APFSDS(Armor-Piercing Fin-Stabilized Discarding Sabot)は、戦車の主砲などに使用される砲弾で、装甲を貫くのに特化した砲弾である。日本語では装弾筒付翼安定徹甲弾(そうだんとうつきよくあんていてっこうだん)などといわれる。開発当初はAPDSとの対比としてAPDS-FSと呼ばれていた。この呼称は、いまだに一部の国で使われている。APFSDSは、従来の徹甲弾とは全く異なった思想でデザインされている。1,500m/sec前後で着弾すると装甲と侵徹体は狭い領域で高圧に圧縮されるために、それぞれが流体としてふるまい(塑性流動)、相互侵食を起こして機械的強度を無視し、装甲を貫徹する。侵徹体の先端はマッシュルーム状に広がりながら装甲にめり込み侵入する。侵徹体は穿孔によって先端から失われてゆくため急速にその長さを失って行き、装甲厚に対して十分な長さが無ければ穴だけが残され、長さがあれば残端が装甲内部に飛び込んで加害する。侵徹体は穿孔によってその速度も急速に失われて行き、最低限の侵徹速度が穿孔途中で失われた場合には穴の中に侵徹体の残りが残される事がある。タングステン合金弾が鋼製装甲板に穿孔する場合では850m/sec以上、鋼製の侵徹体が鋼製装甲板に穿孔する場合では1,100m/sec以上の速度が無いと流体としての侵徹は停止し、固体としての物理作用に移行する。侵徹は装甲に対してほぼ平行に着弾した場合を除き跳弾を起こすことは無く、滑らすという意味での避弾経始は殆ど機能しない。APFSDSが装甲を貫通するためには、着弾時の速度、侵徹体の長さ、座屈しないための靱性、展性の高さの4つが必要である。着弾時の速度が低速であれば従来の徹甲弾より貫徹力が劣る。APFSDSは、細長い棒状の侵徹体と風防、安定翼、軽金属の装弾筒、スリッピング・バンド、曳光筒で構成される。侵徹体の材質としてはタングステン合金が使用されることが多く、一部には劣化ウラン合金が使用されている。装甲を貫く力は、均質圧延鋼装甲(RHA:Rolled Homogeneous Armor)を貫ける厚さで表現される。RHA自身は21世紀の現在では古い装甲技術であるが、各兵器メーカーが既に良く知り尽くした素材であるために貫徹力を単純に比較するには適している。120mm滑腔砲で使用されるAPFSDSは、500-1,000mm程度のRHAを貫くことが可能となっている。劣化ウランによる侵徹体はタングステンより10%ほど貫徹力に勝り、鉄弾体はこれらの1/2程度の貫徹力である。21世紀の現在、戦車が対戦車用として使用する砲弾はほとんどがAPFSDSである。同じ対戦車用の弾薬には成形炸薬弾(HEAT)があるが、対戦車用の砲弾として戦車砲に使用されることはあまりない。HEATは標準的な装甲板に対する侵徹力といった数値上はAPFSDSと同等の威力を示すが、現在の戦車に多く使われる複合装甲に対してはAPFSDSに比べて大きく劣るためである。現用弾では1,500m/sec前後で着弾するが、将来高速弾が実現しても2,000m/sec程度で穿孔の効率は最大となり、それ以上は速度を上げても孔幅の拡大にエネルギーが消費されて侵徹孔の深さ、つまり貫徹力の向上度合いは徐々に小さくなってゆく。1961年、ソビエト連邦軍で世界初の115mmのAPFSDS実用弾であるBM-3の運用が開始された。BM-3はタングステンカーバイド製の侵徹体を持つ4kgの飛翔体がT-62戦車では砲口初速:1,615m/secで発射された。1962年にはBM-6が登場した。BM-6は加工の容易な鋼鉄製となり砲口初速:1,615m/secでRHA換算で236mm(距離2,000m)の侵徹力を備えていたが、有効射程は1,600mであった。1970年代中頃、米国のM60戦車などの105mm砲用のM735というAPFSDS砲弾が登場した。M735はタングステン合金・鋼鉄製の侵徹体を含む3.7kgの飛翔体が砲口初速:1,501m/secで発射され、318mm(距離2,000m)の侵徹力を備えていた。これはタングステン合金を鋼鉄の鞘で包んだものであった。このときはまだライフリング付き砲身で使用されていた。滑腔砲は1977年9月に西ドイツのレオパルト2戦車で登場した120mm滑腔砲が西側で最初であった。1978年9月に、米国はM735の侵徹体のタングステン合金を劣化ウラニウム合金に置き換えたM735A1という砲弾の生産を開始した。1979年4月には劣化ウラニウム合金を鋼鉄で包まずに、現代のAPFSDSと同様のモノブロック構造のM774の生産を開始し、M735シリーズを置き換えた。イスラエルは1978年にM-111というAPFSDS弾を実用化した。M-111はタングステン合金製モノブロックの侵徹体を含む飛翔体が砲口初速:1,455m/secで発射され、342mm(距離2,000m)の侵徹力を備えていた。レバノンでの戦闘でT-72を撃破して高い評価を得たM-111はNATOで選定試験を受け、西ドイツのディール社がライセンス生産することで、DM23 105mm APFSDS弾として販売された。1977年にDM13が運用開始された。DM13はL/D比約12であった。1987年頃にはDM33が運用開始された。これもイスラエルがM-111の後継として開発したM-413をNATOで採用した物で、L/D比約20で460mm(距離2,000m)の侵徹力を備えていた。2004年頃にDM53が運用開始された。DM53はL/D比約30で610mm(距離2,000m)の侵徹力を備えていた。日本でもM735が導入され、1984年からは国内のダイキン工業でライセンス生産が行なわれた。1991年からは同社でラインメタル社製DM33 120mm弾のライセンス生産を行ない、JM33と命名して90式戦車の主砲弾とした。1994年からは同じくダイキンで105mm APFSDS弾の独自開発による量産が行なわれている。10式戦車用の120mm APFSDS弾の国内開発も行なわれ、10式120mm装弾筒付翼安定徹甲弾として配備が進められている。この弾丸のL/D比は約30とDM53に匹敵する値を示している。TPFSDSは、陸上自衛隊の日本国内での演習場では狭すぎてAPFSDSの実弾演習が行えないため開発された訓練弾である。タングステン弾体と同じ飛翔特性を示すが、目標命中、若しくは一定距離を飛翔すると弾体が3分割(正確には5分割)し、急激に減速することで狭い演習場での実弾演習を可能としている。孔口付近に出た液状金属に安定翼が衝突するために、被弾した装甲表面には穴の周囲に十字などのAPFSDS特有のマークが残る。
出典:wikipedia
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