劣化ウラン(れっかウラン、英語:Depleted Uranium、略称:DU)は、ウラン235の含有率が天然ウランの0.720%より低くなったものと定義されている。ウラン濃縮の際に副産物として生成されるものは、ウラン235の同位体存在比が0.2から0.3%と半分未満である。またウラン235の濃度が低下した使用済み核燃料をさすこともある。減損ウラン(げんそんウラン)とも呼ばれる。英語ではともにdepleted uraniumであるが、劣化ウランということもあれば減損ウランと訳すこともあるとくに天然ウランからウラン235を分離した残りカスを劣化ウラン、使用済み核燃料起源のものを減損ウランという事もある。天然ウランには、熱中性子による核分裂反応を起こしやすいウラン235と起こしにくいウラン238が含まれ、このうちウラン235の含有率は0.7%程度である。この天然ウランからウラン濃縮によって濃縮ウランを得た後に残された部分は、通常、ウラン235の含有率が0.2%程度であり、天然ウランに及ばないため、これを劣化ウランと呼ぶ。さらに濃縮を行なって劣化ウランに残存するウラン235の割合を下げ、より多くの濃縮ウランを得る事もできるが、新たにウラン鉱石を採鉱・精製・濃縮することと比較してコストがかかるために行われない。上記の濃縮後に得られる劣化ウランは六フッ化ウラン。用途に応じて酸化物または金属として利用する。ウランは密度が高い金属であるため、従来使用されていた鉛やタングステンに代わり、ロケットや航空機の動翼カウンターウェイト、列車や車両等の重心微調整用の重り(マスバランス)として使用されている。原子番号が大きいことからX線やγ線の遮蔽効果が大きく、医療用放射線機器等から発生する放射線の遮蔽に用いられている。アメリカなど一部の国では戦車砲の徹甲弾や装甲材として用いられている。通常用いられるタングステン等よりも特性的に優れているためである。さらに、廃棄物と見なせば原材料のコスト的にも有利である。ウラン235の濃度が低いため、劣化ウランは軽水炉の核燃料としては利用できない。しかし、ウラン238に中性子を吸収させ、核分裂を起こしやすいプルトニウム239へと転換させることができるため、高速増殖炉に用いる燃料として期待されている。劣化ウランは重金属である。したがって、他の重金属と同様に重金属中毒の原因となる。主に腎臓の障害を引き起こす。なお、劣化ウランの毒性は鉛や水銀よりも低く、砒素と同程度である。また、こうした環境問題について、アメリカやWHOは証拠が不十分と否定的な立場をとっている(ただし、WHOは子供が口にすることのないように警告している)。上記の通り、アメリカ政府は対外的には証拠が不十分と否定的な立場をとっている。しかし()、有毒物質として法律で規制され厳重な管理下に置かれている。劣化ウランの微粉末吸引による内部被曝も問題視されており、人体への影響に関して未だ十分な医学的研究がされていない段階である。、被害の原因究明のためにも早急な症例収集・調査が求められている。2007年12月5日国連総会では次年度の国連総会で劣化ウランを使用した兵器の影響について議論することが採択され、日本政府も賛成した。今後、科学的・政治的議論が国際舞台で展開されることが期待される。劣化ウランでは、濃縮過程においてウラン235及びウラン234の割合が少なくなる。これらのウラン同位体はウラン238に比べて半減期が短い(放射能が高い)ため、劣化ウランの放射能は天然ウランの放射能に対して相対的に低いと言える。なお、ここでいう天然ウランは、ウラン鉱石を精製して得られた濃縮処理を行なっていないウランで、比較対象の劣化ウランと同一の化学形態であるとする。また、劣化ウランについても天然ウランに由来するものであるとする。これは、再処理核燃料由来の劣化ウランの場合、原子炉での核反応条件にもよるが、半減期の短いウラン236を一定量含んでいるためである。IAEAによると、純粋な天然ウラン1mg当りの放射能が25.4Bqであるのに対して、劣化ウラン中のウラン1mg当りの放射能は14.8Bqである。核種別の内訳を見ると、標準的な劣化ウランには、ウラン238・ウラン235・ウラン234がそれぞれ、99.8%・0.2%・0.001%の割合で含まれており、それぞれが持つ放射能の割合は、83.7%・1.1%・15.2%である。ウラン238の半減期は約45億年、ウラン235の半減期は7億年であり、純粋なウラン235の比放射能は純粋なウラン238に比べて約6倍高い。しかし、天然ウランの同位体比はウラン238が約99.3%であり、ウラン235が約0.7%である事から、天然ウラン中での存在比はウラン238がウラン235の約140倍である。これらより、天然ウランがウラン238とウラン235だけから成っていると仮定すると、ウラン235はその放射能のうち約4.8%を占めることになる。しかしながら、天然ウランにはさらにウラン234が含まれていることを考慮する必要がある。ウラン234はウラン238のひ孫核種であり、ウラン238とウラン234は放射平衡を形成している。このため天然ウラン中に存在するウラン234はウラン238と同じだけの放射能をもっている。これらより、天然ウラン中でのウラン235に由来する放射能は、約2.4%と算出できる。ウラン238は、鉛206に到るまでおおむね14回ウラン系列に沿って壊変を繰り返す。そして、ウラン238の半減期はどの子孫核種と比べても半減期が飛びぬけて長い。したがって、壊変系列全体が放射平衡となる。すなわち、ウラン238のもつ放射能は系列全体の約1/14である。ただし、途中のラドンは気体なので大気中に放出する分がある。実際の天然ウランではこれより高い割合となる。ウラン235についてはアクチニウム系列で壊変を繰り返す。ウラン廃棄物からウランを回収する方法として、ウラン高選択性吸着剤PVPP(ポリビニルポリピロリドン)の活用の研究が、東京工業大学池田研究室で行われている。精製ウランの放射能は、時間とともに一定の強さにまで増加していく。これは、ウラン鉱石の精製の過程で除去された、ウラン系列、アクチニウム系列に属するウラン以外の核種が、順次壊変によって生成されるためである。ウラン238の場合、娘核種のトリウム234との半減期に、10オーダの差があるため、永続平衡が成立する。トリウム234と、ウラン238の孫核種、プロトアクチニウムとの間にも同様に永続平衡が成立する。よって、孫核種までの永続平衡によって放射能は単体の3倍となる。永続平衡成立には二番目に半減期が長い核種の10倍程度の時間がかかるため、200日程度で平衡に達する。ウラン238とウラン234の間にも10オーダでの半減期の差があり、永続平衡は成立するが、成立には10年オーダの時間が必要である。よってこれ以降の壊変は、工学上考慮する意味がない。天然ウランのように、ウラン238の寄与分が1/14となるまでには、非常に長い時間が必要である。
出典:wikipedia
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