ベレッタ・モデル92()は、イタリアのベレッタ社が設計した自動拳銃。日本語圏では慣習的にベレッタM92と略称されることがある。M9の名称で正式採用したアメリカ軍を筆頭に、世界中の法執行機関や軍隊で幅広く使われている。ベレッタ社は、1949年から1951年にかけてM1951を開発しており、これはイタリア軍で正式採用されていた。しかし1960年代後半になると性能の陳腐化が指摘されるようになっており、これに応えた同社は、1970年より、後継拳銃の開発に着手した。これによって開発されたのが本銃である。開発にあたっては、現代の軍用拳銃として求められる機能を組み込むと同時に、当時、銃器を使用した凶悪犯罪への対処や対テロ作戦がクローズアップされていたことを考慮して、警察用拳銃としての使用も想定して設計が進められた。1975年には試作試験を終え、最初の量産型が発表された。上記の経緯から全体的な構成は同社のM1951を踏襲しており、M1915以来となる、スライド上部を切り取ってバレルを露出させるという方式も同様である。ただし、軽量化のためにグリップ・フレーム(レシーバー)の素材は、スチールからアルミニウム合金に変更された(バレルとスライドはスチール製)。また、素材をステンレスに変更した "Inox" モデルもラインナップされている。なお、軽量化のために最初期のモデルではスライドの前半部が削られて段になっていたが、軽量化の恩恵が小さいわりに製造工程が複雑化することから、まもなくこれは廃止され、スライド側面はフラットになった。また、のちには強装弾の使用に対応できるよう、ロッキングブロック付近が盛り上がったデザインになった「ブリガディア(ブリガデール)スライド」も開発されている。閉鎖方式も、M1951と同様の独立ロッキング・ラグ式が採用された。これはワルサーP38を参考にしたもので、バレルが水平にショートリコイルしてバレル下面の降下式ロッキング・ラグにより、スライドとバレルをロックする。ただし、即応性を重視してトリガー・システムはダブルアクションを採用するよう、改められた。これはシングルアクションも可能なコンベンショナル型であり、ハンマーは露出式とされた。M1951からのもう1つの大きな改良点が装弾数の増加で、複列弾倉(ダブルカラム・マガジン)に15発の9x19mmパラベラム弾を装填できる。また、口径のオプションとしては、9x19mmパラベラム弾を使用する92シリーズのほか、.40S&W弾を使用する96シリーズ、9x21mm IMI弾を使用する98シリーズ、7.65x21mmパラベラム弾を使用する99シリーズがある。ベースモデルとして、下記のようなものがある。また、92FS以降のモデルには、上記のような口径別のオプションもある。上記のベースモデルのいくつかには、下記のような派生型がラインナップされている。92の後継発展型として設計・製作された拳銃。92のライセンス生産品。次期米軍制式採用拳銃のトライアルで、NATO標準の9x19mmパラベラム弾を使用する拳銃が必要になったアメリカ軍が、往年の名銃M1911(コルト・ガバメント)に替わる十分な性能を持った拳銃を選抜するために行った試験。これに合格するということは「米軍御用達となる」ということであり、商業的価値も大きいといえる。実際にベレッタはM9として米軍に321,260丁もの数を納入した後、フランス軍と110,000丁ものライセンス契約も結んでいる(PAMAS-G1)。この他にも各国の軍や警察関係での採用も多い。このトライアルはアメリカ空軍限定のものであり、アメリカ全軍のトライアルではなかった。しかし、時期的に軍首脳部の注目が集まったのは言うまでもない。このトライアルでは、参加各社から提出された8モデルのうちベレッタ92が最も優秀であるとの結論が1980年に下された。しかし、このトライアルはアメリカ全軍へのトライアルとして拡大されることになり、先の決定は白紙に戻ってしまう。このトライアルでは新たにアメリカ軍が要求するスペックが提示され、その難易度の高さに参加を取りやめるメーカーも少なからず存在した。結局、期日までに提出できたのは2社(ベレッタ社・S&W社)のみであり、期日は延期されることとなる。2回目の期日では4社が提出し、SIG社からは最後までベレッタ92と争うことになるP226が提出された。しかし、このトライアルの結果は「先の要求を満たすものは存在しない」というものであった。1984年に再開されたトライアルにはベレッタ92とSIG SAUER P226を含む7モデルが提出され、最終的に92とP226の一騎討ちとなったが、裁定は再び92に下った。このトライアルをもって今回の米軍制式採用拳銃は決定し、92はその栄誉を受けることとなる。なお、このトライアルにおいてテストが不公平であるとした数社が裁判を起こしたが、いずれも公平なテストであったとの裁定が下っている。しかし、自国外の銃器メーカーに対する風当たりは強く、92より割高だが性能と操作性で勝っていたとされるP226が敗退したこともあって「92は政治的理由によって勝ち残ったに過ぎない(SIG社のあるスイスはNATO加盟国ではなく、ベレッタ社のあるイタリアはNATO加盟国であり米軍基地を作る計画が進行していた)」とする説も根強く残っている。なお、基本的に92もP226も米軍の要求をパスしており、「より良いものがあるならばそちらを採る」のか、「要求は満たしているのだから安いほうを採る」のかは、一般人の間では今でも議論になる。ただ、軍用銃というのはコストパフォーマンスが第一であり(使用機会の少ないサイドアームである拳銃はなおさら)、米軍が92を選択したのは妥当な判断ということもできる。また、92はP226に比べて安全措置を多く用意している。例えば、シングルアクションでも比較的遊びの多いトリガーや、グリップを握った際の親指から離れた位置にあるアンビ・セーフティなどがそれである。これらはP226のように、最初からセイフティを廃してデコッキングレバーのみにしたり、シングルアクションでのトリガープルを可能な限り軽くしている銃に比べると、迅速な射撃の妨げになるが、逆に不注意で事故を起こす可能性は減少する。そのため、アメリカ軍では拳銃の射撃訓練の時間を十分に割ける特殊部隊にP226(Navy SEALsでの制式採用名MK24)および小型バージョンであるP228(制式採用名M11)を、拳銃を重要視しない一般兵士や基地警護兵に92を支給するなど、ある程度の住み分けを行っている。1988年、先のトライアルを再度実施するとした名目のトライアルが行われた。しかし、既に性能的に合格しているベレッタとSIGは提出を拒否し、結局先のトライアルで敗退したS&Wと前回の提出に間に合わなかったスターム・ルガーが参加した。ベレッタ92に関しては既に米軍内にあったため、これを無作為に抽出してテストを行った。その結果、ベレッタ92はまたしても最優秀とされ、S&Wのモデルはトラブルを起こして敗退、スターム・ルガーは性能的には合格したが、今更変えるほどの価値は無いと判断された。これにより、ベレッタUSAは57,000丁の追加注文を受けた。なお、このトライアルにより「標準スライドが10万発の使用に耐える」という決定的な評価を与えられたが、未だにスライドに不安があるというイメージは払拭しきれていない。1987年9月と1988年1月・2月に一件ずつ、合計3件発生した「スライドが破損して破損部分が射手の顔面に当たる」という事故である。事故の被害者がいずれも海軍特殊戦グループ(特殊部隊Navy SEALs)のメンバーであったため、「強装弾(通常より火薬量を増やした弾)の使用など、わざと過酷な条件下において壊した」とする説も出されたが、一方「もとから欠陥があった」とする説もあった(後述のブリガディアスライドの誕生がその証拠とも言える)。事故を重く見た米軍は調査を進め、使用弾はNATO標準弾であったことと、何らかの理由でスライドの製造過程において強度が足りないまま出荷されてしまったことを発表した。なお、米軍に納入されるベレッタ92は全てベレッタUSAで生産したものとされていたが、品不足のためイタリアから納入されたものもあった。ベレッタ社はこれに対し、破損箇所に適切な熱処理を確実に加えることによって対応した。これにより同様の破損事故は以降発生していない。なお、事故が発生したSEALsでは、上記の通り事故以降はSIG SAUER P226シリーズをMK24として主に使用している。ベレッタ社の商標使用権は日本の遊戯銃メーカーウエスタンアームズによって独占されており、ウエスタンアームズ、および同社とライセンス契約を結んだメーカー(SIISや以前のマルシン工業など)以外は本体の刻印を忠実に再現した遊戯銃を販売できなかったが、玩具・模型での商標模倣はベレッタ社に損害を与えるものではないとして、KSCの製品は新規金型で刻印が復活している。また、軍用銃ゆえに商標登録されていないことから、92FS、92FSの軍用モデル(M9、92Fミリタリーモデル、PAMAS-G1など)を製品ラインアップに加えているメーカーが多い。ウエスタンアームズ製の遊戯銃は、伊ベレッタ社のミュージアムルームに展示されている。米軍制式拳銃であり、法執行機関でも制式採用しているところが多いことから、現代の戦争や警察を題材としたジャンルでは最もよく登場する拳銃の1つとなっている。92はマニュアルのセイフティが左右両側についているうえ、容易にマガジンキャッチ・ボタンの向きを左右に変更可能なので左利きの人にも対応できる。また、マガジンキャッチはグリップを外すことで左右を入れ替えることができる。このため、映画『ダイ・ハード』シリーズのジョン・マクレーンのように左利きの人が多く使用しているのも特徴であるうえ、映画監督のカート・ウィマーは映画『リベリオン』のDVDのオーディオコメンタリーで、「排莢の方向を変えやすい」と発言している。そのほかのジャンルにおいても、デザイン面から使用されることの多い銃である。
出典:wikipedia
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