デコトラはデコレーショントラックの略であり、コンテナ部のペイント塗装やマーカーランプやアンドンといった電飾装備、ステンレス製やクロムメッキを施されたエアロ部品などを用いて外装を飾ったトラックを指す用語である。別名アートトラックとも呼ばれる。デコトラの名称は、が一般名詞化したものとされている。軽トラックからトレーラーまで大小の種類を問わず見受けられ、外装だけでなく内装にも装飾がされた車も多い。本来の運送業務には利用せず、イベント参加用に個人の趣味として作られた車もある。デコトラの原型は、主に水産業および水産物輸送に携るオート三輪が、塩害や融雪剤の悪影響で車体が錆び、寿命が短かったことから、傷んだ荷箱の補修に表面を小円状のヘアライン加工(由来は航空機用外板の「エンジンターン加工」 " )したステンレス鋼板をリベット留めしたのが始まりとされる。この表面硬化加工されたステンレス板は「ウロコステン」と俗称され、独特の光沢や質感からデコトラの装飾に用いられる基本的な材料になった。現在では桜や薔薇などの花模様がプリントされたステンレス板も普及しているが、元来は装飾ではなく実用上の加工であった。後に豊漁時における大量輸送の要請で荷台部を大型化する改造が、高度経済成長で急造したダンプトラックなどにも波及し、その際に商店や企業の看板のみならず、オーナーの趣味を反映した装飾が施されるようになっていった。車体にアンドン、マーカーなど、装飾目的のみの改造を施したのは、一説には宮崎靖男の1964年式いすゞTD、また一説には八戸港の水産物流業、山本商事の夏坂照夫ならびにその義兄とされている。夏坂兄弟のいすゞ11トン前輪2軸車と、三菱ふそうT656の『第三正神丸』、そして1969年式日野TC平ボディーの『八高丸』は、花鳥風月をエアブラシで描いたペイントや、電飾等さまざまな改造を施した車両で同業者から注目を浴び、トラックカスタムの一ジャンルとして認知されるようになった。当時はトラック用の既製改造部品がほとんど無く、観光バスや自家用自動車の解体部品(空調ダクト→「バスロケット」、行先標示板→「アンドン」、リアコンビネーションランプ→「流れるテール」など)や、米軍放出品のホーン(俗に言うヤンキーホーン)などを流用していた。トラックの愛称(ニックネーム)「○○観光」は観光バスのパーツ流用の名残りで、「○○丸」は水産物流業者にルーツがあり、現在でも用いられている。1970年代に入ると宮崎ら横浜のグループや、夏坂ら八戸港・石巻港の「第七港町急送」などが結成され、豪華さを競うブームは全国へ広がった。これをNHKが取り上げ『カメラリポート 走る街道美学』(1975年)という番組名で放送。同番組で、「派手な電飾を点灯して東名高速道路を走行していたデコトラ」(宮崎も取材を受けている)を目にした愛川欽也が、以前から菅原文太と温めていたロードムービーを実現させるためのキーワードとして「デコトラ」に注目。企画を東映に持ち込んで製作されたのが、『トラック野郎・御意見無用』(監督:鈴木則文、主演:菅原文太、愛川欽也)だった。この製作発表会で宮崎は「哥麿会」を発足させ、映画に全面協力している(自身も運転手役で全作に出演した)。1975年8月に公開されたこの映画は、当初は単発の併映作扱いだったにもかかわらず予想外の大ヒット作となりシリーズ化し、毎年お盆と正月に封切られるようになった。それに伴いデコトラも高齢者から子供まで幅広く認知されていく。「トラック野郎シリーズ」の主人公、星桃次郎に憧れて運輸業界に入った者も少なくない 。なお、桃次郎の運転する11トン車「一番星号」は、元は哥麿会の当時の副会長の愛車(ダンプカー)の名前であった。監督の鈴木が名前を気に入り譲って貰ったのだが、その代わりに菅原から「兄弟星号」の名を送られている(ただし、行灯を作る前に廃業している)。「」は、毎回クライマックスで、桃次郎が義理人情のためにハンドルを握り、一番星号を爆走させる。そして、ほぼ毎回、パトカーの追跡を振り切る場面があり、パトカーがひっくり返る事も珍しくなかった(第4作『~天下御免』のように、カーチェイスがない作品もある)。これに対し、警視庁から東映にクレームが入っており、プロデューサーの天尾完次は対応に苦慮していたという。このため、夏の公開は大作映画に差し替える案があった。1979年末に公開された第10作『~特急便』は売り上げが10億円に届かなかったこともあり、結局1980年の夏は大作映画『二百三高地』が公開され、「トラック野郎シリーズ」は終了した。同時に、警察による取り締まりの強化でトラックの電飾などが規制され始め、70年代のデコトラブームは沈静化した。1990年代後半以降は、機動戦士ガンダムをイメージするようなガンダム系アート、ラッセル戻しと呼ばれるバンパーなどに代表されるデザインはモダンアートと総称される。『トラック野郎』時代を回顧するレトロアートの再流行も見られる。も少なくなく、したがって、業務にも用いられるデコトラの多くは個人事業主や装飾を容認する小規模運輸会社によって所有されるものが中心となっている。一口にデコトラといってもさまざまな方向性があり、またそのバリエーションがオーナーやグループの個性となって現れている。車両のサイズやコンセプト、用途の関係もあって必ずしも下記の装備品が全て揃っている必要はない。これらのパーツを装着する事で全長・全幅・全高・重量が変わる場合があるので、道路交通法及び道路運送車両法を遵守し、また必要に応じ記載事項変更・構造変更の手続をして、改造車検に合格しなければならない。2013年には、トラックのフロントガラスに装飾板を入れて視界を妨げることを黙認したとして、運送会社5社が兵庫県警に摘発されている。トラックの運転席(キャブ)の上に装着され、通常は平ボディやダンプカーなら積み荷の飛散防止や雨よけのシートカバー、固定用のロープやベルトなどを収容する箱状のパーツが、バンボディ(箱車)なら空気抵抗を低減するエアデフレクター(エアロパーツ)が装着されるが、デコトラの場合はこの部分にステンレスまたはスチール製でメッキを施したフロントデッキ(鳥かご)や筒状の装飾品(ロケット)が装着される。デコトラでキャブやバンボディの屋根に装着されているロケットは、かつてはとバスで活躍したの空調ダクトを模したものといわれている。メーカー純正パーツでミラーの外枠にメッキ加工を施したものはあるが、デコトラ用ではミラーアームを換えた車が多い。見栄えと剛性確保のため口径の太い物や角パイプ・丸パイプを使用する物、行灯やマーカーランプなどのイルミネーションを組み込んだものがある。車内の日よけでは遮れない直射日光を抑える。フロントデッキやバンパー、ミラーアームとコーディネートすることが多い。大別すると先端が直線のストレート型とV字状にふくらんでいる舟形になる。信号機や道路標識の視認に支障があってはならない。フロントデッキと併せてデコトラを印象づけるパーツのひとつで、視覚的なインパクトを与えている。他のメーカーのトラックのバンパーを移植したり(アフターマーケットで他の車種にサイズを合わせたレプリカ品が発売される車種もある)、行灯を組み込んだりする車も多い。ダンプカーのように工事現場や悪路に出入りすることの多い車では障害物対策として可動式に改造することもある。オーナーによっては、ナンバープレート装着部に囲いを付ける事もあるが、この場合も前方から文字が容易に確認できる形状であることを要する(日本のナンバープレート#違法行為を参照)。通常のトラックではこの部分に燃料タンクがあるためパイプ状となっている車が多いが、見栄えをよくするために幅の広い板を使ったり、行灯やマーカーランプなどのイルミネーションを組み込んだりすることがある。仕事で使うのか、イベント用か、また荷役の状態によって形状が左右される。本来はフロントデッキや荷台の上に昇るために装着されるが、デコトラの場合はアクセサリーとして装着されることが多く、行灯やマーカーランプなどのイルミネーションを組み込んだタイプが見られる。イルミネーションを組み込むタイプの多くは手や足をかける隙がない飾り専用のものが殆どである。旧モデルや、他メーカーの車種からライト周りやミラーなどの部品を移植する場合もある。乗用車のリアコンビネーションランプ(「ケンメリテール」「流れるテール」)なども流用される場合がある。ホーンを交換する場合は、ラッパ部分の長さを変えることで音程の変化をつけられるエアホーンが主流である。ただし、通常のホーンを外してエアホーンやメロディホーン(ゴッドファーザーのテーマなどを奏でる「ミュージックホーン」もこれにあたる。)だけを装備することは保安基準に適合しない。バンボディでは荷台の上に「ロケット」と呼ばれる筒状の装飾部品を装着したり、荷台の上に更に装飾用の箱を載せる手法がある。荷台が開くウィングボディでは可動性を重視しバスロケットと呼ばれる装飾部品がよく取り付けられる。ダンプや平ボディではキャビン背面のあおり(プロテクター)の高さを上げ、前面のキャビンより上の部分を装飾してフロントデッキのデザインとコーディネートする場合や、背面に絵や文字を描く場合がある。マフラーカッターと呼ばれる排気管の縁を装飾するパーツや、アメリカのコンボイトレーラーのように煙突状のマフラーを装着することがある。また、6気筒や4気筒のエンジンの場合はV8エンジンのような音を出すため、排気管のマニフォールド分岐を5対1あるいは3対1と不等にする場合もあり、「マニ割」と呼ばれる。こうした排気管でアクセルを踏み込んだ時に発生する音を「叩き」、アクセルを抜いたときの高音を「鳴き」と呼ぶ。煙突マフラーなどにしない限りは先端を二股にするダブルマフラーにし、右後輪の前側から出すことが殆どである。排気管やマフラーには排出ガスや騒音に関する保安基準があり、製品によっては適合しない場合もある。また緊急自動車・工事用車両でなくてもキャビンの上に回転灯(パトライト)を装着することがある。ただし緊急自動車ではないため、灯火の色にかかわらず走行中に点灯することは禁止されている。燃料タンクや、空気ブレーキと空気バネ用のエアタンクの配管をアルミニウム製やステンレス製、メッキを施されたものに換装して装飾することがある。デッキ・バンパー・バイザー・ロケット、ボディパネルの一部にはメッキを施されたスチールの他、ステンレス鋼板が用いられているが、一部では万一の事故の際に相手を過剰に傷付けない目的で、FRP製を使用することもある。しかしFRPを多用することはデコトラ業界ではまだまだ少数派である。ステンレス鋼板の場合はパンチングメタル(網目状の穴が開けられている)だったり、うろこ状の研磨や、エッチング加工、レーザーによる抜き加工などを施したものもあり、ディテールに変化を与えている。レトロアートにおいてはスパンコールが貼られることもあるが減少傾向にある。キャブ部分には通常のソリッド塗料の他、マイカ、パール、メタリックといった市販の乗用車でも使われる塗料だけでなく、ラメ(アルミニウムフレーク)入り、マジョーラなど凝った塗料を使用することが多い。シャーシフレームは19世紀の欧州の大砲の車台のように赤で塗装されることがある。荷台に描かれる絵のテーマはオーナーによってさまざまだが、よく見られる題材では以下のようなものがある。これらを組み合わせて描かれることも多い。ワンポイントで描かれることもある。レトロ感を出すために、社名や愛称、ダンプカーの車両番号表記には主に勘亭流や行書体、草書体が用いられる。すずき工芸独特の「すずき文字」も人気があるが、凝った書体は読みにくいので選定には注意が必要。水中花入り延長シフトノブを筆頭に、天井張りや壁、ダッシュボード、シートカバーなどの定番として金華山織りと呼ばれるゴージャスなデザインの内装材が好まれてきた。他にビニールレザー等が採用される。またカーオーディオに凝ったり、室内灯をシャンデリアに換えたり、お洒落なふとんやカーテンなどで寝室をアレンジする傾向がある。最近では、カーテン、ハンドルカバー、トラック用布団がトラック内装の三大必須アイテムとなっている。運転席後部の寝台回りをお洒落にするプリーツ式遮光性仮眠カーテンやサテン生地のカーテン、トラック用ふとんなどお洒落なデザインが好まれる傾向にある。トラックを仕事で使わず、主にイベント用車両とする場合はバンボディを架装し、荷台部分を改造してキャンピングカーとすることもある。 インテリアではないが、CB無線やパーソナル無線(この二者はその殆どが不法無線局)やアマチュア無線の無線機、バックミラーを補完する後部監視カメラを装着するトラックも多い(特にパネルバンでは真後ろは全く見えないのでルームミラーは無用の長物。後方カメラに関しては近年ではノーマル車にも多く取り付けられている)。映画「トラック野郎」のヒットで映画やテレビドラマに劇用車として登場するほか、ゲームソフト・玩具も登場している。また、自動車雑誌の一ジャンルとして一定の地位を確保している。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。