『2001年宇宙の旅』(にせんいちねんうちゅうのたび、原題:")は、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックのアイデアをまとめたストーリーに基いて製作された、SF映画およびSF小説である。映画版はキューブリックが監督・脚本を担当し、1968年4月6日にアメリカで公開された。小説版は同年6月にハードカバー版としてアメリカで出版されている。遠い昔、ヒトザルが他の獣と変わらない生活を送っていた頃、黒い石板のような謎の物体「モノリス」がヒトザルたちの前に出現する。やがて1匹のヒトザルが謎の物体の影響を受け、動物の骨を道具・武器として使うことを覚えた。獣を倒し多くの食物を手に入れられるようになったヒトザルは、反目する別のヒトザルの群れに対しても武器を使用して殺害し、水場争いに勝利する。歓びのあまり、骨を空に放り上げると、これが最新の軍事衛星に変る(人類史を俯瞰するモンタージュとされる)。月に人類が住むようになった時代。アメリカ合衆国宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士は、月のティコクレーターで発掘された謎の物体「TMA」(Tycho Magnetic Anomaly, ティコ磁気異常、通称「モノリス」(一枚岩))を極秘に調査するため、月面クラビウス基地に向かう。調査中、400万年ぶりに太陽光を浴びたモノリスは強力な信号を木星(小説版では土星)に向けて発した。18か月後、宇宙船ディスカバリー号は木星探査の途上にあった。乗組員は船長のデビッド・ボーマンとフランク・プールら5名の人間(ボーマンとプール以外の3名は出発前から人工冬眠中)と、史上最高の人工知能HAL(ハル)9000型コンピュータであった。順調に進んでいた飛行の途上HALは、ボーマン船長にこの探査計画に疑問を抱いている事を打ち明ける。その直後HALは船のAE35ユニットの故障を告げるが、実際には問題なかった。ふたりはHALの異常を疑い、その思考部を停止させるべく話しあうが、これを察知したHALが乗組員の殺害を決行する。プールは船外活動中に宇宙服の機能を破壊され、人工冬眠中の3人は生命維持装置を切られてしまう。唯一生き残ったボーマン船長はHALの思考部を停止させ、探査の真の目的であるモノリスの件を知ることになる。単独で探査を続行した彼は木星の衛星軌道上で巨大なモノリスと遭遇、スターゲイトを通じて、人類を超越した存在・スターチャイルドへと進化を遂げる。特筆しない限り、詳細部分に関する記述は小説版を参考としている。#小説版も参照。制作は1965年に開始し、イギリスので撮影された。翌1966年5月までに俳優の演技シーンを撮り終えたが、SFXシーンの完成までさらに1年半以上を費やした。製作費は予定の600万ドルを大きく超過し1,050万ドルに達した。映画は70mmシネラマ規格で制作された。キューブリックは映像表現にシネラマスクリーンでの上映効果を最大限に狙っている。視覚効果ではキューブリックの前作『博士の異常な愛情』でB-52の特撮を担当したウォーリー・ビーバーズのほか、ダグラス・トランブル、コン・ペダースン、トム・ハワードなど少人数しかクレジットされていないが、実際には巨大なプロジェクトであり、視覚効果デザインの上で科学考証に多くの科学者、研究者が参加している上、撮影でも10年を経てイギリスで特撮チームを率いることになるブライアン・ジョンソン(『エイリアン』1、2)、ゾラン・ペリシック(『スーパーマン』)、マット画合成を担当したリチャード・ユリシッチを含むデザイナー、撮影や現像、合成、アニメーションのスペシャリストが多数参加している。ディスカバリー号の乗員達が食べる宇宙食は、NASAが実際に開発して本作のために提供したものである。また本作に登場するコンピュータの設定や画面はIBMが協力しており、当初は随所にIBMのロゴがあしらわれていたとされる。しかしながら制作中に「コンピュータが人間を殺害する」というストーリーであることが判明したため、IBMは手を引き、ロゴもすべて除去された。取り残されたIBMロゴが、アリエス1B型の計器盤およびディスカバリー号乗員が着用する宇宙服の左腕コンソールについている。当初キューブリックは美術担当として漫画家の手塚治虫の協力を仰いだが、当時の手塚は連載漫画の他に、テレビアニメ番組を多数抱え、日本国外での映画制作に携わることは物理的に不可能であったため、オファーを断った。「200名もの人間を食わせなければならないので」云々と云う主旨の返信を送ると、キューブリックは「家族が200人もいるのか?!」と驚嘆したという。手紙自体は紛失してしまったが、封筒の写真は手塚のエッセイ本に掲載されている。キューブリックが異星人とのファーストコンタクトを描く映画を撮影すると決めたときに、その科学考証や共同脚本などをアーサー・C・クラークに依頼をした。クラークはすでに、宇宙人と人類のファーストコンタクトを描いた小説『前哨』(ハヤカワ文庫の同名短編集などに収録)を1948年に発表していた。のちにクラークが発表した『失われた宇宙の旅2001』によると、キューブリックとクラークがアイデアを出し合い、まずはクラークが「小説」としてアイデアをまとめあげ、その後キューブリックが脚本を執筆している。。オープニングなどではモンタージュが駆使された。カメラマン出身で撮影技術に長けたキューブリックは、SFX撮影スタッフと共に「フロントプロジェクション」や「スリットスキャン(スリット越しに被写体を、シャッターが開いた状態で撮影する技術)」といった新たな撮影方法を考案した。宇宙空間では大気が存在せず、遠くの物体も鮮明に見えることから、カメラのアイリスを極限まで絞り、それによって不足した光量を補うために1フレームに4秒以上の超低速度撮影が使用されている。作中、宇宙船のコンソール等の各所にワイヤーフレームによる3次元コンピュータグラフィックス風の映像が埋め込まれているが、それらは全て実物のコンピュータグラフィックスではなく、手作業などで描かれたものである(Sketchpadなど、まだ実物のコンピュータグラフィックスは研究室の時代であった)。キューブリックは飛行機恐怖症のため猿人達のシーンをアフリカでは撮影できず、撮影班をアフリカに送って大面積のスチル写真を撮影し、スタジオでフロント・プロジェクションを使った合成を行っている。スターゲートの映像の中には色彩が加工されたモニュメント・バレーの空撮映像も含まれており、アメリカで行われるプレミアのため、キューブリックはアメリカに向かう船の中で編集作業を行った。画像合成の簡略化を図ったため、どの宇宙船も宇宙に浮かぶ地球や月や木星を画面内で滅多に横切らない。また、本作に登場する地球の姿は実際より青白くなっているが、これは撮影当時、地球の姿を正確に知ることができなかったからである。本作で使用された宇宙船の模型は他作品への流用を防ぐためキューブリックの指示で図面も含めて廃棄処分されているが(『2010年』のディスカバリー号はフィルムを参考に一から製作されている)、アリエス1B型月シャトルのみ現存しており、アメリカ映画芸術アカデミーが所有している。映画版では、全篇にわたってクラシック音楽の名高い楽曲が数多く用いられている。それまで、未来的イメージの電子音楽などが用いられることが多かったSF映画で、。ジェルジ・リゲティには一切映画についての説明や承諾もないまま、彼の曲を4曲採用した。リゲティが印税を受け取ったのは、1990年頃になってからだという。なお、(1)メインタイトル、(2)「人類の夜明け」、(3)ラストと合計3回使われている『ツァラトゥストラはかく語りき』の演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のデッカ・レコード録音版だが、デッカ(1968年当時は日本国内ではロンドン・レーベル)が演奏者名を出さないことを許諾の条件としたので、映画のエンド・クレジットでは曲名しか表示されていない。終盤ボーマン船長が年齢を重ねていくシーンでは、BGMに『南極交響曲』を使用したバージョンもつくられた。「入場曲」および休憩時「間奏曲」の『アトモスフェール』、「退場曲」の『美しく青きドナウ』は、映像ソフトでは1989年発売の版LD-BOXまではカットが慣例化しており、休憩のクレジット自体も初期の映像ソフトではカットされていた。キューブリックは当初、自分の監督作品『スパルタカス』の音楽を手がけたアレックス・ノースに作曲を依頼し、前半部分まで完成したスコアの録音まで完了していた(この最中にノースは過労で倒れてしまった)。しかしそれ以降は一切の連絡もないままノースの音楽を没にし、リヒャルト・シュトラウスなどの音楽に差し替えてしまう。ノースがそのことを知ったのは、試写会の会場であった。ノースはこれに激怒し、訴訟寸前にまで至った。ノースの死後、友人のジェリー・ゴールドスミスは没になった彼の音楽を録音し、1993年10月12日にヴァレーズ・サラバンド・レコーズから『"Alex North's 2001" 』(VSD-5400)としてCD発売した。日本でも『2001年〜デストロイド・ヴァージョン〜』(1993年12月1日発売、サウンドトラック・リスナーズ・コミュニケーションズ(SLC)、SLCS-5021)のタイトルで発売されている。更に、1968年に録音されたアレックス・ノースのオリジナル・スコアのマスターテープが発掘され、2007年1月26日に より『"Music for 2001: A Space Odyssey (The Original Score by Alex North)" 』としてCD化され、3000セット限定で発売された。当初予定の1966年から1年4か月遅れ、アポロ11号が月面着陸を果たす前年の1968年に公開された。ワールドプレミアは1968年4月2日にワシントンD.C.ので行われた。アメリカでの一般公開日は1968年4月6日、イギリスでの公開は1968年5月15日だった。度々再公開されており、2014年11月イギリスでの再公開にあたってはアルフォンソ・キュアロン、クリストファー・ノーランによる賛辞が予告編に盛り込まれている。日本においては1968年4月11日に公開されている。更に、年末の各紙誌の高評価を受け、翌春、「凱旋興行」と銘打ってテアトル東京で全席自由席・入れ替え無しで再上映された。その後、初公開から10年後の1978年に再びロードショー上映され、折からのSFブームをフォローアップする形となった。作品の設定年である2001年にも「新世紀特別版」としてノーカット版で公開されている。このヴァージョンでは、本来35mmフィルムでアナモフィック・レンズを使用して再現されるスコープサイズのアスペクト比の1:2.35とせず、35㎜フィルムの上映で70mmのオリジナルと同一のアスペクト比1:2.20を再現している。公開当時、台詞や説明を極力省き、視覚表現で観客の意識に訴えるという作風は極めて斬新であった。映像のクオリティーや「人類の進化と地球外生命の関係」という哲学的なテーマを賞賛する声の一方、抽象的な内容や非常に難解な結末を批判する意見もあり、賛否両論の渦が巻き起こった。公開直後は興行成績が悪かったが、再公開を経て評価が高まり、現在では世界映画史に残る不朽の名作のひとつとして認識されている。日本の文部科学省が「特選」に指定している、唯一のSF映画としても知られている。初公開の年の暮れ、1968年12月、アポロ8号が史上初めて月の裏側を廻って帰還したが、その時撮影された月面入れ込みの地球の写真が本作のそれにそっくりで、改めて本作の特撮のクオリティが示された。またそのアポロ8号の船長の名がフランク・ボーマンで、本作の登場人物のふたり、フランク・プールとデヴィッド・ボーマンを合成したような名前であることが、偶然とはいえ話題になった。公開からかなり時間が経った後も、本作品は高く評価され続けている。1991年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。筒井康隆は「大愚作」と断じた後、星新一から「退屈だったなあ(シネラマの一部を切り抜いて、のべつCMを流しておけば)もっとおもしろくなっただろうなあ」と言われたとエッセイ『欠陥大百科』に記している。興行的にはヒット作とは言えなかったが、その年の暮れ、多くの新聞・雑誌の年間ベスト10で高評価された。映画史上のベスト・ランキング、オールタイム・ベストなどでは、必ずと言っていいほどランクインされている。以下は日本でのランキング本作は1968年のアカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞、また1969年のヒューゴー賞も受賞した。小説版が原作として先に書かれたものであると勘違いされることが多いが、小説は映画の公開の後に発表されている上、その小説にはアーサー・C・クラーク独自の解釈がかなり取り入れられていることからも、小説版と映画版は明確に区別する必要がある。映画と小説版では若干ストーリーが異なっており、例としてディスカバリー号の目的地は、小説版では土星だが、輪の特撮が困難ということで、映画版では木星となった。小説ではクラークの意向により、木星を利用したスイングバイという設定を用い、土星と木星両方にディスカバリー号を行かせている。HAL 9000の反乱の要因やラストの展開も、小説版は論理的に説明づけられているのに対し、映画版は謎めいた展開となっている。これは当初、映画冒頭に科学者らが人類の進化など作中の話題に関して語るインタビュー映像が予定され、また全編にわたってストーリーを解説するナレーションを入れる予定であったものが、過剰な説明が映画からマジックを奪うことを恐れたキューブリックが、インタビューもナレーションもすべて削除してしまったため、何の説明もない映像が映画全編にわたり続くことになったからである。ヒトザルとモノリスの遭遇は小説では300万年前という設定だが、映画では400万年前とされているなど、細かな点の相違は多い。小説ではディスカバリー号には放熱板(「放射翼」)、それもかなり大きなものが付いている設定になっているが映画のディスカバリー号には付いていない。ある解説によれば、宇宙なのに(空気を前提とした)翼なんて、と思われるのを恐れて、映画版では付けていないのだという。後にクラークが執筆した『2010年宇宙の旅』はパラレルワールドとされ、ストーリーの多くの部分は続編の形を取りながら、主な舞台は木星周辺となっており、そこだけは映画版と同一になっている。「宇宙の旅」シリーズは、更に『2061年宇宙の旅』『3001年終局への旅』と、計4作執筆されており、シリーズ作品全ての作中設定は前作までの多くの部分を踏襲してはいるが、基本的にはパラレルワールドであるとあとがきやまえがきで触れられている。なお、邦訳は『宇宙のオデッセイ2001』の訳題で、昭和43年10月15日初版発行(伊藤典夫:訳、ハヤカワ・ノヴェルズ)されたが、その後、ハヤカワ文庫に入った際は、映画と同じ『2001年宇宙の旅』の表題になった。
出典:wikipedia
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