『人間の証明』(にんげんのしょうめい)は、森村誠一の長編推理小説、およびそれを原作とした映画、テレビドラマ。1975年に『野性時代』(角川書店)で連載された。第3回角川小説賞受賞作品。2010年現在、単行本・各社文庫本計で770万部のベストセラーとなっている。森村の代表作「棟居刑事シリーズ」の主人公・棟居弘一良の初登場作品。新刊雑誌への連載を前提に角川春樹から依頼されて執筆した作品である。森村は代表作と見なされる本作について「代表作とは読者が決めるものであるが、自分にとって相当に重要な作品である」と語っている。東京・赤坂の高層ホテルの、展望レストランのある最上階に到着したエレベーター内で、胸部を刺されたまま乗り込んできた黒人青年が死亡した。事件は殺人事件と断定され、麹町署に捜査本部が設置される。捜査を担当することになった麹町署の棟居弘一良刑事らは、被害者の名前がジョニー・ヘイワードであり、彼をホテルまで乗せたタクシー運転手の証言から、車中でジョニーが -「ストウハ」と謎の言葉を発していたことを突き止める。さらにタクシーの車内からは、ジョニーが忘れたと思われるボロボロになった『西條八十詩集』が発見された。一方その事件とは裏腹に別の事件が同時に起きていた。ジョニーが殺害された同時刻にある女性が何者かにひき逃げされる事件が起きた。その人物は有名ファッションデザイナー八杉恭子の息子である郡恭平だった。恭平は豪雨の中で運転していた最中に飛び出してきた女性に気づかずにひいてしまったのだ。駆け付けて来た時には既にこと切れていたため、恭平は何もなかったようにするために遺体を東京湾に沈めた。翌日、女性の夫から捜索願が出された事により事件は公になったため恭平は恭子に昨夜の出来事を全て告白した。事情を知った恭子は恭平にアメリカに逃げるように指示し、人目のつかないように恭平は静かに日本を後にした。そのころ警察ではジョニーが残した「ストウハ」という言葉について 調べていた。棟居刑事はジョニーがストローハット(麦わら帽子)と言おうとしたと推理した。実際に事件現場であるホテルのライト部分が麦わら帽子の形であったためジョニーがそれを見てそう思い込んだと解釈した。しかし、なぜ八十詩集を持ち込んでいたのかはわからなかった。実は、詩集におさめられた一編の詩に、麦わら帽子と霧積という地名が記されていたのだった。ひき逃げ事件から棟居は八杉にたどり着く。棟居は昔から八杉のことを知っていた。昭和24年、闇市でアメリカ軍人に強姦されそうだった八杉を棟居の父が助けようとして殺されたのだ。ジョニーがアメリカを去る際に残した「キスミー」という言葉から、群馬県の霧積の地名を割り出した棟居が霧積に向かうと、ジョニーの情報を知っているであろう中山たねという老婆が何者かに殺された。霧積では八杉恭子が戦後、進駐軍向けのバーで働いていたことが分かった。棟居は八杉がジョニーの母親で、ジョニー殺しの犯人だと推理する。棟居はジョニーの本当の母親を探すため、ニューヨークへ飛ぶ。棟居はニューヨークでの相棒となるシュフタン刑事の手の甲の刺青から、父を殺したのが彼であることを知る。ニューヨークで棟居はジョニーが日本で生まれたことを突き止める。棟居はひき逃げ犯の恭平をニューヨークで追い詰めた。すると、恭平は拳銃を向けたため、シュフタンに射殺された。棟居は東京に戻る。東京では日本デザイナーコンクールが開かれていた。その席で、棟居は八杉に恭平が殺されたことを伝える。八杉はコンクールで大賞を取った。八杉は授賞式を途中で抜け出し、霧積へ向かう。ジョニー殺しの犯人が八杉恭子だと明らかになる。八杉とジョニーは生き別れの母子だった。しかし、ジョニーの存在が世間におおっぴらになり、過去に黒人と関係があったとバレることを恐れた恭子はジョニーを殺したのだ。また、それらを知っている中山たねも殺していた。そして、八杉は霧積の崖から身を投げるのだった。翌日、八杉の死亡記事を読んだシュフタン刑事はジョニーの実の父親を訪ねた。既に麻薬依存に陥っていたが、事の全てを告げると解釈したように首を縦に振り、静かに息絶えた。シュフタン刑事はその遺体を廃墟の片隅に埋め、花を添えて帰ろうとした直後に黒人男性に刺され、そのまま動かなくなった。岡田茉莉子・松田優作・ジョージ・ケネディがそれぞれ過去に一物を持つ人物を演じ、当時の日本映画では稀なニューヨークロケが行われた。松山善三(プロでありながら、公募に応募して採用された)の脚色により、森村誠一がテーマとした題名「人間の証明」である原作と異なる結末になっている。ラストシーンでは本来無言であったはずの松田が独自に台詞を付けたいとの要望を出し、佐藤純彌も台詞つきのシーンを撮ったが、佐藤の判断で台詞はカットしつつも台詞を言った後の表情がとても良かったため、そちらを採用した。映画公開時に用いられた有名な台詞「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね ええ、夏、碓氷から霧積へ行くみちで 渓谷へ落としたあの麦藁帽ですよ…」は西條八十の詩がオリジナルであり、劇中でも語られている。ジョー山中が歌う「人間の証明」のテーマソング(「Mama, Do you remember...」と歌詞は西條八十の詩を英訳したもの)もヒットし、ベストテン入りも果たしている。脚本は最初、長谷川和彦に依頼し、角川春樹が直接長谷川に交渉したが、長谷川が角川に対して無礼な物言いがあって流れたといわれる。その後、賞金500万円を掲げて大々的に脚本を公募した。プロアマ問わずとの条件で最終選考に残ったのは、脚本家・監督の松山善三、脚本家の山浦弘靖、俳優・プロデューサーの岡田裕介(現東映社長)、プロデューサー・脚本家・推理作家の小林久三とプロばかりであった。応募者の名を伏せて角川プロデューサー、佐藤監督らによる選考会の模様は『キネマ旬報』707号(1977年5月1日刊行)誌上に公開されたが、のっけから「ロクなのがない!」「(公募に頼った)考えが甘かった」とボロクソであり、「いちばん修正しやすい」との消極的理由で入選作を決定した。ふたを開けてみれば、誰にとっても大先輩である松山の脚本だったという気まずい結果となった。なお、角川によれば、予算にまで気を配って小さくまとめた悪しきプロ脚本が多かった中、大胆に海外場面を多用した松山脚本が角川映画に相応しいと判断されたという。偶然に次ぐ偶然によってクライマックスのお涙頂戴になだれこむ展開は、大映が戦後初期に「三倍泣けます」「ハンカチをご用意ください」のキャッチフレーズでヒットさせた「母物」の再来だと批判されたが、角川春樹は石上三登志との対談で、まさにそれをこそ狙ったと語っている。第51回キネマ旬報ベスト・テン第50位、読者選出第8位となった。配給は東映であったが、興行は日比谷映画劇場をメインとした東宝洋画系チェーンが担った。その後、2000年にDVD化され、2009年にBDソフト並びにデジタル・リマスター版DVDがリリースされた。2012年に改めて「角川ブルーレイ・コレクション」の一作品としてブルーレイディスク化された。森村誠一シリーズの第3作目として放映された。オリジナルの部分が多い(郡陽子のモノローグや扱いに顕著)。製作は東映であるが、東宝の監督が主に演出している(プロデューサー兼俳優の岡田裕介との縁)。2010年7月21日から8月6日に全4巻のDVDが発売された。各巻3話収録で2巻ずつ同時発売されている。名前の後ろの※は、原作に登場しない人物。※※は、ドラマ版で著しく登場場面が増えた人物。金曜ドラマシアターで1993年1月8日に放送された。タイトルは「人間の証明2001」、「女と愛とミステリー」で放送された。BSジャパンでは2001年1月7日21:00 - 23:24に、テレビ東京系列では同年1月10日20:54 - 23:18に放映された。フジテレビ系連続ドラマとして2004年7月8日から9月9日まで放映された。全10回。初回は15分拡大の22:00 - 23:09に放送。平均視聴率は12.1%だった。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。