『ラバー・ソウル』("Rubber Soul")は、イギリスにおいて1965年12月3日に発売された、ビートルズの6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム、アメリカでは11作目のアルバムである。本作の制作はクリスマス・マーケットに間に合わせるため、10月12日から11月15日の1ヶ月あまりの期間で済ませられた。時間的な制約を受けながらもビートルズとジョージ・マーティンは、「ノルウェーの森」ではシタールを、「ミッシェル」「ガール」ではギリシャ風のギター・ラインを、「嘘つき女」でファズ・ベースを、そして「イン・マイ・ライフ」ではバロック音楽風のピアノ・ソロを使用するなどして 、従来の枠に捉われたロック・バンドから抜け出したアルバム制作を成し遂げている。音楽的には、ビートルズは自身の音楽の幅を拡げていった。最もよく知られているのは、フォーク・ロックの旗手であったバーズとボブ・ディランからの影響である。アルバムでは、ビートルズがロックン・ロールで使われる楽器から使う楽器の幅を広げているのが見えてくる。特に代表的な「ノルウェーの森」では、ヤードバーズやキンクス(実際にKinksはSee My Friendの曲中で、ギターのエフェクトによってシタールに似た効果を出しているのみ)がすでに自身の音楽でインドの楽器を使ってはいたのだが、この曲がポップ・ミュージックにおいては初めてとされる。以降、1960年代中盤に新しい楽器を使う流行を生み出し、今では一般的に「ワールドミュージック」と呼ばれる分野の先駆けの1曲として認識されていて、西洋の音楽の中に西洋ではない音楽の影響を入れるトレンドの歴史的なきっかけとなった。ハリスンは、バーズのデヴィッド・クロスビーにインドの歴史的音楽とシタールを紹介された。ジョージ・ハリスンはすぐにこの音楽にのめり込み、シタールのレッスンを高名なインドのシタール演奏の巨匠、ラヴィ・シャンカルから受けるようになった。打楽器使用の広がりは、リンゴ・スターのバック・ビートやマラカス、タンバリンの使用頻度の増加がもたらした。これは、アルバム中で聴ける。分かりやすい例なのが「ウェイト」や「嘘つき女」といった曲である(「ウェイト」は前作『4人はアイドル』のアウトテイク)。リンゴがアルバムの中で使った最も変わった打楽器は、彼がリメインズのBarry Tashianに"Ticket to Ride"と言う本で明かしていることだが、彼がマッチ箱を指で叩いて作られているものである。この「タッピング」サウンドは「君はいずこへ」で聴ける。このアルバムを録音中に、録音技術の革新も行われた。例として、「イン・マイ・ライフ」でのキーボード・ソロがハープシコードのように聴こえるというのがある。しかし、実際に演奏しているのはピアノである。ジョージ・マーティンは、このバロック調の演奏で曲のテンポに合わせられないことが分かったので、テープ速度を半分にして録音してみた。ミックス・ダウンに普通のスピードにして聴いてみると、スピードを上げた音はハープシコードのような音となった。他にも、様々な楽器による電気的な音を作成したことがある。知られている曲としてコンプレッサーにかけられ、イコライザーで音を変えられたピアノの音が使われている「愛のことば」がある。この特有のエフェクトは、すぐにサイケデリック・ミュージックにおいて非常によく使われるようになった。本物のシタールを「ノルウェーの森」に導入し、「愛のことば」ではドラッグに影響された平和と愛の感情を、多くのサイケデリックな詞と共に声にした。アルバムが、シングル「恋を抱きしめよう/デイ・トリッパー」(両A面)と同時に出来あがって、ビートルズは数年に及ぶノンストップの録音、ツアー、映画撮影から解放された。その後すぐ1966年の最初に3ヶ月の休みを取った。彼らはこれから続く音楽の仕事に対して方向性を探す作業にこの自由な時間を使った。それはすぐに次のアルバム、『リボルバー』として世に出ることとなる。ビートルズのキャリアの中で、アルバムでは『ザ・ビートルズ』に至るまでステレオとモノラルの併売が続いた。特に初期のアルバムは、モノラル盤制作に主眼が置かれていた。ビートルズ研究家のマーク・ルウィソーンによると、グループ、プロデューサーのジョージ・マーティン、アビー・ロードのエンジニアは多くの時間とその注意をモノラルのミックス・ダウンに用い、バンドはセッションやエンジニアが参加する活動に顔を出していた。彼らの傑作とされる『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のLPにおいても、ステレオ・ミックスダウンよりモノラル・ミックスダウンが大事にされていた。最初に出た『ラバー・ソウル』のステレオ盤はビートルズの初期のアルバムに似て、主にヴォーカルは右チャンネルに、楽器は左チャンネルに入っている。その作り方は、以前のアルバムとは同じではない。セカンド・アルバムの『ウィズ・ザ・ビートルズ』までは2トラックのテープに録音されていて、モノラル・レコードのみを作るつもりであった。従って、彼らはヴォーカルと楽器を別々に分けて、2つのパーツを後にミックスして適切な形にすることが出来るようにしていた。しかし本作の頃には、ビートルズは4トラック・テープで録音していて、『ビートルズ・フォー・セール』、『4人はアイドル』で実際行われていたようにヴォーカルを中央に置き、楽器を左右に振り分ける形でステレオ・マスターを作れるようになっていた。だがマーティンは、ステレオ・アルバムをモノラル・プレーヤーにかけた時に良い音が出るような方法を模索していた。彼は実験し、4トラックのマスターをヴォーカルを右に、楽器を左に、中央には何も置かない状態でステレオにミックス・ダウンした。アルバム・タイトルは本場のブルースマンがローリング・ストーンズを揶揄した「プラスティック(まがい物の)・ソウル」という言葉から、ポール・マッカートニーが考案したもの。ジョン・レノンも1970年のローリング・ストーン誌からのインタヴューでタイトルはEnglish Soulの意味だとしながらもポールがプラスティック・ソウルとつぶやいていた事実を認めている。アンソロジー2の「アイム・ダウン」の最後にこのつぶやきが収録されている。なお本作の日本盤には以前からの習慣に基づいて「ノルウェーの森」、「ひとりぼっちのあいつ」、「嘘つき女」、「愛のことば」、「消えた恋」、「君はいずこへ」、「恋をするなら」、「浮気娘」などといった自由な邦題が付けられている楽曲があるが、次作以降は2曲の例外を除き、基本的にオリジナル・タイトルをカタカナ書きにしたものに統一された。『ラバー・ソウル』のジャケット・カヴァーでのビートルズの写真は伸びている。マッカートニーは、ドキュメンタリー映画のアンソロジー5巻で、この話の背景を説明している。写真家のロバート・フリーマンは、レノンの家でビートルズの写真を数枚撮った。フリーマンはアルバム程度の大きさがあるボール紙へ写真を写し、ビートルズにアルバム・カヴァーがどうなるか見せた。この変わった『ラバー・ソウル』のカヴァーは、スライドに使ったカードが少し後ろに傾いたことでそこに映している写真画像が伸びてしまっていたところから生まれて来ている。その効果に4人は、カヴァーをそういう風に出来るかと叫び、フリーマンは出来ると言った。キャピトル・レコードは、アメリカ盤に色の彩度が違うものを使っている。結果として、文字のレタリング部分がパーロフォン盤ではオレンジであったのに違う色になってしまった。一部のキャピトル盤LPでは、タイトルがチョコレート・ブラウンであり、他にはゴールドに近い色もあった。1987年のイギリス盤公式CD化においてもキャピトルのロゴは確認出来、文字の色は茶色でも公式なオレンジでもなく、全く違う緑色である。レタリングは、チャールズ・フロントがデザインした。『ラバー・ソウル』の初回プレス盤(マトリックス1)は、1965年11月17日にカッティングが行われた。このプレス盤は、全体的にカッティングの溝が深くなっている。そのため、アナログ機器で再生した際に針が飛ぶことを懸念したEMIのプレス工場からクレームがつき、2日後の11月19日に再度クレーム箇所を修正するカッティングが行われた。ただし、このクレームがついた時点で相当数がプレスされており、ごく少数ではあるがマトリックス1の刻印が盤に彫られた初回プレス盤が出荷、販売もされている。この初回プレス盤は「音圧が異なる」「低音がきいている」などさまざまな噂を生むこととなり、現在はレコード・コレクターの間でラウド・カットと呼ばれ、しばしば高値で取引されている。アルバムは、CDとなってイギリスとアメリカで1987年4月に発売された。音源はイギリス・オリジナル盤を使用している。アメリカにおいて、以前輸入盤しかなかったイギリス盤のLPとカセットが、1987年6月21日に発売となった。アルバム『4人はアイドル』のCD発売と同じように、『ラバー・ソウル』においてジョージ・マーティンは現代向けにステレオ・デジタル・リミックスを行っている。ただし、このリミックスはジョージ・マーティンが4人はアイドルも含めて「バラバラに戻してから、またほとんど同じように整理し直した」と述べているように、オリジナルのミックスに非常に忠実に作成されており、積極的な現代化はされず、定位やエフェクト等の処理はほぼオリジナルの通りに再現されている。。『4人はアイドル』と『ラバー・ソウル』のリミックスが行われたのは、1987年の最初のCD化の時には、全アルバムが一斉にCD化されたわけではなく、数回に分けてCD化され、『4人はアイドル』、『ラバー・ソウル』、『リボルバー』の3枚が第2弾として発売されたが、当初、『4人はアイドル』と『ラバー・ソウル』はモノラルでのCD発売を予定していたのが、急遽ステレオでの発売に変更された為。2009年9月9日に発売されたリマスター盤でも、このリミックス版を採用している。CD化される前のオリジナル・ミックスは、同日発売のモノラル・ボックスにてステレオとモノ両方がCD化されている。アルバムは商業的に成功し、イギリスのチャートでは1965年12月11日から42週にわたり登場している。クリスマスには『4人はアイドル』(ビートルズの前作アルバム)の替わりに1位に立った。8週間維持した。アルバムはグループにとって芸術的な飛躍をもたらし、批評家やバンドのメンバーにとっても、この時点でビートルズの初期の特徴であったマージービートサウンドから、後の多様性を持ち洗練されたポップ/ロックへと変わっていったと評される。ジョン・レノンは、後にこのアルバムが初めてビートルズが録音中に全てをコントロールしたと述べている。それは、新しい音のアイディアを洗練させるだけの十分なスタジオでの時間があったこともある。アメリカ盤はザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンに多大な影響を与え、彼は1966年に『ペット・サウンズ』を出すことで「答えた」。また、フランク・ザッパとマザーズ・オブ・インヴェンションのアルバム、『フリーク・アウト!』の製作にインスピレーションを与えたといわれる。1966年にアルバムは発売し、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のインスピレーションとなった。1987年5月9日にアルバムは3週間チャートに戻って来、その10年後にもまたチャートに戻ってきている。『ラバー・ソウル』は、ポップ・ミュージックの歴史において最も偉大なアルバムの一つだと何度も引き合いに出されている。1998年、Qの読者は40番目に偉大なアルバムだとした。2000年には最も偉大なイギリスのアルバム100枚を選ぶ際に2位につけた。2001年にVH1において6位、2003年にアルバムはローリング・ストーンの選ぶオールタイム・ベストアルバム500において5位に、2006年にタイム誌の最も偉大なアルバム100の中の一つに選ばれている。『ラバー・ソウル』は11枚目の公式なアメリカ盤でありキャピトル・レコードでの9枚目のアルバムである。本作はイギリスでの発売の3日後に発売開始となり、『ビルボード』誌アルバム・チャートでは、クリスマスから59週にわたりチャートに登場していた。1966年1月8日から6週間1位を占めている。1966年度年間ランキング4位を記録している。『キャッシュボックス』誌では、7週連続第1位を獲得し、1966年度年間ランキング16位を記録した。発売から9日で120万枚を売上げ、今までに600万枚をアメリカで売り上げることとなった。サージェント・ペパーズ以前のビートルズのアルバムのように、アメリカ盤とイギリス盤で構成が著しく異なる。実際、その配置の特色からアメリカ盤『ラバー・ソウル』は故意に「フォークロック」アルバムとして変えられていた。キャピトルは、ビートルズをこの「フォークロック」という1965年のアメリカにおいて新しく出現し、稼げるジャンルに合わせようとしていたのだった。それは、「夢の人」、「イッツ・オンリー・ラヴ」(2曲ともイギリス盤『4人はアイドル』の未収録分)の追加と明るい曲(「ドライヴ・マイ・カー」、「ひとりぼっちのあいつ」、「恋をするなら」、「消えた恋」)の削除によるところが大きい。アメリカ盤から消えた曲は、後の編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録された。このトラックの変化によってアルバムの長さが短くなり、29分25秒になった。さらにイギリスからアメリカに送られたステレオ・ミックスは「君はいずこへ」の最初でスタートを間違える通称「False starts版」である。最後も少し早く終わる。False starts版は、1965年から1990年にかけてのアメリカ盤すべてと『ビートルズ'65 BOX』で聴ける。カナダ盤のLPも「君はいずこへ」でFalse starts版テイクが使用されている。またアメリカ盤の「愛のことば」はフェード・アウトが遅く演奏時間が3秒ほど長い。アメリカのレコードでは、ステレオが2ヴァージョン発売されている。標準盤のアメリカ・ステレオ・ミックスと、デクスター・ステレオ盤(「イースト・コースト盤」としても知られている)というアルバム全体にリヴァーブが掛けられているものがある。標準盤のステレオ・ミックスとオリジナルのモノラル・ミックスは、『ビートルズ'65 BOX』に収録された。このリリースが日本における米キャピトル編集盤 "Rubber Soul" の初発売となり、邦題も『ラバー・ソウル』というクレジットがなされた。特記以外、ミキシングはイギリス・オリジナルに準じる。
出典:wikipedia
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