21000系電車(21000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道の特急形電車である。当初は「アーバンライナー (URBAN LINER) 」の車両愛称を与えられていたが、後年実施された更新改造後は「アーバンライナーplus (Urban Liner plus) 」と呼ばれている。改良増備型の21020系電車「アーバンライナーnext」とともに近鉄の看板車両となっている。解説の便宜上、本項では大阪上本町・大阪難波側の先頭車の車両番号+F(Formation=編成の略)を編成名として記述する(例:モ21101以下6両編成=21101F)。近鉄難波(現・大阪難波) - 近鉄名古屋間の名阪ノンストップ特急の専用車として、1988年(昭和63年)1月に、6両3編成(18両)が近畿車輛で製造された。同年3月18日より、1日6往復体制で営業運転を開始した。その後も増備され、1990年に名阪ノンストップ特急の全列車が本系列に置き換えられた。のちに乗客増により中間車を増備のうえ8両編成も登場した。基本的に名阪特急で運用されるが、大阪難波 - 近鉄奈良間や近鉄名古屋から伊勢志摩方面の一部の特急にも充当されている。当該系列は名阪ノンストップ特急のシェア拡大のために、鉄道車両の常識には捉われない革新的なデザインと乗客本位の居住空間を備え、従来の近鉄特急とは大きく異なる姿で登場した。しかしその一方で、電気的システムや足回りをはじめ、座席、トイレの構造は基本的に在来車両のスタイルを踏襲しており、車両全体のフルモデルチェンジが実施された訳ではなかった。足回りや電気的な面も含めて全面的にモデルチェンジしたのは、本系列より4年あとに竣功した22000系「ACE」である。しかし、本系列で具現化された車両デザインやそのコンセプトは、以後の近鉄特急車両のみならず、他社の車両にも大きなデザインの変革をもたらす契機となった。1988年(昭和63年)グッドデザイン賞、日経優秀製品・サービス賞、1989年(平成元年・第32回)鉄道友の会ブルーリボン賞の3賞を受賞している。本系列はレクレーションカー(1949 - 1957年)以来の特別車両を連結した特急車両である。編成中1両連結され、利用には運賃・特急料金のほかに特別車両料金が必要である。特別車両を連結するため運用列車は決まっており、このために近鉄時刻表、および近鉄の駅掲示の時刻表には、当該系列で運転される列車に「UL」を図案化したロゴタイプを表記する。JTB時刻表では「UL」のローマ字を表記する。電算記号(編成記号)はUL を使用する。中間運転台付きの2両編成の場合はUBを使用する。大阪 - 名古屋間を連絡する名阪特急は、同区間を結ぶ国鉄在来線を尻目に安定的な旅客需要を維持していた。ところが1964年に東海道新幹線が開業すると、乗車区間と交通費は新幹線とほぼ同一ながら、所要時間が倍かかる近鉄は乗客から敬遠され、以来10年強の長きに渡って成績低迷を余儀なくされた。しかし1970年代後半から国鉄の相次ぐ値上げによって乗客数が増加に転じ、以来、年々右肩上がりの好成績を記録した。一方で、近鉄の特急車は当時およそ10年毎にフルモデルチェンジを行う方針であったため近鉄当局としては、1978年登場の30000系「ビスタカーIII世」から数えて、1980年代後半には次代を担う新型特急電車の就役を考えていた。そこで、利用客の復調が著しい名阪ノンストップ特急に新型車両を投入して、集客率をさらに向上させることになり、1985年頃から新型特急電車の開発・設計をスタートさせた。従来の近鉄では、車両設計に当たってユーザーである近鉄とメーカーである近畿車輛による共同開発体制でデザインが決定されていた。しかし最終決定を行う立場の近鉄側に、デザインの専門家がいないという問題を抱えていた。そこで、21000系の開発では学識経験者2人を近鉄のデザイン顧問として招聘した(以下の役職は1987年当時のもの)。上記のデザイン顧問2名のほか、メーカーデザイナー、近鉄技術車両部、メーカー設計部から構成された近鉄主催のプロジェクトチームを立ち上げて開発作業を推し進めた。開発にあたり、乗客のニーズと車両設備をマッチさせるために市場調査を行った結果、名阪特急は1人で利用するビジネスユーザーのリピーターが多数を占め、グループ利用が多い観光列車とは全く異なる性質が明らかになった。そのほか、座席の前後間隔および横幅を広げてほしい、イヤホンで聴けるオーディオサービス、靴を脱いでくつろぎたい、後述の2階建の席より平床の席に座りたい、という要望があることも判った。1958年の10000系の建造以来、近鉄特急のシンボルは、2階建車両を連結したビスタカーであったが、市場調査の結果は平床の席に座りたいという要望が階上席に座りたいという要望を上回った。また1985年、東海道・山陽新幹線に2階建車両を組込む100系が登場し、その余裕ある階上空間と比較して近鉄の狭い階上空間では居住性の観点で見劣りすることが明らかになった。特に天井肩部の空間に余裕がないため、荷棚を設けることによって、いっそう車内空間が狭くなるのである。また、鉄道路線の防音壁は高速道路に比べて低く、平床車両でも十分な展望が得られており、この点2階建にするメリットは稀薄である。2階建て構造の優位性に疑いが持たれる一方で、近鉄の車両限界に収まる2階建の車内空間が、時代のニーズに合っているかどうかの検証を行うためにメーカーにおいて平床と階上室とのモックアップによる空間比較を行った。結果として断然平床の方が豊かな居住空間を得られることが判り、今回の新型車両では2階建構造の採用を見送ることになった。当初は4両編成で計画を進めていたが、上記の内容を踏まえて名阪ノンストップ特急専用車として他形式編成とは増解結を考慮しない、従って前面非貫通構造とすること、平床構造を採用のうえで高屋根車とすること、座席の横幅を広げてほしいという要望に答えるために2両の特別車両を新たに設けること、そして増解結は編成の中間で行うために6両編成とすることを決定した。マーケティングリサーチの結果をもとにコンセプトを設定した。以上の開発の基本方針を元に、実際に設計を行うために7つの設計コンセプトを定めた。この開発目標は Exceed S-7 と呼ばれた。21000系登場のプレスリリースは、車両納入を1か月後に控えた1987年12月に突然行われた。この時まで一切の情報が伏せられていたために、本件は寝耳に水のリリースであった。加えて特別車両の新規設定や白い車体、流線型の先頭形状など、それまでの近鉄特急とはまったく異なるスタイルとも相俟って当時の業界、沿線住民を問わず受けた衝撃はことのほか大きかった。「アーバンライナー」の愛称は大阪と名古屋の2大都市を結ぶという使命のほかに、沿線を都市化させて鉄道事業を肥沃化するという意図を込めて命名されたが、決定的な採用理由は誰にでも分かり易い点にあった。「デラックスシート」「レギュラーシート」の名前も分かり易さから命名された。1988年1月デビュー当初から2005年4月まで存在した21000系オリジナルスタイル車両について解説する。なお、更新改造後の仕様については「リニューアル車(アーバンライナーplus)」節で解説する。先頭形状はスピード感を表現するために、真円形のはりだしを車体下部に作り、そこから後退角43度で倒した形状とした。このスタイルの類型がそれまでの国内の車両には存在しなかったため、非常にオリジナリティの高いデザインとして評価された一方で、ドイツ連邦鉄道(現ドイツ鉄道)の「ルフトハンザ・エアポート・エクスプレス」403形電車に似ているという指摘も幾多の鉄道趣味誌で記述されている。また、以前は飛び出していた標識灯・尾灯は車体内部に埋め込んで面一としたほか、前照灯も前面窓の内部に設置して目立たなくさせた。このためワイパーおよび連結器上部の張り出し以外に突起物はなく、シンプルな外観となった。前面窓は4枚の曲面ガラスの構成とし、窓内に角型のシールドビームを2個設けている。尾灯・標識灯は、LED式で、その特性を活かして流線型の形状に合わせた曲面配列とした。LEDは黄色(標識灯)と赤色(尾灯)の素子を交互に配置してこれを1ユニットとし、縦4列横12列の48ユニットを左右に取り付けた。2次車は前面窓下にウィンドウ・ウオッシャーノズルを取り付けた。中間先頭車は営業列車として先頭に立つことを前提としないためシンプルな構造であるが、本線用としてLED式の標識灯、尾灯や排障器、列車無線アンテナを備える。塗装はオレンジのラインが正面まで回り込むが、貫通扉はデッキの雰囲気に合わせてグレーとなっている。簡易運転台はモ21200形とモ21500形に装備され、前照灯1灯と運転窓が1つ、および手動式ワイパーが設けられた。2次車はモ21200形の簡易運転台が廃止された。構体は従来通り鋼製全溶接組み立てで、本系列から側構を内傾させ、屋根巻き上げ部半径600mmの卵型断面としている。車体断面(コンタ)を在来車両から大きく変更したことで、各検車区の洗浄機の改造を実施した。車体幅は従来の近鉄電車と同じ2,800mmだが、車体高さは客室内の空間拡大に伴い、屋根高さを12600系比で+25mmの3,645mm(全高4,050mm)とした。また、防音・断熱の効果を上げるためこの寸法分の床厚を増したことから、レール面から床面までの高さは25mm高い1,145mmに設定した。側面の出入台付近には行先表示器と一体枠で号車番号表示器を設置した。塗装は、これまでの近鉄特急車のオレンジとブルーとは全く異なり、ライトでピュアなイメージを表現するために、クリスタルホワイトをベースとして、フレッシュオレンジの帯を通した。連続窓の周りにもオレンジの帯を縁取りし、窓のない部分には複数の細帯(ピンストライプ)を通して、連続窓の美しさを引き立たせている。また、フロントの窓にもオレンジの縁取りが入る。なお、貫通幌の外側の色も、編成美を考慮して白色に塗装された。屋上機器の塗装は、当初はN7で、オリジナルスタイル末期のN5よりも明るいグレーであった。床下機器はN4である。側面窓は新設計の外付け式連続窓とした。これはペアガラスと一体になったアルミ製の枠を構体にビス絞めし、また窓枠同士が突き合わせとなる部分はを交互にはめあうように接合している。ビス部と接合部は黒ゴムで覆い隠し、窓枠の艶を消す役割も担う。ゴムで覆いきれないアルミ枠部分は艶消し黒を塗装した。間柱部分は黒に塗装することでガラス表面から内部が見えないようにした。連続窓の両端部はR100mmに丸めて車体デザインとの調和を図った。この構造の連続窓は26000系「さくらライナー」にも踏襲されたが、22000系以降は、より構造を簡略化して採用された。窓の上下寸法は12600系比で+80mmの830mm、前後は連続窓としたために+130mmの1,830mmとして大型化した。乗降扉は、バリアフリーの思想が一般化する以前の設計であったことから、当時の近鉄特急伝統の折戸式を踏襲した。6両で7か所(モ21500形のみ2か所)設置された。折戸の形状は、折戸部分が車体からへこんで見えないように、一段ふくらませて厚めとしたが、2次車はフラット化された。折戸部分にフレッシュオレンジの帯は入っていない。モ21500形とモ21600形の乗降扉付近には "DS のマーク(「DELUX SEATS」の頭文字をデフォルメしたもの)が表記された。名阪間で2時間を切ることを目的に機器構成が計画され、6両編成で電動車1ユニット故障時でも従来の特急車と同等の走行性能を確保するため、電動車を2両単位で3ユニット連結する、全電動車方式となっている。最高速度は当初120km/hであったが、のちの最高速度引き上げで130km/hとされており、運転席の速度計でも130の目盛に最高速度を示す赤線がある。1基の制御器で2両分8基の主電動機を一括制御する、大阪線ではモ1450形以来伝統の1C8M方式を採用する。そのため、電動カム軸式抵抗制御器である三菱電機ABFM-168-15MDHを形式の百位が奇数の形式に搭載する。制御器の中枢をなすカム軸によるスイッチ機構は2軸構成で、それぞれ独立したパイロットモーターにより駆動される。制御段数は力行が抵抗制御18段、界磁制御5段、発電制動が全界磁抵抗制御のみで18段で、主電動機4基を直列接続したグループ2群を、低速(直列)・高速(並列)で手動で切替するのも従来通りである。直流直巻補極巻線付整流子電動機である三菱電機MB-3302-Aを各台車に2基ずつ装架する。主電動機定格出力は従来大阪線特急車で標準であった三菱電機MB-3127-Aと比較して70パーセントに抑えられている。これは、前述の通り全電動車方式を採用したためで、MT比1:1が原則のMB-3127-A搭載車と比較して編成全体での出力は40パーセント増となる。駆動装置は従来通りのWNドライブで、歯数比も80:21=3.81でMB-3127-A搭載車と共通となっている。この電動機による起動加速度は2.5km/h/s、車輪径860mm時の全界磁定格速度は64km/h、最大弱め界磁率35%時の定格速度は146km/hで、青山峠の33‰上り勾配区間において架線電圧10%減・定員乗車条件でも均衡速度110km/hでの走行が可能な性能を備える。台車は全車とも近畿車輛KD-97を装着する。これは従来の特急車で標準であったKD-83系の基本構造を踏襲する、シュリーレン式軸箱支持機構とダイアフラム式空気ばねによるダイレクトマウント式揺れ枕機構を備えた横剛性空気ばね台車である。もっとも、KD-83系などとは異なり、曲線通過時の転向横圧を軽減するために軸距を従来の2,200mmから2,100mmに100mm短縮して側梁の曲がりを大きくし、さらに枕梁の形状を見直すことで軽量化と強度増大を両立させている。のちに高速運転時の蛇行動対策としてヨーダンパがボルスタアンカーの車体側支持腕と台車側枠を結ぶ形で追設されている。このため、枕ばね部にボルスタアンカーとヨーダンパが上下に平行して並ぶ、非常に物々しい外観となっている。基礎ブレーキ装置は両抱き式の踏面ブレーキで、ブレーキシリンダーは各車輪ごとに1基ずつ1台車あたり計4基、側枠に搭載されている。基本となる空気ブレーキ装置としては、従来通り電磁直通式HSC-Dを搭載する。これは型番が示すように制御器側の発電制動との連動機能を備えており、青山峠の33‰連続下り勾配区間での抑速を目的として抑速発電ブレーキ機能も搭載する。120km/h以上での高速運転に備え、12200系以降標準となっているブレーキ制御圧切り替え装置を搭載するが、将来的な高速化を睨み、従来の圧力3段階切り替えから4段階切り替えに改良されている。また、近鉄の特急車としては初めて応荷重装置も装備され、既に使用される機会が皆無となっていた常用自動ブレーキは廃止された。そのため、運転台のブレーキ制御弁は常用部を省略したME-67-Bを当初より搭載している。常用最大減速度は4.0km/h/sである。集電装置は高速運転向けとして、特に三元ばね式として追従性を改善した東洋電機製造PT4811-C-M下枠交差式パンタグラフを採用しており、モ21100形・モ21300形・モ21500形に2基ずつ搭載される。補助電源には従来の電動発電機に替えて近鉄特急車として初採用となるDC-DCコンバータを採用、定格出力70kWの東芝COV-007が形式の百位が偶数の形式に搭載される。空調装置は直流330V駆動で、編成中の各補助電源装置を結ぶ給電ラインと接続されており、いずれか1基の補助電源が故障した場合には、他の2基でこれをバックアップすることで運転続行を可能としている。空気圧縮機は低騒音形のHS-10で、これも百位が偶数の形式に搭載されている。空調装置はヒートポンプ式の東芝RPU-2217を各車3基ずつ屋根上に搭載する。床下に設けられた排気扇で空気の流れを作ることで、温度管理をする。暖房運転時には座席下の電熱ヒーターを併用するが、これは補助的なものである。換気扇設置の目的は、温度管理のほかに室内から煙草による煙や臭いを排出して不快感を低減するものであるが、12400系以来、換気にはロスナイが使われてきた(30000系の中間車を除く)。しかし本系列は空調と連動した換気扇に変更され、以後の特急車もこれに倣っている。なお、2次車はモ21100、モ21304、モ21500形の山側のアクチュエータ箱と低圧補助接地スイッチの場所が入れ替わり、蓄電池の総括制御化が実施された。列車無線アンテナは制御電動車の屋上に取り付けられている。この内、流線型先頭車については、車両中ほどに設置して、クーラーキセで覆うことで目立たなくさせた。トイレと洗面所が設置されているのは、モ21200形・モ21300形・モ21500形であるが、このうちモ21200形以外は自車に水タンクを搭載していないため、ユニットを組む隣の車両から給水管で水を取りこんでいる。この車両より電気笛(警笛)の音色が変更された。シンセサイザーによる3音の和音2種類のメロディをトランペットスピーカーで鳴らすもので、以後の近鉄特急車もこれに従っている。なお、一般車は当系列登場以降も従来どおりの音色の電気笛を装備しているが、例外的に生駒ケーブルに導入された新型車はこの特急車用と同じ電気笛を採用している。製造当初は近鉄難波(現・大阪難波)側からモ21100形 (Mc) - モ21200形 (M) - モ21300形 (Mc) - モ21400形 (Mc) - モ21500形 (M) - モ21600形 (Mc) の6両編成とした。モ21300形 - モ21400形は切妻形状の正規運転台装備車で、編成から切り離して2両単独で本線上を走行できるようになっており、需要の少ない場合には、その2両を抜いた4両編成として運行することも可能である。このため、モ21200およびモ21500形には入換用運転台を装備している。また、編成のうち、モ21500形 - モ21600形は特別車「デラックスカー」、他は普通車「レギュラーカー」である(当初は「デラックスシート車」「レギュラーシート車」と称した)。1988年末から増備された2次車以降は、本系列使用列車の利用客が多いことにより4両以下での運行を想定しなくてもよくなったことから、運転台付の中間ユニットのモ21300形 - モ21400形を中間電動車に変更し、形式をモ21304形 (M) - モ21404形 (M) とした。1990年に計11編成が出揃ったが、8両編成の需要も出てきたため、1次車3編成については、運転台付中間ユニット(編成記号UB)のモ21300形 - モ21400形の2両を、同年に製造されたモ21304形 - モ21404形(2代目モ21301 - モ21303、モ21401 - モ21403)に差し替え、捻出された中間ユニットは増結用としてモ21700形 - モ21800形(モ21701 - モ21703、モ21801 - モ21803)に改番した。なおモ21700形 - モ21800形を挿入の上8両に組成される編成は一定していない。また連結される位置はモ21404形とモ21500形との間となる。結果、本系列は6両編成11本と、増結用2両3本の72両となった。オープンルームの平床構造で2クラス制の採用により両クラス専用の客室が用意された。インテリアデザインはビジネス客の利用を前提とすることから、それまでの明るいサニートーンから一転してモノトーン系の内装として落ち着きを表現した。その雰囲気を損なわないように化粧板は単色で艶を抑えた特注品が使用され、金属色は足元を除いて排除するかアルマイト処理された。両クラスの基調色は、デラックスカーは格調の高さと落着きを表現するためにローズベージュを基調としてアクセントカラーはゴールド、レギュラーカーは明るさと現代感覚を表現するためにグレーを基調としてアクセントカラーはシルバーとした。デッキとの仕切り妻壁は、両クラスの基調色をベースに色のドット模様をちりばめ、遠くから層状に見える街の灯りを表現している(アーバン・グラデーションと呼称)。デザインは山内陸平が担当した。窓まわりはアクセントカラーの金属で窓縁を作り、そこから腰羽目部へ曲面のFRPでつなぐことで一体感のある見付とした。荷棚はアルミ押出型材にて構成されたパネル構造である。その表面にはダイノックフィルムを貼り付け艶を抑えて客室デザインとの調和を図った。仕切り戸の脇にはLED式の号車番号などを表示する装置を設けたが、車内案内表示器の設置は見送られた。また従来は窓柱にあった飾り造花は当系列より無くなった。カーテンは両クラス用に模様と色を変えており座席モケット同様、細かい柄で立体的に縫い上げた。照明は従来のアクリルカバー付きの直接照明はやめて間接照明、または半間接照明を採用した。天井は反射板(空調装置の点検蓋を兼用)にて蛍光灯の光を反射させる間接照明を採用した。荷棚下は和紙調のグローブを光が透過する傍らで、その隙間を通して反射光が漏れ出る半間接照明である。また荷棚のカーテン部分に電球を組み込んでカーテンを照らし都合4色の光により空間に奥行きとリズムを与えている。2次車ではカーテンライトのON/OFFスイッチが設けられ、1次車にも反映された。なお天井中央の蛍光灯カバーは冷風吹き出し口のスリットと一体構造のため、結露防止の観点からFRP製である。ドアにはブロンズカラーの細長の窓と細い取手が設けられインテリアにアクセントを添えた。デラックスカーのドアはシート配列に呼応して中央から少しオフセットしておりドア上部の光電管スイッチのレンズ位置も偏っている。これに伴いモ21500形とモ21600形を繋ぐ貫通路も中央配列ではなく客室ドアと同じ方向にオフセットしている。デラックスカーの通路には歩行音を抑えるためにカーペットが敷かれたが、2次車は床全面に渡って敷かれ、1次車にもフィードバックされた。レギュラーカーの床面は塩化ビニール製の敷物で、カラーはグリーン系として通路部はベージュとした。床面のコーナーは、清掃性と耐食性を考慮してRに巻き上げている。近鉄特急の座席番号は、従来数字のみ(奇数が窓側、偶数が通路側)で示していたがデラックスカーについてはJRなどと同様に「10A」といった英数字の組み合わせとなった(10Aは大阪寄から10列目、A席は1人掛け、B席は2人掛けの通路側、C席は同じく窓側である)。インテリアコンセプト座席はそれまでの単調な色合いを避けるために6色の糸を使って生地を織りあげ、立体的で高品位の雰囲気を出すように配慮された。デラックスシートは通路を挟んで海側が1人掛、山側が2人掛の簡易式リクライニングシートである。座席モケットは発色を抑えたライトブラウンをベースに赤や青の細かな模様を線状にちりばめたデザインである。ヘッドレストはプライバシーの確保のために大きな張りだしを付け、高さも引き上げられた。これに腰部の波状のふくらみとも相まって独特のシートデザインを形成している。またソファ感覚を出すために座面高さが引き下げられた。ヘッドレストをカバーするリネンには薄いグレーでDSマークがワンポイントでプリントされている。座席の基本構造は在来の近鉄特急車と同じで、リクライニングすると座面が前にスライド、また回転させる場合には背もたれを起こす方式であるが、リクライニングのレバーはひじ掛け上部に設けられて操作が容易になった。またテーブルは面積を広げている。テーブルのない側のひじ掛けには音楽サービス用のヘッドフォン用ミニジャックとチャンネル・音量の操作盤が設けられており、オリジナルの音楽サービスが楽しめた。またイヤホンは無料で貸し出していた。座席の横幅は1人あたり485mmで在来車と比較して30mm広くなった。シートピッチは1,050mmである。レギュラーシートは従来車と同じ形状の偏心回転式(デラックスシートは同心回転)の簡易式リクライニングシートであるが、プライバシー確保の面から背面の高さが若干引き上げられた。またデラックスシートと同様に座面高さを引き下げ、腰部に波状のふくらみが設けられた。座席モケットは一見ベージュの無地に見えるが、紫、緑、橙、ベージュなどをライン状に組み合わせたものである。音楽サービスは車内に電波を送信しており、FMラジオで受信することで聴けるようになっていた。シートピッチはデラックスシートと同一の1,050mmと広く、各席に足置き台が設けられている。座席の横幅は全長が1,070mm、1人分に換算すると455mmで、12600系と同一の寸法である。2次車は席中央に折りたたみ式の肘掛が設けられた。トイレはモ21200、モ21300、モ21500の各形式に設けられた。モ21200とモ21300は和式と男性小便器ブース、洗面所の組み合わせ、モ21500は洋式と洗面所の組み合わせとした。便器は男性小便器が陶器製で、和式と洋式は金属製(着色)である。汚水処理は循環式である。床は赤御影石とし、壁には4色のタイルを貼り付けてグラデーション調とした。2次車は洋式トイレに自動で便座シートを交換する装置を設けた。洗面台は水と湯の出る2つの水栓を設置した(従来の近鉄特急車では水のみ)。モ21500形は通路が偏心しているため洋式トイレは大型化され、男性用トイレを併設しない代わりに洗面台スペースを広げた。その背後にマガジンラック(内部におしぼり蒸し器)を設けた。デッキ全体の色はグレートーンで、扉付近にはデザインされた近鉄の路線案内図が掲げられた。コーナーにはコーナー保護のためにステンレス製のポールが取り付けられたが、内側にアクリル製の板が設けられたために手で完全に握ることはできなかった。なおトイレ・洗面所・デッキのいずれも照明は客室との調和を考えて白熱ダウンライトを使用して暗めの雰囲気とした。また室内の注意標記も全体の調和を考慮して、従来のアクリル製銘板に替えて化粧板に直接シルクスクリーンにて印刷する手法を採用した。車両間の連絡通路は電気連結器を装備する車両同士の場合、連結器高さが880mm(他は800mm)であるため渡り板高さも上げられ、この関係で踏み台が扉前に設けられた。車内販売準備室はモ21200、モ21400形に設けている。モ21200形の準備室は4両運転時の予備的なものである。メインで使われるモ21400形の準備室には荷物搬入用の扉が設けられているが、スペースの都合から片側1か所しか設置されていない。2次車はモ21404形に形式変更のうえ運転室を廃止(簡易運転台化)して車内販売準備室の拡大に充てた。準備室の荷物搬入用扉は引戸に変更されている(両側に設置)。これにともない、モ21200形の車販準備室から厨房設備がなくなり、車販控室に改められた。モ21600形には公衆電話が設置されたが、伊勢中川構内短絡線 - 桜井間では受信不可のために車内自動放送にてその案内を行っていた。運転台は、制御装置や制動装置が従来と同一であることから、配色こそ新型車に合わせたものの、主幹制御器やブレーキ弁の形状そのものは近鉄標準の仕様となっている(2次車より冷房装置が追加された)。中間運転台ユニットのモ21300 - モ21400形は貫通式で、スペースも狭いが、流線型のモ21100、モ21600形は広々としており、運転台直後のデッキからは乗客が前面展望を楽しむことも可能である。前面窓が傾斜し、デッキの照明がダウンライトで暗いことから映り込みがなく、トンネル区間や夜間でも仕切窓に設置されている遮光幕は使用しない。ただし、中川短絡線走行中の運転士交代時には閉めることにしていた。簡易運転台は、モ21500形の場合、大阪寄りデッキに設けられているが、普段は壁で蓋がされており見ることはできない。他は車内販売準備室に設けられている。21000系は、登場以来近鉄の看板車両として運用されていたが、バリアフリーへの対応などが行われておらず、また座席もデラックスカーを含め旧式の簡易リクライニングシートを採用しており、これ以後に製造された特急用車両の座席と比べて見劣りする感は否めなかった。また、1990年代後半から禁煙に対する社会の関心が高まりつつある時代背景があり、近鉄においても特急車の禁煙車比率を高めるなどの対応を行なってきた。そして乗客を対象にしたアンケート調査を実施したところ、7割近い乗客から禁煙席を希望する調査結果が得られた。さらにアンケート調査によって名阪特急利用客の内、男性客が6割に対し女性客が4割と想定よりも女性客の比率が高いことや、ビジネス目的のみならずレジャー目的で利用する乗客が多いことなどが判った。このように21000系が登場した頃と比べて、その後の利用のされ方が少なからず異なっていることが判明した。そして2003年は同系列の車体更新時期(製造後約15年)に当たっていることもあり、時代に合わせた車内サービスを提供するための更新を行なうことになった。更新に当たっては、21020系を製造して予備車を確保し、2編成ずつ工事を行うことにした。2003年から2005年にかけて、高安検修センターで施工された。上述のアンケート調査は21020系の開発において実施され、その調査結果をもとに車両設計にフィードバックされた。そして同車のサービス水準を21000系のリニューアル車に反映させることとした。21020系に準じた設備にしているが、編成定員は4名多い。デラックスカーは従来編成中に2両あったが、今回の改造でモ21500形はレギュラーカーとなり、デラックスカーはモ21600形1両のみとなった。これはデラックスカーの利用状況や、また全車禁煙化により喫煙・禁煙で1両ずつ確保する必要がなくなったことが理由である。また、1988年の運行開始当初は想定されていなかったバリアフリー設備を取り入れる工事や、喫煙に対する社会の受け止め方の変化に対応して喫煙コーナーの設置も行なわれた。そのほかに、車内販売の不振にともなう中止を受けて、車販準備室の撤去も行なわれた。座席はリクライニング操作と連動して座面が沈み込むタイプの腰掛に交換された。改造に際して車両愛称はアーバンライナーplusとなった。「plus」には「新世代の機能とサービスの付加」という意味を込めている。塗装は、21020系に併せて裾部をジェントルベージュに塗り替え、窓周りのオレンジの細線はなくなるなどの変化があった。オレンジ帯は少し赤味が強くなり、コスメオレンジとした。従来、折戸部分にはオレンジ帯は通されていなかったが、改造に際して通された。同時に扉上に雨どいが取り付けられた。一次車特有のふくらみのある扉は、フラットなタイプに交換された。車体の連結面には板状の転落防止幌が設置された。また、一次車のモ21200形の入換用運転台は、改造に際して撤去された。他の入換用運転台は残されている。連続窓の構造は21020系と同様のタイプに作りかえられ、窓柱にあった縦の押さえゴムは無くなった。窓ガラスもフロント窓と一緒に、緑がかったものに交換された。また喫煙コーナーが設置されたことに伴い、その場所に横長2段の窓が設けられた。サイズは21020系と同様である。主要機器については基本的に従来通りとされたが、パンタグラフについては、モ21100形とモ21304形の間に高圧母線を引き通し、それぞれ1基搭載とした。化粧板は客室、デッキを問わず21020系と同一品に取り換えたが、デラックスカーの妻壁はアーバングラデーションが残された。化粧板押さえ面は着色せず、アルマイト処理のうえ地肌で取り付けた。ドアは細長の取っ手を撤去のうえ、細長窓は無色透明となった。荷棚はカーテンライトを含めて原型を保つが、フィルムを貼り替え、色も変更となった。天井見付は基本的には従来通りだが、端部のFRP照明カバーはディスプレイ観賞の視界を遮らないように形状を変更した。客室仕切り部には液晶モニターが設けられ、号車表示や到着駅等の案内を一括で行っている。この液晶モニターでは走行中は沿線や自社の割引切符などの案内の他、読売新聞ニュース、路線マップによる凡その現在地と速度の表示、日中の運用に限り運転台に設けられたCCDカメラによる前面展望の映像が映し出される。また、近年液晶モニターの文字が小さくて見づらいといった意見が寄せられたため、後に、50000系電車と同様の、文字が大き目のタイプのROMに更新されている。ドアの脇にあったLED式号車表示器は、液晶モニターにその役目を譲り、車内通報装置が新たに設置された。座席は従来の簡易式リクライニングシートから新開発の「ゆりかご型シート」へ交換された。背もたれを倒すと角度に応じて腰部が沈んで座席が傾くような状態となる。デラックスカーはリクライニングの機構を電動にしたのが特徴で、読書灯も背もたれに取り付けられている。ただし、音楽サービス用のヘッドフォン用ミニジャックとチャンネル・音量の操作盤はなくなった。2人掛け座席も1人ずつ独立性を高めた形状としている(回転時は2席一緒に回転する)。レギュラーカーのリクライニング機構は手動である。喫煙コーナーを2両に1か所設置し、全席禁煙に変更している。喫煙コーナー用の空調装置も新設された。構造は21020系に準ずる。当初は喫煙コーナーのうち海側(座席区分ではA・B席側)にも液晶モニターを設けており、客室仕切り部と同じく号車表示や到着駅等の案内を一括で行っていたが、現在は板で塞いで使用停止としている(増結用編成も同じく使用停止)。トイレは、和式を廃止のうえ洋式と男性小便器ブースの組み合わせに変更し、モ21304形には女性専用トイレも設置された。モ21200形は車椅子対応とした。また、全ての洋式トイレ内にはベビーチェアが設置された。各車デッキの乗降扉付近に出入台灯と音楽放送用のスピーカーが設置された。駅到着前から発車後暫くまでの間、開閉するドア側のランプが点灯すると同時に音楽が流れる。そのほかに、ドア開閉時に注意喚起のチャイムが鳴る。2007年10月からの車内販売開始に先立って、21600形の喫煙コーナーを車内販売準備室に転用改造した。2009年以降、種別標識灯・尾灯のLEDが縦4列、横12列の小型素子から、縦2列、横5列の大型素子へと順次更新された。改造当初、23000系や16400系 (いずれも原型車) と同一仕様であったトイレは、22600系登場後に同系に準じた温水洗浄便座に順次取り替えられている。本系列は中間運転台付の増結編成が存在するため、ごく稀に中間ユニットを試験運転などに用いる事例がある。近鉄特急車両を用いたお召し列車は以前から運行されていたが、その際は内装を改装し、普通座席を撤去のうえ御座所を設置して運行された。21000系では座席が1+2配列の特別車両を連結しているために特に改装の必要がないことから、1990年から2002年にかけて数回運行された。お召し運転の指定車両は21111Fである。お召し列車以外でも、皇太子夫妻の御乗用列車として幾度となく本系列で運行された。かつては高安検車区配置が殆どであったが、一部編成が大阪側の折返基地である東花園検車区配置となった後、2016年4月1日現在では6両編成11本66両と増結用2両編成3本6両の72両全車が富吉検車区に配置されている。車両スペックや車両運用以外の、本系列に関連するソフト面について一括して解説する。近鉄特急全体のソフト面については「近鉄特急」の項を参照されたい。車内販売員は主として女性が担当し、かつては21000系をイメージしたイエローの生地に赤のアクセントが入ったユニフォームを着用のうえおしぼりの配布やワゴンサービス、イヤホンの貸出や回収、終着駅間際の雑誌回収等の任務にあたった。2002年3月19日をもって車内販売は廃止された。なお車内販売は、2007年10月8日から土曜・休日に限って復活した。販売対象列車は9時 - 19時発の名阪甲特急14往復(土休日増発便3往復を含む)である。時代の要請により、本系列の禁煙車の比率も変化した。21000系「アーバンライナー」では従来の近鉄特急とは異なるCM戦略が取られることになったのが特徴である。車両のイメージや快適性を前面に押し出し、有名人も起用している。また、駅備え付けの名阪特急のパンフレットにも起用された。
出典:wikipedia
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