密度行列(みつどぎょうれつ、)は、量子力学における混合状態を表現するために使われる行列である。ある系(ここでは時間依存は考えない)の状態が、 という状態ベクトルが古典的に混ざったものとして記述できるとする。つまり、ある系のどんなオブザーバブルの測定値の確率分布も、 での測定値の確率分布に重みをつけて平均したものとして表せるとする。で定義される演算子 formula_2 を密度演算子 ( ) と言う。密度行列 ( ) formula_3 は、密度演算子を行列表示したものである。ここで、 は互いに直交している必要はない。たとえば、スピンの 成分の の固有状態と、 成分の の固有状態を混ぜることも可能である。このような複数の状態が混ざってできた状態を混合状態 ( ) といい、そうでない状態を純粋状態 ( ) という。一般に密度演算子 formula_2 はエルミート演算子で、ヒルベルト空間上の任意の状態ベクトル formula_5 に対し、を満たす。ここで は密度行列 のトレース () である。一般には、密度演算子の二乗は、となる。ここで、簡単のために状態 と状態 は規格直交性 を持つとした(密度行列を対角化することで、このような表示は常に可能である)。特別な場合として、複数の状態が混ざっていない純粋状態 に対する密度行列 では、状態ベクトルの規格化条件 より、となる。よって、純粋状態の場合は ( は正の整数)であることが分かる。また、純粋状態に対する密度行列は射影演算子の形となっている。量子力学において、純粋状態 におけるオブザーバブル formula_6 の期待値は、となる。この純粋状態が混ざってできた混合状態の期待値 formula_7 は、重み を使って、つまり密度行列 と、オブザーバブル formula_6 の行列表示 との積の、トレースで表される。混合状態のフォン・ノイマンエントロピー formula_9 は、formula_3 の固有値の項、あるいは、密度演算子 formula_3 のトレースと(Logarithm of a matrix)の項により表現することができる。formula_12 は正の半正定値演算子であるので、formula_13 を直交ベクトル、formula_14 formula_15 とすると、formula_16 となるようなスペクトル分解を持つ。従って、密度行列 formula_12 を持つ量子系のエントロピーは、となる。また、も成立する。ここに formula_20 は直交成分を持ち、formula_21 はシャノンエントロピーとする。このエントロピーは増加するが、決して射影演算子により減少することはない。しかしながら、一般化された演算子はエントロピーを減少させることができる。純粋状態のエントロピーは 0 であり、一方、混合状態のみのエントロピーは常に 0 より大きい。従って、純粋状態は演算子により混合状態へ変換できることがあるが、混合状態のみの場合は、決して純粋状態へ変換されることはない。このように、作用する演算子が密度行列の基本的な非可逆な変換を引き起す。このことは、状態ベクトルの「崩壊」や(wavefunction collapse)と似ている。おそらく、直感には反するが、演算子は実際に量子相互作用を混合系の中で消去することにより、「情報を減少させる」。—cf. 量子もつれ, , や量子デコヒーレンスを参照。(より大きな系の部分系は、混合状態から純粋状態へと変換することができるが、その場合は他の場所でのフォン・ノイマンエントロピーを増加させることによってのみである。どのようにして対象のエントロピーを冷蔵することにより低くすることができるかが、このことと類似している。冷蔵設備の熱交換機の外側にある大気が、冷蔵設備の中の対象によって奪われるエントロピーよりも多く増加し、暖められることとなる。熱力学の第二法則を参照。(Entropy in thermodynamics and information theory)を参照。密度演算子の時間発展は、次のフォン・ノイマン方程式 ( ) で記述される。フォン・ノイマン方程式は古典論におけるリウヴィル方程式 ( ) に対応するので、リウヴィル=フォン・ノイマン方程式 ()、あるいは単に(量子)リウヴィル方程式とも呼ばれる。ここで は換算プランク定数( はプランク定数)、formula_22 はハミルトニアン、括弧 は交換子である。フォン・ノイマンの式は、純粋状態(状態ベクトル)の時間発展を記述するシュレーディンガー方程式- i hbar {partial langle Psi_k| over {partial t}} &= langle Psi_k | hat{H},end{align}と密度演算子の定義式だけを用いて導出できる。ここでブラ・ベクトル はケット・ベクトル の双対であること に注意。 統計力学においては、状態のアンサンブルを混合状態と考えることができる。量子統計力学では、あるハミルトニアンの各エネルギー固有状態が混合していると考えて密度行列を表現することがよくある。密度行列 は、たとえば混合の比率がカノニカル分布で表せるとすると、グランドカノニカル分布では、}{operatorname{Tr} (mathrm{e}^{-eta H_mathrm{G}}) } = mathrm{e}^{eta(Omega - H_mathrm{G})} で表される。ここで は逆温度、 はボルツマン定数、 はグランドポテンシャル、 はグランドカノニカル分布でのハミルトニアンである。このときオブザーバブルの期待値 は、と書くことができる。特に が恒等演算子 の場合、を満たす。また、 がハミルトニアン の場合、ハミルトニアンの固有値を とすれば、と書き換えられる。密度行列演算子は相空間の中でも実現される。ウィグナー函数の下では、等価なウィグナー函数への密度行列変換は、である。このウィグナー函数の時間発展の方程式は、上記のフォン・ノイマン函数のウィグナー変換である。ここに "H(q,p)" はハミルトニンであり、{ { •,• } } は(Moyal bracket)、量子交換子の変換関係である。ウィグナー函数の発展方程式は、古典極限の発展方程式、古典物理学のリウヴィル方程式の類似である。プランク定数 ħ が 0 となる極限では、"W(q,p,t)" は相空間の古典リウヴィル確率分布函数へと還元される。古典リウヴィル方程式は、偏微分方程式の特性曲線法を使い解くことができ、特性曲線はハミルトン方程式である。同じように、量子力学でのモーヤル方程式は、(quantum characteristic)を用いて解、すなわち、相空間の(Moyal−product)を求めることができる。実践的には、解を求める方法は異る方法を用いる。
出典:wikipedia
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