デュロン=プティの法則 (Dulong-Petit law) とは、固体元素の定積モル比熱 formula_1 が常温付近(デバイ温度より大きい領域)ではどれもほとんど等しく、 formula_2 ( = 5.96 cal/mol・K、 formula_3 は気体定数、 formula_4 , formula_5 はそれぞれアヴォガドロ定数とボルツマン定数)であるという法則。1819年にフランスの物理学者であり化学者でもあるピエール・ルイ・デュロンとアレクシ・テレーズ・プティ (Alexis Thérèse Petit) が独立に実験的に見出して発表した。その後1871年にルートヴィッヒ・ボルツマンがエネルギー等配分の法則より理論的な説明を与えた。固体中での原子の格子振動を、それぞれ独立な調和振動子として考える。エネルギー等配分の法則より、自由度1あたりのエネルギーの期待値 formula_6 は、と表される。ここで formula_5 はボルツマン定数、 formula_9 は絶対温度である。調和振動子は自由度3の運動エネルギーと自由度3のポテンシャルエネルギーをもつ。これは、固体中の原子が formula_10 の3つの軸方向に振動しており、その振動がそれぞれの軸方向に運動エネルギーとポテンシャルエネルギーをもつことに対応している。よって全自由度は6となり、 formula_4 個の調和振動子(=1モルの原子)の全エネルギーはである。更にその定積比熱は定義よりとなり、求めることができた。デュロン=プティの法則は、デバイ模型からも導くことができる。ここでは、デバイ模型の格子比熱としてデバイの比熱式が既に求まっているとして導出する。デバイの比熱式は1モルあたりである。ここで formula_15 はデバイ温度であり、formula_16 である。formula_17 では積分の上限が小さくなるため、被積分関数の formula_18 を formula_19 と近似することができ、となり、求めることができた。エネルギー等配分の法則を用いた求め方も、デバイ近似による求め方も、固体中の格子振動による比熱(格子比熱)を取り扱っている。しかし本来固体の比熱には自由電子による電子比熱の寄与もあるはずで、古典論によるとこの電子比熱の値は formula_21 という無視できない大きさを持つはずである。このため、なぜ金属においてもデュロン=プティの法則が成り立つのかが当初疑問に思われていた。その後、自由電子を量子統計力学で取り扱うと古典的に取り扱った場合の1/60~1/100程度の電子比熱しか生じないことが分かり、この疑問は解決されることとなった。デュロン=プティの法則は非常に単純な法則であるが、高温における比較的単純な結晶構造の固体の比熱についてはよい一致を示す。実際、室温での固体金属元素のモル比熱は formula_22 ~ formula_23 の範囲に収まる(ベリリウムは例外的に formula_24 である)。しかし低温の領域においては、量子力学的性質が現れてくるためデュロン=プティの法則ではその比熱を説明することができない。このような低温の場合については、フォノンの考えを用いたデバイ模型が良い近似となる。更に軽い非金属元素についても、標準状態では量子的効果が表れているためデュロン=プティの法則には従わない。例としてはホウ素や、炭素を含む分子固体の大半が挙げられる。これらの物質においては、(分子1モルあたりの比熱は formula_25 よりは大きくなるものの、)固体中の原子1モルあたりの比熱は formula_25 よりも小さくなる。例を挙げると、氷の融点における比熱は分子1モルあたり約 formula_27 であるが、これは原子1モルあたりではformula_28にしかならない。原子1モルあたりの比熱が formula_25 よりも低くなるのは、低温の軽い原子では本来とり得る振動モードをとることができなくなるためである。この現象は液体よりも固体において多く見られる。例えば液体の水の比熱は原子1モルあたりformula_25に近く、デュロン=プティの法則に従っている。高温での非常に多原子の気体の比熱の理論的な最大値は、デュロン=プティの法則の原子1モルあたり formula_25 の値に近付く。このように多原子の気体でも高温において固体のような比熱を持つのは、気体の離れた分子間にはポテンシャルエネルギーがなくなり、それによる比熱への(小さな)貢献がなくなるためである。古い単位のcal/mol・Kで表した定積モル比熱を下表に示す。モル比熱の周期性(単位 cal/mol℃)
出典:wikipedia
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