車掌(しゃしょう、、)とは、鉄道・バスなどの交通機関における乗務員の職制の一つである。車掌は、機関士・運転士などの車両を直接運転する業務以外で、円滑な旅客・貨物輸送の確保にあたる乗務員である。世界的に共通して次の業務に従事する。高速輸送機関においては、扉の開閉操作および車内放送を行うためだけに車掌を乗務させているケースがある。現代においては自動化・合理化の進捗によって「ワンマン運転」が広く普及し、車掌乗務を廃止する交通機関も多い。日本においては、鉄道における"conductor"の訳語に「車両を管掌する」役職名として「車掌」の名称をあてた。明治から大正期にかけては、英会話など特別な素養を持つ者を優等列車の車掌業務に従事させる「列車長」の職制も設けられた。日本国有鉄道では、車掌区に所属し旅客列車および貨物列車に乗務する営業職の「車掌」および「車掌長」のほか、車掌区および貨車区・客貨車区に所属し貨物列車に乗務する運転職の「列車係」(1973年職制改正以前は"列車掛"と表記)の職制があった。また車掌のうち旅客列車にのみ乗務する車掌を「乗客扱い専務車掌」と呼称した。1971年に関東鉄道竜ヶ崎線と日立電鉄でワンマン運転を始めたのを皮切りに、閑散線区などの合理化策として私鉄各社に車掌乗務の廃止が広まった。国鉄も1986年に貨物列車における車掌・列車係の乗務を廃止し、民営化後の1988年以降は、旅客列車においても車掌乗務を廃止する線区が拡大している。また、運転士が運転乗務の間合いに車掌として乗務する兼任制度を取り入れている事業者も増えている。路線バスや路面電車など鉄道以外の公共交通機関でも一般的に車掌が乗務したが、合理化の一環として1960年代以降急速にワンマン運転が普及して廃れ、現在の車掌乗務は広島電鉄・熊本市交通局の"連接車"運用などごく一部でしか見ることができない。なお、東急世田谷線も2人乗務しているが、車両後部に乗務しているのは車掌資格をもたない案内係や警備員である。米国・カナダにおける車掌は「コンダクター」(conductor)と呼称される。列車に乗務する制動手(breakman)、誘導手(flagman)、アシスタントコンダクター、サービス乗務員などを管理監督する職制で、運行規則に基づいた安全かつ効率的な列車運行の責任を機関士と同一に負う。発車合図の"All aboard!"(皆さんご乗車ください)の掛け声が特徴的であり、アムトラックのCMなど随所で鉄道を代表する台詞として用いられている。米国の長距離列車を一手に引き受けるアムトラックの場合、寝台客車は各車両に車掌が詰め、車内治安の維持、寝台のセット、解体など旅客へのサービスを手厚く行う。各寝台個室にはコールボタンが設置され、旅客の要求に応じ随時駆けつける。大陸横断列車などシカゴ以西の長距離列車で用いられるスーパーライナーはドアが手動扱いであり、このドア扱いも車掌の大切な仕事である。貨物列車では初期より、貨物列車後尾に連結された車掌車(カブース)に後部制動手および後部誘導手とともにコンダクターが乗務するのが一般的であった。このカブースは中央部を一段高くしたり出窓を設けることで車掌が編成の異常を直ぐ確認できるようになっているものが多く、その特徴的な外観からアメリカの鉄道の象徴的存在であったが、合理化によるカブースの廃止で先頭機関車に乗務するようになり、同時に前部・後部のブレーキマンやフラッグマンなど車掌配下の職制が消滅した。現在の貨物列車は1機関士1車掌乗務が標準的で、コンダクターは機関士登用への1段階と扱われるが、一方で合理化の進展により、コンダクター職を廃止しようとする動きが根強くある。地下鉄のような都市内完結の旅客列車では多くの事業者でコンダクターを廃したワンマン運転(OPTO)を採用しているが、ニューヨーク市地下鉄やトロント交通局のようにワンマン運転を採用せずに車掌乗務を続けている事業者もある。シカゴのサウスショアー線のように、日本ではあまり見られなくなったパンチ式の補充券を車掌が発行している事業者もある。シカゴの通勤列車(現メトラ)から全米に広まったと呼ばれる2階建て客車は、中央部を吹き抜けとすることで、1階部分と2階部分の両方の旅客を車掌が検札できるようになっている。英国・オーストラリアなどにおける車掌は、駅馬車時代の乗務員に由来して「ガード」(guard)と呼称される。20世紀後半までは乗務列車のダイヤ確認や運行の安全確保、荷貨物の取り扱いなどが主な業務で、運賃収受業務はガードとは別の「検札官」(travelling ticket inspector)が担当していたが、近年では主にガードが検札・集改札業務も行っている。英国国鉄では旅客・貨物列車の乗務別に複数の職制に分けられていた。職制における「ガード」は乗客に接する業務は行えず、旅客対応は「コンダクター=ガード」(conductor-guard)または「コンダクター」(conductor)の職制の車掌が行った。また長距離列車では職制とは別に「シニア・コンダクター」(senior conductor)の呼称を用いた。現在の英国では、一部の民間旅客列車運行事業者がシニア・コンダクターに代わって「トレイン・マネジャー」(train manager)の呼称を用いているケースがあるが、鉄道安全基準審議会(RSSB)が定める公式の車掌職名はいまも「ガード」である。車掌が乗務するバスにおいて、警報機のない踏切を通過する際と、車両後退時の誘導は必須義務である(必ず誘導しなければいけない)。仙台市営バスやじょうてつバスにおける狭隘路線通行の安全確保の見地から係員が添乗する路線があるが、これは「保安要員」であり、車掌ではない。しかし、この2社も保安要員添乗以前は車掌として添乗していた。ワンマン運転の認可条件として添乗が求められていた。車掌と異なり、狭隘区間のみ乗務させればいいので、人員の合理化が図れる。交通機関の設備の近代化が進むと同時に、労働関連の法改正もあり車掌の雇用形態は多様化し、契約社員やパートタイマーとして雇用される車掌が多くなっている。また、鉄道会社の非現業正社員(営業・企画などの事務職員、車両保守や保線などの工務職員など)も、OJTおよび職場訓練の一環として、車掌を経験させる場合もある。鉄道各社により、採用方法は千差万別である。現在特殊な例を除き、ほとんど募集されていない。バスガイドについては、該当項目を参照のこと。当該社局の募集広告などを見つけて応募する。広島電鉄では、適時アルバイトとして募集されている。当該企業等の募集広告などを見つけて応募する。ガイドとして募集されていることも多い。鉄道の場合、車掌が乗務をする車掌室は通常、列車最後部の乗務員室で行うが、無人駅で出入り口が進行方向前面にある場合に乗車券の回収を行うなどの目的で列車最前部の乗務員室に移動することもある。新幹線・特急列車・JR北海道の快速エアポート・名鉄特急などでは、編成中間部に設けられている車掌室で業務を行っている。この車掌室はグリーン車等の特別席が装備されている車両に入っていることが多い。また特急列車のうち、踊り子・ひたち等をはじめとした車両構造(非貫通先頭車)によって通り抜けができない列車については、特急券等のチェックのために別編成にも車掌が乗務している。また車両が連結されている場合連結部に乗務していることもある。ケーブルカーについてはこの例に倣わない。車両先頭の乗務員は、運転士ではなく車掌である。運転士は山頂駅にいる。これは機関部が山頂駅にあり、車両がケーブルで巻き揚げられたり下ろされたりするからである。日本の場合、たいていは1列車に対して1人乗務だが、特急(夜行列車を含む)や新幹線などの編成が長い列車や乗客の多い列車などでは2人以上が乗務し、仕事を分担している。国鉄時代の優等列車では車掌長と専務車掌(と運転車掌)の組み合わせで乗務することが多く、夜行列車では案内や寝台の組み立て・解体を担当する車掌補(列車給仕)も乗務していた。電報略号で車掌のことを「レチ」という.。国鉄時代は他に荷物列車を担当する荷扱い車掌を「ニレチ」、車掌長を「レチチ」(レチチョウまたはチーフの略)、専務車掌は「カレチ」(リョカクセンムレチの略)と呼んでいた。レチの語源は「列車長」であるとか、「列車乗務員」であるとか言われている。しかし後者の旧仮名遣いは「レツシヤジョウムヰン」であって、文字列に「チ」を含まない。観光案内、レトロ感の演出のため、ワンマン運転が可能な路線にあえて車掌を乗務させている例もある。日本の車掌は、それぞれの会社で定められた制服(一般駅務掛と同じである事が多い)を着用し乗務する。外国のように、私服での乗務例は皆無である。かつては臙脂の地に「乗客専務」の文字入り腕章をしていたが、現在は「車掌」と記述された名札や肩章を着用しそれに代えている。名札の他に「運転士」「車掌」と書かれたバッジを別につけている社局もある。また名札の着用を義務付けている社局がほとんどである。社章も名札同様着用を義務付けていることが多い。車掌は列車の出発準備ができたとき、出発させるとき、運転士に出発合図を送ることになっている。車掌は、原則として、列車最後部がホーム先端を通過するまでは、非常ブレーキスイッチ(引き紐の通っているパイプである事が多い。一部では車内ブザースイッチ、車内電鈴スイッチ)に手をかけ、いつでも非常ブレーキがかけられるようにしながら、乗務員室の扉についている窓からホームを監視する(京浜急行電鉄の12両編成以外の列車、都営浅草線、札幌市営地下鉄南北線など一部では乗務員室の扉を閉めず車掌が半ばホームに身を乗り出した状態で行う)。その後、ホームに異常が無い事を指差確認し、放送などの次の業務に移る。
出典:wikipedia
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