セダン(")とは、車体形状や使用形態により分類される自動車の形態のひとつである。セダンの名称は17世紀頃に南イタリアから広まった乗り物のセダンチェア(、椅子かご)からである。ラテン語で「腰掛ける」の意味の sedeo, sedo が語源といわれている。ちなみに、セダンチェアの語源がフランスの町のスダンで作られたことに由来するといわれることがあるが、間違いである。英国ではサルーン ()、ドイツではリムジーネ、フランスではベルリーヌ(ベルリネット)、イタリアではベルリーナ(ベルリネッタ)もしくはクワトロポルテ(「4つの扉」の意) と呼ばれる(ただし一部の欧州ではクラシックと呼ばれる場合もある)。日本および米国では一般にはセダンが一般名称で、サルーンは上級グレードの商標として用いられることが多いが、実質は英国と米国の呼称の違いであり、JISや自動車技術会での技術的な扱いではまったく同じものを表す。日本のJISや自動車技術会では、「サルーン」という呼び名が基本で、「セダンともいう」と規定されている。日本では各メーカーが、一時期英国高級車のサルーンをイメージして、大型上級セダンに「サルーン」と名づけたことから、「サルーン」に高級感のイメージが付加された。一般的にはリアデッキを持つ3ボックス型の乗用車のことをいうが、中にはリアデッキを持たない2ボックス型も含まれる。セダンには独立したトランクを持つタイプ(2ドア/4ドアセダン)と独立したトランクを持つかわりにリアハッチを設けたハッチバックタイプがある。2ドアセダンはかつて、小型大衆車を中心にオーナードライバー向けとして設定されていたが、使い勝手の乏しさなどの理由で需要が激減し1980年代に入ると日本国内ではほとんどが4ドアセダンとなる。2ドア乗用車は、21世紀の今日では3ドアハッチバック、もしくはクーペにそれぞれ分類されるため、用語としての2ドアセダンはほぼ使われていない。ボンネットと、独立したトランクリッドを持つトランクルームの間に車室を持つ。現在のセダンとしてはもっとも車種の多い形状となる。「3ボックスカー」と呼ばれることもある。静粛性に優れる、車体剛性が損なわれにくい(安定しやすい)、荷室の中を覗かれない、被追突時におけるリスクが小さいなどの利点がある。北米では、防犯上の理由で独立したトランク構造が好まれ、バレーパーキングではトランクオープナーに施錠をするか、またはトランクを開けることができないスペアキーのみでクルマを預ける場合に都合が良い。FR(後輪駆動)や四輪駆動の場合はサスペンションアーム、プロペラシャフト、デフ、ドライブシャフトがトランクルームの前や下に位置するため、ラゲッジルームがいびつな形状となったり、容量が限られる場合がある。FF(前輪駆動)の場合はリア周りのレイアウトに制限は少ないが、バルクヘッド貫通型のトランクスルー機構を持った車種以外では、大きな(または長尺の)荷物を積めないなどの欠点もある。多くの自動車メーカーのコンパクトカーを除く基幹車種では、企画時に3ボックス型が最量販車種として位置づけられることが多く(一部例外あり)、その設計を基本とし、ステーションワゴン、ハッチバックセダン、クーペをはじめとした派生車が開発され、時としてコンバーチブルが生まれることもある。ホンダ・アコード(セダン)をベースにアコードツアラー、アコードクーペを作るなど。ただし、近年では車体剛性や後方の衝突安全性能の確保が難しいという理由でスバル・レガシィB4(BM型系以前)、およびスバル・WRX(VA型系以降)、トヨタ・カローラアクシオ、トヨタ・アベンシス(現行型セダンは日本市場未投入)などのようにステーションワゴンをベースに逆にセダンを作る例やスズキ・SX4セダン(のちのスズキ・シアズ/スズキ・アリビオ)やスバル・レガシィB4(BN型系以降)のように、クロスオーバーSUVをベースに逆にセダンを作るという例もある。ノッチバックセダンのうち、リアデッキが極端に短いタイプ。「セミノッチバックセダン」「ショートノッチバックセダン」「2.5ボックスセダン」と呼ばれる。ハッチバックのものもある。 リアウインドウが比較的寝かされたタイプ。流線型ブームの始まる1920から1950年代の海外メーカー車によくみられたが、現在では主流ではない。日野・ルノーやVW・ビートル、シトロエン・2CVは日本でもよく知られる存在であり、そのほか、比較的遅くまで採用していたのがサーブで、同社初の自動車である 92 から、初代 900 までの各世代や中期型までの初代ヒュンダイ・ポニーなどでみられる。日本車では日産・チェリー、初代日産・バイオレット(前期型のみ)、初代日産・パルサー(前期型のみ)、中期型以降の2代目トヨタ・パブリカ(OEMの中期型以降のダイハツ・コンソルテを含む)、初代トヨタ・パブリカスターレットセダン(OEMのダイハツ・コンソルテ4ドアセダンを含む)に見られるのみとなっている。近年ではクーペとして分類されることもあり、メルセデス・ベンツ・CLSクラス、およびメルセデス・ベンツ・CLAクラスではそれぞれ4ドアクーペとしている。また、マツダ・アテンザスポーツや2代目以降のトヨタ・プリウス、2代目以降のホンダ・インサイト、欧州向け7代目三菱・ランサー(5ドア車)(日本名・ギャランフォルティス スポーツバック)のように3ボックス(あるいは2.5ボックス)セダン風に見せた5ドアハッチバック車もファーストバック(カムバック)セダンと呼ばれる場合がある。リアデッキ(リアノッチ)を持たないタイプ。以前はトランクリッドを持つタイプも製造されていたが、現在ではリアゲートを持つハッチバックタイプがほとんどである。初代ホンダ・シビックや2代目ホンダ・トゥデイなどのように、同世代にトランクリッドを持つものとハッチバックをもつものの両方が存在する例もある。4ドアセダンのうち、ドアに窓枠を持たないものは「4ドアハードトップ」と名付けられる場合が多い。2000年代初頭まで中級乗用車や高級車を中心に設定されていた。現在の日本車には採用されていない。ただし、富士重工業(スバル)では「サッシュレスドア」と呼び、セダンとして分類していた。中でもレガシィは2009年にフルモデルチェンジされるまでサッシュレスドアを採用していた最後の車種であった。なお、軽自動車のカテゴリーでは、2代目オプティのみが軽自動車唯一のハードトップセダンであった。かつては車両中央(Bピラー)が無く、4ドアとしては異様にルーフの低いピラーレスハードトップが流行したが、側面衝突安全性への対応や経年劣化後の窓の艤装精度、またシートベルトの固定位置等に問題があった為、1990年代後半には完全に姿を消した。ピラーレスハードトップはバブルの名残であったとも言える。欧州では2004年に4ドアハードトップボディを持ったメルセデス・ベンツ・CLSクラスが発表されたのを皮切りに、フォルクスワーゲン・CC、アストンマーティン・ラピード、BMW・5シリーズグランツーリスモ、アウディ・A5スポーツバック、メルセデス・ベンツ・CLAクラスなどといったハードトップセダン(クーペとされる事も多い)が発表され、人気を博している。独立したトランクリッドを持つ代わりにリアハッチを設けたタイプ。2ボックス型は単に「ハッチバック」と呼ばれるが、特に外観上長めのリアデッキ(トランクルーム)を持ち、2.5ボックスや3ボックスもしくはファストバック(カムバック)風に見えるものは、メーカーが「セダン」と名付ける場合がある(「5ドアセダン」とも呼ばれる)。小型車の一部を除き、4ドアセダンをベースにリアハッチを設けたタイプがほとんどである。3ボックスセダンと比べ、後席と荷室を使い分けるうえでの自由度が大きく、収容力も非常に高いが、その構造上、車体剛性面や静粛性が劣ること、端正なスタイルにまとめることが難しいことなどから、市場の嗜好や車格により普及度が異なる。その中で、シトロエン(XM)は一時、ルノー(30〜ヴェルサティス)は現在もフラッグシップモデルにハッチバックを採用していることが特筆される。日本国内で最初に導入されたハッチバックセダンは1965年のトヨタ・コロナ(5ドア)や、1967年に追加された三菱・コルト800(3ドア)であったが、当時の日本人にはセダンというよりライトバンのようなイメージが強く、ほとんど受け入れられなかった。その後、1980年代前後に、各メーカーが5ドアセダンを小型・中型大衆車クラスを中心に設定した時期があったが、1990年代になるとSUVやステーションワゴンなど、ユーティリティービークルのブームもあり、日本向けのラインナップからはほとんど途絶え、トヨタ・コロナSF、ダイハツ・アプローズ、アンフィニ・MS-6、三菱・ギャラン、輸入車として日産・プリメーラUKなどが細々と売られる程度であった。長らく人気の出ないスタイルであったが、2000年代以降は実用性の追求や海外市場との兼ね合いから5ドアボディを採用する車種も登場し、2002年にマツダ・アテンザスポーツで採用され、2003年にはトヨタ・プリウスがフルモデルチェンジで、2009年には2代目ホンダ・インサイトがそれぞれコーダトロンカ形の5ドアボディが採用された。近年では欧州の高級車に3ボックス5ドアボディを持つ車種が登場している。ポルシェ・パナメーラ、アストンマーティン・ラピード、BMW・5シリーズグランツーリスモ、アウディ・A5スポーツバックなどがこれに当てはまる。なお、これらの車種はサッシュレスドアを持っていることや(上記車種のうちパナメーラは窓枠付きのサッシュドアである)、そのエクステリア・デザインなどから「5ドアクーペ」と呼ばれる事も決して少なくない。セダンにスポーツ性をプラスしたものはスポーツセダンと呼ばれる。本来実用性や快適性が求められることの多い4ドアセダン(1970年代以前は主に2ドアセダン)に、あえてスポーツ性を加味した趣味性の強いモデルが一般にスポーツセダンと呼ばれる。セダンの持つ性質から家族を持つ走り好きからの支持(スポーツセダンはクーペに対し周辺の理解が得やすい)があるといわれる。インプレッサ WRX STiやランサーエボリューションのように、絶対的な速さやモータースポーツへの参加を強く意識したモデルもあれば、アルテッツァ、スカイラインやレガシィB4のように速さよりも運転する楽しみを重要視したモデル、またはクラウンアスリートや、かつてのカローラGT、カリーナGT、ギャランVR-4、マークII三姉妹のGTツインターボ/ツアラー系などに代表される、普通の実用セダンとほぼ同じ平凡な外観でありながら、その気になればスポーツカーに一泡吹かせるほど速いという意外性を楽しめる「羊の皮を被った狼」的モデルもある。高出力エンジンや専用サスペンション、その他エクステリア・インテリアなどに専用装備を持つものも少なくない。また、近年においては、より実用性を重視したミニバンの流行により、4ドアセダンとしての存在価値を見いだすためにより軽量で、低重心でなおかつ空力特性に優れることからスポーツセダンとしての味付けを強調したモデルが増加しており、保守的な顧客のためのモデルとの間で二極分化が進行している。総じて言うと、2016年現在国内販売される日本のスポーツカー(扱いされうる車種)は2ドアクーペ、および3ドアクーペの壊滅的減少によりスポーツセダン(ノッチバックセダン)、あるいは一部のホットハッチ(ハッチバック)やスポーツワゴン(ステーションワゴン)がむしろ多数派といえる現状がある。日本の軽自動車でも1970年代まではリアデッキを持ったノッチバック型で純粋にセダンといえる車が製造されていたが、利便性に難があることなどからノッチバック型は次第に廃れ、ショートファーストバック(2ボックスまたはノッチレス、+ハッチバック)型が主流となった。この傾向は軽自動車の規格がより大きくされた1990年以降、21世紀に入った現在でも変わっていないが、変わり種として1998年から2002年まで販売されていた2代目ダイハツ・オプティが、小さいながらも本格的なトランクルームを備えたショートノッチバック(小さいトランクのため2.5ボックスとも)型ハードトップセダンとして販売されていた。ただし現在でも乗用車(5ナンバー車)においては、「バンでもワゴンでもない」ことをアピールするためにメーカーが実質的に「セダン」と名付けることがある(例外あり)。日本では高度経済成長末期の1970年代までは、大衆車でもノッチバックセダンが好まれたこともあり、各クラスともノッチバックセダンが販売の主流であったが、2度のオイルショックを経て大衆車では、スタイルよりも実用性が求められ、小型車のハッチバック化が進んだ。その間、従来の小型車は少しずつ車体の大型化と車格の上級移行が行われていった。1990年代に入ると、従来のクルマにはない付加価値が求められ、RVブームが起こり、SUV、ステーションワゴン、ミニバンの市場が一気に拡大し、オーソドックスなセダンの需要は縮小していった。2000年代には、コンパクトカー(ハッチバックやトールワゴン)とミニバンが、そして2010年代にはハイブリッドカーやセダンタイプを除く軽乗用車(主にトールワゴンやスーパーハイトワゴン)が市場の中心となり、依然としてセダンのシェアは2ドア、および3ドアの各種クーペや大型クラスのSUVのシェアほどではないが、ごく一部の車種を除き低迷が続いている。尤も、スズキのように結果として2015年度を以って日本市場におけるセダンのラインアップ、および生産・販売から完全撤退したメーカーや三菱自動車工業のように2016年度以降より日本市場、および欧米市場向けのセダンの開発・生産・販売を打ち切ったメーカー、果ては日産自動車のように2016年度内を以って日本市場における需要激減に伴うフルBセグメント以下の小型セダンの販売から完全撤退したメーカーなども存在する。最近では税制の緩和やグローバル化による海外市場への対応、ボディの大型化により、1300cc以上2000cc未満クラスのセダンまで含めて3ナンバーセダンが増加し、結果として2000年代後半より5ナンバーセダンのラインナップは立続けに減少し、結果的に先述の日産自動車の例の通り5ナンバーセダン市場から完全撤退するメーカーも少なくない。日本においてこの種の車種が激減したのは、先述の通り背が高くてスペース効率や日常での使い勝手などに優れる(座席定員やドア数が多く、さらにラゲッジルームもセダンより広い)車種が人気の主流となり、尤も、2ボックス型のハッチバック車や小型ステーションワゴンと基本性能がほぼ変わらない保守的な日本市場向けのフルBセグメントクラス以下の小型セダンが多くの大衆に支持されなくなったこと、Cセグメントクラス以上の海外向け日本メーカー製セダンが度重なる大型化により日本の道路事情にそぐわなくなったこと、セダンより先に絶滅したピックアップトラック(ボンネットトラック)や2ドアクーペ・3ドアクーペ亜流のスペシャルティカーなどと同じ理由で仮に日本向けに改善したとしても元々需要の少ない車両を販売するため必然的に高価格になり、益々需要が減るという悪循環に陥ったことなどによる。しかし、パトロールカー、社用車、タクシー、教習車、レンタカーといった業務用の分野では依然としてセダンの需要はあり、これらには専用のグレードや車種が設定される場合も少なくない。特に、規格に制約があるタクシー用(主に小型・中型料金向け)には信頼性、整備性、乗務員の疲労軽減、狭い場所での取り回しに配慮したFRの5ナンバーセダンが2016年10月現在、トヨタから発売されている。また、輸入車で代表的なBMW・3シリーズ、メルセデス・ベンツ・Cクラス、アウディ・A4、フォルクスワーゲン・パサートなどといったDセグメントクラスでは、ステーションワゴンがラインナップに加えられ、更にシリーズは異なるがSUVも揃えられているにも関わらず、依然としてセダン人気が高いモデルが大多数を占めている。ワゴンの値付けが総じて高額となっていることもあるが、かつて輸入車に憧れた団塊の世代の需要、会社経営者層の“ビジネスシューズ”としての需要など、フォーマルなセダンである事を第一条件として挙げた場合に、同じ程度の排気量クラスでは国産車がほとんど残らないという状況も少なからずある。なお、日本の市場縮小という要因もあってか日本メーカー、海外メーカー問わず海外市場では販売されているセダンが日本では販売されていない(下記参照)、あるいは日本メーカー車の場合逆輸入扱い、もしくは個別受注生産・受注販売・OEM(下記参照)扱いなどになっている…という現象も決して珍しくない。※ごく一部の例外(国内ではスズキ(インド・タイ・中国向けの一部車種は除く)、国外ではフェラーリなど)を除き、ほぼすべての乗用車メーカーがセダンを販売している。
出典:wikipedia
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