重水(じゅうすい、heavy water)とは、質量数の大きい同位体の水分子を多く含み、通常の水より比重の大きい水のことである。重水に対して通常の水 (HO) を軽水と呼ぶ。重水素と軽水素は電子状態が同じであるため、重水と軽水の化学的性質は似通っている。しかし質量が違うので、物理的性質は異なる。通常の水は HO であるが、重水は水素の同位体である重水素(デューテリウム: D, H)や三重水素(トリチウム: T, H)、酸素の同位体 O や O などを含む。なお通常の水はHOが99.76%からなるが、HO0.17%、HO0.037%、HDO0.032%などの水もわずかながら含まれている。狭義には化学式 DO、すなわち重水素二つと質量数16の酸素によりなる水のことを言い、単に「重水」と言った場合はこれを指すことが多い。別名に酸化重水素 (deuterium oxide, Water-d2) など。自然界では、DO としての重水はほとんど存在せず、重水は DHO の分子式として存在する。DO で表される重水の融点は3.82 = 276.97 K (1 atm)、沸点は101.43 = 374.58 K (1 atm) である。また密度は、1.105 g/cm (1 atm, 20 ) である。粘性は20 で0.00125 Pa·s。またO-D結合は同位体効果により、DO は HO よりも電気分解の速度が遅い。このような軽水と重水の性質の違いを利用して、重水をわずかに含む天然の水から濃縮、分離することができる。重水は、物質の溶解度、電気伝導度、電離度などの物性や反応速度が軽水とは異なる値を示す。それ故、飲料水などとして大量に(体重に対して数十%以上)摂取すると生体内反応に失調をきたす。重水中では魚類はすべて死に、植物は発芽しない。微生物は重水中でも培養できるものもある。重水は原子炉の減速材として使われる。一般に重水に限らず、水素の高速中性子を熱中性子に減速する能力(減速能)にすぐれる特性により、水は水素を大量に含むため減速材として重用されているが、軽水は減速能とともに中性子を吸収する能力も大きいことが問題であり、ウランの濃縮技術が未発達だった初期の原子炉開発においては、軽水に次ぐ減速能を持ち軽水に比べて中性子吸収が少ない重水素からなる重水が減速材として使用された。そのため、第二次世界大戦のころから重水の生産設備が軍事目標として扱われていた。重水を利用する原子炉(重水炉)は、現在では核兵器の製造に直結するウラン濃縮を行うことなく天然ウランをそのまま核燃料に使用することができるCANDU炉や、燃料ソースの多様化を求めた新型転換炉などで使用されている。なおこの減速材としての働きは、医療にも応用されている。すなわち放射線治療において、エネルギーが高い高速粒子のままでは生体に対する悪影響が強すぎるので、減速中性子を利用する治療方法が提唱されている。中性子を軽水で減速すると中性子が軽水に吸収されてしまいビーム出力が弱くなるため、重水が減速材に使用される。また、カナダのサドベリーニュートリノ観測所 () では、ニュートリノの検出に重水が利用されている。他には、H-NMR測定用の溶媒には、ロック(磁場安定化機構)のため、および試料の軽水素からのシグナルを妨害しないように、重水などの重溶媒が用いられる。
出典:wikipedia
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