物権(ぶっけん、、、、)とは、大陸法系の私法上の概念で、物を直接的に(他人の行為を介さずに)支配する権利。日本法などにおいては、特定の者に対して特定の行為を請求する債権と対比される。以下、主として日本法における物権概念について説明する。物権も債権と同じ財産権であるが、以下の点で債権とは異なる。権利の実現のためには、債権の場合には債務者による履行という他人の行為が必要であるが、物権においては不要である(もっとも裁判所の手続を要することはある。)。このような性質を物権の直接性と呼ぶ。同一物に対しては、同一内容の物権は、一つしか成立しない。同一の物に対して同一内容の物権が複数成立すると、物への直接的支配が失われるからである。このような性質を物権の排他性、一物一権主義と呼ぶ。例えば、同一の物について二重に譲渡する契約が結ばれた場合は、先に登記、明認方法等の対抗要件を備えたものが当該物についての所有権を取得する。なお、同一の物について二重に譲渡する契約自体は、債権契約としては有効で、所有権を取得できなかったものは、債務不履行による損害賠償請求をすることができる。債権の場合は、特定物の使用に関して完全に同一内容の債権を複数創出することは可能である。ただし、実際の使用権は、物権の場合と同じく、先に明認方法などの対応要件を設けた者に認められ、他の債権者は、債務不履行による損害賠償を債務者に請求できるに限られる。また、債権の譲渡については、物権と同様に排他性があり、1個の債権を複数に重複して譲渡することはできない。1個の債権を複数に重複して譲渡する契約が為された場合において、目的の債権を取得できなかったものは、債権を譲り受ける債権に基づいて、債権の譲り渡しを約した者に対して債務不履行による損害賠償請求が可能である。一般に物権は内容の抵触する債権に優先する。これを物権の優先的効力という。もっとも、この優先的効力は特別法により相対化されており、たとえば借地借家法により対抗力を有する借地権は借地権の対抗要件具備より後に生じた物権変動に対抗し得る。また、信義則に反する場合は、物権の優先的効力は認められないから、例えば、温泉権や墓地権のように、土地所有者に対して永年使用料が前払いされている場合において、それが不履行となることで債権者が損害を被ることを知りながら、当該土地を譲り受けた者は、所有権者の変更を理由として債務の承継を否定し、かつ、補償の支払を拒否することは認められないとされる。物権の客体は原則として「物」である。物権の客体たる「物」の立法例には、有体物に限る例(ドイツ法。ただし、例外的に無体物にも拡張される。)と無体物をも含む例(フランス法)がある。日本の民法は物を有体物と定義する()。物権の客体は基本的には「物」であるが、例外的に権利であることもある(以下の権利質など)。物権の客体は次の要件を満たすものでなければならない物権の種類と内容は法律によって定められ、法律で定められたもの以外の物権を新たに創設することはできないとする法原則を物権法定主義といい、、民法施行法35条に規定されている。古くは、物権法定主義は、封建的権利を廃止し、個人の所有権の自由を確保するために制定されたものと説明されてきた。現在では、物権は債権に優先する効力を有し、また制度上債権以上の保護を与えられているため、各人が自由に物権を創出し得るとすると法制度の混乱を招くために、このような原則が設けられていると説明されることが多い。法律に規定のない物権を設定する契約が結ばれても、そのような物権は物権法定主義により発生しないが、債権契約としては有効であり、目的物に関する債権・債務が当事者間に生じる。物権法定主義にいう「法」は、民法に限られず、たとえば、商法には商行為の性質から民法上の物権とは内容が幾分異なる物権(商事留置権など)が規定されている。また、鉱業権や漁業権は公法上の権利(免許)であるが、譲渡や貸借において物権と同様の取り扱いが鉱業法や漁業法に明文規定されているみなし物権である。また、上記の物権法定主義を補完するものとして、「慣習による物権的な性質を持つ権利」も判例により認められている。その例として温泉権(大判昭和15年9月18日民録1611頁)と、河川法の適用を受けない流水の流水利用権(大判大正6年2月6日民録202頁)がある。ただし、強行法規である民法施行法35条は、「慣習上物権ト認メタル権利ニシテ民法施行前ニ発生シタルモノト雖モ其施行ノ後ハ民法其他ノ法律ニ定ムルモノニ非サレハ物権タル効力ヲ有セス」として、慣習上の物権を認めていないことから、「慣習による物権的な性質を持つ権利」をいかに説明するかが学説上の大きな論点となっている。明治時代に広く知られ、売買や貸借、設定もされていた慣習上の物権である「上土権」について、判例は民法施行法35条を根拠として一律に否定していることから、全国の設定件数や認知度、近代的設定契約について慣習が慣熟していたとしても、それらは「慣習による物権的な性質」を生じさせる根拠にはならない。判例は信義則を根拠として、明認方法を第三者に対する温泉権の対抗要件として示していることから、債権であっても明認方法を設けることで物権と同様の第三者対抗力(物権的な性質)が信義則によって生じ、かつ、民法施行法35条はそれを否認するものではないとして、温泉権や流水利用権の物権的性質は説明が可能である。温泉権や流水利用権の物権的請求権については、下級審判例に、背信的悪意者による債権侵害に対し、信義則違反と不法行為の排除請求を根拠として、物権的請求を認めたものがあり、「慣習による物権的な性質を持つ権利」の物権的性質の説明に用いられている。なお、いかなる場合において信義則による保護を要するか、いかなる場合において排除請求が認められ得る不法行為となるかについては、慣習によるとされるため、温泉権や流水利用権は、「慣習による物権的な性質を持つ権利」と呼ばれるのである。慣習による物権的性質を持つ権利として判例で認められた例なお、根抵当権(大判明34・10・25民録7輯9巻13頁)や代物弁済予約(仮登記担保、大判大8・2・6民録25輯25巻68頁ほか)も判例で認められていたが、根抵当権については昭和46年法改正により以下に規定され、代物弁済予約(仮登記担保)については昭和53年に仮登記担保法によって立法化された。物権の内容の円満な実現が不当に妨げられ又は妨げられるおそれがある場合、物権を有する者はそのような事態を生じさせている者に対して、妨害を除去・予防するために必要な行為を請求することができる。この請求権を物権的請求権、又は物上請求権と呼ぶ。一般に物権的請求権の種類として、返還請求権(物権的返還請求権)、妨害排除請求権(物権的妨害排除請求権)、妨害予防請求権(物権的妨害予防請求権)の3種が認められている。なお、物権的請求権により排除が可能な「侵害」には不法性が必要で、賃借権などにより完全に正当な権限を有する者を、物権的請求権によって排除することはできない。物権的請求権は、根拠規定の理論構成について学説上の対立があるが、民法第709条(不法行為)の規定と登記の対抗力、及び物権の性質である排他性によるものであると説明されるのが一般的である。物権的請求権は、登記の対抗力によって、訴訟における立証責任につき、不法行為規定に基づく通常の原状回復請求とは異なる取り扱いが為される。物権が侵害されている状態や物権の侵害が急迫している状態は、不法行為となることから、発生した不法行為債権の行使として、侵害行為の排除請求や予防請求が可能であり、物権の侵害のほか、人格権の侵害についても行使される事例が多い。古い学説によれば、債権は債務者に対する請求権であるから、債権を侵害する者に対して、債権それ自体を根拠としては物権的請求権を行使することはできないとされてきた。しかし、特定物の利用に関する債権において、それを侵害する行為は不法行為となることから、不法行為債権に基づく請求として、物権的請求権と同様の請求権を行使することができるとする見解が、現在は一般的である。訴訟における物権的請求権の立証責任は、物権、債権の区分にかかわらず、登記のある権利に基づいて排除請求する場合は、登記の対抗力により、登記のある者に物権的請求権があると推定されるため、請求する側は、登記があることを示せば物権的請求権については証明を要しない。請求された側(権利を侵害したとされる側)がこれに対抗するためには、例えば、正当な権限を有する使用であること、侵害行為が存在しないこと、登記に欠陥があること等、対抗に必要な事実を証明しなければならない。請求された側によって、正当な権限を有する使用であることが証明されたときは、物権的請求は棄却されることになる。登記の無い権利に基づく排除請求の場合は、相手方が登記の欠陥を主張できる第三者に該当しないことについて、権利濫用や信義則違反を排除請求の理由として用いる必要があるため、物権、債権の区分にかかわらず、請求する側に請求権についての立証責任があり、侵害を排除できる正当な権限を有すること及び侵害行為が存在することを証明しなければならない。物権的請求権に基づく排除請求は、侵害を受けることによって発生する不法行為債権の大きさと相当なものでなければ認められない。「侵害」とされる行為の不法性が小さく、法益の保護を否定される程の不法性がないにもかかわらず、原状復旧に要する費用が膨大で、排除請求を認めることが信義則に照らして著しくバランスを欠く場合には、認められないことがある。そのような例として宇奈月温泉事件の判例は有名である。物権的請求権の行使としての排除請求は、訴状の表題として「妨害排除請求事件」と記載されることが一般的である。不法行為規定に基づく通常の原状回復請求の場合は「損害賠償請求事件」と記載されるのが一般的である。訴状の表題は、訴訟の事務処理上の慣習として区別されているものであるが、厳密なものではなく、訴訟自体に影響を与えるものではない。例えば、建物の明け渡しを求める請求は「妨害排除請求事件」という表題を訴状に記載することが一般的であるけれども、排除請求をされた側(権利を侵害したとされる側)から「正当な権限」を有する使用であるという抗弁が為された場合において、排除請求する側が、その「正当な権限」の真正を争う主張をするのではなく、その「正当な権限」の行使について、権利濫用や信義則違反、契約違反に該当するとの主張により、排除請求をする場合は、本来は「損害賠償請求事件」とするべきものである。物権変動(物権の発生・変更・消滅)の原因は次のように分類される。
出典:wikipedia
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