マルス()は、日本国有鉄道(国鉄)・JRグループの座席指定券類の予約・発券のためのコンピュータシステムである。JRの指定席券を主として、乗車券類・イベント券などの座席管理・発行処理および発行管理(精算業務)を行う巨大なオンラインシステムであり、ホストシステム、端末ともに「マルス(端末)」と呼ばれることが多い。名称について、元々は (磁気的電気的自動座席予約装置)の略とされていたが、現在では (旅客販売総合システム)の略となっている。ローマ神話の軍神マルスにかけたネーミングでもある。アルファベットでは"MARS"と書くが、一般にはカタカナで「マルス」と表記される。2008年には、マルス1が電子計算機技術のオンラインリアルタイムシステムへの応用の可能性を示したこと、現代でも実際に使われているシステムへの発展の基礎となったことを評価され、電気学会の電気技術顕彰制度「第1回でんきの礎」に選定された。また、2009年には情報処理学会により「情報処理技術遺産」として認定された。中央装置(ホストコンピュータ)は東京都国分寺市にあり、国鉄分割民営化以後は鉄道情報システム株式会社(JRシステム)が保有・運営している。中央装置で一括管理する集中型をとっており、中央装置は、歴代日立製作所の大型コンピュータ・超大型コンピュータが採用されている。2010年現在使用しているマルスは「マルス501」である。もともとは鉄道切符(乗車券類)の発売のために開発されたシステムだが、現在では乗車券類だけでなく、航空券(現在はとりやめ)、宿泊券、遊園地や展覧会などイベントの入場券等の販売も行えるようになっている。JRの鉄道駅や旅行代理店(みどりの窓口)に設置される端末(MR端末、東日本旅客鉄道(JR東日本)ではMEM端末、MEX端末=JR東日本の子会社であるジェイアール東日本情報システムが、JR東日本向けに開発した端末が主流)とは、鉄道情報システムが管理するJRネットなどを経由しホストと接続されている。また、JTB系や日本旅行、近畿日本ツーリスト系など、大手旅行会社の旅行業システムともオンラインで接続されており、接続されている旅行会社に設置されている旅行業端末においても、JRの指定券などを発売することが可能である。端末で管理されている座席は、JRの新幹線や特急列車や、急行・快速・普通列車の「座席指定席」を中心に、「ドリーム号」などJRバス各社およびこれらと共同運行する高速バスの座席指定席などである。バスの座席については、JRシステムなどで新たに開発された座席予約管理システムである「高速バスネット」に移行する方策が採られている、詳細は後述。また日韓共同きっぷを発売している関係で韓国のKTXの座席も管理している。マルスの稼働時間は4時00分から翌日2時00分までである。乗車券原紙については、JR鉄道駅ではドラム型のロール紙タイプを使用しているのに対し、旅行会社向け端末はあらかじめ横85ミリと横120ミリにカットされたタイプを使用しており、盗難・紛失防止策として通し番号(右側にある紫色の連番)が印刷されている。偽造防止の為、原紙表面へJRマークと字模様(旅客会社別にアルファベットで一文字・北海道=北/東日本=E/東海=C/西日本=W/四国=S/九州=K・JRの駅以外のマルスで発券される場合は当該地域のJR会社の字模様が入ったものを使用)と「JRロゴ」が浮かび上がる潜像が施されており、カラーコピーをした場合において、真券と偽造券の識別が簡単に出来るように工夫されている。残紙については係員や第三者による偽造や盗難防止の観点から表部分を油性マジックで2条末線を引き、旬計毎に審査箇所へ納付するように規定され、駅によっては残紙をシュレッダーにかけて裁断処分をする箇所もある。また、係員による誤発行で売上取消処理された乗車券類や払戻し処理をされた使用できない乗車券類についても管理が厳しく、これらも係員や第三者による盗難防止の観点から旬計毎に審査箇所へ納付するように決められている。磁気定期券原紙については前述のようなドラム型のロール紙タイプではなく、樹脂型の横85ミリにカットされた用紙をしており、乗車券原紙以上に偽造防止策が施されている。また有効期限内であれば、劣化による券面の印字が不鮮明な場合などは購入駅で無償で交換してもらうこともできる。西日本旅客鉄道(JR西日本)では毎年1月1日をもって発行する原紙の模様を変えており、アルファベット2文字と5ケタの通し番号を振り分けている(例:AA01234など)。ICOCA・TOICA・SuicaなどのIC定期券の場合は、容易に偽造ができないことからカード固有のID番号によって管理されている。詳細は各ICカードの記事を参照。旅行会社ではJR定期券の発売はないので旅行会社向け端末では削除されている。切符をマルスシステムと接続して発券するための端末として、駅員が操作するタイプ(鉄道情報システム (JRS) 製品:MR型、ジェイアール東日本情報システム (JEIS) 製品:ME型)と、顧客自身が操作するタイプ(MV型)の2つに分類できる。これらは、JR各社のさまざまなニーズに応じることができるように、JR東日本におけるSuica、JR西日本におけるICOCA対応などシステムや機能が拡張されている。また、クレジットカード会社のシステムともオンラインで接続されており、カード決済による発券の際には、与信照会などが行われる。なお、端末は日立製作所製のほか、一部に日立と同じく芙蓉グループに加盟する沖電気工業製も存在する。沖電気製はMV30端末やMV50端末、JR東日本のMEM端末、MEX端末で主に使用されているほか、M型端末は日立製作所とともに2社で製造していた。JR鉄道駅や旅行会社のみどりの窓口の端末に、駅員や旅行会社係員が端末を操作し、列車や座席、条件等を指定することにより、端末に接続されたプリンターから自動的に切符類が発券される。端末から出力される切符は、ほとんどが磁気化券となっており、発売された切符の内容がマルス端末による自動控除(払戻処理)用と、自動改札機用の情報それぞれにエンコードされ記録されている。発売された切符のうち、定期券サイズで切符に丸印の中に×のマークが入った切符や、自動改札機を通過できない旨明記された切符以外は、原則として、全国のJR各駅の自動改札機を通過することが可能である。端末の種類としてはMR型、ME型になる。JR発足直後にも、「TravelEDI端末」として試行されていたが、2000年代に入ってからは、利用客が自ら操作できる指定席券の発券や座席の指定機能を持った指定券自動券売機(MV端末)も、主要駅に設置されるようになった。ただし、設置箇所や設置旅客会社の方針により、発売品目や列車は限定されている。現金のほか、クレジットカードによる決済にも対応している。また、駅員が使用するMR型は、10時から1か月先の指定券が発売されるのに対し、MV型は10時20分からの発売となる。旅客向けの名称はJR北海道やJR東日本では「指定席券売機」、JR東海では「エクスプレス券売機」、JR西日本では「みどりの券売機」である。端末の種類としてはMV型、ER型になる。MV端末筐体のカラーは会社ごとに異なる(例、東日本:薄紫、東海:青、西日本・四国:黄緑など)。JR西日本の一部駅にはお客様センターから対話遠隔操作タイプの「みどりの券売機プラス」のほか、5489サービス・エクスプレス予約受取専用の「みどりの受取機」などが設置されている。また、かつてはJR東日本の一部駅にも対話型端末の「もしもし券売機Kaeruくん」(ER端末)が設置されていた。旅館券・航空券の発売に関しては旅行業務取扱管理者資格を持った社員が在籍しないと発売できない為、JR西日本は諸事情から平成20年3月31日をもって終了し、同社管内の駅に配置されている端末では初期メニューからも旅館券・航空券の項目が削除されている。また旅行会社では航空券は自社の総合端末の発券機能か、別途航空会社からレンタルされた端末を使用し、旅館券やイベント券も自社のシステムで発券することが多いため、マルスでの旅行業業務機能は使う用途が限られている。(設置駅によって発売内容が異なる)(以下係員操作が必要な部分)マルスが開発される以前は、予約列車の始発駅が属する指定席管理センターで、列車ごとに日別の指定席台帳を作って各列車の指定席を管理していた。駅で切符の申込みを受けた際は、駅員が電話でセンターへ問合わせ、センターでは指定席台帳から空き座席を探し出して見つけた座席の座席番号を回答し、駅ではその座席番号を指定券に書き写して発券していた。指定席管理センターでの予約処理はおおよそ以下のとおりであった。これらの作業にはかなりの技を駆使する必要があった。ベテランになると、1メートルぐらい離れたところからでも所定位置に戻せるという、まさに職人技をもって対処していた。この様子は国立科学博物館のマルス101の展示の前で流されている解説ビデオなどで見ることができる。しかしこの方式では発券に多大な時間を要し、指定席を連結する特急・急行列車が増加するにつれて膨大な量の申込みを捌くことができなくなり、指定席を必要とする利用者がいるにも関わらず発券が間に合わず空席を残したまま列車が発車してしまう事態が発生していた。さらに、主たる作業を人間が行うため、聞き間違いによる予約指定ミス、書き間違い、回答の言い間違い、転記ミスなど、発券ミスを引き起こす要因が数多くあった。これを改善するため、当時の鉄道技術研究所の穂坂衛、大野豊らが、日本が最初に輸入したコンピュータであるBendix G-15のアーキテクチャや、アメリカン航空が当時研究中の座席予約システム「SABRE」などを参考にしつつ、世界初となる列車座席予約システムの機械化の研究を1957年に開始した。翌1958年、日立製作所とともにマルスの開発が開始された。また、相前後して、小田達太郎による、サイバネティックスの考え方などの導入といった改革の機運が、国鉄内にあったことも背景にあることが指摘されているなお、俗に言う「POS端末」と呼ばれる、マルス中央装置との通信を要しない機械設置駅の場合、指定券等の通信を要するものについてはマルスを設置している管理駅に係員が問い合わせた上で手書きによる方法で発券するため、現在でも上述のような形式を採用している駅も僅かながらに残っている(ただしPOS端末設置駅全てでできるわけではない)。詳しくは駅収入管理システムの項を参照されたい。マルス1は、国鉄の座席予約専用にハードウェアを設計したコンピュータを使ったシステムであった。記憶装置としては磁気ドラムを採用し、ここに4列車、3600席、最大15日分の予約をできるようにしていた。しかし、すべて1からの手作りであったため、予定の1959年3月には間に合わず同年8月に完成、1960年1月18日に運用を開始した。当初は下り「第1こだま」「第2こだま」に、その後6月に下り「第1つばめ」「第2つばめ」を加えた4列車の予約業務を行なった。しかし、発券内容を切符として印刷することができず、プリンタで印刷し、それを窓口係員が書き写して切符を作成していた。マルス1のヒューマンマシンインタフェースは、コンピュータの発達の初期にあったにもかかわらず大変工夫されたものであった。たとえば、予約する区間をシステムに入力するには、駅名のハンコを発券用のホルダにセットすれば、自動でハンコの側面にあるミゾのパターンにより入力される、といったものである。このような工夫は以後のマルスにも受け継がれた。マルス1に特筆的なこととして、東京駅など中央コンピュータに近い窓口では、ブラウン管を使って、座席の予約状況を示す表示がおこなわれたことが挙げられる。これは日本において、ブラウン管を使ったコンピュータからの情報表示が実用化された極めて初期のものであった。以後のマルスでは遠方へのサービス等のためにランプによる表示のみとなったが、マルス105ではタイプライタによる出力がおこなわれた。現在マルス1の本体は、埼玉県さいたま市大宮区の鉄道博物館に、電気学会から表彰された「電気の礎」プレートとともに展示されている。2002年10月から稼働を開始した現行のシステム。2003年10月に第二フェーズが稼働し、JR各社の個別の要求に対応できるようになった。また、システムの主要部分についてサーバー化が2004年にかけて進み、指定券自動券売機(MV端末)の機能増強も同時進行。乗車券類の直接サーマル券化も始まった。それに伴い、通称「パタパタ」(ページ面)を有するM型端末は2002年9月30日をもって廃止され、L型端末(初のPC型端末機)も2003年9月30日をもって廃止された。2010年現在、稼働している端末機種で顧客操作型は(MV端末)MV10・30・35・40・50、係員操作型は(MR端末)MR11・12・12W・20・31・32・51・52、MEM端末、MEX端末であり、そのうち係員操作型MR11・31・51は旅行会社 (AGT) 用でプリカット紙(あらかじめ横85mm・横120mmに切断済みで、右側に紫色の連番が入っている)を使用、顧客操作型MV40はクレジットカード決済専用で定期券の発券に対応していないため5489サービス・エクスプレス予約・JR九州インターネット・電話予約受取り専用として使われる事が多い。このため、定期券に対応する必要がある場合は現金購入機能を省いてクレジットカード専用としたMV30・35・50を使用する例もある。また、MV40、MR31・32・51・52、MEX。MV50は従来からあったカセットリボン(熱転写)による印刷から感熱印刷方式になった。MV35系列はカセットリボン式と感熱印刷式の双方が存在し、MV35がカセットリボン式でMV35C・MV35Dが感熱印刷式である。感熱印刷式の端末では、2色印字に対応した特殊な感熱紙が使用されている。JR北海道では自社内完結の乗車券、自由席券、定期券、特別企画乗車券、イベント券などの商品を発券する際は原則「総販」というローカルシステムで管理・発券している。東京モノレール券なども発券することができる。MR端末を用い、MR端末のシステムの一部として組み込まれている。このシステムで発券した切符には「総販」というマークが印字されるほか、連番などの印字方法もマルスシステムとは異なる券面での発行となる。また、総販システムでは、発券ごとに国分寺のマルスホストと通信する必要がなく、通信費などの削減に効果をあげている。もちろん、座席指定を伴う新幹線・在来線特急券、指定席券のほか、JR他社にまたがる乗車券については、マルス端末機能を使用した発行となる。JRバスグループでは、列車とは異なるバス特有の事情や、マルスがコンビニエンスストアのマルチメディアステーションやインターネットなどと接続されていないなどの理由から、マルスとは別にジェイアールバス関東、ジェイアール東海バス、西日本ジェイアールバス、JRシステムによって「高速バスネット」が開発され、2006年から稼動しており、「ドリーム号」などの「高速バスネット」での予約や購入には、路線や条件によって運賃を割り引くなどの特典を実施している。これに伴い、マルス枠を廃止する路線も増えてきている。私鉄でも、有料座席指定特急を運行する事業者では、同様の座席予約システムを構築していることが多い。一例として、近畿日本鉄道は「ASKA (All-round Services by Kintetsu and its Agency) システム」を開発・運用しており、主要旅行会社のシステムとも結合されている。小田急電鉄では、2003年に「MFITTシステム」を導入している。航空会社の座席予約システムは総称として、CRS (Computer reservations system) と呼ばれる。JRグループの「乗車券類委託販売基準規程」により、以下のように表記される。
出典:wikipedia
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