ホイールアライメント(Wheel Alignment、正しい読みは「ホイール・アラインメント」)は、自動車のホイールの整列具合のこと。サスペンションやステアリングのシステムを構成するそれぞれの部品が、どのような角度関係で自動車に取り付けられているかを示すものである。キャスター角・キャンバー角・キングピン傾角・トーイン&トーアウトの4つの要素からなる。車両を正面から見たとき、タイヤ上部が外側に傾く(逆ハの字)または内側に傾く(ハの字)角度をキャンバー角という。外側に傾く事をポジティブキャンバー(+キャンバー)と言い、内側に傾く事をネガティブキャンバー(-キャンバー)と言う。現代ではタイヤの接地面を常に活かし切ることを狙ってキャンバーをほとんど付けないのが主流であるが、旋回時には遠心力で車体がロールするのに伴いタイヤの外側から磨耗して行く傾向が出る。キャンバーの設定はサスペンションの挙動と組み合わせて考えられることが多い。パワーステアリング機構のない車両では、ポジティブ(プラス)キャンバーにしスクラブ(またはキングピン・オフセット)を減らすことで操舵を軽くすることがよく行われた。旋回性能を高める目的ではネガティブ(マイナス)キャンバーに設定することが多い。ネガティブ(マイナス)キャンバーを付けると直進時はタイヤの内側が強く路面に接地するため、タイヤの内側から磨耗していく。かつてはキャンバーをつけるとタイヤは傾いた方向に横力が加わり(キャンバー・スラスト)、ステアリング流れが発生した。ただし、現在主流のラジアルタイヤではほとんど起きない。むしろ過度のキャンバーによるタイヤの偏磨耗が発生することが珍しくなく、こちらを注意すべきである。糸と定規さえあれば、簡単に測定できる(リンク画像参照)。車両を正面から見たときのキングピン軸の傾きをキングピン角という。キングピン軸とは、操舵の回転軸のこと(本当に部品として軸が存在しなくともよい)。また、タイヤ接地中心とキングピン軸の地上交接点とのズレをスクラブ半径というが、特に左右方向の距離について日本ではキングピンオフセットともいう※。マクファーソン・ストラット式サスペンションにおいてはストラット中心軸とキングピン軸を混同しやすいが、この二つは別のものである。(リンク画像参照)(※ これは日本でしか通じない間違った言葉の使い方。諸外国で「キングピンオフセット」といえば「スピンドルオフセット」の事)車両を側面(横側)から見たときの前輪のキングピン軸(操向軸)の傾きをキャスター角と言い、「操舵輪にのみ存在する」角度。横側から前輪を見ると、通常キングピン軸は上部がやや後方へ傾いている。普通の車の(操舵機構のない)後輪にはもちろんキャスター角は存在しない。ストラットの角度やサスペンションの動作角をキャスター角と混同した解説が出回り、『リアのキャスター角』などという言葉も氾濫しているが誤りである。車両側方から見たキングピン軸地上交接点とタイヤの接地中心の距離をキャスタートレールと呼ぶ。(リンク画像参照)キャスター角は特に直進性を保つために設定されているが、その反面キャスター角が過小・過大・左右不等になると車輪の復元力に問題を生じ、ステアリングの戻りが悪くなったり、旋回時のステアリング・ホイールを保持するのに大きな力が必要になったり、ステアリング流れが発生する、などの現象が発生する。車両を上から見たとき、進行方向に対しタイヤ前端を内側または外側に向ける角度をトウと言う。前輪のトウ=フロントトウ、後輪のトウ=リアトウである。直進安定性などに関係する。進行方向に対し前端を内側に向ける角度を「トウイン (toe-in)」外側に向ける角度を「トウアウト (toe-out)」という(爪先のことをtoe[tou]と言うが、それがinを向いているかoutを向いているかということ。ヒトなら内股、がに股のようなもの)。トウインは+で表し、トウアウトは-で表す(例えばトウアウトならば -0°06′や-1.0 mm など)。通常は車両の幾何学的中心線を基準に考えるが、左右を総合したトータルトウも意味を持つ。トウは角度であるが、日本ではこれまで、現場で容易に測定できることなどから車輪の前端と後端の左右方向のズレを"mm(ミリメートル)"で表してきた。ただし、車輪の直径に影響され、ズレの値が同じでもタイヤの直径が大きくなるほどトウの角度は小さくなる。現在、諸外国では一般的に角度であらわすが、日本においても海外製の測定器が流通するにしたがい、角度表示が増えてきている。元々は、ポジティブキャンバーによるキャンバースラスト(この場合、左右のタイヤが離れていこうとする)の動きを打ち消すのが目的だった。ポジティブキャンバーや細くハイトが高いバイアスタイヤの時代と比べると、現在のトウインの目的は全く違うものとなっているが、解説本の類では今でも内容が変わっていない事も多いため注意を要する。トウインは、ハンドル操作に機敏な反応を示す反面、ドライバーの疲労を引き起こす。市販車ではトウゼロからややトウインが主流であり、トウアウトは稀。競技車両などでは意図的にトウアウトにすることもあり、他の要素と組み合わせることで様々な効果を出す。トウはキャンバー角やキャスター角以上に、影響が大きいと言われる。車検でアライメントの要素として唯一の点検項目になっている「サイドスリップ」は、フロントのトウにもっとも近い要素と言える。ターニングラジアス(ターニングアングル)は、旋回時における左右の前輪の切れ角度である。ターニングラジアスが狂うと、直進時のホイールアライメントが正しくても、タイヤの磨耗を早めることになり、旋回時の走行や安定性にも大きな影響を与える。車輛の運動上、常に適切な切れ角を持たせることが望ましい。ステアリングリンケージでのナックルアームの曲がりや、タイロッドの左右長さの不等などが発生すると、必ずタイヤの異常磨耗(トーによる磨耗)につながる。理論的には、速度がごく低速でそれぞれの車輪がその向いている方向に動いている場合は、アッカーマン・ジャントー機構により、ほぼ理想的な方向に左右の前輪を向かせている(厳密に理想的なステアリングを機械的なリンケージで実現しようとするのは複雑になる)。速度が上がるとそれぞれの車輪でコーナリングフォースを発生させるのと同時にスリップアングルが発生し、旋回の中心が、アッカーマン・ジャントー機構で仮定されている後軸の延長線上から、前方に移動するので前提が変化する。セットバック (Set-Back) とは、頓挫、挫折、退歩、後退、退学のことをいうが、ホイールアライメントにおけるセットバックとは、前車軸と後車軸の平行度をいう。一般的に、セットバックの測定は後車軸を基準として後車軸に対する前車軸の平行度合いを示す。ホイールアライメントテスタによって表示の方法が異なることがあり、普通は前輪の左か右のどちらか一方の車輪を基準にして、反対側の車輪が前に出ているか、後ろに下がっているかを+または-の記号で表すことが多い。セットバックが大きいということは、ホイールアライメントを構成するいろいろな角度やフレームなどの“左右のバランスがどこかで崩れている”ということを示している。キャスターの調整でセットバックが大きく狂うなどの場合は、フレーム歪みを疑う必要がある。このセットバックの表示に関しても、ホイールベースの左右差をmm で示す場合と角度を示す場合とがある。スラスト角とは、自動車の進行線(スラストライン)すなわち自動車の進行方向と、自動車の中心線(正しくは幾何学的中心線)とのズレを言う。スラスト角 (Thrust Angle) は、別名をスラストライン偏差角 (Deviation in Alignment)、ジオメトリカル・ドライブ・アクシス (Geometrical Drive Axis) などと呼ばれる。スラスト角の狂いは、などが原因で生じる。スラスト角は、日本ではそれほど重要される傾向はないが、スラスト角が自動車の安全や安定性、ドライバーの疲労にまで影響することから、高速道路の発達したヨーロッパでは非常に重要視されており、スラスト角の許容範囲も0度±10分(0.17度)以内に限定されている。トータル・ホイールアライメントにおけるスラスト角の設定は、ずれを許容する場合もヨーロッパと同様に最大で0度±10分(0.17度)以内とし、限りなくゼロ(0度)が望ましい。自動車が進んでいく方向、すなわち自動車の進行線(スラストライン)は、後輪のトーによって決定される。後輪のトーの左右差が大きいほど、自動車の進行線と自動車の中心線(正しくは幾何学的中心線)の角度差が大きくなり、自動車は斜進する。自動車の進行線が自動車の幾何学的中心線と同一(スラスト角=0度)の場合は問題はないが、自動車の進行線が自動車の幾何学的中心線の角度差が大きい、すなわちスラスト角が大きい場合、自動車を運転する上でいろいろな不具合が生じる。現代の一般的な自動車ユーザーでは、通常に自動車を運転する上であまり意識しなくなっている調整項目となっている。しかしながら、走行中にタイヤを溝に落としたりしてサスペンションに衝撃を加えてしまった後に、自動車が直進しないように感じたら、直ぐ調整する必要がある。そのままではタイヤのグリップレベルも不揃いであり、いざ急ブレーキという時に重大な事故を招きかねない。放置すると、タイヤの偏磨耗にもつながる。近年の自動車ではあからさまなコスト削減で構造が簡略化され、アライメントを調整するための機構を備えておらず、そのままでは調整できない。なんとか調整するにしても、作業者のスキルが求められる。しかし近年のブームでアライメント調整業務を始めた多くのタイヤショップなどでは、調整機構のない車両での作業はまず出来ない。誰もが気軽に調整を受けられるようになった反面、「調整機構の備わった部分だけ調整して終わり」という中途半端な作業しか受けられないことが多い。ノウハウのある専門店では、本来調整不可能だったリジットアクスルのようなサスペンションでも調整する事がある。ホイールアライメント調整または設定は、車両の重量がサスペンションの可動部分に適当に配分された上で、1.走行上の安全性、2.適正なタイヤ寿命が確保できるものでなければならない。ホイールアライメントの調整作業は、後輪から始め、その後に前輪のキャスター、キャンバー、トーの順序で進めていくのが一般的なやり方である。後輪は操舵機構はないが、自動車の進んでいく方向、つまりスラストライン(自動車の進行線)は、後輪の左右のトーと左右のキャンバで決められているので、後輪のホイールアライメント調整が重要となる。足回りを含む事故の修復におけるアライメント調整は、ボデーアライメントの狂いがないこと、サスペンションまわりの部品すべてについて異常がないことが大前提となる。事故車などで、サスペンションまわりの部品を新品に交換しホイールアライメントに異常がないのにまともに走らない場合、その原因はボデーアライメントの歪みであると考えられる。サイドスリップテスタは、(前輪の)ホイールアライメントを総合的に判断する測定器であって、このテスタだけではホイールアライメント調整を完了することはできない。現在、整備工場や修理工場では、日本の車検で使用しているサイドスリップテスタによりアライメントを点検するのが一般的であるが、このテスタで原因不明の異常値が出た場合、すぐにトーの調整をしてしまうのではなく、総合的にホイールアライメントの問題がないか確認する必要がある。基本的には、サイドスリップテスターの測定値と、アライメントテスターで測定したトウインの値は同じではなく、測定している内容が異なるため、この測定値だけを比較することは問題がある。(かなり近い値ではあるが)日本の道路運送車両法の保安基準が定められたのは昭和20年(1945年)代のことで、操舵を有する前輪のサイドスリップ値の合否の判定基準は±5mm以内に定められている。この基準に従い国産車ではサイドスリップ値が±5mm以上の自動車は作らないが、輸入車には±5mm以上の自動車も存在し、このような前輪サイドスリップ値に関して運輸支局も認めているものもある。輸入業者がサイドスリップ値について型式認定時に申請し、実際の車両にはエンジンルーム内にアライメントの設定値が記載されたラベルが貼付けられる。並行輸入車についても、正規輸入車と同等の扱いがなされる。アライメントが狂う主な原因は、「パーツの消耗・劣化」または「部位・パーツの損傷」の二つ。その対象となる部位・パーツは、「ボディー」「サスペンション」「タイヤ・ホイール」の三つである。キャンバー、キャスターの名称は、自動車技術用語として、自動車技術会、JISなどで、キャンバ、キャスタと呼称される。
出典:wikipedia
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