ホームドア又はスクリーンドアとは、プラットホームの線路に面する部分に設置される、可動式の開口部を持った仕切りである。ホームからの転落や列車との接触事故防止などを目的とした安全対策の一つである。なお、「ホームドア」は和製英語であり、英語では または と呼ばれる。ホームドアは人・荷物と列車の接触による人身事故を防ぐことができ、安全に列車を運行することができる。また高さが天井まである場合、ホームにおける空調を効率的に行えるほか、列車風や騒音を遮りホームの環境を改善することができる。また撮り鉄など無謀な行為をする鉄道ファンを排除できるという利点もある。しかし、ホームドアの位置と列車のドアの位置を正確に合わせなければ乗降ができないので、すべての乗り入れ車両のすべてのドア配置(数・大きさなど)を統一し、自動列車運転装置 (ATO) や定位置停止装置 (TASC) などの定位置停止装置を設置して、停車位置制御を行い停車位置の誤差を小さくする必要がある。一般的にホームドアの幅は、車両のドアより1mほど広い、これは車両側の停止精度のズレを考慮してのことであり、また、ホームドアで人や物が挟まれた場合には、それをセンサーで検知して、ドアを開かせるシステムが備えられており、乗降の安全を確保している。ドアは列車の到着に合わせ、係員の操作や車両のドアに連動して自動で開閉する。手順としては、東京地下鉄南北線9000系の場合、列車が停止位置に停止した時にATOの定位置停止地上子(P3地上子とも呼ばれている)から信号を発信して、車両側はそれを車上子を経由して受信したのち、停止位置に停車したことを確認できたら運転席のホームドア表示灯が点灯する。ドアが開く際には、車両側から開指令の信号が車上子から地上子を介してホームドア側に送信され、ホームドアから先に開き、その後、ホームドア側から返信の信号が地上子と車上子を介して車両側に送信され、車両側のドアが開き始める。ドアが閉まる際には、車両側から閉指令の信号が車上子と地上子を介してホームドア側に送信され、車両側のドアが先に閉まり始めてからその後にホームドアが閉まり始める。ホームドアが全閉になった時にホームドア側から返信の信号が地上子と車上子を介して車両側に送信され、ホームドア表示灯を消灯させる仕組みになっており、これにより乗客が車両とホームドアの間に閉じ込められないようにしている。JR西日本や東武鉄道など、全体の駅数に比べてホームドア設置数が極端に少ない事業者(路線)は、TASCやATOを車両に設置するよりも運転士の技量で停車位置を合わせる方が遥かにコストがかからないため、これらの補助装置無しで使用する場合も多く、その場合、運転士の技量、体調、天候などの環境条件によって停止位置がずれることがあるので可動部の幅がTASCやATOを採用している路線よりもやや広めに設けていることが多い。この時乗務員はホームドア側と車両ドア側両方をそれぞれ別々に操作して開閉することになる。先述の通りホームドアと車両側が連動している場合は開閉の優先順位があるが、連動していないこの場合は開閉の順序を乗務員が決めることができ(無論ほとんどの事業者では社内規定により開け閉めの順序が決まっているが)、例として北新地駅などでは、ドアを閉める際もホームドア側を先に閉める方式を採っている。近年は、地下鉄などの既存路線でワンマン運転を導入する際などにも設置されるようになっている。これは、ATO がワンマン化による乗務員の業務増や安全監視の低下を代替でき、導入費用を負担すれば長期的な人件費削減が期待できるためである。なお、東京地下鉄丸ノ内線の中野富士見町駅など一部の駅において、ホームドアと連動してホーム側から可動ステップをせり出し、車両とホームとの隙間を減らす試みも行われている(この時、運転席のATCの車内信号は「01」(速度ゼロ)を表示して発車できない状態にする)これは世界初の試みとされる。ただし、可動ステップをせり出す構造自体は1940年代からニューヨーク市地下鉄で実施されている(参考 : Gap filler)。地下駅で後付けの場合、ホームドア本体は、日中帯に車庫で営業用の車両に積み込み、終電後にその車両で設置駅まで運ぶ方法を取っている。一方、ホームドアは装置自体や車両限界・安全対策の関係からある程度の幅が必要であるため、極端にホーム幅の狭い部分がある駅には設置することが構造上不可能である。従来のホームドアでは車両側のドア位置を統一する必要があったが、東京大学では扉の位置や数が異なる車両に対応する可変式ホーム柵の開発がなされており、試作機まで登場している。2011年11月16日には、三菱重工業子会社の三菱重工交通機器エンジニアリングは透明タイプで扉数の異なる車両に対応した透過型マルチドア対応プラットホームドアシステムを開発し、同日から運転を開始すると発表した。このホームドアは透明なため視認性が向上し、複数のタイプのドアを組み合わせることによって2ドア車・3ドア車・4ドア車のいずれにも対応することができる。その他には、東京大学生産技術研究所と神戸製鋼所とが共同開発した「戸袋移動型ホーム柵 どこでも柵」が、3ドア車又は4ドア車が運行される、西武新宿線の新所沢駅下り1番線ホーム後端部に1両分を設置して2013年8月31日から6か月間の実地試験をしていた。これは、ホーム端に設置された2本のレールの上に、個別移動する長さ1.4mの「戸袋」が設置されており、そこに長さ1.1mの「扉」が「戸袋」の両側に収納されている。列車情報装置の車種データを活用して前駅からの車種情報を元に、「戸袋」の移動と「扉」の出入りを開始してホームドアの配列を行い、列車到着後は線路脇のレーザーによる位置検知センサーにより停止位置を確認し、正位置の場合は扉を開き、オーバーランなどで位置が異なる場合は、ホームドアの再配列を行い、その後に扉が開く。ただし、ホームドアの開閉は、今の所は車掌が停止位置を確認した後に、ホームドア側に設置されたボタンにより手動で開閉している。また、今までのホームドアとは違い、設置の際に必要だったATOやTASCなどの定位置停止装置が不要となり、ホームドア設置に掛かるコストの低減が可能となる。JR西日本も同様のホームドアを三菱電機とともに開発していたが、計画の変更により試験設置には至らず、この開発も中止し、その後は自社独自でロープ昇降式のホームドアも開発している。ロープ昇降式ドアは、ホームに柱を10m間隔に設置して、その間に何本かのワイヤロープを1.36mの高さまで張り、列車が接近すると柵から離れるようアナウンスが流れ、列車が停車直前になると電子音が鳴り、3.5秒でそれが上昇する「昇降スクリーン式」を日本信号が開発して、4ドアと6ドアが混在する東急田園都市線つきみ野駅に設置していた。また、ホームに柱を列車の扉の付近に設置して、その間に3つの遮断棒を30cm間隔で取付け、列車が到着すると間隔を詰めながら遮断棒がせり上がる「昇降バー式」を高見沢サイバネティックスが開発して、11000系とそれ以外の形式で乗務員室直後の扉の位置が違う相鉄いずみ野線弥生台駅に設置して試験を行い、データを採取する。ただし、これらの新型ホームドアにはフレキシブル性を重視した半面で昇降式はホーム上の密閉度が下がることにより転落防止効果に、可変式はホーム上に可動部分が出現することに伴い利用者の接触危険度が高まることに対してそれぞれ疑問を唱える声も多く、とくに視覚障がい者の支援団体などからは導入に反対する意見も出されており、現時点ではまだ正式採用の例はない。世界初のホームドアは1961年に完成したロシア(当時のソビエト連邦)のサンクトペテルブルク地下鉄(当時のレニングラード地下鉄)2号線のとされる。日本の鉄道で初めてホームドア(可動式ホーム柵)が採用されたのは東海道新幹線熱海駅である。同駅は開業当初から通過列車があったものの、土地の問題で待避線が設置できなかったため、列車の通過時は列車風で危険な状態にあった。このため、同駅は列車の到着・発車時以外はホームを締め切りにする措置を採っていたものの、運転本数や利用客の増加によりそれも困難になり、可動式ホーム柵が導入される運びとなった。後に設置された山陽新幹線新神戸駅も同様の経緯をたどっている。新幹線以外では新交通システムの神戸新交通ポートアイランド線が初めての導入路線であり、日本の鉄道で初めてフルスクリーン型ホームドアが採用された。無人運転を採用している新交通システムは、乗客の安全を確保するためにすべての路線で開業時からフルスクリーン型ホームドアを導入している。新幹線以外の普通鉄道で初めて導入されたのは営団地下鉄南北線(現:東京メトロ南北線)であり、フルスクリーン型ホームドアが採用された。2000年(平成12年)以降は既存路線にもホームドアを設置する動きが見られているが、車体長、ドア数、ドア位置、ドア開口有効幅が異なる車両が同一ホームに停車する駅では導入できないことが普及する上で大きな障壁となっている。2013年(平成25年)に、この課題を解決するために戸袋移動型ホーム柵や昇降式ホーム柵が開発され、関東地方の大手私鉄3駅で実証実験が行われた。天井までを完全にホームを被うことができるタイプであり、狭義のホームドアはこのタイプを指す。フルスクリーンタイプをさらに分けて完全に天井まで覆っている密閉式と、天井との隙間が少し空いている半密閉式がある。ホームを完全に密閉することにより、空調効果の効率化・列車風対策・線路への突き落とし事件や飛び込み自殺に対する抑止効果は大きい。また構造上から撮り鉄など無謀な鉄道ファンを排除する効果も大きい。しかし導入にはこれらの種類の中で最も高額である上、既存路線での建設は旅客上屋や躯体強度の問題から困難を要する。そのため日本の各鉄道事業者はこのタイプの導入には極めて消極的であり、国内で密閉式を採用しているのは2015年現在、名鉄空港線の中部国際空港駅(1番線)と京王線の布田駅のみである。このタイプが最初に導入されたのは前述のとおり、サンクトペテルブルク地下鉄2号線のであり、ホームドアとしても世界初である。日本では新交通システムで導入されるケースにほぼ限られる。通常の鉄道の例では1990年代に新規開業した地下鉄である東京メトロ南北線と京都市営地下鉄東西線はこのタイプが採用されたが、1998年に開通した多摩都市モノレール以降では、より安価な可動式ホーム柵に取って代わられ、2000年代以降に新規開業した路線では採用実績がない。一方、韓国では既存路線でもこのタイプを導入する場合が多く、またほとんどは密閉式となっている。その他の国でも、新規路線にはこのタイプを導入することが多い。応用としては、バスターミナルでの排気ガス対策としても採用されている。2015年現在、日本の鉄道でフルスクリーンタイプのホームドアを稼働している駅は下表の14路線、143駅である。このうち8路線、102駅が新交通システムの駅である。詳細は#設置路線を参照のこと。高さが腰高以下のホームドアである。フルスクリーンタイプよりは安く導入できることから、建設費を削減したい新規路線や元々ホームドアを設置していなかった既存路線へのワンマン運転化や安全対策により導入される場合も多い。ホームからの転落防止・車両との接触防止には一定の効果があるものの、ホームドアを乗り越えたり手荷物が落下する危険性があるため、飛び込み自殺や線路への突き落とし・手荷物との接触に対する抑止効果は完全ではないが、ホーム柵を越えるのにそれなりの身体能力や道具が必要なので衝動的な自殺や突き落としの防止・酔客の転落などには高い効果が見込まれる。世界の大半の国ではガラスを多く使用した可動式ホーム柵が多く導入されており、日本のようにガラスの使用部分が少ない・もしくは全くない可動式ホーム柵は世界的に見て少数である。また、諸外国のものに比べ、日本の可動式ホーム柵は高さが若干低めとなっている。バンコク・スカイトレインの一部の駅で設置されている可動式ホーム柵の支柱部分にはデジタルサイネージが設置されており、動画による広告が表示されている。日本で可動式ホーム柵を本格的に採用したのは1998年に開業した多摩都市モノレールである(それまでは新幹線の新横浜駅・熱海駅・新神戸駅程度しか採用されていなかった)。ロープやバーが昇降するホームドア。ホームドアとしては最も安く導入でき、ドアの位置や車両の長さの異なる車両にも柔軟に対応する。また、メンテナンスの費用も安いので、乗降の少ない駅に向いている。しかしロープをステップにして飛び越えてしまうことが可能なため、事故の抑止効果は他の方式に比べると高くない。最初に導入されたのは大韓民国で、2007年に光州都市鉄道1号線の鹿洞駅に設置されたが、すでに稼働を停止し、2016年にフルスクリーンタイプに置き換えられている。現在は2013年に設置された大邱都市鉄道2号線陽駅のものが韓国で唯一稼働している。日本では2012年11月、JR西日本がこの方式のホームドアの設置を検討していることを発表した。また、国土交通省により2013年7月頃から同様のロープ式ホームドアを東京急行電鉄田園都市線つきみ野駅に設置し、現地試験を実施することを同年3月5日に発表し、10月11日から試験運用を開始した。なお、この試験は2014年9月7日をもって終了しロープ柵も撤去された。その後東急では田園都市線には通常方式のホームドアを主として設置することが発表されている。引き続き昇降式ホーム柵を検討しているJR西日本では、2013年10月24日にワイヤーの両端にあるポスト自体も伸縮する昇降式ホーム柵の試験機を公開し、12月5日からJRゆめ咲線桜島駅で試験運用を開始した(同駅では2014年3月までで試験は終了したため既に撤去済み)。前述の桜島駅での試験運用の結果を踏まえた上で、2014年12月より六甲道駅3番ホームにて試験運用が行われている。ポストそのものが伸縮するホームドアは世界初となる。JR西日本では六甲道駅の設置を継続するとともに高槻駅の改良工事にあわせて2016年3月26日に導入されている。台湾では、日本の在来線と同じように、同じ線路をドアの位置や車両の長さの異なる通勤電車と優等列車が走っているため(通勤電車は3ドア、対号列車は2ドア)、どの車両にも柔軟に対応できる昇降式ホーム柵が検討されている。ホームドアが設置されている路線の例を以下に挙げる。日本以外の事例についてはに詳しい。ATOによる無人運転を行う新交通システムでは開業当初から設置されている。戦前から島秀雄などが設置を主張していた。2000年の交通バリアフリー法施行により、新設の鉄道路線に設置が原則義務付けられた。既存の路線については努力義務とされたが、2001年に起きたJR山手線新大久保駅での転落事故や、2011年1月の山手線目白駅で起きた視覚障害者の転落事故によって、多方面からホームドア設置推進を求める声が上がり、国土交通省が一定数以上の利用者(乗降客)の駅に対してホームドア設置を求める方針の検討を開始した。2011年2月8日の国土交通省の発表によると、14事業者285駅に新たにホームドアが設置される予定で、既設の駅との合計は783駅になるが、これはバリアフリー新法が設置を求める約2800駅の3割弱である。国は1日10万人以上が利用する駅で優先的に整備することが望ましいとしている。2012年9月現在でも設置駅は536駅で、国土交通省が設置を求める235駅の中では34駅に留まっている。これにはホームの強度が足りず補強や建て替えが必要となるケース・中長距離路線を中心に列車のドアの位置が異なるケース・他社との直通運転を実施している場合で乗り入れる全ての事業者間にて車両の規格を合わせる必要が生じるケース・極小ホームで設置スペース不足など、クリアすべき課題が多数残っていることが背景にある。またホームドア設置に伴い規格に合わなくなることから、耐用年数を残していながら他線区への転属やさらには廃車に追い込まれた車両も出てきている。また、ホームドア設置に関しては国や地方自治体などが補助金を交付する場合がある。近年のホームドア設置数の推移は下表のとおりである。ただし、同一事業者の複数路線が連絡する駅は、最初に導入された路線の駅のみカウントする。新幹線の駅では、原則として通過線を設け、列車がホームに面する線路を高速で通過しないようにしている。しかし、高速で列車が通過する新幹線の駅で通過線がない場合、主本線にホームが面する駅では必ずホームドアが設置されている。この場合、列車と乗客の距離を確保して風圧による事故を防止するため、ホーム端部から数mほど内側に設置される。ホームドアがない場合、ホームに面した線路を通過する列車は安全のため減速する(例 : 上野、大宮など)。品川駅ではホームドアの開口幅を大きくとり、車両ごとにドアの位置が異なっても対応できる設計としている。このため、新幹線は停車位置を高度に制御する必要がなく、ATOやTASCを設置する必要がない。なお、ホームドアの開閉操作は駅員が列車の到着前・発車後に実施し、列車側から行うことはできない。なお、上越新幹線では新潟駅とガーラ湯沢駅は通過線はないが始発・終着駅で全列車が停車するため、また、この2駅を除く上越新幹線の全ての駅には通過線があるため、設置されていない。JRの在来線では、2010年6月26日にJR東日本山手線恵比寿駅で初めて運用が始まった。以下の設置事例と設置計画がある。日本の地下鉄では、2000年代以降に設置が進んでいる。多くの路線で可動式ホーム柵タイプのホームドアが全駅に設置され、ワンマン運転、ATOまたはTASCも同時に導入されている(例外は備考の欄に記述)。モノレールや新交通システムでは、安全上の理由からその多くが全駅にホームドアを設置している。(各路線とも全駅)ほとんどのホームドアはフルスクリーンタイプとなっている(可動式ホーム柵はソウルメトロ2号線江辺駅・建大入口駅、釜山交通公社4号線安平基地簡易乗降場、大邱都市鉄道公社3号線の全駅に設置)。フルスクリーンタイプのものは、ドア上部に列車内に設置されている車内案内表示装置と同等のものが取り付けられており、駅名・方面などの案内を韓国語と英語(駅によってはさらに中国語と日本語)で表示する。地下区間ではフルスクリーンタイプ、地上区間では可動式ホーム柵を使用している。当初は地下区間の駅のみで設置されていたが、地上区間の駅でもホームドアの設置が進み、2012年3月14日、最後まで残っていたクランジ駅にホームドアが設置され、全駅へのホームドア設置が完了した。淡水線と南港線は可動式ホーム柵(南港展覧館駅と頂埔駅にはフルスクリーンタイプ)、それ以外はフルスクリーンタイプを使用している。近年、ホームからの転落事故が多発している台鉄でも、ホームドアの設置が検討されている。2010年6月からホームドアの設置を開始した東日本旅客鉄道山手線では、ホームドアを設置した23駅での人身事故が、設置前の74件から設置後は0件に大幅に減少した。
出典:wikipedia
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