豊肥本線(ほうひほんせん)は、大分県大分市の大分駅から熊本県熊本市西区の熊本駅に至る九州旅客鉄道(JR九州)の鉄道路線(地方交通線)である。「阿蘇高原線」(あそこうげんせん)という愛称が付けられている。国土交通省監修『鉄道要覧』では、大分駅を起点としているが、JR線路名称公告では熊本駅が起点で、列車運行上も熊本から大分行きの方向が下りになっている。ここでは、経路図、沿線概況、駅一覧などを除き『鉄道要覧』に合わせ大分駅起点として記述する。2016年4月の熊本地震で甚大な損害を受け、一部区間が不通となっており、全線復旧の目処は立っていない。世界有数の規模を持つ阿蘇カルデラの中を横切って九州中部を横断し、大分市と熊本市を結ぶ路線である。特急列車も多く運行され、阿蘇や城下町・竹田市を通る観光路線であるとともに、大分市・熊本市への通勤・通学路線でもある。JR化後は、大分、熊本都市圏近郊において増発、新駅設置など、輸送力は大きく改善された。国鉄時代は1時間に1本程度であったが、現在では20-30分間隔で運行されており、また観光路線ということもあり、幾分黒字に近づいた。実際に大分県内を走るJR線(当路線と、日豊本線・久大本線)の中でも営業係数は低い。2012年12月1日より、大分駅 - 中判田駅間および、肥後大津駅 - 熊本駅間で、IC乗車カード「SUGOCA」が利用可能である。なお、中判田駅 - 肥後大津駅間では、SUGOCAでの入出場はできないが、SUGOCAでの乗車で通過することはできる大分駅 - 滝水駅(構内除く)間が大分支社、滝水駅 - 熊本駅間が熊本支社の管轄である。風景説明の都合上この章では熊本起点で説明する。熊本駅から肥後大津駅までは電化区間で、政令指定都市である熊本市をはじめとする熊本都市圏の通勤通学路線となっていて、沿線には学校や光の森を始めとした、新興住宅地や、ニュータウンが多くあるため、鹿児島本線熊本口よりも豊肥本線熊本口の方が運行本数も利用者も多くなっている。朝の通勤時間帯は10分間隔で運行される。熊本駅は2015年3月に一部高架化されたが、豊肥本線は地上ホームから出発する。鹿児島本線と分かれたあと白川を超えると、住宅地が広がる。また、熊本駅よりも市街地により近く、東部地区へ近いことから同じ熊本市電と連絡する駅であっても新水前寺駅を利用する人が多くいる(利用者数は県内第2位)。そのため、熊本駅の利用者はあまり多くない。再び白川を越えた後、武蔵塚駅付近からは加藤清正が整備した杉並木の街道と併走する。光の森駅をすぎるとやがて肥後大津駅に到着する。この駅からは、熊本空港への連絡タクシーが出ている。肥後大津から先は非電化となり、阿蘇外輪山に向かってゆく。右下に阿蘇から有明海に流れ下る白川を見下ろすようになると立野駅。ここは外輪山が1か所だけ途切れて低くなった場所で、阿蘇のカルデラ内と熊本平野をつなぐ白川も道路も鉄道もここを通らねばならない。ここで鉄道は有名なスイッチバックで標高を稼いでカルデラ内に入る。熊本から立野に到着した列車の運転士は、ホームの上を歩いて反対側の運転席に行き逆向きに発車、しばらく坂を登って停止すると今度は車内を歩いて元の運転台に戻り、再び初めと同じ進行方向で発車する。この間、白川の渓流はどんどん遠くなってゆき、やがて列車は阿蘇カルデラ内の平原(阿蘇谷)に入る。阿蘇谷を走る間、右には阿蘇の火山群、左には広い田圃の向こうに長大な崖のようにそびえ立つ北側外輪山を見ることができる。宮地駅近くには肥後国一宮の阿蘇神社があるが、このあたりが火山群が最も良く見える。宮地駅を出ると列車は左右に大きくカーブしながら東側外輪山を登ってゆく。いくつかの長めのトンネルを抜けて、一瞬左手に広大な阿蘇谷を見渡せるがすぐに豊肥本線の最高点である坂の上トンネル(延長2,886m)に入る。ここまでひたすら登りつづけてきた豊肥本線は分水嶺を超え、ここから下り始める。緩やかに波打つ高原を左右に細かくカーブしながら下ってゆくが、この周辺は9万年前に阿蘇山が大噴火した時に火砕流に覆い尽くされた一帯(火砕流台地)である。滝水駅と豊後荻駅の間に横たわる大分県との県境付近から、豊肥本線は大野川水系上流の幾筋もの川を、ある時は渡り、ある時は川筋に沿って走ってゆく。これらの支流が稲葉川と大野川の2本の川に集約されて盆地に流れ込み、その底になったところが豊後竹田駅。四方を山に囲まれた竹田市は「れんこん町」と呼ばれるほどトンネルが多く、豊肥本線も何本ものトンネルを通り抜けて豊後竹田駅に着く。瀧廉太郎の『荒城の月』で有名な岡城は駅近くにあるが、盆地の底にある駅や市街からは見上げるような高さの台地上に石垣を組んでいる。竹田市を出ると、豊肥本線はおおまかに大野川に沿って、谷筋を通ってだんだん平地へ降りてゆく。竹田市やその東隣の豊後大野市は奥豊後と呼ばれる地域で、沿線には大野川水系の豊かな水資源による湧水や滝等が数多い。豊肥本線は豊後大野市のうちの緒方町、三重町、犬飼町などの長閑な風景の中、川幅を広げながら流れる大野川およびその支流を何度か渡る。中判田からは一転して大分市の郊外住宅地に入り乗客・運行本数共に多くなる。国道10号に並行して東九州の中核都市である大分市の市街地を縦断。下郡信号場からは日豊本線と並走しながら大分川橋梁を渡ったところで高架区間に入り、その後久大本線が合流。駅南側の再開発工事が進む大分駅で終点となる。大分駅ホームは2012年3月17日に完全高架化されたが、それに先立ち豊肥・久大本線のホームのみ2008年夏に先行して高架化されたため、その間特急「九州横断特急」は大分側橋梁手前で豊肥本線から仮設の渡り線を経て日豊本線(当時地上ホーム)に入るようにして、別府駅までの直通運転を継続した。普通列車はおおむね豊後竹田駅・宮地駅・肥後大津駅で運転系統が分かれている。大分駅 - 三重町駅間・肥後大津駅 - 熊本駅間で運転されているワンマン運転の普通列車(2両編成)は、2006年3月17日までは無人駅および有人駅での営業時間外の停車時は前の車両のドアのみ開き(中扉は開かず・後ろ乗り前降り)乗車時には整理券を取る必要があったが、翌3月18日のダイヤ改正後より、すべての駅で列車のホーム側のすべてのドアから乗り降りできるようになった。さらに熊本側は2013年3月16日のダイヤ改正よりすべての列車によるすべてのドアからの乗り降りできる区間が立野駅 - 熊本駅間に拡大された。キハ200系気動車を中心に運行され、大分駅 - 中判田駅・犬飼駅・三重町駅間の区間運転列車も設定されている。1時間あたり大分駅 - 豊後竹田駅間の直通が1本、大分駅 - 中判田駅間は区間運転が入って2 - 3本になる。朝晩には犬飼駅・三重町駅発着の設定がある。2008年3月14日までは、夕方に豊後竹田発とその折り返し中判田行き1往復が日豊本線の別府駅まで乗り入れていた。2014年3月15日のダイヤ改正で最終列車の三重町着時刻が0時台となり日付を跨ぐようになった。2015年3月14日のダイヤ改正で中判田・三重町発で日豊本線亀川行きが復活したが、亀川発の豊肥本線乗り入れ列車は設定されていない。キハ200系はもともと福北ゆたか線(筑豊本線・篠栗線)や熊本地区で使われていたが、電化で大分地区に転属した。山あいの過疎地を走るために駅間距離が他より長く利用者が少ない。運転本数もこの区間の通し列車が1日5往復と豊後荻発豊後竹田行きの区間列車下り1本のみで、3 - 6時間ほど運転間隔が開く時間帯がある。特に波野駅と滝水駅に停車する普通列車は午前中は上りが7時台の熊本行きと10時台の宮地行きの2本、下りが7時台の豊後竹田行き1本しかなく、次の列車は上下線とも13時過ぎまで停車しない。この区間はワンマン運転対応のキハ220形・キハ125形気動車などによる単行運転が行われている(6時台の豊後荻発豊後竹田行きとその折り返しの豊後竹田発熊本行き、21時台の宮地発豊後竹田行き(熊本発18時台)はキハ47形2両編成による運転)。キハ200系・キハ40系気動車による2両編成列車が、一部の時間帯を除き1時間あたり1本程度運転されている。一部の列車を除き、日中は肥後大津駅で熊本駅発着の電車に接続するダイヤを取っているが、早朝・夕方以降は熊本駅直通列車も設定されている。1999年の熊本国体に合わせて電化されたこの区間では、2両編成の815系・817系電車により昼間は1時間あたり3本程度運転が行なわれており、早朝および深夜に熊本駅 - 光の森駅間の区間運転列車も設定されている。平日朝ラッシュ時は約10分間隔で運転されるが、混雑するため815系・817系では4両編成での運転も行われる。このほか、鹿児島本線との直通列車も少数ながら設定されており、鳥栖駅・大牟田駅(平日のみ)・八代駅 - 光の森駅・肥後大津駅間で運行されている(現在熊本駅高架化工事中のため、配線上豊肥本線から鹿児島本線上り鳥栖・大牟田方面への直通列車の設定はない)。九州新幹線との接続を意識して、始発は5時台、終電は0時台になっている。0時台の終電は新幹線全線開業後に新設された。2011年3月12日九州新幹線全面開通後、後述の特急「有明」の豊肥本線内での運行が廃止されるのに伴い新たに快速列車「豊肥ライナー」が設定され、2013年3月15日まで運行された。熊本駅 - 肥後大津駅間の途中停車駅は「有明」と同じく新水前寺駅・水前寺駅・武蔵塚駅・光の森駅であり、肥後大津発3本・光の森発3本、肥後大津行き3本・光の森行き4本の計13本が10時台から16時台にかけて運行されていた。2013年3月16日のダイヤ改正をもって豊肥ライナーの愛称は廃止され、各駅停車の普通列車となった。全線にわたり特急「九州横断特急」が運行されている。2016年3月のダイヤ改正からは車掌が乗務し、毎日3-4両編成で運転されているが、2004年3月の「九州横断特急」新設時から2016年3月までは、通常の2両編成で走る場合は運転台に『ワンマン』と表示してワンマン運転が行われ、女性客室係員が乗務している場合でも扉操作や運転案内放送は運転士が行っていた。沿線に阿蘇を有する豊肥本線は古くから観光路線として位置付けられ、1958年からは準急「ひかり」が運行され、1961年からは循環列車となる準急「ひまわり」が設定された。その後の変遷を経て、豊肥本線内を運転する優等列車は急行「火の山」に統合され、その一部は天草諸島や島原半島へ向かう観光客の利便を考慮して三角線三角駅まで直通運転が行われた。1992年に「火の山」が特急に昇格して「あそ」と改称し、車両もキハ185系気動車に置き換えられた。2004年3月13日には「あそ」と肥薩線の特急「くまがわ」の一部の列車を統合し、運転区間を別府駅 - 大分駅 - 熊本駅 - 人吉駅間に変更したうえで「九州横断特急」と改称した。1987年から途中の中断を経て九州新幹線(鹿児島ルート)全線開業時まで、鹿児島本線博多駅発着の特急「有明」が豊肥本線内の熊本都市圏部に乗り入れていた。熊本駅は熊本市中心部から離れており、熊本市の中心市街地や住宅地が豊肥本線沿線にあることから、熊本都市圏からの利便性向上を図り運行され、九州自動車道経由で福岡市と熊本市を結ぶ高速バスのひのくに号との競合を意識していた。当初は非電化であったためDE10形ディーゼル機関車が485系電車を牽引して豊肥本線を水前寺駅まで走行していたが、1994年に一旦廃止された後、1999年の熊本駅 - 肥後大津駅間の電化開業に伴い再開され、運転区間も熊本駅 - 水前寺駅・武蔵塚駅・光の森駅・肥後大津駅間となった。2007年3月18日改正からは、早朝の博多方面行きの「有明」1本が豊肥本線内(光の森駅→熊本駅間)普通列車として運転されていた。九州新幹線(鹿児島ルート)全面開業に伴い、2011年3月11日限りで「有明」の豊肥本線内での運行を終了した。「九州横断特急」も一部が熊本駅発着に変更されている。2016年3月26日のダイヤ改正で「九州横断特急」は熊本駅 - 人吉駅間の運転が取り止められ、すべて熊本駅発着となった。なお現在、豊肥本線内では特急が先行の普通列車を追い抜くことはない。各地から阿蘇への観光客集客を目的として、毎年概ね3月から11月までの土日祝日および小・中・高等学校の長期休暇期間中などには熊本 - 宮地間に専用車両を使用した臨時列車が運行されている。1988年3月からキハ58形・キハ65形を改造したジョイフルトレイン「サルーンエクスプレス」を使用した臨時急行列車「サルーンエクスプレス阿蘇観光号」が運転されたが、同年8月28日からは8620形蒸気機関車がアメリカ風に改造された50系客車を牽引する「SLあそBOY」が運転された。以後「SLあそBOY」は毎年3月から11月に運転されていたが、機関車の老朽化により2005年8月に「SLあそBOY」は運行休止となり、同年内に運転される予定であった「SLあそBOY」はディーゼル機関車が牽引する「ディーゼルあそBOY」として運転されたが、同年限りで終了した。2006年7月22日からは内装や外観を昭和30年代のイメージに改造したキハ58系2両を使用する臨時快速列車「あそ1962」が運行を開始、車内では昔のCM放映や阿蘇の特産品および駄菓子販売を行った。「あそ1962」は2010年12月26日をもって運行を終了した。2011年6月4日よりキハ183系1000番台を改造した観光特急「あそぼーい!」が運行されている。また、これに先立ち2011年3月12日より5月29日までは臨時特急「阿蘇ゆるっと博」が運行されていた。大分 - 玉来間は国鉄の犬飼軽便線(いぬかいけいべんせん。後に犬飼線と改称)として、宮地 - 熊本間は宮地軽便線(みやじけいべんせん。後に宮地線と改称)として、両線とも1914年に開業した。なお現在、南阿蘇鉄道となっている立野 - 高森間も宮地線の支線として開業している。最後の区間である玉来 - 宮地間が開業して大分 - 熊本間が全通したのは1928年で、宮地線・犬飼線を合わせて豊肥本線となった。その際、立野 - 高森間の宮地線の支線は高森線となった。阿蘇・竹田などの多雨な山間部を通っているため、集中豪雨や土砂災害などの災害が発生しやすく、そのたびに数か月から災害の規模によっては1年以上も不通となることもある。1990年7月2日の集中豪雨では緒方 - 宮地間が不通となり、復旧に1年3か月を要した。1993年9月2日の台風13号では三重町 - 豊後清川間が不通になり、全線復旧まで8か月を要した。2004年9月に三重町 - 豊後清川間の百枝トンネルが土砂崩壊により不通となり、12月の復旧までバスによる代行輸送を行った。2012年7月12日の九州北部豪雨では緒方 - 肥後大津間の各所で土砂流入・築堤崩壊・橋梁流出などの災害が発生した。緒方 - 豊後竹田間および宮地 - 肥後大津間は同年9月3日までに順次復旧し、被害の大きかった豊後竹田 - 宮地間は、同年8月20日より代行輸送(同日から9月2日まではジャンボタクシーによる代行輸送、9月3日より七城観光バス・大野竹田バス・亀の井バス(湯布院営業所)等によるバス代行輸送)を行っていたが、翌2013年8月4日に復旧し運転を再開した。復旧にあたって、被害を受けた区間では路盤やトンネルが強化や土石流対策が施され、九州北部豪雨と同程度の雨が降っても耐えられる物となった。2016年4月には熊本地震が発生。立野 - 赤水間で大規模な土砂崩れが起きて近くの国道57号や阿蘇大橋もろとも線路が流出し、赤水駅付近では列車が脱線するなどの被害が出ている。下り方向(熊本から大分方向)に記述する。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。