デルフィニア戦記(デルフィニアせんき)は、茅田砂胡作の長編冒険ファンタジー小説。イラストは沖麻実也。画集やイメージアルバムも製作された。2017年に舞台化作品が上演(後述)。前国王の妾の子であったために、国内の貴族の陰謀によって王位と命を狙われて城を脱出し、追っ手の者たちと単身で戦う若き国王ウォルの前に、異世界から落ちてきたという謎の少女リィが現れ、助太刀をするところから物語は始まる。王位の奪還、隣国との争い、謎の暗殺集団(ファロット)との戦いなどを通して、ウォルとリィを中心とした多くの魅力的な人物が活躍する姿を描き出した一大英雄譚である。*声はドラマCD『紅蓮の夢』より。この作品の舞台となっている大陸で、北の大部分を大国スケニア他少数の小国が、中央を大華三国と呼ばれるタンガ・デルフィニア・パラストが、南部をサンセベリア等の多数の小国家群が支配している。中央以南では北部についての情報が乏しく、地図の出来も曖昧になっている。北部と南部の間には死の海と呼ばれる海があり、大陸を分けていて、南北は中央と呼ばれる地帯でつながっている。この中央をさらに分断する大河・テバ川の周辺には、独立国家であるペンタスの他に、隣接するパラストとデルフィニアのどちらにも属さない小国が存在する。主にタンガとパラスト等の大国が勢力拡大を狙い戦火が絶えなかったが、最終的にウォル王率いるデルフィニアが両国を制圧し(国自体は滅んでいない)中央は平和を迎えた。アベルドルン大陸を南北に分けている内海。名前の由来は岸に近いところならばよい漁場となっているが、沖に出ると難破しやすいため。作中の主な舞台。「大華三国」の中央に位置する大国。北部のスーシャのさらに北にはタウがそびえ、首都コーラルの背後にもパキラ山がそびえる。三国中、もっとも肥沃な土壌に恵まれ、ポリシア平原という広大な穀倉地帯を持つ(本来の領主はベリンジャー家だが、諸事情でベルミンスター公爵家が治めている)。また、海に近い首都はパキラ山につながる土地を利用した造りであるため、数ある門を閉じれば強固な城砦と化すが、貿易港としても有数で経済力は豊か。国全体が広い平野となっているため、「ラモナ騎士団」「ティレドン騎士団」をはじめとした強力な騎馬軍団を持つ。しかしその反面、海上戦の経験が浅く、海軍自体も国王直属の軍しかいない。大華三国にまたがる山丘地帯周辺を指す。各地で罪を犯した者や故郷を捨てた者が集まり、自らを「自由民」と称して山中に20の村を作って暮らしている(村で生まれ育った者も少なくない)。自由民独自の旗を持ち、王を持たず、三国のいずれにも属さずに独自の統治形態(共和制に近い)を取っていて、全体としての団結力も強い。そのような経緯から「タウ」という言葉は地名にとどまらず、そこに住む自由民たちを指す場合もある。タンガ・パラスト両軍との戦争後、自由を守るため、表向きはデルフィニアの臣下となる(実質の関係は同盟者である)。デルフィニアの国王親衛隊(独立騎兵隊)は彼らで構成される。山中には金鉱脈や銀鉱脈が点在する。「大華三国」の一つでデルフィニアの東に位置する。首都はケイファード。国土の多くが山岳地帯で農業に向いておらず、政情も不安定だったが歴代の王の中でももっとも剛毅であろうゾラタスが王位についた後は一つにまとまり、デルフィニアの肥沃な領地をもぎ取らんと狙っている。しかし、ゾラタスとナジェックをデルフィニアに討たれたため、ウォルの意向でナジェックの弟・ビーパスが即位、デルフィニアと終戦協定を結んだ。「大華三国」の一つでデルフィニアの西に位置する。首都はアヴィヨン。多くの属国を抱え、交易も盛んであるため経済的には安定しているが、国王オーロンは満足せず、デルフィニアの弱体化を図り、戦の機をうかがっている。大陸の最北に位置し、寒気が厳しい。蛮風の国だといわれているが、始祖からまだ6代しか経っていないこともあって、中央ではあまり知られていない。首都はラグラン。タンガとの間に3つの小国がある。金剛石が主に産出されるが、南国で採れる真珠や紅玉などに比べると価値は低い。住民は、首都やその付近で中央のような華やかな暮らしをする者たちと、部族ごとにまとまって戦闘員などの仕事で暮らしている先住民たちの2種類に大別される。先住民族である部族側の人間に言わせると「首都の人間の耳はいま聞いたことを忘れ、舌は頭と反対のことしか言わない」「貪るだけの豚であっても奴らよりよっぽど身持ちがいい」らしい。イヴンの育ての親であるゲオルグは部族側の出身。首都に住む上流階級の人間は金にあかせてペンタスから様々な最高級の物品を買い求めたりするなど、その羽振りの良すぎる財力は謎に包まれている。正規軍の軍艦は中央とあまり変わらないが、部族側の船は川を遡れるように浅底で割と小型なものが多い。パラストの西隣にあり、北は死の海の南岸、南は大きな山岳地帯となっている。表面上は独立国家であるが実際にはパラストの属国扱い(後にパラストとは縁を切る)。首都はヨーク。デルフィニアとパラストの国境であるテバ河の、河口付近にある島。金細工などの交易で発展してきた小国。元は大陸を支配していたことを誇りにしている。船で出入りする門は2ヶ所あり、陸からは長い橋を渡らなければ出入りできない。内部には歌姫や舞姫を頂点とする公営の遊郭も存在する。高級な舞姫や歌姫とされる女達はそれぞれ屋敷を与えられており、自分の認めた者だけを客として扱う。なお、遊郭で暮らす女達の結束は強く、客から寝物語を装って情報を引き出すことが容易い上に、毒や薬に対する耐性もつけているので侮れない存在である。交易品などの積荷を載せた船を襲っては資金にしていた海賊集団が寄り集まって、フリーセアの南にある群島域に興った島国。国というよりは海賊達の組合といった印象がある。島の周辺の海域を縄張りとし、その潮や風の流れを読むことに長け、船の扱いもずば抜けてうまいという東の海の覇者。前身が海賊なだけに上層部などには指名手配されている者が少なからずいる。普段はものすごく口が悪い者が多いのも特徴。イヴンが一時期所属していた海賊団のリーダーが総督を務める。パラストと東北部で国境を接している。また、西北部のやや開けたところでサンセベりアとも国境を接する。ランタナの西隣、ヴァンツァーが当初属していた里・レガがあった小国。デルフィニアからは割と離れている。アランナの婚家セレーザ家もこの国の人間だが、仕事の都合でコーラル付近に引っ越してきた。フリーセアの西隣にある国。クランの西隣にある国。トルーディアの西隣にある国。イヴンの母・ビアンカの出身国。大陸南部の方にあるため、人々の肌は浅黒い。雪は降らないらしく、ビアンカはスーシャの冬に難儀していた模様。作中では、主に以下の3つの騎士団の名が挙げられている。金をもらい殺人を請け負う暗殺集団。ファロットとは「死神」の意味でもある。国としてまとまっているわけではなく、世界各地に主に実行部隊が拠点とする「里」が存在し、全体を掌握する司令塔としてスケニアにファロット伯爵家がある。「里」の者は一部を除いて自分たち以外の存在も、また自分たちが「ファロット」の一員であることも知らされていない。里は「宗師」と呼ばれるリーダーを頂点に、暗殺や潜入の際に使う薬草類を育て調合する者や暗殺の実行役である「行者」と呼ばれる者たち、いずれ行者となるべく訓練中の子供達などで構成される。彼らは聖霊(上層部)から下される命令を絶対のものとし、里の廃棄を命じられれば自殺するように洗脳されている。子供達は、幼い頃は男女関係なく身体能力を高める訓練や暗殺技術の基礎訓練を遊びのようにこなす。また、外見や体格が女子として通る男子がある程度成長すると、女子の名を与えられて女性の言葉遣いやしぐさを体に叩き込み、小間使いや侍女として潜入・暗殺する術を教わる。宗師は「聖霊」とのコンタクトにより仕事を請け、行者に振り分ける役も担う。行者達は宗師(ひいては上層部)からの仕事の依頼を成功させ、褒められることを至高の喜びとする忠犬のような存在であり、自分の意思を持たない人形である。ファロット伯爵直属の行者は、里育ちの行者とは比べ物にならない技量を持ち、仕事に際しても里の者よりも多くの情報を開示されている。司令塔たる伯爵家の代替わりは血筋によるものではなく、伯爵に引き合わせてその管理下に置いた、里を失っても命を絶たなかった行者で、「上位者の命令は絶対であり反抗してはならない」という呪縛を解いて当代の伯爵を倒した者に引き継がれる。なお、伯爵の傍で各地の宗師をまとめる上層部には「新たな伯爵となったばかりの行者が慌てたり呆然としたりすることなく、すぐに命令を下した場合、その命令に絶対服従する」という掟が存在する。故に、シェラが下した命によって一族は消滅した。先祖霊の一種であるとされる「聖霊」を崇めており、彼らと直接顔をあわせ、言葉を交わすことは光栄なことであると言われているが、その大半は上層部の術者に使役されているただの人魂らしい。完全に自分の意思を残した者は少なく、そのごく一部が作中に登場した。彼らに言わせると、レティシアやヴァンツァーなど、リィやシェラと同じような魂を持つ者が、死後この状態になりやすいとか。この聖霊たちには、「自分達は、『月』が『太陽』と出会うまで、光にも闇にもなじめない黄昏の一族である」という内容の口伝が残されている(現世に生きる伯爵ら上層部は知らない)。デルフィニア国内にある呪術師・占い師達が寄り集まって出来た街。表と裏があり、表には貴族達が頼りにするような(裏の者に言わせれば「半端な実力を持つ」)呪術師達が住んでいるが、裏には「本物の魔法街」と呼ばれるように、とてつもない能力を秘めた者たちがひっそりと暮らしており、骸骨の案内人がいる。裏の魔法街への入り口はめったに現れないが、リィはその一角に住む老婆の下への自由な出入りを許されている。先王・ドゥルーワも1度だけ「裏」に入ったことがあるらしい。むかし昔。今世界を掌握しているラー一族(ラーデンガー)がまだ、古い神とこの世界の支配権を奪い合っていたころ。戦いの末、古い神を倒したラーは、敵の総大将である王と王子と姫以外を殺してしまった。王は闇と呼ばれており、漆黒の髪に紺碧の眼だった。王子と姫は、それぞれ太陽と月と呼ばれていた。太陽は黄金の髪に翠緑の眼。月は銀の髪に紫水晶の眼。本来第一に殺すべきであるこの3柱を生かしたのには理由があった。闇の神だけが唯一、命を産む…つまり世界を作れる神で、そのためには太陽と月が必要だったからだ。ラーは、命の保証はするから世界を作ってくれ、と言った。王子と姫を助けるなら、と王は納得した。しかし、ラーは王を騙した。愛し合う王子と姫をむごたらしく殺したのだ。王は怒り狂い、自分の体を自ら爆発させ、「我は死ぬ。我は滅びる。だが、いずれ必ず蘇り、お前たちを残らず滅ぼす」といいながら死んでいった。ラーは今でも王たちの復活を恐れて生きている。王が爆発したときの余波でラーの大半が消滅したからだ。そして、王の爆発した亡骸が、その歪んだ怒りが、この不完全な世界となった。デルフィニア戦記の登場人物の一部は、『暁の天使たち』へと継承されている。暁の天使たちに登場する他の人物をより深く理解するためには、『スカーレット・ウィザード』を読むことが推奨される。処女作『デルフィニアの姫将軍』と『グランディスの白騎士』は大陸書房から出版されたが、出版社の倒産により未完のまま打ち切られた。後に中央公論社のC★NOVELSで再開されるにあたり、時をさかのぼって新たに書き始められたが、大陸書房版のストーリーとの食い違いが発生している。作者は大陸書房版は過去の作品であると主張し、再版はしないと宣言していたが、既に絶版で入手困難となっており(幻の大陸書房版)、それでも読みたいという読者の要望にこたえる形で『王女グリンダ』として合本、C★NOVELSから再版された。この再刊版の前書きには「『王女グリンダ』がリィとシェラの物語であるなら、『デルフィニア戦記』はウォルとリィの物語である」という旨の記述がある。2017年1月に天王洲銀河劇場で上演予定。脚本・演出は児玉明子。
出典:wikipedia
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