『怪奇大作戦』(かいきだいさくせん)は、円谷プロダクションが制作し、TBS系で1968年(昭和43年)9月15日から1969年(昭和44年)3月9日まで毎週日曜日19:00 - 19:30に全26話が放送された、特撮テレビドラマである。本項目では原典である連続特撮テレビドラマに付いて記載する。本作を原作とした作品については、#リメイク作品を参照。現代社会に発生する謎の科学犯罪に挑戦する「SRI」(Science Research Institute、科学捜査研究所)のメンバーたちの苦闘と活躍を描く。毎回描かれる怪奇現象が、実は人間の手によって引き起こされた科学犯罪であり、これに立ち向かう正義の捜査チームという図式で構成されているのが特徴。同時に社会に疑問を投げかけるような重いテーマもある。怪獣や超人、超兵器が出現するわけではないが、未だに根強く多数の特撮ファンを引きつけている作品である。怪獣や超兵器が登場する派手な特撮ではなく、本編に溶け込んだ特撮(光学合成を駆使し、科学犯罪をリアルに表現する)が目標とされた。TBSから支給された制作費は、1クール13本につき6900万円(1話あたり530万円)。これは空想特撮シリーズ3部作とほぼ変わらない破格の予算であり、知名度の高いレギュラー出演者やゲストが集められた。こうして本編では、ほぼ毎回のように近未来的な科学技術による殺人事件が描かれ、陰惨でグロテスクな描写も少なくなかった。TBS側も少し前からの「妖怪ブーム」などで「人が溶ける」といったショッキングなシーンに視聴者の興味が集まる傾向があると見て、むしろそういった趣向を円谷プロ側に新機軸として積極的に提案している。平均視聴率は22.0%。当時としても十分ヒット番組といえる数字だったが、タケダアワーの合格ラインは非常に高く、第1クールの放映終了時期に「延長措置なし」の判断が下された。『戦え! マイティジャック』の12月終了に続き、番組の受注が完全に途絶えてしまった円谷プロは、1968年12月12日に大幅な人員整理を決行する。監修の円谷英二は、昭和20〜30年代にかけて『透明人間現わる』『透明人間』『美女と液体人間』『電送人間』『ガス人間第一号』など一連の変身人間による犯罪を描いた映画で特技監督を担当しており、円谷プロには得意とするミニチュアワーク以外にも、この種の特撮ノウハウの蓄積があった。初期はスタッフも方向性を掴みかねていたため、シナリオやプロットのみで撮影には至らなかったエピソードが複数存在する。プロデューサーの橋本洋二は自身の説明が観念的すぎたとしている一方、円谷プロダクションは当時『マイティジャック』に掛かりきりであったため、あまり打ち合わせもできなかったとも述べている。SRI(Science Research Institute 、エスアールアイ)とは、警察の捜査では解決不可能になった怪奇事件を、独自に開発した機械等を駆使して科学捜査を行う民間組織である。もっとも劇中では警察の依頼によって行動を起こすか警察との共同捜査が多いが、あくまでも民間という位置づけのために、警察と同等の権限は持たされていない。また、劇中には登場しなかったが、一般の研究員もいるという設定がある。この他、第22話では運転席に緊急用の脱出装置を搭載した車両(フォード・ファルコンフューチュラコンバーチブル)が登場、神経ガスの採集に使用された。また、地方への出張時は現地で用意されたと思われる車両を使用している。主な物は以下の通りである。これらの他、必要に応じて様々な特殊装備が随時投入される。牧・三沢・野村が携行する、特殊繊維で作られた防護服。防毒・耐熱・防弾・耐寒・防刃などを合わせ持つ特種繊維であり、様々な場面で優れた効果を発揮する。通常はコンパクトに折りたたまれて携帯ケースに収納されており、必要に応じて取り出す。斜め向きに付いているジッパーが特徴。内容の深化に反比例するかのように、第2クールに入ってからは使用の頻度が極端に低下した。本作の劇伴曲は玉木宏樹が作曲、山本直純が音楽監督としてクレジットされている。主題歌は作曲・編曲共に山本の名義だが、編曲は玉木が行った可能性が指摘されており、玉木は「主題歌の絡みは(中略)僕もアレンジを手伝ったんじゃなかったかな」と語っている。劇伴曲にはバスクラリネット、のこぎり(ミュージックソー)、ジューズ・ハープ、京琴といった特殊な楽器が用いられた。全話のメインタイトルと第2話以外のサブタイトルに使われた「OPENING (A)」はステレオで録音されているが、実際にはRチャンネルの音のみが使われた。本作の音楽テープは、『怪奇大作戦 ミュージックファイル』(1996年2月1日発売、バップ)が制作された時点で劇伴曲のものが5本(レギュラー使用分が3本、第3話と第5話のための追加分が1本ずつ)、主題歌・挿入歌関連のものが7本確認されているが、その総数は「今の所不明」とされており、未発見のテープが存在する可能性がある。また、現存が確認されている音楽テープのうち「R-1」と呼ばれるものは、事故により途中から音が消去されている。これらの事情により、本作の音楽の全容は明らかになっていない。玉木の記憶によると、指揮と独奏バイオリン:玉木宏樹、ジューズ・ハープ:山本直喜(山本直純の実弟)、京琴:山内喜美子、フルート:衛藤幸雄、アコーディオン:風間文彦といった有名演奏者が揃っていた。※当初、出演者の候補には石立鉄男、高橋元太郎、高橋幸治、田村正和が挙がっていた。※全てノンクレジット。主にテアトル・エコーの声優が担当。放送順では第2話となっている「人喰い蛾」は本来は第1話を想定して作られたが、初号試写の後、追加シーンの撮影・編集や合成のやり直し・BGMの一部差し替えなどが行われたために完成が遅れ、第2話として放送されることになった。プロデューサーの橋本洋二は樋口尚文の著書「テレビヒーローの創造」のなかで、ハッキリと自分がリテイクを決めたと語っている。その理由として、「現代社会の歪みの生み出した怪奇を描くドラマなのに、人間が蛾に溶かされる冒頭シーンの特撮がグロテスクな印象を与えないようにと考えたのか控えめで、テーマである怪奇を描き切れていなかった」という趣旨のことを語っている。また金城哲夫の脚本にあった息抜きのシーンも、ドラマのテーマを考えると余計であると考えたともいう。人間が溶けるシーンの特撮は全面的に撮り直しとなり、メンバーが事件の手がかりをもとめて蛾を採集して回るユーモラスなシーンもカットされた。第1話は金城哲夫が脚本を書き、円谷一が監督する『ウルトラマン』『ウルトラセブン』と続くパターンが崩れたことは金城にも大きな影響を与えることとなった。樋口の著作では、このできごとが、直後の金城の円谷プロ退社の要因のひとつにもなったことを示唆している。前述のとおり未放映バージョンは本編の一部シーンやBGMが異なるほか、エンディング映像も全く異なっている。また、1968年当時の出版物等でSRIの装備メカとして紹介されながら放映版では一度も使用されなかった「ケミカルメース」が、このフィルムで唯一登場する。1988年に読売テレビで放送された特番『なんたってウルトラマン』内で円谷作品の歴代主題歌映像が流された際、偶然このフィルムのエンディング映像が使用され、未放映バージョンの存在が公に知られることとなった。その後、LD「妖鬼幻想スペシャル」の特典映像として初ソフト化され、LD-BOX、DVD-BOXにも収録されている。第24話「狂鬼人間」は1969年2月23日での本放送後、1984年に岡山放送で再放送が行われたのを最後に、2016年現在まで一切再放送が行われていない。ビデオソフトとしても1984年のビデオテープ、1991年のLD、発売と同時に店頭から回収された1995年のLD-BOXに収録されたのみで、以降発売されたソフトには一切収録されていない。現在、「怪奇大作戦」の放映リストを掲載した出版物や映像ソフト等においては「第24話は欠番となっております」という旨の注意書きが記載されている。なお、牧史郎役の岸田森も本話に相当入れ込んで制作に臨んでおり、東京都港区瑞聖寺の境内にあった当時の彼の自宅が撮影に使用されている。最初の構想では三沢が主役であったが、勝呂誉のスケジュールの空きが半日しかないことが判明したため、台本は主役を牧に変更して1969年1月16日に印刷された。さらにシナリオでは牧の恋人を轢き殺した男の役は三沢で、絶体絶命の三沢を救うのが野村となっていたのが、勝呂の多忙により完成作品ではそれぞれ野村と制服警官に変更されている。本話の台本は、現在のところ決定稿(タイトルは「狂気人間」)しか確認されていない。深夜の操車場構内で、白いネグリジェを着た女が自分を捨てた元恋人をダガーナイフで刺し殺すという事件が発生する。逮捕された犯人は重度の精神異常と鑑定され刑法第39条第1項「心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セス」、つまり「心神喪失者は殺人を犯しても罰せられない」の規定(自分が何をしたか本人が理解していないので責任を問えない)により起訴されずに終わった事件をはじめ、同様かつ犯人はみな異常な早さで精神病院(当時における精神科病院の呼称)を退院するという不可解な事件が続発した。町田警部とSRIはそれらの殺人犯が何らかの方法で一時的に精神異常状態になっていたのではと考え、捜査を開始した。その後、退院した女が今度は恋人を奪った女性に再び殺人を犯して逮捕されたが、今度は鑑定の結果は精神異常ではなく、精神異常のふりをしていただけであった。女の供述から、初回は「狂わせ屋」こと美川冴子(演:姫ゆり子)の「脳波変調機」によって重度の精神異常となり、犯行を実行したことが判明する。「殺人歴のある精神異常者に夫と子供を殺害されたが、犯人は今回も無罪となった」という過去を持つ冴子は、心神喪失者が殺人を犯しても無罪になるような世の中に復讐することが、夫や子供への供養になると信じて、優秀な脳科学者であった夫の開発途上の脳波変調機を改造して「狂わせ屋」となっていたのだ。的矢所長の指揮の下、恋人役のさおりが轢き逃げ犯役の野村に殺された男として、牧が(途中で実弾を抜く)拳銃を持って恨んでいるという筋書きで、消息を絶った冴子を誘き出す囮捜査を行うが、SRIだと見抜いていた冴子に、「脳波変調機」にかけられながら、実弾を入れ直した拳銃を持たせられる。狂人と化した牧は往来で拳銃を乱射しながら野村を追い回し、危うく殺人犯になりかけるも駆けつけた警官に取り押さえられる。的矢とさおりに逃げ道を封じられた冴子は、追尾をかわして車に乗り込み、出力を最大にした「脳波変調機」を頭に装着して、遂に自身も精神異常者の一人として、隔離病棟の鉄格子窓にうなだれながら七つの子を口ずさむのだった。第24話の公式な欠番理由は明らかにされていないが、本話を扱った円谷プロ非監修の出版物では、「精神異常者の描写に問題があるため」、「差別用語が頻発するため」といった推測がなされている。この問題に関して、2004年に出版された『封印作品の謎』(安藤健二、太田出版)においても各所に取材が行われたが、欠番の経緯や理由についての有力な情報は殆ど得られなかった。ただし、1995年にLD-BOXが発売と同時に回収されるまでは特に欠番などではなく、各出版物の放送リストにおいても他のエピソードと同等の扱いを受けており、再放送時の放送見送りや音声カットについても放送局側の自主的な判断によるものだった。前述の通り「狂鬼人間」は過去にはビデオテープやLDソフトに収録されたことがあるが、生産終了から年数が経過しており現在では入手困難となっている。1995年には、バンダイビジュアルの子会社であるビームエンタテイメント(現:ハピネット・ピクチャーズ)から本話を含む全話収録のLD-BOX『怪奇大作戦パーフェクトコレクション』の発売告知が行われたが、発売日当日(正確には前日夜中)に発売元から販売店に販売中止・即時返送指示が出されたため、名目上は市場に出回らないまま廃盤となった。これを最後に、以降発売のビデオソフトには「狂鬼人間」は収録されていない。『怪奇大作戦』の次回予告フィルムは大部分の話数のものが紛失しているが、本話の予告フィルムは現存し、VHS『怪奇大作戦 実相寺昭雄監督作品集』、LD『怪奇大作戦 妖奇幻想スペシャル』、LD-BOX『怪奇大作戦パーフェクトコレクション』に映像特典として収録されている。1990年に勁文社から発売された、歴代の特撮番組の怪獣・怪人を収録した書籍『全怪獣怪人』の上巻には本話が写真付きで紹介されており、2002年に勁文社が倒産した後の翌2003年に英知出版から発売(販売はインフォレスト)された増補改訂版である『全怪獣怪人大事典』にも項目が残っている。メディアファクトリー刊『空想法律読本2』では法律考証の題材として『狂鬼人間』が紹介されている。書中では、劇中の容疑者らが一時的に完全な心神喪失状態になっていたと仮定した上で「『心神喪失状態となって犯行を行う』という目的の元、自ら脳波変調器を使用している」ことを重視し、「『原因において自由な行為』に当たり、刑法第39条は適用されず有罪となるだろう」と指摘している。また、冴子に関しても共同正犯にあたる可能性を指摘している。2006年1月から7月にかけて東京MXテレビの「円谷劇場」枠で『怪奇大作戦』の再放送が行われた。この際、5月中旬に発売された一部のテレビ情報誌において、6月27日の放送予定欄に『狂鬼人間』のサブタイトルが記された上、5月29日に更新された東京MXテレビ公式ウェブサイト内の『怪奇大作戦』6月放送予定を掲載した「今月の放送あらすじ」のページにも『狂鬼人間』のあらすじや画像が掲載された。しかし、翌日にはそれらの記述が削除され、6月27日当日には他番組が放送された。
出典:wikipedia
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