オハイオ級原子力潜水艦(オハイオきゅうげんしりょくせんすいかん、 Ohio class)はアメリカ海軍が現在保有する唯一の戦略ミサイル原子力潜水艦(以下SSBNと表記)である。西側諸国で最大の排水量を誇る潜水艦であり、また全長と弾道ミサイル搭載数は現役の潜水艦で最大である。1970年代アメリカが保有していた戦略ミサイル原潜は1950年代から60年代に開発されたものばかりで、当時開発される原潜はもっぱら攻撃型原潜であった。新規戦略ミサイル原潜の開発も計画されていたが、その巨額の開発予算から議会も開発許可を出し渋っていた。それに対してソ連はアメリカに対する遅れを取り戻そうと新たにデルタ型を開発し射程約8,000kmのSS-N-8や射程約6,500kmのSS-N-18などを次々と開発していった。これを受けてついに議会が新規SSBNの開発許可に踏み切り、オハイオ級の開発がはじまった。しかし開発が進められることになったもののなかなか順調には進まず、開発当初1番艦は1979年には引き渡される予定であったが結局1番艦が就役したのは1981年末だった。オハイオ級はそれまで配備されていた35隻の原潜をすべて代替するため24隻の建造を予定していたが、冷戦終結の影響により18隻とそれまでの半数程度の建造で打ち切られた。しかし1隻あたりの弾道ミサイル搭載数は16基から24基と1.5倍になっているため核弾頭の数からいえばそれほど減少していない。オハイオ級の主な兵装は潜水艦発射弾道ミサイル24基と533mm魚雷発射管4門である。改良型については後述。就役当初、弾道ミサイルは1番艦から8番艦までが射程4,000海里以上(7,400km)のトライデントI(C4)を、8番艦以降が射程6,000海里以上(11,000km)のトライデントII(D5)を装備していた。トライデントD5はC4にくらべ射程が延びたかわりにサイズも一回り大きくなっているが、オハイオ級は当初から余裕を持たせた構造としていたため外見上はC4搭載艦とD5搭載艦に差はない。4番艦から8番艦は弾道ミサイルをC4からD5に換装中である。オハイオ級が装備するトライデントは1基につき核弾頭をC4は8発、D5は14発まで搭載可能だが、START Iにより最大8発、モスクワ条約により最大4または5発に制限されている。つまりトライデントを24基装備するオハイオ級は1隻で計120発程度の核弾頭を装備することになる。核弾頭1発あたりの核出力は数種類あるがいずれも100kt~475kt(長崎市に落とされたファットマンは20kt程度)と都市一つを破壊するには十分な威力を備えている。なお、2011年に発効した新戦略兵器削減条約(新START)では戦略核弾頭の配備数は1,550発、戦略核兵器の運搬手段(ICBM、SSBM、戦略爆撃機)は保有数800基/機、配備数700基/機に制限されることになっており、トライデント1基に搭載する弾頭数あるいは1隻に搭載するトライデントの基数が削減される可能性もある(オハイオ級14隻 × トライデント 24基/隻 で運搬手段 336基、さらに核弾頭 4発/基では核弾頭数が1,344発となり、運搬手段として配備可能数の約半分、弾頭数としては9割近くとなってしまうため)。オハイオ級の主任務は弾道ミサイルの発射で、敵潜水艦への攻撃はロサンゼルス級などの攻撃型原潜の任務であるが、敵潜水艦に発見された場合の反撃手段としてMk48魚雷も搭載する。しかしその性質上隠密性が求められるため探査用のアクティブソナーは装備していない(航海用は装備している)。そのためそれほど有効な攻撃は出来ないと考えられる。また潜水艦は魚雷発射管から発射可能な対艦ミサイルや巡航ミサイルを装備していることが多いがオハイオ級は魚雷のみを装備する。その他に魚雷攻撃を受けたときのための音響囮も8基装備されている。オハイオ級の任務は、海中に潜み、アメリカ合衆国に対して核ミサイルが発射された場合、または発射される恐れがある場合に相手国に核ミサイルを発射することである。そのため、出港後、待機する海域まで航行した後はひたすら海中に身を潜め、いつでも核ミサイルの発射が出来るように待機している。この1回の航海はラファイエット級までは60日程度であったが、オハイオ級は大型で居住性が若干改善されたため航海の期間も若干延び、70日から90日程度になった。これら戦略ミサイル原潜がどの海域を待機海域にしているかは軍事機密であり、詳細は公表されていない。任務に当たる艦ですら、詳細は艦長を含めた数人しか知ることはない。しかし、現在では搭載するミサイルの射程がICBM並に長いことから、危険を冒して敵国沿岸に行くようなことはなく、アメリカ本土に比較的近い太平洋や大西洋、北極海などで待機していると思われる。通常、アメリカの戦略ミサイル原潜は、ブルーとゴールドの2組のクルーが用意されている。これは一言でいえば、艦より先に乗組員が限界になってしまうためである。オハイオ級も例外ではなく、ひとつのグループが70日間の航海を終えて帰港すると、約1ヶ月ほど艦の整備などを行い、その後もうひとつのグループが70日間の航海に出て行く。そして、航海を終えた方のグループは、しばしの休暇の後訓練をおこなう、というローテーションを繰り返す。その他に、約10年に1度は1年間ほどかけてオーバーホールと燃料棒の交換をおこなう必要がある。そのことから実際可稼働率は60%程度であり、18隻でローテーションを組んでいたときは常に10隻前後は任務についていることになる。また14隻では8隻前後となる。START IIで核弾頭数が制限された関係から、2001年にアメリカ海軍はオハイオ級の1番艦から4番艦までを戦略任務から外し、巡航ミサイル潜水艦に改造することを決定した。2007年現在、弾道ミサイル発射筒の換装工事など工事が完了したオハイオが作戦航海に出るほか、残る三隻も改装に着手している。なお艦種は戦略ミサイル原潜を表すSSBNから巡航ミサイル原潜を表すSSGNに変更された。具体的な内容としては24基の弾道ミサイル発射筒のうち22基をトマホーク発射筒に改め、残りの2基を海軍特殊部隊「SEALs」のためのロックアウト・チェンバーに改造。トマホーク発射筒の一部も任務に応じてトマホークの代わりに小型潜水艇ASDSやドライデッキ・シェルターを搭載することも可能とされる。トマホークは1基あたり7発を装備、最大で計154発と大量のトマホークを搭載可能となっている。ちなみに同国の攻撃型原潜であるロサンゼルス級でも10~20発程度、水上艦で一番搭載可能数が多いタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦でも最大で122発(これは発射機の総数でありイージス艦の主任務は艦隊防空である為通常は大半が対空ミサイルが搭載され、トマホークの本数はやはり10〜20発程度であることが多い)であり、オハイオ級の154発というのはアメリカ海軍が保有する艦船の中でも一番搭載数が多く、陸上攻撃に大きな役割を果たすこととなる。オハイオ級については、1番艦のオハイオ(SSGN-726)など、初期に建造・就役した艦については、就役から既に20~30年近くを迎える。アメリカ海軍では、このうちSSGNに改装された改良型オハイオ級を除くSSBNについて、これらを更新する後継艦を“SSBN-X”として計画している。海軍における水上艦・潜水艦の開発を担当する(NAVSEA)では、SSBN-Xについて「2029年に最初の戦略抑止パトロール任務に就く」という計画・タイムラインの下で開発を進める予定である。一方で、海洋システムコマンドでは、同じ2029年に本級の7番艦であるアラスカ(SSBN-732)を退役させる予定としており、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)による核ミサイルの運用を行う戦略軍(STRATCOM)が要求する「12隻が作戦行動可能な体制」を維持するためにも、SSBN-Xの開発計画を着実に進めていくことが求められている。海洋システムコマンドでは、より着実に更新計画を進めていくためのプランとして、「2026年に海軍に納入、以後約1年間をかけて各種の試験を実施、さらにもう1年をかけて試運転(シェイクダウン)と乗務員訓練(ミサイル発射要員についてのミサイル発射試験を含む)を実施した上で、2029年に計画通り全面的作戦能力を付与する」という構想を立案している。しかし、近年の(累積)財政赤字の増大とそれに対応するべくバラク・オバマ政権が実施している歳出見直し・予算削減の流れの中で、SSBN-X計画も例外なく影響を受けている。2012年に発表された2013会計年度(Fiscal Year 2013、FY2013)に向けた国防予算案の中では、国防予算削減策の一環としてSSBN-X計画を2年延期する案が盛り込まれている。この2年延期が実行されれば、SSBN-X開発計画はそれだけ遅延することになり、場合によってはオハイオ級の退役とSSBN-Xの就役の間に空白期間ができ、2030年代(特に前半)のアメリカの海軍力およびそれに基づいた軍事的プレゼンスが低下するリスクが懸念されるが、国防総省ではそのリスクはマネジメントできる(低減・克服できる)ものとしている。全艦ジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートで建造された。
出典:wikipedia
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