債権者代位権(さいけんしゃだいいけん)とは、民法における法律用語。債権者が債務者の持っている権利を債務者自身に代わって行使する(代位する)権利のことを言う。日本では民法に規定されている。フランス法において、債権執行制度が不備であった時代に、それを補う制度として整備された(Action oblique)が、ボアソナードらによる旧民法起草時にとりこまれ、現行民法編纂の際にドイツ型債権執行制度を採用したにもかかわらず残されたもの。民法の債権者代位権規定において想定されている典型的な場面は、以下のような場合である。AはBに1,000万円を貸し付けており、BもCに3,000万円貸し付けている。しばらくして、Bが資金繰りに窮して倒産寸前になった。AとしてはBがCから3,000万円を回収してAに対する借金返済に充てて欲しいところである。しかし、BはなかなかCから債権を回収しようとせず、このままでは債権が消滅時効にかかる可能性もある。そこでAがBのCに対する3,000万円の債権をBに代わって行使し、直接Cから債権を回収したい。BのもっているCに対する債権は本来ならB自身が行使するものである。しかしBにしてみれば、せっかく債権を回収してもすぐAに持っていかれてしまうのだから、あまり熱心に貸付金を回収しようとは思わない。債権者Aとしては、債務者BからCに対する債権を譲り受けたり(債権譲渡)、債権を回収することについて代理権を授与してもらったり(代理受領)という方法でも、BのCに対する債権を行使することが出来る。しかし、これらの行為をするには債務者からの何らかの意味での同意が必要である。また、BのCに対する債権を差し押さえてしまえば、取立訴訟や転付命令によって直接Cに対する債権を回収することも可能ではある(民事執行法、)。しかし差押えのためにはあらかじめ裁判で勝訴するなどして債務名義を得なければならず手間がかかる。そこでBからの同意も債務名義もないままに、債権者Aが自己の名において(債務者Bの代理人としてでなく)直接Cに対してBのもっている債権を裁判外でも行使できるとしたのが債権者代位権である。これによって債権者は責任財産を保全することが出来る。これがこの制度本来の目的である。なお、債権者代位権によって回収できない危険を免れた、債権者AのBに対する債権を被保全債権という。債権者代位権が活用される場面は、上記のように時効によって債務者の有する債権が消滅するのを防ぐため時効の中断をする場合のほか、債務者が土地を買ったのに所有権移転登記をしないまま放置しているとき、債権者に代わって登記を移転するよう請求する場合もある。とにかく、債務者が責任財産の流出する危険を放置しているような場面で機能することが想定されている。また、本来予定していなかった場面に債権者代位権が転用されたり、債権者代位権を行使した者について実質的に優先弁済を認めるような取扱いがされている。これらは責任財産の保全という本来の目的を超える機能を果たしている(後述)。債権者代位権は、結果的に、それを行使した者に事実上の優先弁済権を認める事となる。通説は、債権者代位権はあくまで債務者の責任財産を保全するための制度であるが、上記のような優先弁済を認める結論を回避することは困難であって仕方がない、という立場を採っている。これを責任財産保全制度説という。この立場に立てば、無資力要件を比較的厳格に要求することとなる。判例もほぼ同様の立場に立っているといってよい。これに対して、事実上の優先弁済という結果を肯定的に捉える見解もある。その一つで有力なのが包括担保権説である。この立場では代位行使をする債権者は債務者に対して包括担保権を有しており、その実行方法が債権者代位権であると説明する。ここでは、被保全債権と代位行使される債権との間にある担保的関係が密接であればあるほど無資力要件は緩和される。債権者代位権を行使する要件を満たしているとしても、それによってどこまでのことが出来るかは問題である。以下の例で考える。債権者代位権は、金銭債権を保全するための制度として構築されたものである。しかし、金銭債権以外でも保全すべき債権は当然あり、債務者の同意を得ずに代位行使を認めるべき例もある。そのような場合にまで債権者代位権を拡張したのが債権者代位権の転用といわれる事例である。
出典:wikipedia
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