サイドワインダー(Sidewinder)は、アメリカ合衆国が開発した短距離空対空ミサイル。アメリカ軍での制式符号はAIM-9。発射すると独特の蛇行した軌跡を描きながら飛行する様子と、赤外線を探知して攻撃することから、ヨコバイガラガラヘビにちなんで名づけられた。1940年代末から、フィルコ社、ジェネラル・エレクトリック社、レイセオン社によって開発が開始された。後に生産はレイセオンが一括して行っており、現在でもアメリカ軍や西側諸国で多く使用されている。誘導方式は基本的には赤外線誘導であるが、AIM-9Cなどの一部の型ではセミアクティブ・レーダー・ホーミングを用いている。また、空対空型の他にも、地対空、艦対空という派生型も作られた。AIM-9L型以前はエンジンの排気熱を捉え、誘導する方式であったため、エンジン排気を捉えられる敵後方からのロックオンしかできなかった。また、単純に高温の目標に対して誘導されるため、フレアを撒いたり太陽に向かって飛行することによって回避される可能性が高かった。しかし、L型以降は空気の断熱圧縮による熱を捉えられるようになったため、全方位からのロックオンが可能となり、フレアなどによって回避される可能性も下がった。日本の航空自衛隊では、創設当初にF-86と同時に導入した。AIM-9Lの採用後、後継ミサイルとしてAAM-3やAAM-5も採用している。その後、改良を加えたAIM-9X(サイドワインダー2000)が登場しており、配備が進んでいる。空対空ミサイルが初めて実戦で発射され、撃墜を記録したのは1958年9月24日金門馬祖周辺の台湾海峡において、中国の人民解放軍と台湾(中華民国)の台湾空軍との交戦(金門砲戦)とされている。この戦闘において、台湾空軍はアメリカから供与されたAIM-9 サイドワインダーを装備したF-86F戦闘機をもって人民解放軍のMiG-17F(またはJ-5)と交戦、11機を撃墜した。本ミサイルの開発は、1945年、海軍兵器実験ステーション(NOTS)の博士によって着手され、1950年には正式な計画に格上げされた。マクリーン博士は、HVARの弾体をもとに、硫化鉛(PbS)赤外線センサによる赤外線ホーミング誘導装置を搭載することで、比較的簡素な空対空ミサイルを開発することを狙っていた。マクリーン博士はまた、このミサイルに「ローレロン」(rolleron)と呼ばれる新しい工夫を盛り込むこととした。これは、固定式の後部安定翼の翼端に設けられた回転体とその動翼機構であり、気流によって回転体が高速回転した状態でミサイルがロールするとその動きに応じて動翼がジャイロ効果により動き、ロールを修正してミサイルの姿勢を保持するように働く。最初の試射は1951年に行われ、1953年9月11日には最初の標的機撃墜を記録した。これらの試験のとき、ミサイルがヨコバイガラガラヘビが横這い運動したときに見られるような蛇行した航跡を描いたことから、このヘビに因んで「サイドワインダー」と綽名されるようになった。同年、本ミサイルには、XAAM-N-7の仮制式名が付与された。1955年、ジェネラル・エレクトリック社は低率生産に着手し、1956年5月には、AAM-N-7 サイドワインダー-Iが就役した。240発のサイドワインダー-Iが生産されたところで、生産は全規模生産型のサイドワインダー-IAに切り替えられた。1963年、全軍共通のミサイル・ロケットの命名規則が規定されたことにより、サイドワインダー-IはAIM-9A、サイドワインダー-IAはAIM-9Bと改名された。AIM-9A/Bは、4.5kg(10lb)の高性能炸薬による破片効果弾頭を装備していた。信管は、赤外線による近接信管か着発信管であり、危害半径は約9m(30ft)であった。シーカーは原型と同様の硫化鉛(PbS)素子による赤外線センサであり、冷却措置はとられていなかった。シーカーの視野角は4度、追尾速度は11度/秒であった。推進装置は、チオコールMk.17固体燃料ロケットであり、17.8kN(4,000lb)の推力を2.2秒間発生することができ、これにより、ミサイルは発射母機の速度にさらにM1.7加速することができた。ミサイルそのものは、12Gまでの機動を行うことができたが、シーカーの捕捉能力の問題から、発射可能域は比較的限定的なもので、目標の後方象限に限られていた上に、目標が機動を行った場合、命中は困難であった。また、誤って太陽や砂漠などの自然熱源にロックオンしてしまうこともしばしばであった。しかし、このような制約にもかかわらず、AIM-9A/Bは当時の短距離空対空ミサイルとしては非常に卓越したものであった。1955年6月には、当時アメリカ空軍が運用していたAIM-4C/D(GAR-2A/B)との比較試験において優越性が示されたことから、AIM-9BがGAR-8として採用されることとなった。また、北大西洋条約機構を中心に、同盟国に対しても広く輸出された。台湾空軍は、保有するF-86F×100機にAIM-9Bの運用能力を付与する改修を行い、これらの機体によって空対空ミサイルの初撃墜が記録されることとなった。1962年の生産中止までに、80,000発以上のAIM-9Bが生産された。また、下記に示すように、AIM-9Bはいくつかの国で模倣された。AIM-9Bの成功と性能的な限界に直面し、アメリカ海軍と空軍は、それぞれ、第2世代のサイドワインダーの開発を開始した。アメリカ海軍によって開発されたのがサイドワインダー-ICであった。サイドワインダー-ICでは新型のMk.36固体燃料ロケットとMk.48弾頭が採用された。Mk.36の採用によって、射程は18km(9.7nm)まで延伸された。また、誘導方式の再検討も行われ、セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)方式のAIM-9Cと、改良型赤外線ホーミング方式のAIM-9Dが並行して開発された。AIM-9Cは、F-8艦上戦闘機でのみ運用された。同機はスパローの運用能力を持たず、全天候戦闘能力の不足が問題視されていたためであるが、AIM-9Cは在来型サイドワインダーよりも即応性に劣り、スパローに射程で劣っていたことから、中途半端な存在であるとみなされ、F-8の減勢もあって1,000発が生産されたのみであった。これらの多くは射耗されずに保管されることとなり、1980年代に入って、サイドアーム対レーダーミサイルに改修されている。AIM-9Dの赤外線センサは、AIM-9Bと同様に硫化鉛素子を採用しているが、窒素を冷媒としたジュール=トムソン効果により赤外線センサを冷却している。これによって感度は向上したものの、視野角は2.5度に狭小化している。このため、AIM-9Dは1965年-1969年の間に1,000発が生産されたのみで、1970年より、改良型のAIM-9G SEAM(Sidewinder Expanded Acquisition Mode)に切り替えられた。AIM-9Gは1972年までに2,120発が生産された。また、1972年には、AIM-9Gを半導体素子化するとともに、シーカーの追尾角速度を20度/秒に増強したAIM-9Hが開発され、これは1974年までに7,700発が生産された。アメリカ空軍は、ロケットモーターや弾頭はAIM-9Bのものを踏襲し、赤外線シーカーの改良に注力した。赤外線センサの冷却措置を導入したという点では、海軍のAIM-9Dと同様であるが、空軍のAIM-9Eでは、ペルティエ素子による冷却が採用された。また、シーカーの追尾角速度も16.5度/秒に増強されている。これらの改良の結果として、AIM-9Eは、-9Bと比べて長いノーズコーンを備えている。AIM-9Eは、5,000発が-9Bから改修された。また、AIM-9E-2では、排煙量が少ない新型のSR.116ロケット・モーターが採用されている。また、1972年には、海軍のAIM-9Hと同様に半導体素子化が導入されたAIM-9Jに生産が移行し、以後、-9B/Eからの改修分と合わせて、約10,000発が生産された。のちには、シーカーの動作を改善するプリント基板回路を導入したAIM-9N(AIM-9J-1とも)が開発された。ロケット・モーターとしては、-9Nの初期型はMk.17、-9N-1以降はSR.116が採用されている。西ドイツの社によって開発された改良型が、AIM-9F(AIM-9B FGW.2とも)である。これは、アメリカ海軍のAIM-9Dと同様にジュール=トムソン効果による赤外線センサの冷却措置を導入しているが、こちらでは、冷媒として二酸化炭素が採用されている。AIM-9Fは1969年より運用を開始し、延べ15,000発が生産された。ヨーロッパで運用されていたAIM-9Bの大半が-9F仕様に改装されたとされている。1971年、アメリカ空軍とアメリカ海軍は、海軍の第2世代サイドワインダーの最終発達型であるAIM-9Hをもとに、第3世代のサイドワインダーを共同開発することに合意した。これによって開発されたのがAIM-9Lである。開発にあたって最重要とされたのが、全方位交戦能力(All-Aspect Capability, ALASCA)の獲得をはじめとする、交戦可能域の増大であり、このために重要なのが目標と正面から対向した状態(ヘッドオン状態)での交戦能力であった。従来用いられていた赤外線センサでは、ジェット機機体後部のジェットエンジンからの排気口から放射される短波長赤外線(SWIR)を捉えることしかできず、このために目標の後方象限からでなければ交戦できなかった。しかし、この時期に実用化されはじめた中波長赤外線(MWIR)に対応できる赤外線センサであれば、排気口から排出されたジェット排気(プルーム)から放射される赤外線を検知でき、必ずしも後方象限に拘る必要はなくなるものと期待された。この目的のため、第3世代のサイドワインダーでは、赤外線センサの素子として、アンチモン化インジウム(InSb)フォトダイオードを採用している。冷却方式はAIM-9Hと同様にジュール=トムソン効果を利用したものだが、冷媒はアルゴンに変更された。この赤外線センサを中核とした誘導・制御ユニットはDSQ-29と称されている。また、弾頭としては、より強力な炸薬量9.4kgのWDU-17 ABF(環状爆風破片弾頭)が採用されたほか、DSU-15/B AOTD(アクティブ光学目標探知装置)によるレーザー近接信管により、危害半径はさらに拡大していた。推進装置は、AIM-9Hと同じMk.36 シリーズの固体ロケットで、改良型のMod.8-11を採用している。生産は1978年から開始され、アメリカのフィルコ・フォード社、レイセオン社の他に、日本の三菱重工業、ドイツのBGT社、スウェーデンのサーブ社でも行われて、合計16,000発以上が生産された。アメリカ生産分の一部はフォークランド紛争でイギリス軍に提供され、86%という高い命中率を記録している。AIM-9Lを基に低排煙型のロケット・モーターとIRCCM能力を強化させたWGU-4/B誘導装置を導入した発展型がAIM-9Mである。生産は1982年から開始され、7,000発以上が生産された。順次に小改正が加えられており、現在、アメリカ海軍に配備されているものは-9M-8、アメリカ空軍に配備されているものは-9M-9である。-9Mをもとに、WGU-19/B 赤外線画像誘導装置を導入した改良型として、AIM-9Rも開発された。1990年には試射が行われたが、財政上の問題により、1992年には開発は中止された。逆に、-9Mを元にIRCCM能力を省いた輸出型として、AIM-9Sも開発された。一方、AIM-9J/Nを基に、AIM-9L/Mの技術をバックフィットして開発されたのがAIM-9Pである。-9L/Mよりも安価な第3世代サイドワインダーと位置付けられている。基本的には輸出用モデルとして開発されたが、アメリカ空軍も採用した。複数のサブモデルが開発されており、合わせて21,000発ほどが生産された。当初、サイドワインダーの開発は第3世代で終了し、その後継としては、北大西洋条約機構(NATO)諸国で共同開発したASRAAMが採用される計画であった。このミサイルは、米国を中心に開発されたAIM-120 AMRAAMと対になる視程内距離空対空ミサイルであり、イギリスと西ドイツを中心に開発されるはずであった。開発は1992年より開始されたものの、イギリスとドイツの間の見解の相違から計画は遅延し、米国は、計画の進行に重大な懸念を抱いた。このことから、米国は、AIM-9Mをもとに第4世代のサイドワインダーを開発することにより、新世代の視程内距離空対空ミサイルを入手することとした。これによって開発されたのがAIM-9X(通称サイドワインダー2000)である。AIM-9Xは、弾体設計から一新され、操向性能向上のために大きな変更が行われた。操舵翼は前翼から後翼に変更され、固定化された前翼に代わって小型化された後部翼で操舵を行う。このため、後部の操舵装置への配線を通すため、弾体の下部にカバーが設置された。また、XAAM-N-7に用いて以来、AIM-9Mに至るまで採用されていたローレロンが廃されている。推力偏向制御方式も導入された。また、最大射程は40km程度まで延長されている。先端のハイ・オフボアサイト・シーカーと呼ばれている赤外線センサの受光素子の組成は、-9L/M/S/Rと同じアンチモン化インジウム(InSb)であるが、多素子化されたフォーカル・プレーン・アレー(FPA)が採用されていて、赤外線画像(IIR)誘導方式となる。このFPA型赤外線センサの解像度は128x128ピクセルであり、感度はAIM-9Mのそれと比して400倍に向上しているとされる。赤外線センサの冷却機構には、第3世代機のジュール=トムソン効果から、-9Xではクライオエンジンと呼ばれるスターリング冷凍機に変更されているため、ガスタンクを必要とせず電力供給のみでシーカー部の冷却が行えるようになり、冷却時間による制約を受けることが無くなった。なお、この赤外線センサはヒューズ社によって開発されたものであり、基本的に、同社がASRAAMに提供しているものと同じ技術に基づいている。また、中間慣性誘導(INS) も導入し、限定的な発射後ロックオン(LOAL) も備えている。このほか、オフボアサイト発射機能を持っており、ヘッドマウントディスプレイによってロックオンするシステム(JHMCS:Joint Helmet Mounted Cueing System)を使用することによって真横を飛行する敵をロックオンすることが可能となった。性能を最大限生かすには、MIL-STD-1553B デジタルデータバスが必要となるが、それを持たない旧式の機体でもAIM-9Mとして認識され使用可能である。改良型。信管をDSU-41Bに換装、固体燃料ロケットの点火用バッテリーを新たに装備し、点火安全装置も新しくして自動化した。処理プロセッサが新しくなり、ブロック1では限定的だった発射後ロックオン(LOAL)が拡張されてフルに使えるようになった。また、母機からミサイルに対するデータリンク(AIM-120Dに装備されたものと同じもの)が装備されており、レーダーで誘導が行える。射程はほぼ2倍に延長されており、ほぼBVR兵器といえる。しかし、ブロックIと比べHMDを使わないときのオフボアサイト能力が低下されているとされており、ソフトウェアのクリーンアップが計画されている。2008年にテストが行われ、2014年にIOCを獲得、2015年8月17日に完全量産に移行した。また、レイセオンではブロックIIにブロックIの空対地能力付与ソフトウェアの追加を行うことを検討している。研究が進められていた改良型。PBXN-122弾頭と新型ロケットモーターの装備により、射程の60%延長と破壊力向上を図る。2016年にエンジニアリングと製造開発(EMD)、2018年に運用テストを行い、2022年の初期作戦能力獲得を目指していたが、2015年2月3日にキャンセルが発表された。ただし、ブロック3が装備する弾頭の研究は継続される。
出典:wikipedia
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