東武30000系電車(とうぶ30000けいでんしゃ)は、1996年(平成8年)から2003年(平成15年)にかけて150両が製造された東武鉄道の通勤形電車。1997年(平成9年)3月25日から営業運転を開始した。帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)半蔵門線への乗り入れに対応した設計とされた。本項では、個々の編成を表す場合は浅草・中央林間・池袋方先頭車の車両番号の末尾に「F」(「編成」を意味する英語Formationの頭文字)を付して表記する。1983年(昭和58年)から13年間にわたって486両導入された10000系車両の後継車両として登場した。当時計画中だった帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)半蔵門線への直通運転に対応した設計とされ、アルナ工機・東急車輛製造(現社名:横浜金沢プロパティーズ。現事業は総合車両製作所横浜事業所が継承)・富士重工業の3社で6両固定編成・4両固定編成各15本の合計150両が製造された。なお、アルナ工機と富士重工は本系列の製造をもって鉄道車両製造から撤退した。31610F・31408Fはアルナ工機が東武鉄道向けに製造した最後の車両であり、31406Fは最後の富士重工業製の電車となった。地下鉄半蔵門線への直通運転用車両には、既存の10000系列を改造して直通運転に充当する構想もあったが、次世代通勤車両の計画が浮上する中で、改造する費用面の問題などから本系列が製造された。本系列では乗り入れ先の仕様に合わせて運転台の主幹制御器に両手操作のT字型ワンハンドル式やIGBT素子によるVVVFインバータ制御装置を東武鉄道の車両で初めて採用した。東武初のワンハンドルマスコンを採用したため、1996年11月以降の搬入から翌年3月の営業運転開始まで長い乗務員習熟運転期間が設けられた。また、半蔵門線との相互直通運転開始(2003年)の7年前から製造が開始されているが、これは当初予定されていた1999年(平成11年)度の半蔵門線押上駅延伸に併せて東武では初採用となるワンハンドル車両について乗務員習熟を進める目的もあった。なお、最初の時点ではダイヤ改正による輸送力増強と旧形車の置き換え用としての新製であった。また、伊勢崎線(東武スカイツリーライン)浅草 - 曳舟間など10両編成が入線できない区間があることと、西新井工場または杉戸工場(南栗橋車両管区の設置により現在はともに閉鎖)への検査入場の際に10両固定編成だと入線が不可能(最高20 m車8両までが限界だった)なことから、あえて10両固定編成での製造はされなかった(その後2005年(平成17年)に50050系が10両固定編成で落成)。当初は地上線専用として、伊勢崎線や日光線などで使用されていたが、2003年(平成15年)、伊勢崎線の地下鉄半蔵門線・東急田園都市線への直通運転が開始され、計画通り本系列が直通運転に充当された。その後、2006年(平成18年)に直通運転用の次世代車両50050系の導入が開始され、これにともない、本系列の一部は直通運転から離脱し、再び伊勢崎線・日光線などの地上線専用で使用されていた。2011年(平成23年)からは東上線・越生線所属車両のATC化に伴う車両改修の効率化を目的として、地上用専用編成が改造の上、東上線系統に転属している 。2015年現在は半蔵門線直通対応の20両を除き、残りすべての編成(130両)が東上線に所属している。20 m両開き4ドア、車体は軽量ステンレス製鋼体であり、従来の東武ステンレス車と同じく「ロイヤルマルーン」色の帯を巻く。前頭部はFRPの成形品を使用し、併結運転を考慮して正面貫通式である。客室との仕切壁付近には地下線内における非常用の梯子が設置してある。前照灯は東武では初めてHID式を採用した。下部にはスカートを設置したが連結器の関係で高さを限界まで下げている。連結器は密着連結器であり、下部に併結運転用に二段の電気連結器がある。上部の122接点が本系列と10000系列の共用、下部の37接点は本系列同士の連結用である。側面見付は10030系に準じているが、扉間の側窓が2連のユニット窓となった。客用ドアは高さを10000系列より50 mm高い1,850 mmとしており、ドアガラスには複層ガラスが使用されている。連結部には新たに転落防止幌が設置された。前面・側面の行先表示器はLED式であり、前面には種別・行先表示・運行番号の表示器が、側面には従来車よりも横幅が約2倍ある大型の種別・行先表示器がある。東武線内における半蔵門線直通列車では行先の右側に「半蔵門線直通」と表示される。当初は乗り入れ先の東急田園都市線での使用に備えて、前面に急行灯(通過標識灯)が設置されていたが、その後直通先の東急田園都市線内での前面の急行灯の使用停止に伴い、2002年(平成14年)度の増備車である31611F・31411F以降より急行灯が省略されている。客室はウォームグレーを基調としてペールブルーをアクセントとした白色系の化粧板を使用している。床材は淡いグレーをベースに中央通路部をブルーとした2色の柄である。本系列より車内の禁煙表示や消火器表示などの車内表記にピクトグラムが用いられるようになった。座席は1人分の掛け幅が455 mmの青色のロングシートととし、背ずりに赤色の着席区分を設けた区分柄モケットを使用している。当初は平板なものであったが、31603F・31403Fからはバケットシートを採用した。ただし、優先席は淡い緑色のモケットを使用している。初期車では座席端の仕切りが袖仕切であったが、2000年(平成12年)度の増備車である31607F・31407Fからは仕様の見直しがあり、仕切板の大型化や7人掛け座席部を4人/3人に区切るスタンションポールの設置、荷棚やつり革の高さを従来車よりも低くした。特に優先席付近の荷棚・つり革は一般席よりもさらに低くした。また、2連のユニット側窓の片側を固定式にしたほか、外観では転落防止幌が大型のものとなった。なお、スタンションポールはそれ以前の車両にも後に設置したほか、優先席のつり革は後年にオレンジ色のものに交換する際に低くした。また、31615Fは直通運転から外れた際に仕切板が水色から白色のものに交換された。6両編成の2・5両目と4両編成の2・3両目に車椅子スペースを設置している。非常通報器は対話式のものを各車2台設置した。連結面は妻面窓があり、各車の両端に大型ガラスを使用した連結面貫通扉が設けられている。天井には車体全長に渡って冷房用ダクト・吹出口が、中央にはロールフィルターと補助送風機である軸流ファンが収納された整風板が設置してある。冷房装置は東芝製のマイコン制御による集約分散式(1台の能力は16,000 kcal/h)の装置を各車3台搭載している。乗務員室はそれまでのグリーンの配色をやめ、ダークグレーの色調としている。運転台コンソールは淡いグレーの色調で落ち着いた色調としている。主幹制御器は前述の通りワンハンドルマスコンを採用している。計器盤中央に車内信号に対応した速度計があり、両側に表示灯を、右側には車両情報制御装置のモニター表示器が収納されている。乗務員室仕切は客室から向かって左から(運転台背面は壁)仕切扉窓・固定窓がある。遮光幕は両方の窓に設置している。車内の客用ドア上部には千鳥配置(交互配置)で20070系で使用されているものと同種の旅客案内表示器が設けられており、左側には種別と行先を常時表示し、右側では次駅案内・乗り換え案内等をスクロール表示する。ドアの開閉に合わせてドアチャイムを鳴動する。自動放送装置はこれまでの9050系や20050系で採用されていた男性声から女性声へと変更となった。2011年現在は直通先を含めて英語放送にも対応しているが、半蔵門線内では50050系同様自動放送を行なわないことが多い。このほか側面に車外スピーカーが設けられており、車掌の操作で乗降促進放送を流す機能がある。制御装置にはIGBT素子を使用した3レベルVVVFインバータ制御方式を採用した。装置は日立製作所製であり、1台で定格出力190 kWの主電動機を4台制御する1C4M方式である。主電動機は自己通風冷却式としており、車体側面幕板部にある冷却風取入口より主電動機冷却風を取り入れる車体ダクト方式とした。また、東武の通勤車両では初めて定速運転機能が採用されている。空気圧縮機 (CP) は当初は交流電源のレシプロ式の装置を搭載していたが、2001年(平成13年)度製の31610Fにおいて試験的にスクリュー式の装置が搭載された。これは翌年度以降に落成する31611F・31411F以降で本格的に採用されることとなった。補助電源装置は9050系に続いて東芝製のIGBT素子を使用した静止形インバータ (SIV) を採用している。ブレーキ装置は回生ブレーキ併用の全電気指令式空気ブレーキ (HRDA-2) を採用した。遅れ込め制御も併用し、安定したブレーキ力が確保できるよう滑走防止装置も設けられている。2001年(平成13年)度車より全電気ブレーキを採用した(後に既存車もソフト変更により全電気ブレーキ化)。集電装置は剛体架線に対応したシングルアーム式である。台車は住友金属工業製のモノリンク式軸箱支持方式のボルスタレス台車 (SS138・SS038) を使用している。基礎ブレーキには片押し式のユニットブレーキを使用し、保守性の向上を図っている。このIGBT素子によるVVVFインバータ、シングルアーム式パンタグラフは東武では初めて本格的に採用する装置である。このうちシングルアームパンタや転落防止幌、車内のLED式車内案内表示器、側引戸の複層ガラスなどは同年度に落成する日比谷線直通用の20070系においても採用されている。他系列との併結は、同一の電気指令式空気ブレーキシステムを有する10000系列のみ可能となっている。この場合、同系列との併結時は起動加速度が2.5 km/h/sに落とされる。本系列では10000系等で採用したモニタ表示器を発展させた東芝製の車両情報制御装置を搭載している。このような多機能型のモニタ装置の採用は東武鉄道では初めての採用である。主な機能は以下のとおりである。登場から直通運転開始前は伊勢崎線浅草口を中心とした地上線で使用された。4両固定編成は10000系列の2両編成と連結して6両編成で運用されることが多かった。2002年(平成14年)、当年度増備車である31611F・31411F以降より、半蔵門線・田園都市線用の乗り入れ用機器が搭載された。10両編成時に先頭車となるクハ31600形・クハ34400形の床下にATC/S装置の設置や10両編成時の3号車となるモハ32400形に誘導無線アンテナの設置、乗務員室に3社間対応用列車無線送受話器設置や自動放送に乗り入れ先用データの追加などが実施された。その後、従来車両にも搭載改造が実施された。2003年(平成15年)3月19日、伊勢崎線の曳舟駅 - 押上駅間の開業と、帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)半蔵門線の押上駅 - 水天宮前駅間の開業に伴い、半蔵門線と東急田園都市線との相互直通運転を開始した。埼玉県北葛飾郡栗橋町(現・久喜市)の日光線南栗橋駅 - 神奈川県大和市の田園都市線中央林間駅までの走行距離は98.5 kmに及ぶロングランとなった。また田園都市線への乗り入れ開始により、東武の車両が営業運転としては初めて神奈川県内でも見られるようになった。当初の直通列車の運行本数は通勤準急(現在の急行)が朝は4本、夕方は19本(平日のみ・土休日は区間準急で運用)、日中の区間準急(現在の準急)が1時間に3本と少なく、所要時間もかかったので利便性は高いものではなく、伊勢崎線内では準急(現在の区間急行)主体のダイヤ構成であった。2004年(平成16年)当時、東武の直通運用編成は15本と東京メトロや東急に比べて運用編成が少なかった(東武乗り入れ対応編成は東京メトロ25本・東急は31本)ため、本系列は走行距離の精算の関係上、東急田園都市線⇔半蔵門線内折り返しの運用が多くなり、日中に東武線内に入線することが極めて少なかった。前述したが、半蔵門線直通時は基本的に編成の末尾の車両番号2桁を揃えて使われていたが、車体広告編成は2003年夏季頃から6両・4両編成を組み替えて使用することが多いので、末尾の数字が揃わないことが多い。2005年(平成17年)に本系列の後継となる直通対応車両50050系の投入が発表され、51051Fが同年10月に、51052Fが同年11月に搬入された。51051F・51061F・51062F・51066Fの直通運転対応機器は新品だが、51052F - 51060F・51063F - 51065Fは本系列に搭載している機器を移設することとなり、2005年9月に31613F・31413Fの機器が取り外されている。新たに埼玉県久喜市の伊勢崎線久喜駅 - 中央林間駅間 (94.8 km) の直通運転も加わり、早朝、深夜を除いて1時間に3本から6本と運用は大幅に増加したが、速達列車での運用(区間準急→急行)に変更されたため、運用編成は1本の増加のみ (13→14) となった。改正後も50050系の落成に合わせる形で本系列からの直通運転対応機器移設が順次進められた。2009年9月時点での置き換え状況は以下の通りである。地下鉄乗り入れ編成は本系列2編成と50050系18編成の計20編成となり、平日、土曜・休日ともに17編成が運用される。地下鉄乗り入れから外された編成は種別表示の修正(区間急行・区間準急・快速・区間快速などの追加と急行・準急の削除)を行い、同年12月から宇都宮線や日光線(新栃木駅以南)などで運用を開始した。これにより5050系の置き換えが進められた。なお、宇都宮線での運用は2007年(平成19年)5月上旬に8000系に置き換えられた。また、地上運用復帰と同時に10000系列との併結運転も再開された。2008年(平成20年)3月当時は地下鉄半蔵門線・東急田園都市線直通運用(中央林間 - 南栗橋・久喜)のほかに、浅草 - 太田・新栃木までの区間急行・区間準急や日中の久喜 - 太田、南栗橋 - 新栃木、浅草 - 北千住・竹ノ塚間の普通などで運用されていた。50050系登場後も半蔵門線を走行する車両では唯一、編成を6両と4両に分割できる車両であることから、10両貫通編成が入線できない南栗橋/館林以北へ田園都市線・半蔵門線からの直通臨時列車を運行する際は本系列が使用されている。以下に運行実績を記す。直通当初は田園都市線での急行表示は赤字のみで「急行」と表示されていたが、2006年3月18日の久喜への乗り入れ区間延伸および東武線内での急行種別使用開始に伴い赤枠に「急行」と表示されるようになった。一時期は押上始発で本系列を使用する列車に限り旧表示がまれにあったが、その後新タイプに統一された。2006年度からは、直通運用に使用されている編成も車両の検査入場などに絡む短期間ではあるものの、6両編成は浅草口で、4両編成は主に宇都宮線で使用されていた(10000系との併結は行われない)が、前記したように、宇都宮線での運用は2007年5月上旬に8000系に置き換えられた。2006年10月から2007年4月中旬まで、31604Fと31404Fの車体にパルシステム生活協同組合連合会の広告が貼付されていた。地上線への転用については、弱冷房車の位置が東京メトロ車や東急車と違うことや、中間に組成される先頭車の運転台部分がスペースを取ることで混雑が悪化することなどが理由として挙げられている。本系列は東上線系統には配置されていなかったが、2011年1月26日に31601F・31401Fが森林公園検修区へ回送され、6月13日より東上線での営業運転を開始した。同年10月には31611F・31411Fが同様に森林公園検修区に転属し、同線で運用に就いている。前述したが、これは東上線車両の改修工事の効率化を目的としたものである。東上線転属後はクハ36600形とクハ31400形号は付随車(サハ)に改造されており、10両固定編成化されている。ただし、乗務員室の撤去は実施されていない。また、先頭車の電気連結器の撤去、床下車両情報制御装置本体の更新や運転台計器類の液晶モニター化 (グラスコックピット) 、マスコンハンドルの交換、行先表示器や自動放送装置のプログラム変更なども実施されている。なお、250系は主回路制御方式や台車が本系列とほぼ共通のものが使用されている。
出典:wikipedia
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