285系電車(285けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)および東海旅客鉄道(JR東海)の特急形直流寝台電車である。旧来から、寝台列車に使用される車両は、機関車が牽引する客車タイプ(いわゆる「ブルートレイン」)が主流で、電車タイプの車両としては日本国有鉄道(国鉄)が1967年から1972年にかけて製造した581系・583系が唯一であった。この車両は高度経済成長に伴う輸送需要増加に合理的に対応する観点から、夜間は寝台車、昼間は座席車として昼夜を問わず運用できる車両として開発・導入されたが、寝台・座席の転換作業の煩雑さや、座席車としての居住性の悪さ、電車のため非電化区間へは入線できないことなどのデメリットも多く、スタンダードとはならなかった。その後も寝台列車の車両は客車が主流となっていたが、運転性能が電車や気動車に劣るため所要時間の短縮が困難であるほか、1970年代以降は長距離利用客の多くが新幹線や航空機へ移行したため、観光客需要へ特化し個室寝台や食堂車などの付加価値を高めた「北斗星」「トワイライトエクスプレス」といった一部の列車以外は、利用は衰退の一途を辿っていた。しかし、本来寝台列車は高い客単価が望める商品であり、現代のニーズに合ったサービスを提供することで、ビジネス客も含めた需要の取り込みが可能と考えられる列車については、個室寝台主体の新型車両を投入し強化していく方向性が見いだされた。具体的な列車として、平均乗車率が比較的高く、走行距離・所要時間等の観点からも航空機等の競合交通機関に対抗可能と見込まれた「瀬戸」(東京駅 - 高松駅)と「出雲」(東京駅 - 出雲市駅)の2列車が対象として選ばれ、1997年6月20日にJR西日本・JR東海両社から共同プレスリリースされた。開発に際しては、「瀬戸」「出雲」の客車を保有するJR西日本の主導で行われたが、JR東海についても自社線内を通過する高単価客増加による収益増が期待できること、電車化に伴い自社管内で運行する客車列車を減らせること(電車と電気機関車とでは動力車操縦者免許は同一だが、運転操縦方法が異なるため別個の社内養成が必要となる)等のメリットがあることから、両社による共同開発・共同保有の体裁が取られた。製造は川崎重工業・近畿車輛・日本車輌製造が受注。基本設計は剣持勇デザイン研究所、内装設計はミサワホームが参画した。「サンライズエクスプレス」の愛称が「さわやかな朝、新しい一日のはじまり」というイメージで命名され、夜をイメージした従前のブルートレインとは一線を画する明るい外観デザインとなった。1998年にグッドデザイン金賞、ブルネル奨励賞を受賞、1999年に第42回鉄道友の会ブルーリボン賞をそれぞれ受賞している。営業最高速度は130km/hで、寝台列車としては導入時より日本最速であった。なお、速度種別はA5(10パーミル均衡速度105km/h)である。かつては「あさかぜ」への投入計画もあったが実現していない。車体は鋼製。一般的に鉄道車両の製造は、車体 → 艤装の順序で行われるが、個室寝台主体の本系列では仕切り壁が多く一般的な順序を採用した場合は工期および製造コストの増大が予想されたため、機器や配線などを予め車外でモジュール化しておき、個室を組み上げるパネル工法が採用された。この工法では、高精度のパネルを効率的に生産して供給できることと、従来の鉄道車両には無かった温もりのある空間デザインを演出する高品質な素材を求めた結果、ミサワホームの内装材「M-Wood(エムウッド)」が多用されている。これは木材と樹脂との複合素材で、水や汚れに強く、車両の不燃性基準も満たしている。個室寝台を主体としつつ一定の定員を確保するため2階建構造を基本とするが、3・5・10・12号車は主電動機、車両制御装置などの電装品を床下に搭載する電動車であることから、通常の平屋構造である。行先表示機は字幕式のものが各車両の片側に1か所(1両に左右計2か所)設置されている。警笛は、AW-5型空気笛に加え、681系と同じ旋律のミュージックホーンを備えている。JR東海の保有する鉄道車両でミュージックホーンを搭載しているのは、JR西日本と同一仕様で製作されたこの285系のみである。外装は、夜をイメージした従来のブルートレインと異なり、夜明けをイメージしたベージュと赤の塗り分けとなり、両色の境に金線が配されている。また、先頭車前面と側面の数箇所に昇る太陽をイメージした「SUNRISE EXPRESS」のロゴマークが表示されている。スピードアップを図るため、寝台車としては583系以来の電車方式を採用した。MT比 2M5T の7両編成を組み、電動車である3号車と5号車をのぞく5両が2階建ての付随車 (T) である。システムについては、1M2T を基本単位とする681系以来のJR西日本方式を踏襲しているが、編成全体では付随車が1両増加となっている。これは一般の昼行用旅客車両と異なり定員乗車が原則であるほか編成単位の定員も158人と少なく、走行性能面で乗客の多寡による荷重変動を考慮する必要がないためである。このため編成内の電動車比が極めて低い組成でありながら、急勾配路線である伯備線での運用を可能としている。電動車両には車両制御装置 (WPC9) を搭載する。主回路部はIGBT素子によるPWMインバータ1基で1基の電動機を制御する、いわゆる1C1M構成のVVVFインバータを搭載する。JR西日本の車両としては初めてベクトル制御を採用し、粘着の向上による力行時の空転・滑走防止を図っている。補助電源部は130 kVA の容量を有しており、主回路部と同じくIGBT素子を用いたPWMインバータをCVCF制御している。なお、サービス用の電源に関しては使用量が多いことから、車両制御装置とは別に定格容量130kVAの補助電源装置 (WSC35) も編成中に2台搭載している。給電区画は、車両制御装置が1 - 3・5 - 7号車の三相電源、補助電源装置が編成全体の低圧電源と4号車の三相電源となっている。補助電源部の故障に備え、車両制御装置に関しては主回路用インバータをCVCF制御することで対応する。補助電源装置に関しては通常1台のみを使用し、故障が発生した場合にもう一方の系統がバックアップとして機能するようになっている。電動空気圧縮機は振動・騒音に対する配慮から、JR東海で373系や383系において実績のあるスクロール式 (WMH3097-WR1500) がモハネ285形に1基搭載されている。JR西日本が発注した車両としては初採用である。集電装置は、電磁カギ外し装置を備えたバネ上昇・空気下降式シングルアーム型パンタグラフ (WPS28A) が採用された。モハネ285形に1基搭載され、予讃線の愛媛県乗り入れ対策(狭小トンネル通過対策)および増設の準備工事もされており、後述のリニューアルを施行した編成は増設を完了している。ただし、JR東海の狭小トンネル通過対策車(身延線乗り入れ可能車)に表記されている◆マークはない。また、回生失効時に備えた発電ブレーキ用の抵抗器およびブレーキチョッパ装置も搭載され、架線電圧が1,700V以下では回生ブレーキのみの動作となるが、1,700V以上では発電ブレーキと回生ブレーキの併用、1,775V以上では発電ブレーキ単独での作用するようになっている。台車はヨーダンパ付きボルスタレス台車で、電動台車がWDT58、付随台車がWTR242である。軸距が2,100mm、車輪径は860mmである。基礎ブレーキは、電動台車が踏面片押しユニットブレーキ、付随台車が1軸あたり1枚のディスクブレーキ・踏面片押しユニットブレーキの併用である。主電動機は、1時間定格出力220kWのかご形三相誘導電動機 (WMT102A) が採用されている。歯車比は、223系と共通の6.53となっている。航空機や高速バスなどの競合交通機関と差別化を図り、魅力ある移動環境を提供するため「快適な乗り心地」と「個室化によるプライバシー」を重視した。本系列はそれを実現するために編成中の多くの車両を2階建車両とすることにより、頭上スペースを十分に確保した個室寝台を中心に構成した。設備を寝台・座席兼用として昼夜兼行の効率的な運用を狙った581・583系に比し、本系列はあくまで寝台専用の設計であることが最大の特徴である。この結果、寝台の大半をB寝台個室「シングル」が占めている。客室は1 - 2人用の個室寝台を中心とした5タイプに分類され、個室については各扉に設けられた暗証番号テンキーによって乗客自身が施錠することができる。このほか、座席指定券で乗車できる「ノビノビ座席」も用意されている。各個室共通のサービスとして、以下の設備類が全室に用意されている。4号車と11号車の2階部分にそれぞれ6室(うち禁煙室3室)ある1名用A寝台個室である。2階建でかつ通路を除く車体幅全てを使用するという空間的余裕を生かし、日本の個室寝台車では稀な大型デスク、洗面台を備えており、レール方向に配置されたシングルベッドの幅(850mm)も最大級である。運行開始時には小型液晶テレビが設置され、衛星放送(NHK BS1・BS2およびWOWOW)が受信可能であったが、BSデジタル放送への移行を待たず2010年3月をもって撤去され、現存しない。シャワーは同じ車両内にシングルデラックス利用客専用のシャワールームがあり、無料で使用できる。車内改札の際に車掌から渡される利用カードを挿入して使用する。なお、3号車・10号車にある全乗客共通のシャワールームも利用可能。また、専用のアメニティグッズも用意されているなど、ビジネスホテルに迫る設備と広い室内空間を確保しながら、寝台料金は旧「瀬戸」「出雲」時代とほぼ同額(消費税分のみ値上げ)の13,730円に据え置かれている。このような値ごろ感と1編成に6室しかないなどの理由から、予約が難しいほどの人気を得ており、閑散期でもかなりの稼働率がある。4号車と11号車の1階部分にそれぞれ4室(うち禁煙室2室)ある2名用B寝台個室である。前述のシングルデラックス下段階にほぼ同じ広さの空間にツインベッドを備えている。設備自体は「北斗星」の「デュエット」下段室タイプに類似するが、ベッドがレール方向に設置されているのが独特である。2階建構造の車両であるためベッド部も天井の高さは変わらず、広々としており圧迫感がない。1室の寝台料金は15,120円である。1・2・6・7号車号車の車端部に合計8室、8・9・13・14号車の車端部にも同様に合計8室ある1名用B寝台個室。2・9号車の1室は車椅子での利用にも対応した構造となっている。シングルベッドが上下段に配置された2段ベッド構造。1室の寝台料金は1名利用のときは9,430円、2名利用のときは14,830円である。購入時に1名利用か2名利用かを同時に指定する。1名用としても2名用としても使用可能なことから、「シングルツイン」という名称が付けられている。また、下段ベッドの中央部が外せるようになっており、折り畳み式のテーブルを挟んだ2名分の座席としても使用できる。同様の個室は廃止された旧「出雲(2・3号)」・「あかつき」・「トワイライトエクスプレス」にも存在した。ただ、14系客車(出雲(2・3号)、あかつき)や24系客車(トワイライトエクスプレス)と同型個室と比べると、2階部分にも窓が設置されており開放感がある"(写真参照)"。1・2・5 - 7号車に合計80室、8・9・12 - 14号車にも同様に合計80室ある1名用B寝台個室。本列車で最も室数が多いスタンダードタイプの個室である。従来の開放式A寝台とほぼ同じ占有面積と広い頭上空間を備えた個室で、寝台料金は7,560円と通常の開放式B寝台やB個室「ソロ」よりも1,080円高額であるが、旧来の開放式A寝台と比べると2,250円から3,240円安価な料金設定となっている。ただし、床面積は開放式A寝台と同等ではあるものの、室内に靴を脱ぐためのスペースがあり、寝台幅自体は従来のB寝台と同じ最大700mmである。ベッドは窓と平行に設置されており、個室入口側を足元にして寝る。個室入口近くの壁には細長いテーブルがあるほか、縦長の鏡が設置され、姿見として利用できる。2階建構造のため個室内は完全に直立できるだけの高さがあるが、テーブルの幅は概ね10cm程度と細く、ほかには寝台横に細幅の台があるのみで荷物棚の類がない一方、床が露出しているのは靴を脱ぐためのスペースだけであるため、旅行などで大きめの荷物を持ち込む際には注意が必要である。なお、客室は上段・下段・平屋室があり、天井高や寝台横の台などの寸法が若干違っているが、ベッドの大きさは全て同じである。3・10号車に20部屋ずつあるB寝台一人用個室。「北斗星」「あけぼの」など、他列車の「ソロ」と同じく通常のB寝台料金(6,480円)で利用できる。3・10号車は電動車であり、モーターなどの電装品を床下に搭載する必要があることから、2階建ではなく通常の平屋構造とされた。このため、平屋に上下段個室が2段に配置されており、通路は上段室・下段室共に同一階の車両中央にある。下段室へは平行移動のみで入れるが、上段室へは個室内に3段の階段がある。個室内で直立できる場所は、上段室では入口の階段部、下段室では同じく入口部分の僅かなスペースのみである。先に廃止された旧「あかつき」のものに類似するが、上段室と下段室を若干ずらして直立スペースや階段スペースを確保していた「あかつき」よりも個室のレール方向の寸法が短くなっているため、個室の奥側が上段室は下段室の直立スペース、下段室は上段室の階段スペースが干渉して狭くなっている。このためシングルと異なり、ベッド幅が広い個室入口側のほうを頭にして寝る。上段室は下段室の直立スペースの真上に荷物置き場があるが、高さが低いので大きめの荷物は収納できないことがある。一方、下段室は荷物棚の類がまったくなく、床が露出しているのは靴を脱ぐためのスペースだけであるため、大きめの荷物を持ち込む際には注意が必要である。なお、どちらも窓の下に細いテーブル状の台がある。5・12号車に28席ずつ存在する開放型寝台に似た普通車座席指定席で、指定席特急料金のみで利用でき寝台料金は不要。二段構造のカーペット敷きとなっており、頭が来る部分の左右に隣と仕切る壁に読書灯が設置されており、1名当たり1畳分程度のスペースで区分されている。通路との間にカーテンがあるが、隣と仕切るカーテンはない。横になった際に頭が来る部分の天井に空調の吹出口があり、風量は個別に変えられる。掛布団が備え付けられているのみで、枕やシーツの類はない。JR西日本の所有車両は0番台、JR東海の所有車両は3000番台を称している。車両機器・性能は同一であるが、車両番号の書体に違いがあり、JR西日本所有車はゴナまたは新ゴに対し、JR東海所有車は国鉄時代からのスミ丸ゴシックとなっている。2014年よりI3編成を皮切りに順次リニューアル工事が開始され、2016年8月にJR東海所属編成を含めた全編成への施工を完了した。主な工事内容は下記のとおり。車両外観車内設備計5編成35両のうち、0番台の3編成21両(I1 - I3編成)がJR西日本後藤総合車両所に所属(出雲支所配置)。3000番台の2編成14両(I4 - I5編成)は書類上はJR東海大垣車両区に所属(書類上の担当工場も名古屋工場)しているが、実際にはJR西日本後藤総合車両所出雲支所に常駐し0番台と共通運用となっており、管理もJR西日本に委託されている。1998年(平成10年)7月10日に運転を開始。JR西日本が客車を担当していた寝台特急「出雲2・3号」および「瀬戸」を置き換え、東京駅 - 高松駅間「サンライズ瀬戸」および東京駅 - 出雲市駅間「サンライズ出雲」として運用されている。両列車は、東京駅 - 岡山駅間は併結運転となる。併結区間では上下列車とも「サンライズ瀬戸」編成が常に前部に組成され、出雲市駅→東京駅→高松駅→東京駅→出雲市駅のサイクルで、4編成が運用されている。予備の1編成を使用して、1998年度から2008年度までは「サンライズゆめ」として東京駅 - 広島駅・下関駅間でも臨時列車として運転されていたことがあった。また、2014年以降「サンライズ出雲91・92号」として東京駅 - 出雲市駅間で多客時に運行されている。また、臨時ではあるものの、高松 - 松山駅間を延長運転されることがあるが、2009年度の運転を最後に近年は実施されていない。この他、2014年より土讃線琴平駅への下り列車の乗り入れが臨時で行われており、この場合は、上り列車は高松駅始発として運行される。上り列車は東京駅到着後、東日本旅客鉄道(JR東日本)東京総合車両センター田町センター(品川駅・札の辻群線)へ回送されて点検・整備を行い、夜の折返し東京発まで同電留線に留置される。営業運転開始前の1998年(平成10年)5月13日に、電気機関車牽引を想定した性能試験が行われ、電源車であるカニ24と無動力の285系7両を併結した編成を、下関車両管理室のEF65形電気機関車が宮原操車場 - 岡山駅間において牽引した。この試験で285系のサービス機器用電源はカニ24からの供給によってまかなわれた。ただし、試験、営業列車共に九州方面への直通列車が設定された実績はない。
出典:wikipedia
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