EXシリーズ(イーエックス・シリーズ)とはヤマハから発売されたシンセサイザーの型番・商品名。主な特徴として、PCM音源、AN音源、VL音源、FDSP音源というハイブリッド音源を搭載している点が挙げられる。その上、ユーザーが好きな波形を取り込めるサンプリング機能も加えられた。80年代に一世を風靡したFM音源のDX7等のDXシリーズに続く型番を採用し、FM音源とPCM音源のハイブリッドタイプのシンセサイザーSY99等のSYシリーズの後継機種として位置づけられている。EXシリーズ以前に発売されていたシンセサイザーヤマハ・Wシリーズはカシオペアの向谷実などプロが使用していたこともあったが、基本的にはアマチュアユースを想定していたシンセサイザーであり、93年・94年に発売された物理モデル音源シンセサイザーであるVL1などのVLシリーズ以来久々のヤマハ製プロ用シンセサイザーとして前評判は非常に高かった。特にSYシリーズの時代から指摘されていたPCM音源部の線の細さに対しては、EXシリーズでは新たに原波形をサンプリングし直し、太く厚みのある音に変更されていることが評価につながったと思われる。前年に発売されていたバーチャルアナログシンセサイザーAN1xも分厚い音が出るという評判があり、97年・98年頃のヤマハは出音の厚いシンセサイザーを製造することを目指していたと思われる。80年代中頃から90年代初頭まで、DXシリーズ、SYシリーズを発売しシンセサイザー市場を牽引してきたヤマハであったが、物理モデル音源が思うように普及せず、また、95年・96年とDTM市場におけるXGフォーマットの普及に力を入れてきたせいか、90年代半ば以降は坂本龍一、小室哲哉といったプロ奏者が離れてしまい、ローランドのJVシリーズやコルグのTRINITYシリーズにプロ用シンセサイザーのイニシアティブを奪われてきた。それを奪還するべく投入されたのがこのEXシリーズである。しかし、内蔵シーケンサーの性能が不十分と言われ、Wシリーズの記録音数10万音に対して、約3万音と減っている。この点に関してはカタログに「思いついたフレーズをスケッチするため」という記載があり、複数台の機材を駆使して楽曲を作成するプロにとって内蔵シーケンサーは必須機能ではないためと解せる。そして、マルチモードで伴奏データを再生すると、一部のパートの演奏が遅れて、演奏が乱れる(いわゆるモタる)ことが指摘されている。こちらもプロは1台1パートという使い方をするため、マルチでの利用をあまり重視しなかったものと思われる。EX5の最大同時発音数は128音だが、PCM音源を含めての発音数であり、VL音源は1音、AN音源は2音と物理モデル系は少ない。また、VL音源のエディットの幅はユーザーにとって複雑にしないようにとの配慮のもとでVLシリーズより狭められ、テンプレートを当てはめる方式を採用している。AWM音源エレメントから精密な信号処理によって、従来のエフェクトでは得られなかった音を作り出すことができることが特徴のFDSP音源だが、鍵盤ごとに異なるエフェクトをかけることができるという点で、従来のDSPを利用したエフェクトとは一線を画すが、最大同時発音数は16音と少なくなる。EXシリーズはFM音源そのものは搭載していないが、このFDSP音源には『SELF FM』というFM変調をシミュレートした物理モデルもある。しかし、DSPチップの性能が低く、すぐに「DSP FULL」とエラーが出てしまい、FDSP音源の性能を十分に発揮することは難しかった。そのため、多数の音源を搭載しながら、実質的にはPCM音源部しか使われず、当初の予想ほどの販売数は得られることなく、プロ用シンセサイザー市場を牽引するということは実現できなかった。しかし、このEX5でAWM2音源をリファインし、太い音が出るように改良したことが、後に発表されるS80 / S30やCS6x / CS6R、MOTIFシリーズに続く礎になっている。このEX5の登場から約半年後に、従来シンセサイザー市場を牽引していたコルグ・TRINITYシリーズが、物理モデル音源を1音から6音にアップグレードして、TRINITY V3として再発売された。そのカタログに「融合を超えた音」と書かれており、EX5が他社に強力なライバル商品の出現として認知されていたと考えられる。そして、この「融合を超えた音」というのはTRINITY V3の物理音源はコルグのZ1の音源が搭載されていることに起因しており、Z1の音源はSONDIUS-XGの規格とコルグの物理モデルの音源が使用されている事によるもので、VL音源と全く同じ音が出るということではない。
出典:wikipedia
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