コーカソイド (Caucasoid) は、身体的特徴に基づく歴史的人種分類概念の一つ。日本では一般に白色人種・白人と同義に理解される。ドイツの人類学者ブルーメンバッハによって提唱された五大人種説に基づく。現在でも便宜的・慣用的、またしばしば政治的に用いられるが、人類学界ではその分類学上の有効性は認められていない。これに分類される人々の主要な居住地はヨーロッパ、西アジア、北アフリカ、西北インドである。コーカソイドとは、カスピ海と黒海に挟まれたところに位置する「コーカサス」(カフカース地方)に「…のような」を意味する接尾語の -oid をつけた造語で、「コーカサス出自の人種」という意味である。元々はドイツの哲学者クリストフ・マイナースが提唱した用語であった。その影響を受けたドイツの医師ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハは生物学上の理論として五大人種説を唱え、ヨーロッパに住まう人々を「コーカシア」と定義した。ジョルジュ・キュヴィエはヨーロッパ人とアラブ人をコーカソイドに分類し、その高弟もコーカソイドをアラブ・ヨーロッパ人とした。人類学が成立したヨーロッパはキリスト教圏であり、ユダヤ・キリスト教に由来する価値観が重んじられていた。ヨーロッパのキリスト教徒にとって、『創世記』のノアの方舟でアララト山にたどり着いたノアの息子たちは現在の人類の始祖であった。人類学の父とされるブルーメンバッハをはじめとするヨーロッパ人学者たちは、アララト山のあるコーカサスに関心を抱いていた。また、『旧約聖書』の創世記1〜6章では、白い色は光・昼・人・善を表し、黒い色は闇・夜・獣・悪を表していた。コーカソイドとはヨーロッパ人がキリスト教的価値観に基づいて自己を定義するために創出された概念である。そのため、。戦後しばらくまでの人類学は科学的根拠に乏しい、偏見や先入観に満ちた内容であることが多く、人種差別的な思想を多分に含んでいた。事実、提唱者であるブルーメンバッハもさまざまな人間の集団の中で「コーカサス出身」の「白い肌の人々」が最も美しい、人間集団の「基本形」で、他の4つの人類集団はそれから「退化」したものだと考えていた。つまり最初の時点で白人至上主義的な考えが基盤に存在していたのである。その後、他の人類学者によって(白人が他に優越しているという原則の上で)コーカソイドをさらに細分化しての分類が試みられた。ウィリアム・Z・リプリーによる北方人種・地中海人種・アルプス人種の三分類などが有名である他、東ヨーロッパ人種・ディナール人種という分類も存在する。初期の人類学の人種判別は外見の違い(特に肌の色)による判断という、かなり原始的な考察を頼りとしていた。また上述されている通りキリスト教への信仰心が深く関与している概念であり、風貌的に似通っていても異教徒である場合は意図的に範囲から除外された。人種分類はその性質上、優生学などの差別的な思想と結び付きやすく、実際にクー・クラックス・クランやナチスのような勢力を生み出す遠因となった。そのため、現在の生物学における人種に関する研究は、現生人類は一種一亜種であるという前提の上で慎重に行われている。あくまで人種とは現生人類の遺伝的多様性の地域的・個体群的偏りに過ぎず、人種相互に明瞭な境界はないとする。なお、近年の国際的な学会では、人種分類としてのコーカソイドという名称から、地域集団の一つとしての「"西ユーラシア人"」という名称が一般的になりつつある(詳しくは人種を参照)。「コーカソイド」は、日本語中での用法は白人・白色人種のヨーロッパ風の表現として認識されることが多い。モンゴロイドやネグロイドにも言えるが、コーカソイドもまた非常に広い範囲に分布しているため、人種的特徴は一概に言えない。アフリカ大陸で誕生した現生人類は、アラビア半島経由でユーラシア大陸に進出し、大陸全域に居住地域を拡大する。このうちコーカソイドはユーラシア大陸のイラン付近から中東、ヨーロッパに移動していた人々の末裔である。クロマニョン人はコーカソイドの直接の祖先と考えられる。15世紀以降は特にヨーロッパ系コーカソイドが征服地への入植により大きく居住地域を拡大し、世界的に拡散した。コーカソイドは出アフリカ後にイラン付近から中東・ヨーロッパに至る「西ルート」をとった集団である。コーカソイド人種を特徴づけるY染色体ハプログループとしてG、I、J、Rなどが挙げられる。モンゴル帝国の西進およびムガル帝国の南進によって、東ヨーロッパやロシアおよび中央アジア、南アジアの一部がモンゴロイドの支配下に置かれた。その際征服された地域では、顕著ではないものの混血が認められる。ロシアは何百年もの間テュルク系国家やモンゴルによって征服されたため混血は多かった。ただし、それらのモンゴロイドは遊牧民族であるため土着の農耕民より人口が少なく、さほど混血の影響は高くないともされる。アフリカ人はネグロイドに分類されるが、北東部アフリカはサハラ砂漠以南の西南部アフリカ(ブラックアフリカ)とは異なった遺伝子的特徴を持っている。スーダン南部に広がる大湿地帯のボトルネック効果と中世以降のアラブ人による入植のためで、北アフリカの先住民であるベルベル人はコーカソイド系に属すとされる。ただしベルベル人など北アフリカの民族にはネグロイド系のY染色体ハプログループE1b1bが高頻度でみられなど、他のコーカソイドと異なる特徴もあり、ネグロイドとの混血が示唆される。さらにエチオピアの主要民族であるソマリ族(エチオピア人種)も、古くからベルベル系とネグロイド系の混血で構成されている。東欧ではハンガリー人(マジャール人)がモンゴロイド(黄色人種)であるフン族の子孫であるという説が存在したが、コーカソイドも含む多種民族の混血で構成されているために現在では該当されていない、とする。ハンガリーという国名はフン族との関連を連想させるが、「ハンガリー」の語源については諸説あるものの、「フン族」との間に特別の因果関係はないと考えられている。フン族は離散集合を繰り返す部族連合体であり、全員が必ずしもモンゴロイド系とは言えないとする見方もある。ただ、フン族の首長アッティラと会見したローマ側の使節(ローマカトリック教会の僧侶)による報告書では、「アッティラと彼を取り巻く将兵たちの目は小さくて、ひげが薄く、かつ身長も低く、胴長短足である」と記されていて、ヨーロッパ人が初めて見たモンゴロイドが奇怪な容貌に見えたことと、タタール人という言葉が、当時のキリスト教でいう「地獄のタルタロス」を連想させて、恐怖心を一層つのらせたことが、今に伝えられている。フィンランド人(フィン人)やサーミ人とリーヴ人とヴェプス人もハンガリー同様にモンゴロイド起源説が唱えられ、実際に父系遺伝子は北東アジアに起源を持つモンゴロイド系のハプログループNが高頻度に見られるが、現在においてはハンガリー人(マジャール人)同様に、コーカソイドに区分されている。これは故郷から西進するにつれ現地のコーカソイドと著しく混合したため、もともと濃厚であったモンゴロイドの特徴を失ったためと考えられる。上記のムガル帝国による混血も含まれる。インドにおいては南部~スリランカ(シンハラ人、タミル人など)では、オーストラロイドである先住民のドラヴィダ人が、東部ではモンゴロイドのムンダ人が、北部のカシミール地方でもチベット人がコーカソイドのインド・アーリア人との混血が古くからあった。そのため世界でも珍しい三人種混血地域となっている。また、ネパール西部のタルー人なども該当される。モルディブでもインドネシア・マレー人種(インドシナ人種(古モンゴロイド系)とオーストラロイドの混血人種)とドラヴィダ人とアラブ系などがインド・アーリア人と混血している。北アジア(シベリア)においてもウラル語族のうちフィン・ウゴル系民族の大部分がモンゴロイドとコーカソイドと古くから混血している(サモエード系一部含む)。さらにテュルク系民族のタタール諸族もロシア系など東スラヴ系諸族との混血が古くからあり、西に行くほどテュルク系のコーカソイド種族が多い(モンゴル系民族、ツングース系民族一部含む)。中央アジア(新疆ウイグル自治区含む)においてのトルキスタンに分布するテュルク系民族はモンゴロイドをベースにコーカソイドとの混血が古くからあった(タジク人含む)。西アジア(西南アジア)では、トルコのトルコ人、アゼルバイジャンのアゼルバイジャン人などが該当され、こちらも現在ではテュルク系のコーカソイド種族に属される。東アジア(北東アジア)の北海道・樺太・千島列島に住むアイヌ(蝦夷含む)は、かつては白色人種に分類されることもあったが、その後は完全に否定され、琉球民族(大和民族含む)に最も近い古モンゴロイドとされた。いずれも縄文人を基盤とするが、自然環境や生活習慣の差、周辺民族との混血などにより形質が変化するに至ったとされる。さらに、遣唐使によって鑑真の弟子でイラン系(ペルシア系)に属するソグド人と見られる如宝などが渡日して、鑑真に随伴して日本に帰化したことからソグド系の一部が日本人と同化したともされる。また、中国人やモンゴル人などは古来よりコーカソイド系民族と隣接しているため、コーカソイド系の遺伝子も数%確認される。ミャンマーの南部モンゴロイド(新モンゴロイドとインドシナ人種の混血人種)であるミャンマー人(ビルマ人)はベンガル人(インド・アーリア系)の一派ロヒンギャ人と、タイ南部とカンボジアおよびシンガポールとマレーシアとブルネイとインドネシアなどに分布するインドネシア・マレー人種の一部でもインド・アーリア人との混血があった。さらに、フィリピンでもスペイン王国の統治時代にスペイン人とインドネシア・マレー人種の一部との混血があった(メスチーソを参照)。
出典:wikipedia
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