きく変わってきている。実際に使用されている代替医療の種類はアメリカと日本ではかなり異なっている。例えば。1993年、デービッド・アイゼンバーグ博士(ハーバード大学代替医学研究センター所長)はアメリカ合衆国国民の補完・代替医療の利用状況についての調査報告を発表した。この調査は、この研究センターが研究している16種類の補完・代替医療に関してのみを調査対象にしていた。16種類に限定していたにもかかわらず、利用状況は医師らの予想をはるかに超えていた。 1990年時点で、これら16種類の補完・代替医療を受けたアメリカ国民は全国民の34%に達していた。補完・代替医療の機関(治療院、ルームなど)への外来回数はのべ4億2700万回に達していた。この数はかかりつけ開業医への外来3億3800万回を超えていた。この調査で、学歴が高い人、収入の多い人、知識人層など時代を先導してゆくとされる人たちほど、代替療法を評価し積極的に利用している、ということも明らかになった 1997年の調査では補完・代替医療への外来回数は6億2900万回になり、1990年の調査時のおよそ1.5倍に増加した。日本、韓国、中国などでは正規の病院で漢方薬が処方されるが、アメリカでも10を超える州で医学的に効果の証明されたものには保険が適用されている。ただし、ホメオパシーなど現在でもその効用が実証されていないものは除外されている。1992年、国民の利用関心を背景としてアメリカ国立衛生研究所(NIH)にアメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)が設置された。当初の年間予算は200万ドルであったが、現在では1億ドル以上の予算が割り当てられている。全米の医科大学・医学ラボなどでの代替医療研究を振り分け、政府予算も割り当てられている。2000年にはホワイトハウスに補完代替医療政策委員会が設置された。代替医療の教育について、全米の医学生が少なくともひとつの代替医療を並行して学べる体制を各医学部が備えていることが望ましいとして、国立衛生研究所では公式に推奨している。そのような代替医療教育体制は全米の医科大学の50%以上で既に実施されている。1998年の段階で、全米125医学校中75校が通常医療以外の講座・単位を持つようになっていた。医学生の側も80%余りが代替医療を身に着けたいとアンケートに答えている。ジョージタウン大学は補完・代替医療教育において初めて正規課程(修士課程)を定めた学校であり、国立衛生研究所が目と鼻の先にあることもあり、多くの代替医学研究がされている。また、アリゾナ大学の医学教授アンドルー・ワイルにより現代医学による医療と補完・代替医療とをあわせた統合医療が教育実践されている。アメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)には莫大な予算が投じられ、病気の予防・治療を目的とした臨床試験が多く行われた。しかしそのほとんどは、良い結果を得ることができなかったため、国民やメディアから税金の無駄遣いとして厳しい批判を受けた。(参考:セラピューティック・タッチ)これにより、2010年頃から国立補完代替医療センターの研究目的は、「代替医療」から通常医療を補う「補完医療」に大きく変更され、各種施術療法の総称として、補完代替医療(complementary and alternative medicine)ではなく、補完的健康アプローチ(complementary health approaches)を使うようになった。センターの名称は、2014年12月にアメリカ国立補完統合衛生センターに変更され、代替医療の「代替」を意味する「Alternative」が除かれた。研究の目的が「病気の予防・治療」から「症状のマネジメント」へと変わったことで、近年(2015年時点)では、各種施術療法における「症状のマネジメント」に関する有効性が証明されてきている。1983年、王室基金の援助で代替医療などの研究を行う、(RCCM)が設置される。1991年、イギリス保健省は医師が効用が医学研究者によって科学的に証明された補完・代替医療の場合は治療家を雇用することが保険適用できることにした。ウェールズ公チャールズの案で、5か年計画で国家レベルでの代替医療の研究が進められている。2004年3月、西洋伝統医学や中国医学による鍼灸とハーブ療法の治療について資格制度ができることになった。これは英国保健省とチャールズ皇太子のThe Prince of Wales's Foundation for Integrated Health が制度化に向けてすすめてきた。英国国立医療技術評価機構(NICE)の診療ガイドラインでは、緊張性頭痛への適用に鍼灸が提案されている。しかしホメオパシーについては、2010年2月22日の庶民院科学技術委員会()について「ホメオパシーはプラセボと同程度の価値しかなく国家が国民保健サービス(NHS)とするに値しない」と結論づけ、保険適用は国ではなく地元のNHSと医師の判断に委ねられた。近代医学発展の主な舞台はドイツであるが、近代医学においては治療の分野の発展が最も遅れたため、ギリシャ・アラビア医学(ユナニ医学)を受けつぐヨーロッパの伝統医療や各種療法、医師免許を持たない治療者による医療も非常に大きな位置を占めてきた。ナチスドイツの時代にハイルプラクティカー(独:"Heilpraktiker")という自然療法、伝統療法を行うことができる国家資格が作られ、現在もこの制度が保持されている。日本補完代替医療学会は、主要先進国では最も代替医療が活用されていると報告している。日本、韓国、中国などでは正規の病院において、中国医学系伝統医学(東洋医学)による治療が行われており、漢方薬が処方されている。日本で代替医療の歴史をさかのぼるということは、伝統医学等の歴史をさかのぼるということになるので、その起源を明らかにすることは困難な面がある。近年では現代医学の視点から代替医療を検証しようとする動きがあり、1997年に日本代替医療学会(現 日本補完代替医療学会)が創設された。会員数は約1000名で、会員構成比率上位を5つを挙げると内科医、外科医、薬剤師、産婦人科医、小児科医となっている。1998年には日本代替・相補・伝統医療連合会議が、2000年には日本統合医療学会が設立された。漢方医学は日本の伝統医学なので以前から日本の大学医学部において講座が設置されていたが、2002年3月には補完代替医療学講座という名称では初となる講座が金沢大学に誕生した。日本ではさらに、北陸大学薬学部に代替医療薬学教室が、大阪大学大学院医学系研究科に生体機能補完医学講座が設置されている(2006年現在)。厚生労働省は、2012年から「統合医療」のあり方に関する検討会を開催している。日本で行われることがある代替医療・補完医療の具体例としては以下のようなものがある。日本では混合診療は認められていないため、保険適用外の療法は病院で行われない。鳩山由紀夫首相は2010年1月29日の施政方針演説で「統合医療の積極的な推進の検討」を表明した。これをうけて厚生労働省は、統合医療への保険適用や資格制度の導入を視野に、2月5日に統合医療プロジェクトチームを発足させた。プロジェクトチームは統合医療の研究がさかんなアメリカの国立衛生研究所のジャンル分けを参考に、中国医学やアーユルヴェーダ、ユナニ医学、断食療法、瞑想、磁気療法、オゾン療法、気功を含んだ統合医療の日本国内での実態把握をはじめることにした。一部のカルト集団が勧誘の手段として代替医療を行っている例もあるという。ホメオパシーなどの一部の代替医療の喧伝には類感呪術、感染呪術の手法が見られる場合があり。、これらの手法に対する親和性の高い読者層をターゲットとした雑誌、書籍類(日本ではLOHASを採り上げる女性誌)において広く広告、喧伝が見られているという。補完・代替医療に用いる薬物の科学的検証の手順などは、現代医学でのそれとは異なっていることが多い。現代医学の場合では、新奇な物質を用いようとすることが多いわけなので、まず物質を同定してから細胞実験、動物実験、人体における臨床、という順で行われるが、伝統医療の薬の場合は、すでに広く用いられているものが多く、古くからヒトで使用されており安全性が確認されているものが多いため、動物の安全性試験を通過したものは、臨床試験で本当に有用なのか判定した後に、物質の同定へと進むので、順序が異なるのである。最近では補完・代替医療の専門雑誌も数多く発刊されるようになっており、科学的なエビデンスが急速に蓄積されつつある。eCAMという専門誌もあり、これは日本側の研究者らの提案によって発刊され、中国医学の成果の投稿に適した国際誌であり、インターネットで無料で閲覧可能である。(Evidence-based Complementary and Alternative Medicine)代替医療の中には、鍼灸・漢方(薬用植物)・推拿のように、長い歴史の中で経験的に有用性が認められてきたが、近年改めて科学的実験・調査が行われ、有意な治療効果が見込めることが確認されるようになった療法もある。鍼灸・漢方といったような代替医療にもエビデンスを主体にした考え方も出てきており、また、WHOが1996年、鍼灸における適応疾患を起草したり、1997年、NIHの鍼治療の合意形成声明書が発表され、現代医学の補完代替医療へのアプローチも進んできている。米国政府は補完代替医療の有用性を検証研究するため、米国NIHの下部組織として国立補完代替医療センター (NCCAM) を設立した。イギリスにおけるリフレクソロジーのように、数年にわたる実データの蓄積を含む正規の科学的な検証を経たうえで、議会の承認を経て正規の保険医療に組み込まれ成果をあげているものもある。食事療法や健康食品のような分野は補完・代替医療の中でも研究が行われにくいために、エビデンスが少ないと報告されている。米国では、食事療法や健康食品の使用については特定の疾患では注意した上で容認するというガイドラインがある。プラセボ以上の医療効果が無いものまでも代替医療の範囲に含めるべきかについて議論がある。 とされた。サイモン・シンらが行った根拠に基づく医療(EBM)の手法を用いた調査では、「鍼灸はいくつかのタイプの痛みと吐き気には効いている」とされた。また同調査で、「カイロプラクティックは腰痛の治療にのみ有効性が認められる」「ホメオパシーはほぼプラシーボ効果である」とされた。英国カイロプラクティック協会はサイモン・シンを訴えていたが、最終的に訴訟は取り下げられた。イギリスの下院委員会も「ホメオパシーには偽薬以上の効果はない」として公的扶助の対象外(保険適用外)とすべきであると言う報告書をまとめた。日本国内では学会において認知されているが、厚生労働省など行政機関が法制度として定義するレベルに至っていない。
出典:wikipedia
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