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職務質問

職務質問(しょくむしつもん)とは、日本の警察官の職務上、犯罪を犯しうる可能性が相当にある者に対して、呼び止めるなどして質問を行う、必要最小限に用いられる行為である。職質(しょくしつ)や、「バンかけ」と称される。第二次世界大戦前の日本では不審尋問(ふしんじんもん)といわれた。職務質問は、濫用してはならない事が、現行の法律によって定められている。職務質問は、「何らかの犯罪」について捜査の端緒を得ること等を目的とした行政警察活動である。職務質問をきっかけとして犯罪が発覚することは多い。国民の権利を侵害しない様、無制限な職務質問の乱発・濫用を防ぐ目的で、活用は必要最小限に留めるよう定められている。警察官による職務質問の法的根拠(根拠規範)は、警察官職務執行法(警職法)2条1項である。以下警職法第2条を列挙する。なお、警察法2条1項は組織規範であって、通常、職務質問のような具体的職務権限を基礎づける根拠とは解されていない。警察法2条1項所定の目的を逸脱して行われた職務質問は違法といい得るが、あくまで根拠規範は警職法2条1項である。ただし、警職法2条3項は刑事訴訟法や刑事訴訟規則の規定や令状に依らない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所もしくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。と定めている。職務質問を適法に行うことのできる要件は、以下のとおり、警察官職務執行法2条1項に細かく定められている。1. は、挙動不審者に対する質問を規定し、2. は、犯罪に関係する者への質問を規定している。1. の要件は、不審事由(ふしんじゆう)といわれる。これらの要件が備わっているかどうか(適法な職務質問かどうか)は、職務質問をする警察官の主観的判断によって決定されるのではなく、「普通の社会人がその場合に臨んだら当然にそう考えたであろう客観性」が必要という事になっている。このように、客観的に要件が備わっていることが要求されるため、単なる主観だけの職務質問は許されないが、警察官独自の知識、経験その他の自身だけが知りうる情報を併せて合理的な不審点が認められる場合は許される。明確に所持品検査を拒否されたにもかかわらず、令状を取らないまま荷物を検査し、犯罪行為の証拠品を発見した為、「逃げる気配があった」などの理由がありながらも、違法収集証拠排除法則に則り、無罪となった判例が存在する。職務質問は、任意の活動であるとされている(警職法2条)。ここでいう「任意」の意味は、「強制ではない」という程度である。よって、質問対象者が職務質問を負担に感じていても一概に違法な職務質問とはいえないし、対象者を引き止めるために腕をつかむなど、有形力を行使することも、状況次第では適法とされ得る。これらの行為が適法であるかどうかは、比例原則に従って判断される(警職法1条2項)。ただし、強制手段にあたる場合には、直ちに違法とされる(強制処分法定主義)。混同されがちであるが、強制処分法定主義とは、刑事訴訟法上の処分についての規律であり、行政警察活動である職務質問には直接には関係しない。職務質問の要件が備わっている場合には、具体的状況に応じて、「質問を継続する」という目的の達成手段としての行為も適法とされ得る。たとえば、最高裁判所で問題となったものとしては、質問に応じるよう説得する行為、質問の対象者が閉めようとしたドアを押し開けて足を挟んでドアが閉まらないようにする行為、質問対象者が運転する自動車のエンジンを切ってエンジンキーを抜き取る行為、質問途中で逃走を図った対象者を追跡して、その腕をつかんで停止させた行為などがある。職務質問に付随する活動として、所持品検査を実施することが、判例上認められている。職務質問に付随する活動であるから、警職法所定の要件を備えることが必要となる。また、令状なしの強制手段(捜索・差押)と評価されるような態様での所持品検査は許されない。所持品検査は、あくまで任意手段としてのみを実施することができる。どのような態様での所持品検査が適法とされるかは、比例原則に従って判断される。なお、検査前に質問者に対して同意を求めることもある。職務質問は、「何らかの犯罪」といったような抽象的な犯罪の予防等を目的とする行政警察活動であるから、具体的な犯罪の事件処理に向けて行われる司法警察活動であるところの捜査とは区別される。ただし、職務質問から犯罪捜査へと移行する例は多い。その場合、職務質問の段階における違法は、それに引き続き行われた捜査(取調べ等)の違法に影響する。警察官は不審な点があるかどうかにかかわらず、通行人や通行車輌を停止させて質問を行うことがある。自動車に対する交通一斉検問が、その典型である。民主主義の日本では、人権を保障する日本国憲法が存在し、日本の公務員は日本国憲法第99条により、憲法尊重擁護義務を負う。現行犯である以外では、日本国憲法第34条が不当な拘束を禁じている。このため、職務質問は被疑者の同意が無ければ行えない、任意の行為である。任意に対する、強制的な逮捕や捜査には令状が必要なため、これを犯して行われた職務質問は違法であり、違法収集証拠排除法則が働き無効となる。2004年(平成16年)と2006年(平成18年)の2度、国家公安委員会委員長(1996年(平成8年) - 1997年(平成9年))を務めた白川勝彦が、本人の弁で犯罪性のない状態で職務質問を受けるなど、職務質問の濫用が指摘されている。令状のない状態で腕を掴むなどの実質的な拘束や、令状のない状態での捜査による逮捕が、違法な捜査であるとして無罪が言い渡された判例があり、2014年(平成26年)には、裁判官もこのように警察官が無理解である状態に言及し、今後の違法捜査を抑制するために無罪を言い渡したとも述べている。

出典:wikipedia

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