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境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害(きょうかいせいパーソナリティしょうがい、)は、境界型パーソナリティ障害、情緒不安定パーソナリティ障害(じょうちょうふあんてい-、Emotionally unstable personality disorder)とも呼ばれ、不安定な自己 - 他者のイメージ、感情・思考の制御不全、衝動的な自己破壊行為などを特徴とする障害である。一般では英名からボーダーラインと呼称されることもある。旧来の疾患概念である境界例と混同されやすい。症状は青年期または成人初期から多く生じ、30代頃には軽減してくる傾向がある。自傷行動、自殺、薬物乱用リスクの高いグループである。治療は精神療法(心理療法)を主とし、薬物療法は補助的に位置づけられ副作用と薬物乱用に注意し慎重に用いられる必要がある。症状の機軸となるものは、不安定な思考や感情、行動およびそれに伴うコミュニケーションの障害である。具体的には、衝動的行動、二極思考、対人関係の障害、慢性的な空虚感、自己同一性障害、薬物やアルコール依存、自傷行為や自殺企図などの自己破壊行動が挙げられる。また激しい怒り、空しさや寂しさ、見捨てられ感や自己否定感など、感情がめまぐるしく変化し、なおかつ混在する感情の調節が困難であり、不安や葛藤を自身の内で処理することを苦手とする。衝動的行為としては、性的放縦、ギャンブルや買い物での多額の浪費、より顕著な行為としてはアルコールや薬物の乱用がある。さらに自己破壊的な性質を帯びたものとして、過食嘔吐や不食などの摂食障害がある。自己破壊的行為で最も重いものは自殺であるが、そのほかにもリストカットなどの自傷行為、自殺企図(薬物の過量服薬等)により実際に死に至ることもある。同一性に混乱のある境界性パーソナリティ障害の患者は、常時不安を抱えて生きている。神経症の患者の不安感は、症状に関わることだけに限局しているが、限局化する能力の乏しい境界性パーソナリティ障害の場合、いついかなる時も不安感にさらされることになる。この常につきまとう不安感は、他人からみたら一見とるに足らない理由でパニックを惹起することとなる。患者にとって自己破壊的行為は、不安や混乱、葛藤などの不快な感情の迅速な解消手段となりうる。環境や自分の内で生じたストレスを、行動によって軽減させることを「コーピング(coping)」という。散歩をする、友達と食事に行くなどのような健全なコーピングは問題にならないが、不適切なコーピングが恒常的に現れた場合、患者はそれ自体に苦しむことになる。また自己破壊的行為のほとんどは抑うつ状態で起こっていることが種々の調査で明らかになっている。パーソナリティの問題が改善するとうつ状態が良くなることがある一方、うつ病の治療をすることで衝動的行動が改善することもあるなど、互いに密接にかかわっている。うつ状態はほとんどの患者にみられ、マスターソンやベルジュレなど、抑うつを境界性パーソナリティの中心構造とみる研究者もいる。この「抑うつ感」は主に空虚感と無力感が中心である。なお同じ境界性パーソナリティ障害でも、患者によって非常に違って見える。概ね抑うつ、衝動性、精神病症状のどれかが目立つとしている。また気分障害、他のパーソナリティ障害、器質性障害、非定型性精神病などの併存疾患もそれぞれの差となって現れる。境界性パーソナリティ障害の抑うつには特有の構造が見られ、それは見捨てられることに関連する特殊な感情反応に由来している。憤怒、空虚感、絶望、寄る辺のない不安、孤立無援感、抑うつ、自暴自棄の感情といったマーガレット・マーラーが「見捨てられに関連する黙示録の七人の騎士」と呼んだ破壊的な感情である。境界性パーソナリティ障害にはこれらの抑うつの嵐が次々と、あるいは一挙に襲ってくるという特殊な構造が見られ、「穴に吸い込まれる」「落ち込む」と表現される深い抑うつの波は伝統的なうつ病(内因性うつ病)の姿とは異なるものである。ジョン・ボウルビィの研究によると、母に置き去りにされた子どもは周囲を探索し、いないとわかると淋しくなり、悲しくなり、不安になり、しくしくと泣き始める。それでも帰って来ないと恨みと怒りから大声で泣き出し、やがて泣き止むが、最後には孤立無援感、空虚感、寄る辺のない不安から遂には無気力状態に陥るという。境界性パーソナリティ障害に共通する感情は、こうした見捨てられるということによって生じる感情体験そのものであり、これら言語成立以前に端を発する衝動が、過食、性的逸脱、リストカット、過剰服薬、アルコール依存などの行動化として表現される。境界性パーソナリティ障害の症状として、一過性の精神病症状がある。この精神病症状は強いストレス下においてより顕著になり、解離や非現実感、離人感、パラノイアなどが出現したり、現実検討力が著しく低下する事態を生むこともある(現実検討力については類型を参照)。DSM-IVの境界性パーソナリティ障害の診断基準の中に「一過性の妄想様観念や解離症状」というものがある。日本でも治療の経過中に解離症状が出現した患者は全体の26%あったという報告があり、患者にしばしば解離症状が出現することが認められている。また自傷の行為中に解離を伴うことがある。これらの精神病症状は全ての患者にあるわけではなく、統合失調症の症状のようなはっきりとした幻覚や妄想が起こることは少ない。主にストレスに関連しているとされ短期間で消失する。自傷行為の多くは心理的苦しみを軽減するために行われるが、自傷行為が発展し実際に自殺を招くこともあり、イギリスではBPD患者の60-70%が人生のある時点で自殺を試みると推計されている。アメリカの調査では、境界性パーソナリティ障害全体での自殺完遂率は9 - 10%と極めて高いものとなっており、東京都立松沢病院の調査では、入院していた患者の退院後2年以内の自殺企図率は、うつ病や統合失調症の人が35%なのに対し、境界性パーソナリティ障害では67%と約2倍高いという結果であった。DSM-IV-TRでは、数ある診断名の中で自傷行為を取り扱っているものは境界性パーソナリティ障害のみであるが、リストカットなどの自傷行為を行う者がすべて境界性パーソナリティ障害というわけではない。自傷行為を伴いやすい他の精神疾患としては、うつ病や双極性障害などの気分障害、統合失調症、解離性障害、他のパーソナリティ障害、アルコールや薬物依存などの物質関連障害がある。A.R.ファヴァッツらの調査では、自傷行為を行う者の中で、境界性パーソナリティ障害の診断に該当した者は全体の半数にも満たなかったという。日本での報告としては、自殺関連行動で入院した患者の53.8%が境界性パーソナリティ障害と診断されている(重複診断を含む)。なお一度でも自傷行為を行ったことがある患者については75%に達しており、パーソナリティ障害の中では最も自傷行為と関連性が深いとみられている。境界性パーソナリティ障害の患者の自殺企図の多くは大量服薬によるもの(78.3%)である。他の精神疾患の患者の自殺企図でも、大量服薬のケースは55.4%と比較的多いのだが、自殺企図の動機として、他の精神疾患の患者が「重篤な幻覚や妄想」「社会適応上の悩み」「人生の破綻による自暴自棄」などであったのに対し、境界性パーソナリティ障害では「近親者とのトラブル、裏切りによるうつ状態」「居場所が無く追い詰められた危機感」などの対人面での“見捨てられ感”から行われるという違いがある。境界性パーソナリティ障害の患者は、根底に他者と親密な関係を持つことへの葛藤を抱えており、そのために特有の対人様式が顕現しやすいとされる。その特有の対人様式は、対人関係を構築していく上で時に障害となることがある。対人障害は主に二種類ある。他者を巻き込み混乱を呼ぶケース、対人恐怖・過敏性が強く、深い交流を避け回避的になるケースである。境界性パーソナリティ障害では、幼少時から分離不安のある者が多く、依存できる関係を求める傾向にある。しかし相手の悪い部分を認識することで混乱を起こしてしまう患者は、相手を過度に理想化する傾向にあるが、傷つきやすい自己愛を持ち他者の感情には敏感であるため、なにかの拍子に失望することが多い。その際に自分が混乱しないように、自身の中にある相手の評価を下げることで防衛する。このような心理メカニズムは正常な人でも日常で用いているものであるが、そのあり方が極端になると社会的機能の低下につながり、『障害』となる。患者にとって依存は自覚がなく無意識的なものであるが、自身の混乱や葛藤により追い払ったり引き戻したりすることで、対人関係が激しく短期的なものになりやすい。周囲の人間はこれらの行動を 『操作的(manipulative)』と否定的に受け取ることもある。依存や混乱の著しい患者は他者を巻き込みやすく、人との摩擦が生まれやすい。しかし境界性パーソナリティ障害の対人様式にまつわる特有のパーソナリティ構造は、内的表層などのパーソナリティの深い部分にあるとされており、特有の対人様式が顕現するのは、ある程度関係が深まり、その人物が患者の深い層にある感情や願望に触れた場合である。よって、表面上は顕著な対人障害もなく社会機能が維持できている患者も多く、一見すると対人障害があるとは見受けられない場合がある。一方、対人恐怖・過敏性が強いケースでは、摩擦こそ生まれないが、他者との交流を避けることで社会的機能が低下する。対人障害は、うつ病など他の精神疾患でもよくみられるものである。しかし境界性パーソナリティ障害のこのような対人様式のあり方は、分裂や投影性同一視などの「防衛機制」の不適切な用いられ方と関与している。周りの人間がこの症状に巻き込まれて、様々な被害を受けることが多く問題となっている。患者が健全な人との関わりを身につけること、そのトレーニングを行うことが今後の課題となっている。防衛機制とは、心の安定を図るために不快な体験を弱めたり避けたりしようとする心理機能であり、人が誰しも持つものである。不安が強くなるとこの防衛機制は強く働く。防衛機制自体は心の均衡を保つために必要な健全な機能であるが、この防衛機制によって不適応を起こしている場合は、本人の人生が阻害される。精神分析では、これらの防衛機制が境界性パーソナリティ障害の様々な症状を生み出すと考えている。中でも重要であり中心にある防衛機制は「分裂(splitting)」である。分裂は原始的防衛機制の中心的な存在であるが、同一の対象に肯定的、否定的な感情を同時に認識できないという分裂思考は、対人関係の障害だけでなく、自分に対しても自己同一性障害という形となって現れ、自己像の不安定さや、慢性的な虚無感、社会的機能の低下の原因となる。カーンバーグは、パーソナリティ障害(全般)の人のよく用いる防衛機制として、分裂、投影、投影性同一視、否認、原始的理想化、万能感、脱価値化を挙げている。これらの防衛機制の極端な表れは、人生で起こりうるさまざまな問題に対する適応力の発達を妨げ、漠然とした不安感や抑うつ、衝動統制の困難さ、あるいは一過性の精神病症状をも招く。プライマリケアの場では、患者にBPDが疑われる場合にはメンタルヘルス専門機関への紹介を考慮すべきである。パーソナリティ障害と診断されるのは、柔軟性が乏しく不適応を起こしており、持続的かつ著しい機能障害または本人の苦痛が引き起こされている場合のみ該当する。また「パーソナリティ障害」自体医学的な診断名であり、医師の診察および診断が必要であることは言うまでもない。なお閾値下の軽度パーソナリティ障害を診断するかしないかは、各医師の個人的主観にまかされていることも留意されたい。DSM-IV-TRの診断基準では、以下9項目のうち5つ以上を満たすこととなっている。『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』(著者:American Psychiatric Association、翻訳:高橋三郎、大野裕、染矢俊幸、出版社:医学書院、ISBN 4260118862) より引用。多軸評判定のうち、パーソナリティ障害として第 II 軸に記載される。対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で成人期早期に始まり、さまざまな状況で明らかになる。なお、パーソナリティ障害の診断は、特定のパーソナリティの特徴が成人期早期までに明らかになっており、薬物やストレスなど一過性の状態とも区別されており、臨床的に著しい苦痛や機能の障害を呈している必要がある。特に、臨床的に著しい苦痛や機能の障害を呈していないものは正常なパーソナリティである。においては、F60.3情緒不安定性パーソナリティ障害の下位分類であるF60.31の境界型において、さらに「境界型パーソナリティ(障害)」を含めると記されている。ICD-10もまた、いかなるパーソナリティ障害の診断においてもパーソナリティ障害の全般的診断ガイドラインを満たすことを求めている。境界性パーソナリティ障害と診断された人の約60% - 90% 以上が他の障害を併存している。他のパーソナリティ障害や、不安障害、うつ病や双極性障害(躁うつ病)などの気分障害、薬物依存症や摂食障害などが多い。I 軸障害の積極的な治療はパーソナリティの安定につながる。2008年に行われたアメリカの調査では、併存疾患として多かったのはアルコールや薬物依存、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病、双極 I 型 障害、不安障害、他のパーソナリティ障害であった。また1998年の別の統計では、パニック障害や社交不安障害などの不安障害、うつ病や気分変調症などの気分障害、アルコール依存や薬物乱用、摂食障害、PTSD、身体表現性障害が多かった。併存疾患には男女差がある。アルコールや薬物依存は男性に多く、うつ病、不安障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)は女性に多い。以下の表3.を参照されたい。ほとんどの患者がなんらかの併存疾患を持っているのだが、境界性パーソナリティ障害自体、他の障害と重複する症状・診断基準が多く鑑別がつきにくい。統合失調症の症状に似た一過性の精神病症状が現れることは前述した通りだが、初期の統合失調症や統合失調感情障害も誤診されやすい所見を持ち、双極 II 型障害、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、解離性同一性障害、多剤併用や薬物の大量処方によって起こる薬剤起因の精神障害とも鑑別がつきにくく、一旦境界性パーソナリティ障害と診断されても、後にそれらの病名に診断が変更になることがある。特に双極 II 型障害は症状が類似しており誤診断も多い。北海道大学病院精神科神経科に通院している患者を調査したところ、初診時または2年半以上後に境界性パーソナリティ障害の診断がついた患者が、その後に双極 II 型に診断変更されたのは、47例中15例(約32%)であった。またアスペルガー症候群に診断変更された例は47例中3例で、約6.4%が誤診断されていた。    境界性パーソナリティ障害の患者はうつ病、双極性障害(躁うつ病)などの気分障害との併存率が有意に高い。境界性パーソナリティ障害は気分障害スペクトラムであるとする研究もある。また重複の多さの一つの要因となっているのが、パーソナリティ障害の曖昧な診断基準である。現在臨床でよく用いられている国際的操作的診断のDSMは米国のクレペリン学派の影響を強く受けており、その作成過程において、境界性パーソナリティ障害の診断定義に感情面の要素が多く入り込んだことも関係している。そのほか、気分障害の患者のパーソナリティタイプが、境界性パーソナリティ障害に類似している可能性も指摘されている。心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは症候学的な類似が指摘されている。境界性パーソナリティ障害の患者はしばしば顕著な外傷体験を持っており、1/3の患者はPTSDの診断基準を満たすとも言われている。境界性パーソナリティ障害とPTSDの症状の出現には、共に扁桃体、海馬、眼窩前頭皮質などの情動的調節に関与する神経回路が関連しているという共通点もある。しかしPTSDに見られるような過剰な警戒心、刺激への過敏反応、フラッシュバックはないことが多い。PTSDの解離はトラウマに関連した直接的な刺激で起こる、一種の防御反応だが、境界性パーソナリティ障害の解離状態は一般的なストレス下で起こる。一方で過去の外傷体験が主要な病因になっている一群も存在するとし、外傷性精神障害として捉えようという動きもある。PTSDの研究で知られるアメリカの精神科医ジュディス・ハーマンはその著書の中で、境界性パーソナリティ障害は複雑性PTSDであると述べている。ハーマンは養育期の虐待が重ねられた結果、対人関係の不安定さや感情統制能力の低下が起こるとみている。DSM-IV-TRのPTSDは戦争やレイプ体験などのトラウマ研究を元につくられており、家庭内の長期にわたる虐待など、日常的に広範囲で起こるPTSDは「複雑性PTSD(C-PTSD)」と呼ぶように提案されている。なおDSM-IVには複雑性PTSDに該当する診断項目はなく、今後独立した診断基準として新たに作成される可能性がある。複雑性PTSDの症状は、感情制御の困難さ・過敏さ、リストカットなどの自傷行為、解離症状、転換性障害(ストレスが身体症状として現れる)などがある。患者の現在の症状と心的外傷を早期に結びつけることが、治療上の陰性反応を避けられるかは結論が得られておらず、慎重な取り扱いが要求される。境界性パーソナリティ障害の患者で解離性障害(DD)の診断基準を満たす者は73%といわれており、境界性パーソナリティ障害の患者で解離性障害と診断できる患者は多く、併存の可能性は高い。また解離、離人、分割投影(投影性同一視)は類似概念であるが、境界性パーソナリティ障害に離人症性障害がみられることもある。解離性障害と境界性パーソナリティ障害では、女性の罹患者が多い、虐待経験や心的外傷体験の既往率が高いなど共通点も多く、クラリーは、解離性障害は境界性パーソナリティ障害の特殊な一形態であるとし、ハーマンは外傷性精神障害として同じカテゴリーに分類するなど、ほぼ同一の障害とみなす研究者もいる。しかし解離性障害の患者のパーソナリティの傾向としては、回避性、自虐性、妄想性、スキゾイド、失調型、受動攻撃性、または境界性など、多様な傾向にあり、精神分析的な観点においても、症状発現をもたらす規制(防衛様式)が解離性障害では抑圧(repression)、境界性パーソナリティ障害では分裂(splitting)という違いがある。また解離性障害では見捨てられ不安もほぼないとされる。境界性パーソナリティ障害では、解離は自傷時やストレス下において出現する一過性の症状であるが、解離性障害では主軸にある症状であり持続的・反復的である。境界性パーソナリティ障害では不安障害や神経性大食症などの摂食障害を併存するケースが多い。なお摂食障害のすべてが境界性パーソナリティ障害というわけではない。併存でない場合、衝動行為はあるにしても、見捨てられ不安や対人関係の不安定さがみられず、衝動行為も疾病に関係すること(摂食障害の場合は食行動など)のみである。不安障害や摂食障害のエピソード期間中に境界性パーソナリティ障害に似た病像を呈しているのか、それとは別に永続的であるのかを慎重に検討すべきである。DSMでは疾患エピソードに限ってみられる行動は、パーソナリティ障害を診断する際、考慮に入れないとされている。またパーソナリティ障害の症状が優勢な時には、摂食障害はその部分症状として理解し、パーソナリティ障害の治療を優先する方がよい。ただし摂食障害では栄養不良による血糖値の変化による気分の変動がみられることがあり、判別が難しい場合もある。Lund らは若年性ミオクロニーてんかんの患者の36.4%が境界性パーソナリティ障害を含む、特徴的な神経症をもつと報告している。また23% に境界性パーソナリティ障害がみられるとする報告がある。元々同一の概念から誕生した経緯もあり、境界性パーソナリティ障害と他のパーソナリティ障害は重複する部分も多い。特にパーソナリティ障害クラスターB群(自己愛性、反社会性、演技性)や、スキゾイドパーソナリティ障害などとは重なりあう部分も多く、今後の研究によって、診断基準自体が大幅に変化することもあるだろう。境界性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害の連続性については多くの指摘がなされている。精神病と神経症の境界領域にある疾患群の総称が境界例であり、神経症側に近いものが自己愛性パーソナリティ障害、他方の極に近いものが境界性パーソナリティ障害であるとマスターソン、リンズレーは指摘している。またアドラーは、境界例患者は治療が進むと自己愛性パーソナリティ障害様の機能や能力を獲得することがあると述べている。ストロロウはこれら2つの障害に明確な境界を設けておらず、境界例患者でも自己を保てていれば自己愛性に近くなり、安定性を保てなくなると境界性様の症状が発現することを指摘している。現代のアメリカ精神医学においては、境界性パーソナリティ障害及び自己愛性パーソナリティ障害を連続的なもの、すなわちスペクトラムとして捉える見方が大勢となっている。以下に相違の一例を記しておく。境界性パーソナリティ障害の多種性は多くの研究者が言及しており、患者により症状や臨床像も大きく異なる。対人障害については、他者を巻き込みやすい過活動なタイプと、対人恐怖が強く交流をさけ、回避がちになるタイプがいる。また現実検討力の低下したタイプ(精神病水準に近いタイプ)、そうでない現実検討力の高いタイプ(神経症水準に近いタイプ)があり、患者のタイプにより入院治療の向き不向き、デイケアの利用が可能であるかなど治療方針も異なる。現実検討力(reality testing)とは自我の代表的機能であり、現実をありのままに把握し適切に対応する能力である。現実検討力が高いと病識(病気の自覚)も高くなる。現実検討力が極端に低くなると、心の中で思ったこと(内的現実)と実際に起きたこと(外的現実)の区別がつかない。例えば「妄想」などの症状は、その区別が不可能になる極端な例である。また「誰が・いつ・どこで・何をしたか」といったような、外的出来事を正確に知覚する能力や、心の中で起きていること(内的現実)を正確に捉え、内省する能力でもある。精神科医の川谷は、臨床的に以下の3型がみられるとした。また武田は治療適応の違いから以下の4型に分類している。一般に現実検討力が高いほうが軽症である。原因は未だ不明である。近年の研究結果から、次のものが原因として考えられている。いくつかの生物学的研究では、発生的、神経学的、生物学的な可能性を示唆している。ある研究では一親等が境界性パーソナリティ障害である場合が、一般母集団より5倍高かった。環境の関与も否定できないが、発生的要因ともとらえることが出来る。1980年代の研究では、境界性パーソナリティ障害の親は統合失調症が少なく、気分障害の頻度が高いとしている。境界性パーソナリティ障害の際立った症状は、基底に生物学的基質を有するとされる。情緒の不安定性、抑うつは脳のアドレナリンやコリン作動性の異常に関連し、一過性の精神病性エピソードはドパミン、自傷や自殺企図などの衝動的攻撃的行動はセロトニンの異常であるとされる研究がある。さらに多くの神経心理学的研究や脳機能画像研究によって、境界性パーソナリティ障害における大脳皮質の前頭前野機能の低さが指摘されている。前頭前野の機能の低さは、不安や攻撃性などの情動コントロール、思考の柔軟性、共感性に関係しているとみられている。MRIによる脳画像では、海馬や扁桃体が一般の人よりも小さかったという報告もある。扁桃体には不安感や恐怖心を生み出す性質、嫌悪条件づけや顔認知の機能がある。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた研究では、患者の扁桃体の過敏性が示され、人の顔の表情を用いた検査では、表情の出現に対し左扁桃体の過活動がみられた。また正常群に比べ、感情を表していない中立の顔を「脅すような表情である」と認識していた。境界性パーソナリティ障害の患者は自傷行為を習慣的、嗜癖的に行う際、不安や痛みなどの不快反応を感じにくいことが知られているが、脳機能のレベルでも痛みに対する体性感覚野の反応が低いこと、自傷行為により、不安を生み出す性質を持つ扁桃体の反応が一時的に抑制されることが示されている。これらの研究から、患者は自傷行為を行うことにより本能的に、気分調節を自己治療的に試みている可能性が示唆されている。また40%において脳波上、非局在性の機能不全を示す異常な広汎性徐波がみられるという研究もある。アメリカの調査では、境界性パーソナリティ障害の患者の91%が小児期の外傷体験を持っていた。小児期における養育者からの早期の分離や、ネグレクトなどの虐待経験が多いとする研究もある。成人の場合はパートナーからの性的暴力などのドメスティックバイオレンスを受けている人に有意に多かった。また、日本での調査でも小児期の虐待は多くみられ、ある調査では身体的虐待33%、性的虐待51%、情緒的虐待68%であった。他のエピソードとしては養育者の過干渉もあった。境界性パーソナリティ障害の患者の家庭にはいくつかの特徴がみられる。多くの患者は18歳までにどちらか(または両方)の親との一定期間あるいは長期の分離体験をしている、父親が不在または家族に対し関心が薄い、親のネグレクト的または支配的・過干渉、過刺激的であり共感的でない養育態度である。小児期の虐待が患者の精神病理形成に関与しているかどうかはさまざまな見解がある。患者の性的虐待の既往率が高いのは特異的であるが、併病としてPTSDを持っている患者は女子の方が多いことを考えても、性的外傷との関連性は想像に難くない。ザナリーニの調査では、性的虐待の既往がある患者は約半数ほどであり、虐待の外傷体験が主要な要因となっている一群があるとし、また虐待が生まれやすい複雑な家庭環境の影響も指摘した。一方ガンダーソンは虐待が症状を生み出すのは、ネグレクトなど両親との持続する過度の葛藤があった場合のみとし、そのようなケースでは、環境に対する適応として症状が現れていると述べた。その他の研究者も虐待などの小児期の環境要因のみが病因にはならないとみている。幼児期の虐待は重要な要素ではあるが、患者の精神病理を単独で説明するには十分でない。これは虐待を受けた者の全てが境界性パーソナリティ障害を発症するわけではない点からも理解できる。過去の心的外傷との関連に関しては、慎重な解釈が要求されるだろう。治療は精神療法が中心となる。薬物療法は、過量服薬の危険性があるため研究報告の数が限られており、また有効性も一時的かつ部分的であるため、有効性が示されないベンゾジアゼピン系の薬剤の使用を避け単剤療法を中心とすることが推奨される。患者に対しては、できるだけ受容的な態度と傾聴を心がけると良い関係が築けるとされる。深刻な自殺企図や他害の危険、解離症状や妄想、他の合併症(うつなど)が重篤な場合、外来治療に反応しない例では短期入院(主に1ヶ月前後)の適用となる。アメリカの境界性パーソナリティ障害の治療では中断率が高い。ガンダーソンの調査では、半年間での中断率は患者の50%、一年では75%だとし、他の障害と比べ初期から終結まで一貫して治療する例は少なく10%程度だった。日本での統計は少ないが、精神科医74人、心理士24人等のアンケートでは20 - 39%ほどが多いのではないかとみられている。また中断が多いのは治療開始から3ヶ月以内であった。別の医師の報告では中断率14.9%であったため、中断率は治療者の技量や治療環境にも左右されるものと思われる。なおこの中断率は精神科通院患者の中でも特別高いものではない。この違いはアメリカと日本の医療システムの差異による部分もあるが、日本の患者の場合、発症の環境要因として虐待より過保護のケースがやや多く、依存的な性質をもつためとの説もある。治療の継続のしやすさの面では有利であるが、一方では日本独自の精神療法を考慮する必要性もでてくる。より中断率が高いのは性的外傷を持つ患者に多いとする報告もある。信頼関係を構築し、脱落(ドロップアウト)を防ぐことは治療の最初の課題となる。BPDの患者は、援助者に感情を転移させることがある。反対に、BPDの患者と向き合う援助者は、患者により逆転移感情を引き起こされることが知られている。例えば、患者に対し怒りや恐怖、無力感、または好意や親密感などを抱くことがある。患者と接した際、自分の中に生まれる感情(逆転移感情)は、患者の持つ投影性同一視などの病理と密接に関係しており、患者の幼児期の体験や心理の中核を理解することに役立つものである。しかし自分の中にある逆転移感情を処理しきれない未熟な援助者は、患者から引きこもってしまったり、争い、不仲になったりと、患者と安定した関係を築くことが出来ない。処理しきれない思いを抱え、表面上穏やかに接していても、敏感な患者には見抜かれてしまう。すなわち、援助者は常に自身の逆転移感情をモニタリング出来る人物でなければ、治療はおぼつかないものとなる。また医療・福祉従事者の中にもBPDが少なくないという点が、この問題をややこしくしており、援助者がBPDの患者に「振り回される」といった事態が往々として発生する。BPDの患者に対して義侠心を起こしたり、特別扱いしたり特例を設けるべきではなく、「けじめ」や「ルール」を持って接するべきである。援助者がBPDの患者を目の前にして、どうしても患者に過度に援助したいと思っているのならば、援助者側に問題があると考えるべきである。主な治療法となるのが精神療法(心理療法)である。精神療法は、精神力動的精神療法(支持的精神療法など)や、その一派である精神分析的精神療法、認知療法、対人関係療法、家族療法など様々なものがある。境界性パーソナリティ障害の個々のクライエントにどのような精神療法が合っているかは患者により違いがある。精神療法の効果が出るには概ね一年以上の長期間がかかる。アメリカで1991年に自殺行為の治療のために開発され、境界性パーソナリティ障害の治療に応用されている認知行動療法の一種、弁証法的行動療法(DBT - Dialectical Behavior Therapy)は新しいアプローチとして日本でも関心が高まってきている。またイギリスで1999年にベイトマン、フォナギーにより開発されたメンタライゼーション療法(Mentalisation Based Treatment - MBT)は弁証法的行動療法と共に、現在最もエビデンスのある精神療法である。伝統的な力動的精神療法、支持的精神療法などの精神力動的治療では、治療開始から18週後には、対人関係の改善、自尊心や人生への満足が生まれ、8ヵ月後にも治療成果が維持された。精神分析的精神療法についても、12か月 - 18か月の治療で、自傷行為や自殺企図、入院期間の長さ、不安、抑うつ、全体の適応性が有意に改善したという結果が出ている。認知療法に関するデータは少ないが、アメリカ国立衛生研究所のデータでは16週間の治療後の比較では、対人関係療法に優るとの結果が出ている。弁証法的行動療法でも短期での改善は得にくいが、治療開始後1年以上の経過では、社会適応や仕事の実績の向上、怒りまたは不安や動揺の減少が見られた。また弁証法的行動療法は他の治療法に比べ継続率も高いという。これらの精神療法は、1時間ほどの面接を週1 - 2回、弁証法的行動療法では1回50分から90分の面接を週1 - 2回、150分のスキルトレーニングが1回、さらに電話によるコンサルテーションなどの手厚い治療体制であり、日本においては保険診療内に収まらず、広く普及することは困難との見方もある。メンタライゼーション療法(MBT)は週2回の外来治療やデイケア、集団療法で行うことが出来、導入のしやすさと確実な効果で注目を集めている。精神分析的精神療法は一定の効果が示されているが、一部では古典的な精神分析は自己否定感を強めるとして、境界性パーソナリティ障害の治療に有益でないとする意見も存在する。メンタライゼーション療法を開発した精神分析家フォナギーは、メタファーの解釈などの従来の精神分析的な関わり合いは、かえって他者の心情を理解しにくい境界性パーソナリティ障害の患者を混乱に陥れ、病理を助長させると苦言した。弁証法的行動療法の創始者であるリネハンも、患者を中傷する可能性を持ち、つらいトラウマの再現となりうる解釈については批判しており、症状を悪化させると述べている。フロイトを開祖とする精神分析では、カウンセラーとクライエントの関係を利用し、クライエント自身がまだ認識できていない無意識の中の抑圧されている葛藤を意識化する。境界性パーソナリティ障害では、乳幼児期の発達早期に外傷を経験をしていると考え、カウンセラーの解釈によりクライエントの自己洞察を促し、本来の自我状態を取り戻すことを目的とする。時代を重ね、フロイトの理論への批判や修正を伴い、精神分析も少しづつ様相を変えてきており、現在では「精神分析的精神(心理)療法」は精神分析の基本的概念を取り入れたカウンセリング全般を指すことが多い。幼少時や過去の問題に焦点を当てた古典的精神分析と違い、力動精神療法では「here and now(今・ここ)」に焦点を当て、現在のストレスを問題にする。カーンバーグの手法「表現的心理療法(expressive psychotherapy)」は最も精神分析に近い。カーンバーグは境界性パーソナリティ障害の病理は、分裂(splitting)が一番の問題であると考え、分裂や怒りの感情の分析をすることで認知(考え方のパターン)を修正していく。またマスターソンは、境界性パーソナリティ障害の環境要因に焦点をあて、発達停止が根本に存在するとし「見捨てられ感」を分析して成熟を促し、個人のパーソナリティを再構築することを目的とした「再構築療法(reconstuctive psychotherapy)」を提案している。支持的精神療法では、解釈や直面化はせず、クライエント自身の治癒力を支持し、問題解決と現実適応を重視する。患者を受容、共感し、訴えを傾聴することで、勇気づけ心理的に支えていく。ガンダーソンの手法でも古典的な精神分析は退け、自身の不安定さ、否定的な自己感や自我違和感、衝動的な感情や低い達成能力などを、探求療法という形で支持的、時に分析的療法を用いて臨機応変に対応していく。(MBT)は、イギリスでフォナギーやベイトマンによって開発された力動精神療法の一型である。「メンタライゼーション」能力の向上に着目した個人療法、デイケア、サイコドラマなどの集団療法を組み合わせて行う。イギリスで一般的に行われている週1回の個人面接と集団療法の組み合わせの治療に比べ、このメンタライゼーション療法は、自傷行為や対人関係スキルがより短期間で改善したという。古典的精神分析などと比べて治療者に専門的な知識を必要とせず、導入が容易であるという利点もある。アーロン・ベックやアルバート・エリスにより提唱された認知療法は、元々はうつ病に適用されたものであったが、その後不安障害など他の精神疾患にも広く施されるようになり、パーソナリティ障害にも大きな成果を上げることとなった。認知療法は1960年代 - 1970年代に誕生して以来改善が積み重ねられ、現在では行動療法的な技法と組み合わせて用いられることが多く、広義には認知行動療法と同義語となっている。認知療法では、人の感情は出来事を「どのように解釈するか」(認知)で決まるという理論を基本にしている。ベックは抑うつ的なクライエントが持つ「自分は何の価値もない」「何をやってもうまくいかない」というような悲観的な思考は、認知の歪みから生じると考え、また極端な二分法的思考は、気分の変動や急激な行動の変化につながるとした。詳細な治療目標を設定しつつ、クライエントが、二分法的思考法ではなく中間的あるいは多角的にも物事を捉える、感情や行動を自身で冷静かつ客観的に評価するなどの認知を獲得し、それに伴う適切な思考や行動が出来るようになるのが目標である。エリスの認知療法はさらに治療者が能動的・指示的であり、クライエントに自覚を促すだけでなく、宿題を出すなどして積極的に介入していくものである。行動療法では、クライエントの問題となっている不適切な行動を、新たな学習(行動)により変化させる訓練をする。マーシャ・リネハン創始の弁証法的行動療法(DBT)も認知行動療法の一型である。米国精神医学会では境界性パーソナリティ障害に有効な精神療法として推奨している。リネハンは当初、境界性パーソナリティ障害のクライエントに対し行動療法を行っていたが、集団での巻きこみ行動、あるいは中断(治療に来なくなる)が発生し、奏功しなかった。その反省を踏まえ、技法に修正を加え現在の「弁証法的行動療法」を完成させたという。リネハンは元来感情調節不全などの生物学的な基盤に持った人物が、置かれている環境因子によって境界性パーソナリティ障害を発症すると考えており、患者の現在の行動や状況を肯定的に捉え、トレーニングをすることで改善方向に向かわせる。主に患者を変化させ改善するための介入と、変化しない部分を受容(あるがままの受け入れ)させる訓練をしていく。「変化させる」と「変化させず受容」は一見逆説的のように聞こえるが、共に患者の改善に必要なことであり、弁証法的なプロセスを踏むことによって治療的展開が生じると考えられている。弁証法的行動療法では主に、感情調節スキルの獲得、苦悩(ストレス)耐性の強化、スムーズな対人関係の構築・保持能力の向上などを目標とする。行動を起こす前に、その行動を起こした際にどのような結果になるかを十分に考え、行動の選択を決定できるようにする、不全感の解消、外傷体験の癒しの手助けなど、クライエントが自身で危機を乗り切って行くための全体のスキルの向上を目指していく。特に「マインドフルネス」トレーニングは、日本発祥の精神療法である森田療法との類似が指摘されており、日本人の気質に合う可能性が示唆されている。弁証法的行動療法では、最低でも週に6時間30分以上の従事、電話による24時間のサポート、1人の患者につき最低4人の治療者を必要とするため、日本では保険診療内におさまらず普及が困難との見方もある。しかし病識の低い患者も多い境界性パーソナリティ障害では、そもそも治療上のコミュニケーションそのものが難しいため、治療者側からの能動的な教示と訓練、積極的な介入が必要不可欠であることも否めない事実である。弁証法的行動療法の構造は次のようになっている。個人療法は週1回が基本であるが、治療初期や危機介入時には週2回ほど行われる。患者は日記をつけ、それを元に治療者と行動療法的な話合いがもたれる。グループスキルトレーニングは患者と規則の遵守の契約をすることから始める。グループスキルトレーングでは、「マインドフルネス」を養うトレーニングを2週間行った後に、「対人関係を有効に保つスキル(Interpersonal Effectiveness Skills)」、「感情調節スキル(Emotion Regulation Skills)」、「苦悩に耐えるスキル(Distress Tolerance Skills)」のトレーニングをそれぞれ6週間行う。どのタームから始めてもよいが、最低2サイクル(一年間)行う(図参照) 。マインドフルネス・トレーニングでは、瞑想法を用いて心や身体の状態を「あるがまま」に認識・自覚していき、感情のバランスをとる技術を見につける。このマインドフルネストレーニングは、日本発祥の精神療法である森田療法との類似が指摘されており、日本人の気質に合う可能性が示唆されている。電話相談は精神療法を行っている主セラピストが担当する。自傷などの破壊行為を行いそうになったら積極的に電話連絡をするように指示している。ただし自傷をしてしまった後には連絡はしないというシステムをとるなど、有効な対処法に正の強化を与える方法を採用している。また患者だけでなく、治療者が患者にマイナスとなる行動や態度を取らないように、指導者が助言や相談を行うなどのスーパービジョンも包括した内容となっている。弁証法的行動療法では、最低でも週に6時間30分以上の従事、電話でのサポート、1人の患者につき最低4人の治療者を必要とするため、日本では保険診療内におさまらず普及が困難との見方もある。しかし病識の低い患者も多い境界性パーソナリティ障害では、そもそも治療上のコミュニケーションそのものが難しいため、治療者側からの能動的な教示と訓練、積極的な介入が必要不可欠であることも否めない事実である。アメリカでは境界性パーソナリティ障害の治療に対人関係療法(IPT)を用いることがある。元々はうつ病の治療用にクラーマンらが開発したものだが、「対人関係」に焦点を絞った治療法は、あらゆる精神疾患に適応できる。近年では米国精神医学会のガイドラインにも掲載されており、国際的な治療法として認められている。例えばうつ病になる前には、「仕事を断れない」「悩みを打ち明ける相手がいない」などの対人関係上の問題が、発症に関与することが指摘されている。対人関係療法では、家族や配偶者、友人など身近な人との対人関係の歪みを、自身で治す能力を身につける。修正していくのはあくまで「対人関係の築き方」であり、本人の性格変容を目的とはしない。前述のうつ病のケースを例にとると、「上手な断り方」「悩みの共有方法」を覚える。精神分析とは違い、ストレスの原因の解釈をしたりはせず、対人関係に焦点を絞り込んでいるため治療が短期間で済む利点もある。過食を伴う摂食障害にも有効というデータもある。家族療法の起源は1940年代 - 1950年代にかけて、アメリカのベル(Bell.J)が行った合同面接が起源とされている。その後全米各地でさまざまな形で発展していった。日本でも1960年代から導入されている。境界性パーソナリティ障害の患者に、家族が深く関与しているケースでは、家族療法は最も有効な心理療法のひとつである。家族療法では、個人の問題を家族システム全体の問題としてとらえる。家族療法ではクライエントはIP(Identified Patient - 患者とみなされる人)と呼ばれる。IPは家族の代表として、問題を症状という形で表出しているとし、家族という集合体のシステムに変化を起こすことで改善を促すことを目的としている。したがって家族療法では、IPの人格変容を目標とはせず、家族の機能の健全さの回復を目指し、その結果としての症状消失を目指す。いわゆるグループセラピーである。1905年にボストンの内科医プラットが、当時不治の病とされ、社会的にも偏見のあった肺結核の患者達と行い治癒が促進されたのが起源と言われている。グループセラピーでは、複数のクライエントとセラピストとが共同で行う。心理療法家などの権威者よりも仲間からのアドバイスのほうが容易に受け入れやすい、恐怖を感じにくいなどの良い側面があり、また複数の人間がかかわることで転移反応を軽減させるメリットもある。集団療法は行動パターンが硬直化しているクライエント、他者に反抗的、万能感の強いクライエントには向かない。ルーマニアの精神医学者ヤコブ・モレノが創始したサイコドラマも集団精神療法の一種で、即興劇を主体とした心理劇である。参加者は即興で筋書きのないドラマを、自身の悩みをモチーフにして演じる。自発性、創造性を養え、また自分自身や他者を演じることで客観的な自己洞察を得ることが出来る。ある程度の治療意欲や知的水準を必要とするのは他のグループ療法と同じである。リハビリテーションの場という趣きのデイケア(社会療法)だが、境界性パーソナリティ障害の患者に有益な場合がある。海外では弁証法的行動療法やメンタライゼーション療法で数日間の集中的デイケアでの効果が報告されている。プログラムとしては、通常の軽スポーツや創作活動のほかに、集団精神療法や心理教育ミーティングなどの情緒に働きかけるもの、社会技能訓練や就労支援プログラムのあるものなど、多様なプログラムが用意されていることが望ましい。入院治療が出来ない場合などでもデイケアは有効である。孤独感を緩和し、生活技能や社会技能の向上が期待でき、家庭環境に問題がある患者に対する居場所の提供の役割としても活用できる。一方で症状が重い患者、参加意欲(動機)の乏しい患者、集団生活で問題行動が促進される患者などには不適応であり、施設によってキャパシティに差があることにも留意されたい。薬物療法は、後述される診療ガイドラインによれば、過量服薬の危険性を考慮して使用が検討され、多剤使用や長期間投与は有効性が確認されていない。主に使われる薬剤には以下のものがある。薬物は境界性パーソナリティ障害の種々の症状と、併存する疾患の双方を考慮して決められる。現在境界性パーソナリティ障害に対して保険適応のある薬剤はない。薬物は主に付随する症状の緩和のために使われる。米国精神医学会では2006年のガイドラインにて、副作用の少なさなどの観点から、第一選択はフルオキセチン(商品名 プロザック・本邦未発売)やフルボキサミン(ルボックス・デプロメール)などの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を推奨している。著功しない場合は他の抗うつ薬への切り替えが考えられるが、三環系抗うつ薬は衝動性にはマイナスになる場合がある。炭酸リチウム(リーマス)での強化も考慮される。パラノイド感、幻聴のある場合は、低容量の抗精神病薬の使用は有効である。バルプロ酸(デパケン)などの抗てんかん薬類も第二選択である。解離にはナルトレキソン(本邦未発売)、不安の症状にはクロナゼパム(リボトリール)の追加も考えられる。SSRIは主に抑うつや情緒不安定性の症状に効果があるとされる。ただしフルオキセチン以外のSSRIは衝動性が亢進する患者が一部存在する。SSRIは、投与初期のアクチベーション・シンドロームにも注意が必要な薬剤ではある。英国国立医療技術評価機構では2009年のガイドラインにて、エビデンスが弱くかつ薬物治療による副作用が深刻であるため、BPDの治療では「BPD・個人の疾患・行動の疾患に対して薬物治療はすべきではない(should not)」、しかし危機介入時や、併存疾患の全体的治療という点では薬物治療も考慮することができる、抗精神病薬を中長期に渡って投与してはならない、とし「精神的・肉体的に併存疾患のないBPD患者と現在薬を処方されている患者に対しては、投薬量を削減し不必要な薬物治療を打ち切る方向で見直すべきである」と定めており、薬剤が用いられるとしても一週間を超えるべきではないとしている。日本の厚生労働科学研究事業による2008年のガイドラインでは、原則として単剤療法が推奨される。第一選択として、有効性の示されている非定型抗精神病薬のアリピプラゾール(エビリファイ)あるいはオランザピン(ジプレキサ)を、脱抑制の危険性を避けるため統合失調症に用いるよりも少量で用いることが推奨されている。不安や抑うつに対してはSSRIや非定型抗精神病薬が推奨される。気分安定薬では、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)やトピラマートが衝動性に対してある程度の効果が確認されているとされるが、過量服薬時に危険であることも指摘されている。リチウムやカルバマゼピンの有効性は確認されていない。また抗うつ薬と抗精神病薬のような多剤併用の有効性を支持する証拠はなく、長期間投与の有用性も認められない。この疾患の不安や過覚醒による不眠症にはベンゾジアゼピン系の薬剤の有効性は報告されておらず、依存の形成や過量服薬の危険性を考慮し処方するとしても数日から2週間といった短期にし、とりわけ単剤処方が推奨される。これらの薬物療法は、抑うつ、感情抑制、対人過敏、認知・知覚の障害や妄想様観念には一定の効果があるが、慢性的な空虚感、孤独感、見捨てられ不安、同一性障害には効果がないとされ、患者の治療法は一律ではない。過量服薬の危険性を考慮すると、より安全性が高く依存性が少ない薬剤の選択、および少量で最大の効果が望める薬物療法が求められる。多剤併用、長期投与の有効性は確認されていない。なお抗精神病薬に関しては専門家の間でも、統合失調症と同じ容量ではなくごく少量を投与するべき、という意見の合意が得られている。副作用や安全性の観点からは定型抗精神病薬よりも非定型抗精神病薬の使用が適している。副作用に対し敏感な患者も多いため、事前に詳細な説明をすることは不安の軽減に繋がる。特に薬剤は「悪いもの」と思われがちなため、アドヒアランス(服薬しているか)の確認や有害事象について繰り返し話し合うことが必要である。また境界性パーソナリティ障害の薬物療法は、症状の緩和作用以上の深い意味を持つとの見解もある。薬物への意識または無意識的な「投影」である。それは患者が過量服薬する際、大半は他者から与えられる処方薬によって行われることにも指摘されている。重要な他者(医師を含む)の存在の拒絶や受け入れ、一体感の切望または敵意による過量服薬など、意識・無意識的な他者への「投影」が投薬治療に様々な意味を持たせているという。治療者も自身の能力に対する不安感や無力感を、患者に薬を与えることで解消しようとしていないか省みる必要があるだろう。上述の診療ガイドラインにて、有効性について総合的に調査されているが、それ以前の年代のものが含まれている。1994年の論文は、薬物は自殺関連行動、自傷や他害などの急性症状には最も有効であるが、維持的に使った場合は限定的な効果しかないとする意見を述べている。1966年から2010年までの研究のメタアナリシス(研究結果を分析したもの)では、抗てんかん薬などの気分安定薬と抗精神病薬に衝動性制御効果、情緒不安定性への効果が示され、抗精神病薬に関しては認知・知覚症状への有効性も認められた。抗うつ薬はそれらの症状に効果はなく、情緒不安定性にのみ有効という結果になった。また、ω-3脂肪酸による衝動性や抑うつ改善効果についても研究されている。患者の年代は20代が最も多いが、30代半ば以降では表面上の症状は改善に向かうことが多い。ザナリーニらの調査では、治療を開始してから4年後には49%の患者が、6年後には73%の患者が診断基準を満たさない状態になっており、自傷行為や薬物乱用、対人障害などは一旦改善しはじめると比較的早く治癒することが報告されている。しかしこれら「陽性症状」ともいえる目立った症状がなくなることで診断基準に当てはまらなくなるだけと見ることもでき、孤独感などの目立たない「陰性症状」は長期的に続くことが示唆されている。特に改善しにくい症状は、見捨てられ不安、依存、抑うつ感、空虚感、不機嫌さであり、治療開始から6年後でも7割の患者にこのような症状が残存しており、情緒不安定性などの感情の障害に関しては長期的に続きやすいという結果であった。これはパリスの27年間の追跡調査で、調査期間の後期にも自殺率が高いことでも理解できる結果である。自殺を完遂するのは30 - 35歳を超えてからの患者に多く、50歳を過ぎると再び不安定になる。またザナリーニらの前述の患者の10年後の追跡調査でも、93%の患者が症状が改善し、50%は社会適応も良好であったが、そのうちの34%が再発を経験している。最も予後が良好な群は10年後には症状が消失し寛解していたが、最も不良な群は10年後でも症状が変わっておらず、改善の仕方も患者により個人差があることがわかっている。青年期や成人初期の重要な時期を、社会的機能が著しく低下したまま過ごすことによる本人の損失は大きい。寛解しやすい因子の一つとして「年齢が若いこと」が挙げられており、適切な治療への早期の導入が求められる。併存疾患(気分障害、物質使用障害、不安障害、摂食障害、PTSDなど)の寛解または治癒はパーソナリティへの影響も大きく、治癒を促進させる。その他の寛解に至りやすい要因としては以下のものが挙げられる。調査では、人口の0.7 - 4.0%程度に存在すると言われている。生涯有病率は5.9%ほどである。精神科入院患者では75%が女性とされているが、一般人口における有病率では男女差はなく、生涯有病率は男性5.6%、女性6.2%で、出現率の高い年齢は19 - 43歳である。男性より女性のほうが多く診断されやすいのは、男性の場合反社会性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害と診断されることが多いためではないかとみられる。そのほか、アメリカの統計では白人やヒスパニックより、黒人やネイティブアメリカンがやや多い。英国の有病率は人口の1%以下で、多くが青年期初期である。外来通院患者では約10%ほどとみられており、入院患者では15 - 20%というデータがある。しかし、対人障害が一症状として存在する境界性パーソナリティ障害には、治療者との関係性の悪化により治療者側の主観で診断される「医原性のBPD」が存在する可能性があるなど、調査をする上で特有の困難さがあり、データにはばらつきがあることが多い。(詳細は医原性パーソナリティ障害を参照)1970年代頃から患者数が増加しており、医療費への影響や自己破壊的な行動による生産性の低下などから経済へ与える影響も大きい。主に力動精神医学からの研究がなされているが、生物学的な研究は未だ少ない。治療法は精神療法を主体とし、薬物療法を併用することが多い。なお「境界性」の「境界」は現在では特別な意味を持たない。境界(Borderline)という言葉は、神経症と精神病の境界領域という意味の力動精神医学用語である「境界例 (Borderline Case)」を派生としている。1906年頃、フロイトの弟子である精神分析医のフェダーンは、神経症だ

出典:wikipedia

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