マンガン乾電池(マンガンかんでんち)は一次電池の一種で、正極の減極剤(復極剤)として二酸化マンガンを用いたものである。別名、ルクランシェ電池。英語では「Zinc-carbon battery:亜鉛-炭素電池)」と呼称され、「Zinc-carbon battery(or "heavy duty"):亜鉛-炭素電池(高耐久型)」とも呼称される。電池の構成としては、正極兼減極剤として二酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液に塩化亜鉛を用いている。現在国内で流通している製品の大部分は塩化亜鉛を用いているが、現在も青マンガンや緑マンガンは塩化アンモニウムを使用している。この塩化亜鉛は二酸化マンガンと混合された黒色のペーストの形で容器の中に充填されている。なお、正極側の炭素棒は集電棒とも呼ばれ、反応には関与しない。塩化アンモニウムを使用したマンガン電池は「EMDタイプ2(EMD Type2)」と呼ばれ、塩化アンモニウムの多くを、もしくは全てを塩化亜鉛を使用したマンガン電池は「EMDタイプ3(EMD Type3)」と呼ばれる。EMDタイプ2型は減極剤を圧力で固めた後、亜鉛缶に入れる際に周囲をでんぷんのり状にした電解液で覆ったり、液体の電解液をガーゼなどの布に含浸させたものを減極剤に巻いて亜鉛缶に挿入する。EMDタイプ3型は減極剤の回りをペースト状にした電解液を含浸させた紙を巻き、亜鉛缶に挿入する(ペーパーランド方式)。EMDタイプ2型は電池を使用するにつれて化学反応で水が発生し、後述の簡易な外装も相まって液漏れが発生しやすい。EMDタイプ3型は化学反応で水を消費することと、頑丈な外装によって液漏れの発生は少なくなっている。乾電池の中ではごく一般的な種類で、円筒形(単1 - 単5)、角型 (006P) など、各種の形状が生産される。アルカリマンガン乾電池(アルカリ乾電池)に比べると容量が少ないが、しばらく休ませると出力を回復する性質を持つ。また、市販価格はアルカリ乾電池の半分程度である。このため、負荷電流が比較的小さいリモコンや時計など、また間欠的に使用するガスコンロやストーブの点火ヒーター、懐中電灯、ラジオなどの用途に適している。また、液漏れしてもアルカリ電池より毒性の低い「弱酸性の電解液」であるため玩具にも使用される事があるが、目などに入れば危険である。容量がアルカリの数分の1と少ないため過放電しやすく、アルカリと比して液漏れしやすいかどうかは不明である。角型のものは積層電池であり、内部で小型の電池が複数直列に接続されている。これらの電池の電圧 (V) は、内蔵している電池の数×1.5となる。現在マンガン乾電池の積層電池として、ほぼ唯一存在している006Pでは、6個の小型電池(9V)が内蔵されている。かつては4AAという単3形乾電池が4つ内蔵された6Vのものもあった。尚現在でも海外では真空管ラジオのB電池用である積層高電圧電池やフラッシュ用15F20(015)等を生産している。また、信頼性・寿命・電力等の問題から今なお単1乾電池より大型の平角3号(FM-3)、平角5号(FM-5)、正角1号(SM-1)等の大型の乾電池も特殊用途として供給されている。これらの大型電池には特殊な仕様として電気柵電源用、工事警告灯用もある。一般に市販されているマンガン乾電池には、通常出力用と高出力用があり、標準(S)を緑色・高容量(C)を青色、通常出力用(P)を赤色・高出力用(PU)を黒色として区別される。アルカリマンガン乾電池より軽いマンガン乾電池の中でも、通常出力用は高出力用より重量が軽い。これは、マンガン電池のランク分けで減極剤である二酸化マンガンの量や、電解液の成分を変えているためである。また、金属外装、熱収縮チューブ外装、紙巻き外装等の外装方法でも重さが変わる。基本的にランクが低いほど、外装も簡易になるためである。マンガン電池の外装方法は他の電池と異なり多くの種類がある。古くはボール紙で巻いただけの外装であった。マイナス極も亜鉛缶がむき出しで、液漏れに対する能力はなく、1960年頃まで多く使用されていたEMDタイプ2型は液漏れで機器を濡損させることがままあった。また、ボール紙を重ねて巻くため、亜鉛缶や減極剤(二酸化マンガン)の容積が小さくなり、容量も小さくなっていた。なお、現在はブリキ製の金属外装が主流で、マイナス極もニッケルメッキした金属板に覆われており、かつ金属外装の下にPVCの熱収縮チューブを用いて亜鉛缶を絶縁も兼ねて覆っており、液漏れしにくくなっている(液漏れを完全に防止できるわけではない)。ただし、安価なものでは他の外装を施しているものが多い。金属外装や紙巻外装の他に、以下の外装がある。形状により形式が分けられている。尚、これらは本来はマンガン乾電池に限らないあらゆる乾電池のサイズを表すものである。「R」は円筒形を、「F」は角型を表す。マンガン電池を特定的に表す記号が無いのは、マンガン乾電池が一般的に普及した初めての乾電池だったため、当初は乾電池といえば必ずマンガン乾電池であり、区別の必要が無かったためである。例えば「R6」(単3形)の前に、アルカリ乾電池を表すLをつけると「LR6」となり単3形アルカリ乾電池を意味するが、特にマンガン乾電池を表す記号が無いため、単に「R6」とした場合は単3形マンガン乾電池を指す。また、「6R61」と「6F22」は使用上の違いは無いが、内部の構造が違っており、「6R61」は単6形電池6本が、「6F22」は角型の電池6個が一体になったものが入っている。しかし現実にはどちらも使用時に区別する必要が無いため、両方の番号を併記したり、6F22に「6R61」と書かれていることも多い。また末尾には等級区分が付加される。単3形の高出力型なら、形式はR6Pとなる。以前は朝日乾電池、三洋電機、ソニー、ユアサ等でも生産していたが、現在は撤退している。また日本国内でのマンガン乾電池生産は、2008年(平成20年)3月31日をもって終了しており、以後は海外生産のみである。日本では、アルカリマンガン乾電池が大量に出回っている状態であり、マンガン乾電池の入手がやや困難である。マンガン乾電池が国内生産されていたとき、JIS C8501の後に以下のような製造会社の固有符号が付与されていた。この記号によりOEMされた製品でも製造元が判る。乾電池を過放電させてしまうと徐々に容器が侵されて、ついには穴があき内容物が漏れる(液漏れ)という現象を引き起こすことがある。したがって、長期間乾電池を使用しない場合は使用機器から取り外して液漏れや、液漏れによる機器端子の腐食を防ぐことが望ましい。3個以上の電池を直列にして使用する場合には、その中のいくつかの極性(+/-)が逆の状態になっていても使用機器が動作することがあり、極性が逆になっている電池には通常と逆方向に電流が流れて内部で異常な化学反応が進行し、破裂・液漏れを引き起こす可能性があるため、特に極性に注意して正しく使うことが望まれる。乾電池も基本的にはJIS規格品だが、メーカーが異なればその特性も微妙に異なる。万一メーカーの異なる乾電池を混ぜて使用していて乾電池に起因するトラブルがあった場合は、メーカーからの保証が受けられなくなることがある。国内家電メーカーのエアコンの液晶リモコンには、アルカリ電池推奨と書いてあることが多いが、よほど消費電力が大きいものでない限り、マンガンでも使える(アルカリ乾電池と同じく、消耗時には液晶表示が消える)。西村昭義:著『電池の本 改訂版』(ISBN 978-4789811859) CQ出版社 1992年
出典:wikipedia
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