根室本線(ねむろほんせん)は、北海道滝川市の滝川駅から帯広市および釧路市を経て根室市の根室駅を結ぶ北海道旅客鉄道(JR北海道)の鉄道路線(幹線)である。このうち、釧路駅 - 根室駅間には「花咲線」(はなさきせん)の愛称が付けられている。全線単線の非電化路線で、JRの幹線路線としては日本最東端となる。さらに支線部を含めない鉄道路線としてはJR北海道最長路線でもある(支線部を含めた鉄道路線では函館本線がJR北海道最長)。新得駅 - 帯広駅 - 釧路駅間は、石勝線とともに札幌市と帯広市・釧路市を結ぶ幹線ルートの一部となっている。一方、滝川駅 - 富良野駅 - 新得駅間と釧路駅 - 根室駅間は地域輸送のみのローカル線となっている。区間ごとの輸送密度は以下の通り。新得駅 - 帯広駅間については、実質的に一体化した運用を行っている石勝線(南千歳駅 - 新得駅間)と総合して計算したものが公表されている。区間ごとの収支(営業収益、営業費用、営業損益)と営業係数は以下の通り。いずれも管理費を含めた金額である。▲はマイナスを意味する。なお、新得駅 - 帯広駅間については、実質的に一体化した運用を行っている石勝線(南千歳駅 - 新得駅間)と総合して計算したデータが公表されている。1896年(明治29年)5月14日に公布された北海道鉄道敷設法により、北海道内における1,000 哩(約1,600km)の鉄道整備が決まり、北海道庁長官の北垣国道はルート選定のための踏査を帝国大学工科大学教授の田辺朔郎に依頼。田辺は帝国大学を後にし、北海道庁鉄道敷設部長として踏査にあたった。十勝ルートの踏査にあたっては、樹木が繁茂し見通しのきかない夏期を避け、初春の堅雪の季節に2名の鉄道技師と数名の荷物運搬人らとともに旭川を出発。ヒグマやオオカミが跋扈する原生林や、蚊やアブや蜂が飛び交う湿地など未開の地を歩き、地形、地質、経済効果、資材の入手方法など細部にわたって釧路までの間を20日間かけ踏査した。当初はサホロ岳の北方が最適かと見当をつけていたが、踏査の結果、現在の国道38号線にほぼ沿う旧狩勝トンネルルートを最適とし、田辺はここに「狩勝峠」と名付けた。後に田辺が完成した鉄路で釧路を訪れた際、「12時間もの間さぞご退屈だったでしょう」との労いの声に「私が以前ここへ来たときは20日かかりました。昔日のことを思えばわずか12時間でこの地を通過するのはなんだかもったいないように思います」と応えたという。ルート決定後、旭川と釧路を結ぶ幹線鉄道として北海道官設鉄道によって旭川、釧路双方から着工された。旭川側は1899年(明治32年)9月1日に旭川 - 美瑛間が、釧路側は1901年(明治34年)7月20日に釧路 - 白糠間が開業したのを皮切りに、1907年(明治40年)9月8日には狩勝トンネルの完成をもって、狩勝峠を含む落合 - 帯広間が開業。旭川 - 釧路間が全通し、釧路線(くしろせん)となった。1913年(大正2年)11月10日に、滝川 - 下富良野(現在の富良野)間の新線が開業し、起点を旭川から滝川に変更。線路名称は釧路本線(くしろほんせん)となり、旭川 - 富良野間は富良野線(ふらのせん)として分離した。以後は、釧路以東への延伸が行われ、1917年(大正6年)12月1日に厚岸、1919年(大正8年)11月25日に厚床、1920年(大正9年)11月10日に西和田、1921年(大正10年)8月5日に根室まで延伸し全通、同時に線路名称を根室本線に改めた。以来、道央と道東を結ぶ主要幹線としての地位を保っているが、1966年(昭和41年)10月1日に落合 - 新得間の狩勝峠の区間を新線に切り替え、1981年(昭和56年)10月1日には短絡ルートとなる石勝線の開業により、道央と十勝釧路を結ぶほとんどの列車運転系統が従来の滝川経由から石勝線経由に変更され、大幅な到達時間の短縮が図られた。この変更により、根室本線においては新狩勝トンネル以北を通過する優等列車はほとんどなくなった。さらに1994年(平成6年)1月20日には、釧路市と帯広市の出資による「道東高速鉄道開発」(本社 札幌市、現在の北海道高速鉄道開発の前身)が設立され、石勝線とともに根室本線の新狩勝トンネル - 釧路間の高速化改良事業が実施された。この事業は1997年(平成9年)3月22日に完成し、札幌駅 - 帯広駅・釧路駅間の大幅な所要時間短縮を実現した。上落合信号場 - 新得駅 - 帯広駅 - 釧路駅間は、石勝線と合わせて道東への主要幹線を形成しており、2014年(平成26年)3月15日現在、札幌駅発着の特急列車が数多く運転されている。札幌駅 - 釧路駅間の特急「スーパーおおぞら」が6往復、札幌駅 - 帯広駅間の「スーパーとかち」が5往復運転されている。滝川駅 - 富良野駅間については、札幌駅との間を直通で結ぶリゾート特急(「フラノラベンダーエクスプレス」など)が不定期で運行される。石勝線が全通するまでは、函館駅・札幌駅 - 帯広駅・釧路駅間の特急・急行列車も滝川駅・富良野駅経由で運転していた。快速を含むすべての普通列車がワンマン運転となっている。帯広駅まで運行される快速「狩勝」2往復とそれに接続する快速以外は、各駅に停車する普通列車のみの運転で、1 - 3時間に1本程度運行されている。4時間ほど運行のない時間帯がある。1往復は落合駅で折り返すため、新得駅発着の部分は4時間45分 - 5時間20分ほど間隔が開く。この区間では富良野線直通列車を除くと滝川駅が起点になっており、新得・帯広方面に運行される列車のほか、滝川駅 - 芦別駅・富良野駅・落合駅間の区間列車がある。22時台(富良野発新得行きは21時台)まで列車が運行されている。沿線からは大雪山連峰や十勝岳が望め、無人地帯を貫く石勝線と違って穏やかな丘陵地帯と農村が広がる。また空知川の金山ダムや滝里ダム建設により一部の区間が滝里トンネル・空知トンネル・鹿越鉄橋経由の新線に付け替えられている。上落合信号場で石勝線と結び、札幌駅 - 釧路駅間の幹線ルートを形成する区間である。高速化改良が実施されており、特急列車が最高速度130 km/hで駆け抜ける。ただし、広内信号場 - 西新得信号場間は、山脈から吹き下ろす風の通り道となっており、1994年の特急おおぞら脱線事故以前もたびたび脱線や転覆事故が起きてきた。対策として、防風柵を設置しているほか、「早め規制区間」とし、風速20m以上で45km/hに減速、25m以上で運転を中止する措置をとっている。池田駅を過ぎると厚内川沿いの蛇行した区間と、太平洋岸の丘陵や湿地、河口を避けた区間は、距離は短いものの当線中最も線形が悪く、これを克服するためにキハ283系の仕様が詰められた。カーブ区間はすべてPC枕木化されているものの、他の一部区間では枕木に木材を使用した軌道も残っており、最高速度130 km/hで走行できる区間は少ない。また、この区間ではエゾシカの線路侵入が多い(詳細は後述)。上記2区間の地域輸送は、普通・快速列車が新得駅 - 帯広駅間・滝川駅 - 帯広駅間・帯広駅 - 釧路駅間に運行されており、どちらの方向も朝夕の一部の列車を除き、帯広駅折り返しとなっている。車両は通しで運転されるが、帯広駅での20 - 30分程度の停車の後、列車番号が変わる列車もある。帯広駅・釧路駅周辺は1 - 2時間に1本程度の運転頻度で、帯広圏では芽室駅・池田駅・浦幌駅発着、釧路圏では厚内駅・音別駅・白糠駅・大楽毛駅発着の区間列車もある。滝川駅 - 釧路駅間の直通列車も下りに1日1本あり、2016年(平成28年)3月26日改正時点で、所要時間は8時間21分を要する。この下り普通列車2427Dは、普通列車としては日本最長の308.4kmを走行する(後節も参照)。この区間を運転する上り列車として、釧路駅の上り始発列車2522Dが滝川駅から3430D快速「狩勝」となり滝川駅まで運転されていたが、2016年(平成28年)3月26日の改正で新得行きに短縮された。2001年(平成13年)6月30日までは5時台に始発があった。過去には帯広駅 - 池田駅間にふるさと銀河線乗入れ列車が設定され、この区間で併結運転があったが、2006年(平成18年)4月21日のふるさと銀河線の廃止によって消滅した。羽帯駅・大成駅・稲士別駅・古瀬駅は普通列車でもかなりの数が通過するが、大成駅については通過列車がある駅の中では停車本数が多い。普通2427D列車は、2016年(平成28年)3月26日現在、滝川駅9時40分発釧路駅18時01分着で運行時間(8時間21分)が日本一長い普通列車である。運行距離は 308.4km である。かつては岡山駅から下関駅・新山口駅までを走っていた山陽本線の多数の普通列車の方が長い距離を走っていたが、ダイヤ改正の度にこれらの列車の運行距離が短縮され、2015年3月のダイヤ改正の時点で当列車より長い距離を走る普通列車は全滅し、運行距離最長普通列車ともなった。2010年(平成22年)4月から、この列車(当時の列車番号は2429D)で滝川駅 - 釧路駅間を1日で乗り通した人に釧路駅有人改札口で完全乗車証明書を発行している。2012年(平成24年)10月27日のダイヤ改正でこれまで特急を待避する都合で通過していた羽帯駅・稲士別駅にも停車するようになり、滝川駅 - 釧路駅間のすべての駅に停車することになった。2016年(平成28年)3月26日のダイヤ改正で大幅な快速・普通列車の減便が行われる影響で、この滝川発釧路行き普通列車の列車番号が2429Dから2427Dに変更され、同時に山陽本線に岡山駅から下関駅までの普通列車が復活したため、運行距離最長普通列車の称号については返上した。毎月第2・第4土曜日は国鉄色といわれる朱色5号の車両で運転されるが、変更されることもあるので、運転日はJR北海道のホームページに掲載されている。「花咲線」の愛称を名乗るこの区間は、釧路駅以西とは運転系統が完全に分離されている。快速2往復(「ノサップ」・「はなさき」)のほかは普通列車のみの運転で、釧路駅 - 根室駅間直通列車のほか、釧路駅 - 厚岸駅間と厚床駅 - 根室駅間(ただし後者は登校日のみ)の区間列車があり、2 - 3時間に1本程度が運行されている。普通列車の中には、厚床駅 - 根室駅間の一部の駅を通過するものもある。1991年(平成3年)7月1日に発足した「花咲線運輸営業所」がこの区間の管理運営を行っている。釧路駅・根室駅の最終は22時過ぎで、日付変更後に終着駅に到着する。昔は釧路発21時台・根室発20時台であったが、2007年(平成19年)10月1日に根室発も21時台となった。そして2014年(平成26年)8月30日に、特急の時刻が見直された影響で、現行の時刻となった。夏の一時期は夜行列車「まりも」が根室駅まで延長運転されることがあったが、札幌駅 - 根室駅間を通して乗る旅客が減少しているため、2006年(平成18年)以降は延長運転されないことになった。ほとんどの列車が釧路駅で札幌からの特急列車と接続しているが、朝・夜の1往復は特急とは接続しない(かつては特急「まりも」と接続していた)。この区間は釧路駅以西と比べてもエゾシカの線路侵入が著しく多い(後述)。貨物列車は、滝川駅 - 富良野駅間と上落合信号場 - 帯広貨物駅 - 釧路貨物駅間で運転されている。また、2016年(平成28年)8月23日より台風9号および台風10号の被災により、道東地区の貨物列車の代行として、トラック輸送を開始した。同年9月17日には道東地区の馬鈴薯輸送の拡大のため、苫小牧貨物駅 - 道東地区(帯広貨物駅・士幌地区)間の代行トラック輸送も開始。エゾシカは本州のニホンジカと同種だが、ニホンジカより大きく(ベルクマンの法則)、体重200kgを超えるものもおり、列車と衝突した場合、看過できない問題となる。JR北海道全体において、エゾシカとの衝突や、衝突に至らないまでも急制動を強いられるなどにより報告される運行支障件数は、近年著しく増加を続けている。その原因は禁猟などによるエゾシカの個体数激増にあると見られている。1990年代前期に年間200 - 300件程度だったものが、2004年(平成16年)度に年間1,000件を超え、2007年(平成19年)度は1,474件にのぼっている。衝突時の衝撃としては300kgを超えるヒグマの方が大きいものの、ヒグマは臆病な性格のため線路周辺に現れることはほとんどなく、列車衝突事故の件数はエゾシカにくらべ極めて少ない。根室本線は、北海道の中でもエゾシカの線路侵入が目立って多い。2007年(平成19年)度の全道1,474件中、752件が釧路支社管内で、そのうち463件は落合以東の根室本線で占めている。すべて気動車で運転されている。国鉄時代はキハ22形気動車も全線で運用されていた。2006年(平成18年)4月21日にふるさと銀河線が廃止されるまでは、ふるさと銀河線の気動車(CR70形またはCR75形)も池田 - 帯広間に2往復乗り入れていた。滝川 - 東釧路間において駅ナンバリングが設定されているが、駅ナンバリング順ではなく、滝川駅から下り方向に記述。駅ナンバリングの詳細については「北海道旅客鉄道の駅ナンバリング」を参照。所在地の名称は廃止時点のもの。全駅北海道に所在。廃止区間上にあるものは除く。括弧内は滝川駅からの営業キロ。
出典:wikipedia
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