太極拳(たいきょくけん)は、中国武術の一派。東洋哲学の重要概念である太極思想を取り入れた拳法で、形意拳、八卦掌と並んで内家拳の代表的な武術として知られる。健康・長寿に良いとされているため、格闘技や護身術としてではなく健康法として習っている者も多く、中国などでは市民が朝の公園などに集まって練習を行っている。日本国内でも愛好者は多く、『太極拳のまち』を宣言した福島県喜多方市のように、自治体単位で太極拳を推進している例もある。武術・戦闘術として継承されてきた太極拳は『伝統拳』と呼ばれる。しかし、近年では伝統拳を参照元にした制定拳(後述)も存在するために、混同を避ける目的で『民間の太極拳』という表現も使われることがある。基本功に始まって、套路、推手、散手と進むのが一般的な流れで、これによってそれぞれの門派における太極拳の技法を習得する。套路は緩やかで流れるようにゆったりとした動きで行うことで、正しい姿勢や体の運用法、様々な戦闘技術を身に着ける。しかし実際の戦闘における動作はゆっくりしたものではなく、熟練者においてはむしろ俊敏で力強いものとなる。なお、套路の中でも“快架”と呼ばれる速い動きのものもあり、“快架”との対比でゆったりした動きの套路は“慢架”と表現する場合がある。また、推手の練習では、套路の正しさや・相手と適切な接触を保つ技術(粘連黏随)・相手を感じる能力(聴勁)など武術・戦闘術としての理解度を深めることができる。昔から推手と套路は車の両輪と言われ、実は推手をやらなければ太極拳は本当の意味で理解できないと言われている。徒手の応用として、太極剣、太極刀、太極棍、春秋大刀、槍など武器術の套路も伝承されている。また、太極拳の套路は健康法としての一面がよく知られており、一般に太極拳と言う場合、武術ではなく健康法・健康体操の一種として捉えられることも多い。武術としての鍛錬を第一義とせず、各派に伝わる伝統の套路を基にして編集委員等によって競技・表演用に整理された太極拳や、健康体操として簡易化された太極拳などを、伝統拳に対して『制定拳』と呼ぶ。日本で武術太極拳と呼ばれている競技は、世界的には『武術(ウーシュウ)』と呼ばれているもので、太極拳、長拳、南拳を採り入れ、一定のルールの下で体系化したスポーツである。採用されているのは制定拳であり、伝統拳との間に直接的な関連性はない。元代、張三豊が少林寺で武術を修めた後に武当山に入って修行し、道教の陰陽五行思想や吐納法と呼ばれる呼吸法を取り入れて編み出したとされている。但し、張三豊は中国の他の伝説にも現れる不老長寿の仙人の名前であり、この説については伝説の域を出ていない。しかし、諸事の根拠を明示して論証する学問的態度である考証学の祖である黄宗羲が記した王征南墓志銘には、張三豊が内家拳法を創始し、王征南はその使い手であると記されている。その拳法の詳細を、黄宗羲の子息である黄百家が「内家拳法」に記録して残しており、また、太極拳を含む内家拳は武当門とされており、中国武術の全国的統一組織であった南京中央国術館の武当門の門長に楊氏三世の楊澄甫が就任していることなどから、太極拳は張三豊が創始した内家拳法が源流である可能性があり、一般に普及している太極拳と区別して武当派と呼ばれている。この内家拳法は太極拳の源流の一つであることが明らかであるとの研究もある。その他の起源については、明代に河南省温県常陽村(現・陳家溝)に強制移住させられた陳一族に家伝として伝えられていた武術に、陳氏9世・陳王廷が様々な武術の要素を組み合わせ、明代末期から清代初期にかけて創始されたとする、武術史研究家・唐豪の研究がある。その後清代末期に入り、陳氏14世・陳長興の弟子だった楊露禅が、北京に赴きこれを普及。武術理論として王宗岳の『太極拳論』が重視されたため、そこから取って『太極拳』という名称が用いられるようになったと言われる。現在では、陳家太極拳、楊式太極拳、武式太極拳を始めとして様々な門派が存在する。一方、太極拳の健康効果は古くから知られていたが、その習得は容易ではなく、万人向けと言えるものではなかった。そのため中国政府・国家体育運動委員会は、第二次世界大戦後、伝統拳の健康増進効果はそのままに、誰にでも学ぶことのできる新しい太極拳を作ることを計画。著名な武術家に命じ、楊式太極拳を基に簡略化した套路を編纂、1956年に簡化太極拳(二十四式太極拳)を制定した。これが制定拳の始まりである。制定拳という名称は本来、「国家が制定した套路」という意味を持つ。制定拳は一種の健康体操として世界的に広められ、またそれと並行して競技化や新たな套路の編纂も行われていた。現在はグループ表演や競技会も盛んに催されるなど運動競技としての一面も強くなり、その一方で、武術的な側面から制定拳を再編する動きも生まれている。日本においては楊名時が1970年に簡化太極拳を紹介しており、その後1972年の日中国交正常化を機に、来日した中国人教師などから太極拳の存在が徐々に知られるようになった。また中国政府の普及政策によって中国から太極拳を持ち帰る日本人も現れ、健康体操としての制定拳が広まっていった。激しい運動を伴わず場所を選ばずに容易に行えることから高年齢層を中心に人気となり、現在では全国に草の根レベルで太極拳教室が存在している。上記5つの太極拳流派は、「五大太極拳」と呼ばれる。套路毎に動作の数が違うため、各套路は「二十四式」のように動作の数で呼ばれることが多い。この他にも、八式、十六式、三十二式、四十二式の制定拳があり、また、陳式、孫式などの各派の特長を出した陳氏五十六式や三十八式、孫氏七十三式などの套路も制定されている。
出典:wikipedia
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