高山本線(たかやまほんせん)は、岐阜県岐阜市の岐阜駅から高山駅、猪谷駅を経て富山県富山市の富山駅に至る鉄道路線(地方交通線)である。岐阜駅 - 猪谷駅(富山市)間は東海旅客鉄道(JR東海)、猪谷駅 - 富山駅間は西日本旅客鉄道(JR西日本)の管轄となっている。飛騨高地の山間を縫って岐阜市と富山市を結んでいるが、山間部あるいは盆地である岐阜県飛騨地方へのアクセス路線でもあり、下呂温泉や高山市、飛騨市への観光路線としての性格を持つ。岐阜駅 - 猪谷駅(構内のぞく)間はJR東海の東海鉄道事業本部が、猪谷駅 - 富山駅間はJR西日本金沢支社の北陸広域鉄道部がそれぞれ管轄している。本州の「本線」では唯一、地方交通線に分類されている。JRの前身である日本国有鉄道(国鉄)時代の早い時期から列車行き違い設備の増設や列車集中制御装置 (CTC) の導入といった輸送近代化が行われ、列車の増発が可能になった。国鉄分割民営化後は岐阜駅 - 高山駅間において行き違い可能駅で両開き分岐器(Y字ポイント)を110 km/hでの高速通過が可能な型に取り換えるなど、優等列車の高速運転が行えるように改良が行われている。かつては電化計画もあった。1980年(昭和55年)5月6日の国鉄理事会で全線225.8 kmの電化計画が決定され、翌日、運輸大臣に認可が申請された。18か所の変電所を設置し、全線を直流1500 Vで電化する計画で、投資額は約200億円、1985年度(昭和60年度)電化開業を目指していた。1980年5月27日には高山駅構内で起工式が行われた。しかし、、沿線に420本の架線柱が設置された時点で工事が中断した(この架線柱は通信専用線電柱に転用された)。また、電化時には当時中央西線の特急「しなの」に使用されていた車両と同じ381系直流特急用振り子車両の導入、および急行以下用は457系交直流急行形電車の再生産が計画されていたが、需要減や国鉄の財政逼迫から1985年頃までに電化計画そのものを取りやめ駅構内などの線路改良と高性能気動車の導入に転換した。その結果、特急列車に関してはJR移行後の新型車両キハ85系の導入によって従来の特急形電車と同等に近い性能となり、高山以南の所要時間は電化された場合と遜色がなく、振子車両特有の揺れも無いので新車導入当初は好評であった。2008年(平成20年)には東海北陸自動車道が全線開通し、高山市街地付近にまで延伸しており、高速バス「ひだ高山号」との競争が激化している。名古屋駅など東海道本線木曽川駅以南の各駅と、富山駅など北陸本線福岡駅以東の各駅との距離は米原駅経由よりも高山本線経由の方が短い。しかし東海道新幹線が米原駅を経由して開業し、あわせて北陸トンネルの開通をはじめ北陸本線の電化・複線化・高速化が行われ電車特急が頻発されるようになったため、所要時間や利用機会(列車本数)は北陸本線経由が優位である。なお、北陸本線の電化区間が富山駅まで達する前の1963年(昭和38年)までは、大阪方面からも距離は長くなるが岐阜駅で列車を乗り継ぎ高山本線を経由する方が富山駅までの所要時間が短いことがあった。岐阜駅 - 鵜沼駅間では名古屋鉄道(名鉄)各務原線と並行している。同区間の距離における地方交通線の運賃表は200円区間をのぞき幹線と同一料率であり、名鉄より安い運賃になっている(2012年現在)。また岐阜駅 - 美濃太田駅間はIC乗車カード「TOICA」の利用エリアに含まれている。2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線長野駅 - 金沢駅間開業により、並行在来線区間にあたる北陸本線金沢駅 - 直江津駅間はIRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道の第三セクター鉄道3社に経営分離されたが、「枝線」にあたる本路線のJR西日本区間については引き続き同社が運営している。このため、本路線のJR西日本区間は、大糸線のJR同社区間と共に、他のJR同社在来線と接続せず、新幹線・JR他社在来線のみに接続する路線となっている。また、新幹線の開業後は金沢以東において七尾線直通をのぞく北陸本線特急の運行はすべて廃止され、名古屋・岐阜と富山とを直接結ぶ特急は本路線の「ひだ」のみとなった。また、北陸新幹線延伸開業後は、東京 - 高山の所要時間は「東京→(東海道新幹線)→名古屋→(ひだ)→高山」の経路と「東京→(北陸新幹線)→富山→(ひだ)→高山」の経路でほぼ同等となった。なお、富山駅は乗継割引の指定駅ではないため、北陸新幹線と「ひだ」を乗り継いでも特急料金などの割引は適用されない。そのため、名古屋経由の方が距離が長いにもかかわらず料金的には割安となる。久々野駅以南は木曽川・飛騨川、高山盆地南端の飛騨一ノ宮駅以北は宮川・神通川にほぼ沿って路線が走っており、日本ラインや飛水峡、中山七里など名所も多い。なお、これらは飛騨木曽川国定公園に指定されている。美濃太田駅以西は国道21号、それより高山駅・富山駅方面はおおむね国道41号のルートに沿っているが、飛騨細江駅(飛騨市) - 猪谷駅(富山市)間では国道41号が飛騨市古川町と同市神岡町の境の数河峠を越える越中東街道を通っているのに対し、高山本線は急勾配を避けるために宮川の流れに沿った越中西街道(国道471号・国道360号)沿いを通っている。名古屋駅 - 高山駅・飛騨古川駅・富山駅間および大阪駅 - 高山駅間に特急「ワイドビューひだ」が運転されている。うち1往復の大阪駅 - 高山駅間の列車は岐阜駅 - 高山駅間で名古屋駅発着列車と連結運転を行っている。車両はキハ85系を使用している。「ひだ」が特急化された1968年10月1日から1990年3月9日まではキハ80系気動車が使用されていた。2001年9月30日までは、鵜沼駅 - 高山駅間では、名古屋鉄道神宮前駅からの特急「北アルプス」が1日1往復だけ運転されていた。「北アルプス」は一時期、富山駅までや、富山駅からさらに富山地方鉄道に乗り入れて立山駅まで運転されていたこともある。車両は1991年3月15日までは名鉄キハ8000系気動車、翌16日のダイヤ改正からは名鉄キハ8500系気動車が使用された。特急「北アルプス」はかつては準急「たかやま」(のちに急行に格上げされたが、大阪駅発着の急行「たかやま」とは無関係)という名前だった。またかつては、名古屋駅発着の急行「のりくら」が1990年3月9日まで、大阪駅発着の「たかやま」が1999年12月3日まで運転されていたほか、名古屋駅 - 高山駅 - 富山駅 - 金沢駅 - 名古屋駅間に循環急行 「しろがね」「こがね」が1972年まで運転されていた。また越美南線(現在の長良川鉄道)北濃に直通する急行「おくみの」も運転されていたが、「おくみの」は1982年11月15日のダイヤ改正で廃止された。また、「のりくら」は1984年1月31日まで夜行列車でも運転されていた。これらの急行列車は、キハ58系気動車で運行され、名古屋第一機関区(現在の名古屋車両区)と美濃太田機関区(現在の美濃太田車両区)所属の車両が使用された。その後には「のりくら」は名古屋車両区所属の車両のみで運行され、「たかやま」は向日町運転所(現在の京都総合運転所)が受け持つようになった。晩年の「たかやま」にはアコモ改造(接客設備の改良)された専用車両が投入された。なお、飯田線・関西本線・紀勢本線などと異なり、首都圏発着の優等列車が乗り入れたことはない。普通列車はおおむね、美濃太田駅・高山駅・猪谷駅で運転系統が分かれている。国鉄時代から美濃太田駅 - 富山駅間、高山駅 - 富山駅間を通して走る列車も設定され、JR西日本のキハ120形が高山駅まで乗り入れていたが、2003年10月1日以後は猪谷駅を越えて直通運転を行う普通列車は設定されておらず、猪谷駅での接続が考慮されたダイヤとなっている。そのほか、1991年3月から1997年10月まで岐阜駅 - 美濃太田駅間には、夜間に那加駅・各務ケ原駅・鵜沼駅に停車する快速(一部は太多線多治見駅直通)が存在した。また、民営化前の1986年頃までは郵便車や荷物車が連結されて郵便荷物輸送も行われていた。岐阜駅 - 美濃太田駅間は太多線直通の列車もあり、沿線人口・利用客数ともに多く、日中から夕方・夜にかけては1時間あたり2本運行されている。朝ラッシュ時の美濃太田駅 → 岐阜駅間のように1時間に4本運行されている時間帯もあり、高山線内で最も列車密度の高い区間である。鵜沼駅までは名鉄各務原線が並走しており、本数は1時間あたり4本が運行されている名鉄の半分であるが、非電化ながら駅数やカーブが少ないことから所要時間では名鉄に比べて優位となることが多い。岐阜駅(名鉄岐阜駅) - 鵜沼駅(新鵜沼駅)間の運賃はJRの方が若干安い。美濃太田駅 - 下呂駅間では1 - 2時間に1本の割合で運行されているが、下呂駅 - 高山駅間では正午を挟んだ昼間は上り約4時間、下りは約5時間ほど運行されない。また、飛騨古川駅 - 猪谷間も上下線ともに午後は3時間半ほど運行されない時間帯がある。岐阜駅・美濃太田駅 - 下麻生駅・白川口駅・飛騨金山駅間(夕方のみ)・下呂駅間および高山駅 - 飛騨古川駅・坂上駅間には区間運転列車もある。列車は2 - 4両編成で運行され、全線で主に通勤時間帯以外においてワンマン運転が行われているが、岐阜駅 - 高山駅間、美濃太田駅 - 猪谷駅間といった長距離を運行する列車には車掌が乗務する列車もある(列車番号の末尾が「C」の列車はワンマン列車)。高山発朝4時台の岐阜行き始発列車と岐阜発夜21時台の高山行き最終列車は下呂駅 - 高山駅間で快速運転を行っており、一部の駅が通過となる。また、益田清風高校の始業式・終業式・定期試験の日には昼過ぎに飛騨萩原駅 - 下呂駅間に上りのみ臨時列車が運転される。2000年代後半まで、元日の夜半過ぎの深夜には高山駅 - 久々野駅間に臨時列車が1往復運転されていたが、それ以降は運転されていない。車両は太多線直通含めキハ75形とキハ25形気動車が運用されている。キハ25は1000番台が使用されており、オールロングシートの通勤型仕様にも関わらず片道200km近くの長距離運用にも就いている。JR東海管内においては2001年まで太多線と共にキハ58系気動車、2015年3月までキハ11形、2015年6月まではキハ40系も使用されていた。猪谷駅 - 富山駅間と越中八尾駅 - 富山駅間の普通列車がほぼ交互に運行されている。このほか、速星駅 - 富山駅間の普通列車も朝に1往復運行されている。2015年3月14日の改正で、日曜日・祝日運休を廃止し、全列車が毎日運転に統一された。現在の運転間隔は、富山 - 越中八尾で毎時1本程度(2時間ほど開くこともある)、越中八尾 - 猪谷では2 - 3時間に1本である。毎年9月1日から4日の朝までは富山市八尾町で開催される「おわら風の盆」の観光客輸送のため、富山駅 - 越中八尾駅間では午後から深夜にかけて、富山地域鉄道部の車両をフル活用し、約10分に1本の割合で列車が運行される。2003年から2010年までは関西、福井・金沢方面からの特急列車「おわら号」が直通運転していた。車両はキハ120系気動車の単行運転が基本である。2011年3月11日まで日本全国で最後のキハ58系気動車も運転されていた。富山市が主体となって通年で行われている高山本線活性化事業の一環として、2006年から2011年までJR高山本線活性化社会実験を実施し、2006年10月21日から猪谷駅 - 富山駅間で第1期の社会実験として列車の増発が行われていた。この増発で、朝夕は越中八尾駅 - 富山駅間が上下毎時2本ずつ、猪谷駅 - 越中八尾駅間が上下毎時1本ずつ、日中でもほぼ上下毎時1本ずつ運転されていた。夜間については富山駅発23時台の上り列車も設定され、猪谷終着時刻が日付を跨ぐ形となった(2008年には時刻が繰り上げられ猪谷終着も当日中となった。2015年3月14日のダイヤ改正で富山駅発上り最終列車の時刻が繰り下げられ、猪谷終着が0時過ぎとなる列車が再設定されている)。引き続いて第2期の社会実験として2008年3月15日から2011年3月11日まで速星駅 - 西富山駅間の富山イノベーションパーク隣接地に臨時駅として婦中鵜坂駅を設置して需要の掘り起こしをすることになった。第2期の実験では増発区間が越中八尾駅 - 富山駅間のみとなるが日中も上下毎時2本ずつの運転となった。社会実験は2011年3月12日のダイヤ改正を以って終了し、日中の増発はなくなったものの、朝夕ラッシュ時間帯の利用者が特に増加したことと、臨時駅の婦中鵜坂駅の利用者が年々増加していることを受け、同駅は同改正後も臨時駅の扱いのまま存続していたが、2014年春以降の常設化が2013年11月に発表され、2014年3月15日のダイヤ改正で常設化された。北陸本線富山貨物駅から富山駅経由で高山本線速星駅まで、高速貨物列車が1往復設定されている。日曜日は運休する。DE10形ディーゼル機関車牽引で運行されている。西富山駅は現在も車扱貨物の臨時取扱駅となっているが、1996年3月16日以降は発着する貨物列車がない。全列車が気動車で運転されている。括弧内は所属車両基地である。高山本線は南側は高山線、北側は飛越線として建設が進められた。高山線は1920年に岐阜駅 - 各務ケ原駅間が最初に開業したのち、飛騨小坂駅には1933年に達した。飛越線は1927年に富山駅 - 越中八尾駅間が最初に開業。こちらも順次延伸され1933年に坂上駅に達した。残る飛騨小坂駅 - 高山駅 - 坂上駅間が開業し高山本線が全通したのは翌1934年である。高山本線の詳細な列車の沿革は以下の項目を参照されたい。2004年10月の台風23号の影響により、高山駅 - 猪谷駅間が不通となり、高山駅 - 飛騨細江駅・猪谷駅間で代行バスによる運行が行われた。同年11月18日からは高山駅 - 飛騨古川駅間で運転を再開し、代行バスは2005年2月28日まで飛騨細江駅 - 猪谷駅間は1日2往復設定されたが、国道41号を経由するため、角川駅 - 杉原駅間の各駅には停車しなかった。国道360号の仮復旧で2005年3月1日から1日7往復となり、角川駅 - 杉原駅間の各駅にも停車するようになった。名古屋駅 - 富山駅間の特急「ひだ」は飛騨古川駅 - 富山駅間を運休として飛騨古川駅で折り返し運転が行われていた。JR東海は2005年4月下旬より復旧工事に着手。2005年10月1日の秋のダイヤ改正時に、飛騨古川駅 - 角川駅間が復旧し、残りの角川駅 - 猪谷駅間も2007年9月8日に復旧した。全線復旧を記念して富山フリーきっぷが発売された。有人駅のうち、岐阜駅・美濃太田駅・下呂駅・高山駅・飛騨古川駅の5駅はJR東海直営駅、鵜沼駅は東海交通事業による業務委託駅、白川口駅・下油井駅・飛騨金山駅・飛騨萩原駅の4駅は簡易委託駅である。有人駅のうち、富山駅在来線はあいの風とやま鉄道直営駅、速星駅と越中八尾駅はジェイアール西日本金沢メンテックへの業務委託駅である。
出典:wikipedia
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