車体傾斜式車両(しゃたいけいしゃしきしゃりょう、tilting rail car)とは、曲線通過時に車体を傾斜させることで、通過速度の向上と乗り心地の改善を図った鉄道車両である。車体傾斜車両とも呼ばれる。車体傾斜の方法としては、自然振り子式、強制車体傾斜式、空気ばねによる車体傾斜など、複数のシステムが存在している。曲線通過時に車両にかかる遠心力を打ち消すため、曲線部分の線路には内側に向けた傾斜(カント)が設けられている。それでも速度が高すぎると乗客が遠心力を感じるために乗り心地を悪化させたり、さらには車両の転覆につながる。そこで、曲線通過時に車両の水平方向にかかる加速度が規定量を超過しないよう、曲率半径とカント量に応じて制限速度が設けられている。列車の最高速度が低かった時代はあまり問題とされなかった曲線区間の制限速度であるが、電車や気動車となり最高速度が向上するとスピードアップのための障害となった。より高速で曲線を走行しようとする場合、増加する遠心力への対策が必要になる。転覆の危険については、カントの傾斜角を増やすことにより遠心力を車両の垂直方向に振り向け、水平方向にかかる加速度を減らす事で低減できる。同時に車両の内装や屋根上を軽くするなどして車重を減らし、重心を下げることでも転倒の危険は低減される。しかし、列車が曲線で停止した時に車体が傾きすぎないようカント量には限度が設けられている。特に曲率半径が小さい場合、カント不足となりやすい。従って、車両(十分に重心が低い車両)によっては「転覆の危険なく通過できる」が「乗り心地の問題」によって曲線通過速度が制限されると言う事態が想定されうる。この時適当な方法で乗客にかかる横方向の加速度を減じることが出来れば、その分曲線通過速度を向上できる。その答えの一つが車体傾斜機構である。(他に全員着席していること等を前提に乗り心地の悪化を妥協する、という選択もありうる。681系や683系で曲線通過速度を高めているのはこの例である。)なお、車体傾斜機構は乗り心地を維持したままスピードを上げるための仕組みであり、軌道や車両にかかる荷重を減らすためのものではない。当然にJR福知山線脱線事故の様な事故を防ぐ事も出来ない。そもそも車体にかかる遠心力は、その速度・質量・曲線半径により一意に定まる。遠心力を減ずる事は不可能(車体の水平方向、垂直方向成分の振り分けをカントにより変えられるだけである)である。そのため車体傾斜車両を用いて高速化を行う場合は、曲線区間で増す遠心力による側圧増大対策などのために、軌道強化が必要となる。軌道強化が実施されていない区間では速度を高められないためカント不足とはならず、車体を傾斜させる必要がなくなり傾斜機構を停止させて運用されることもある。すなわち車体傾斜システムだけでは曲線区間の高速化はできず、車両の低重心化と軌道の強化も行うことで初めて高速化が成される。平坦な場所を走行する幹線では元々曲率半径は大きめに取られているが、山岳路線やローカル線では敷設条件から半径の小さい曲線が小刻みに連続する。根本的な解決には、長大なトンネルを掘って迂回していた区間を直線化するなど大規模な土木工事により軌道の線形を改良することになるが、これは莫大な工事費を要する。そのため、既設軌道の改良による設備投資を抑制しつつ列車の高速化を廉価に実現するため、曲線区間のカントの不足分を車体自体を傾斜させることで補う「振り子式」をはじめとする車体傾斜車両の実用化が検討された。自然振子式は、車体傾斜の回転中心を重心より高い位置に設定し、曲線通過時にかかる超過遠心力を利用して受動的に車体傾斜を行わせる。車体と台車枠を繋ぐ形で取付られたリンク機構や、台車枠上に取付けられたコロまたはベアリングにより、転動板で傾斜できるようにした振子ばりで車体を支持・傾斜させることを利用して車体傾斜の仮想的な回転中心を設定し、傾斜動作を円滑に行えるように設計する例が多いが、自然振り子式にこれらの機構部品が必須なわけではない。後述するスペインのタルゴ・ペンデュラーのようにこうした機構を一切備えず、空気ばねによる枕ばねを車体の天井付近に置き、車体傾斜の回転中心を天井よりも高い位置に設定することで簡潔に自然振子を実現した例も存在する。また、日本で最初に車体傾斜式車両を試験した小田急電鉄の車両も、左右の高い位置の空気ばねを連通して遠心力で受動的に内傾するものだった。自然振子式は比較的シンプルな機構ながら大きな効果が得られ、かつての日本国有鉄道(国鉄)で実用化され、1973年に国鉄381系電車で営業運転を開始した。しかし曲線(特に緩和曲線)を通過する際に、「振り遅れ」や「揺り戻し」と呼ばれる振動が発生して乗り心地を悪化させるため、乗客に不快感を与えたり乗り物酔いを起こしたりすることがある。これは傾斜装置の摩擦等の要因により、一定以上の遠心力がかからないと車体が動かず、あるいは遠心力が一定以下にならないと戻らないために生じるものである。また振り子の動作により車体の重心が曲線の外側に移動するため、車体の重心を下げることで高速走行に悪影響が出ないように設計されている。日本の振子車両では最大傾斜角は5 - 6度となっている。上述の自然振子式の問題は、曲線の外側に向けて傾斜装置の摩擦を打ち消す程度の力を加えておけば解消される。制御付き自然振子式は、自然振子式の機構に空気圧などによる能動的な傾斜制御を追加したものであり、強制車体傾斜方式と同様に、曲線を検知して車体の傾斜角度を制御する装置が必要となる。従って制御を切れば自然振子式としての動作も可能であるが、その場合は自然振子式の問題もそのまま発生する。日本国鉄では自然振り子式での「振り子遅れ」「揺り戻し」などの問題の解決を目指し、1981年から1982年にかけてTR906・TR907・TR908と3種の台車が設計され、アクティブ車体振動制御装置や横圧低減対策などと共に、自然振子式を改良した制御付き自然振子式が開発・搭載された。さらに、これらの開発で得られたデータを元に、1985年にはDT51X・TR236Xと本格量産を念頭に置いた改良型台車が設計されたものの国鉄時代には量産には至らず、国鉄分割民営化後、1989年設計の四国旅客鉄道(JR四国)2000系気動車で初めて実用化の機会を得た。同系の成功により、以後この方式は全てのJRが採用している。実用化された制御付き自然振り子式では、車体の傾斜制御は以下のようにフィードフォワード的に制御される。まず、予め線路上の曲線部ごとのカント等のすべての情報をあらかじめ車上装置へ組み込まれたマイコンに記録しておき、そこで記録された曲線情報は、速度発電機と地上にあるATS地上子を使用して得られる絶対位置情報と速度発電機の検出で得られる速度情報を基に、緩和曲線区間での適切な車体傾斜角度を計算する。そこで得られた傾斜角情報に従い、曲線進入前の緩和曲線区間において空気シリンダーを用いたアクチュエーターにより、あらかじめ能動的に車体を徐々に傾斜させていく。曲線区間通過後の緩和曲線区間においても、同様の手法で車体傾斜を能動的に復元させる。このような制御により、緩和曲線区間で発生する過渡的な振動を抑制するというものである。曲線区間への進入・脱出時にアクチュエーターによって半ば強制的に車体の傾きが制御されるが、補助的な傾斜制御であるため、万が一、この制御装置が正しく作動しない場合でも本来の超過遠心力によって車体は傾き安全性が確保される。日本での制御付き自然振り子式の車体傾斜機構にはコロ式とベアリングガイド式がある。最初に実用化された自然振子式の381系ではコロ式を採用していたが、振子中心を必要に応じて低くできない・装置の小型化が困難・コロを覆う防塵装置が複雑などの欠点があったため、ベアリングガイド式の開発が進められた。開発されたベアリングガイド式は、振子時の摺動抵抗の低減、振子装置の小型化、防塵装置の簡素化などを達成し、JR四国8000系やJR北海道281系の試作車から採用された。なお、この方式の車両は、2001年に投入開始されたキハ187系気動車が営業用の最後発の形式、883系電車の中間車モハ883-1000、サハ883-1000が営業用の最後発の製造車両、キハ285系が最後発の開発車両となっており、以降の形式では後述の「空気ばね車体傾斜方式」に移行している。強制車体傾斜式は曲線通過時にリンクなどで構成された車体傾斜機構を油圧などによって能動的に傾斜させるものである。強制振り子式と呼ばれることもある。曲線通過時に車体に懸かる超過遠心力を車体傾斜に利用するものではないため、必ずしも車体傾斜の回転中心は重心より高くする必要はないが、実用化された強制車体傾斜式車両の多くは、超過遠心力が車体の傾斜に悪影響を与えないよう回転中心を重心と同じか重心より高い位置としている。また強制車体傾斜式の車体傾斜機構を曲線通過時に正しく動作させるためには何らかの方法で曲線進入を検知し、車体傾斜を制御する装置も必要であり、そうした装置の必要がない自然振り子式と比較して構造は複雑になる。強制車体傾斜式は、主に欧米で普及している。初期の強制車体傾斜式では曲線進入を各車に搭載したジャイロスコープや加速度センサーなどで検知し、車体を傾斜させる車両単位のフィードバック制御が多かった。この方法ではいずれの車両も曲線進入後に車体を傾斜させることになるため、必ず振り遅れが発生するという問題があった。またセンサー類の誤作動によって曲線進入を正しく検知できない場合も多く、実用化の障害となっていた。その後電子工学の発達によって最適な傾斜角度の計算や編成単位で車体の傾斜を制御することが可能になり、曲線進入検知の正確性も向上した。振り遅れについては曲線進入を先頭車に搭載したセンサー類で検知し、先頭車からの指令で後続の車両も順次車体を傾けることで先頭車以外の振り遅れを防ぐ制御方法も開発され、現在では編成単位でのフィードバック制御が主流となっている。なお、一部ではフィードフォワード制御も行われており、車上コンピュータに入力した線形データと既に通過した曲線の情報から車輪回転数で現在走行位置を割り出し、次の曲線の位置を予測しセンサー類が曲線を検知する前から車体を傾斜できるものが実用化されている。一般的に最大傾斜角は自然振り子式よりも大きく、イタリアのペンドリーノが8 - 10度、スウェーデンのX2000が6.5度である。特別な車体傾斜機構を用いず、台車上の左右の空気バネの伸縮差によって車体を傾斜させるものである。空気ばねストローク式車体傾斜、空気ばね式車体傾斜、簡易振り子式、あるいは簡易車体傾斜など、様々な呼び方がある。自然振子式、強制振子式の分類では、強制振子式に属する。本格的な振子式車両は、導入に当たって軌道の強化や架線の張り替え工事などの地上設備の改修が必要となる上、車両重量やイニシャルコストの増加という点で不利であった。このため、例えば日本の私鉄での採用例は速達化が至上命令とされる、あるいはJRと乗り入れを行う必要からそれらで採用されているのと準同型の車両を導入する必要がある、といった特殊な事情のある第三セクター鉄道にほぼ限られた。しかし、車体傾斜制御技術そのものはそれ以外の鉄道においても乗り心地を維持しながらの列車の高速化に有用な技術であり、そこで特殊な機構のため保守も含めて高価となる振り子式の代替技術として曲線部での走行時に左右の空気ばねの内圧を制御して適切な角度まで車体を内傾させる、車体傾斜制御装置とよばれるものを装備した強制車体傾斜方式が開発された。空気ばねによる車体傾斜システムは1960年代から構想されていた(小田急電鉄の鉄道車両#車体傾斜制御も参照)が、実現化に先鞭をつけたのは西ドイツ(当時)であった。西ドイツ国鉄が1973年に12両を試作した403型と呼ばれる動力分散方式の高速車両においては、ボルスタレス台車に最大傾斜角2度の車体傾斜機構が搭載された。この車体傾斜システムは試験のみに終わり、403型も量産されることはなかったが、本方式の基本的な機構はほぼ確立されており、低コストで車体傾斜車両を実現する手段として注目を集めた。台車左右の枕ばねに用いられる空気ばねの伸縮差に依存することと、車体傾斜の回転中心が枕ばねと同じ高さであり車体傾斜時に車両限界を支障しやすいため、日本での営業車両による最大傾斜角は2度程度に抑えられており、試験車両では、在来線で傾斜角5.5度(1970年の小田急のフィードバック制御の試験車両)、新幹線では3度 (300X) を実現している。傾斜角は他の方式に比べると小さい。しかし特別な車体傾斜機構を必要とせず、既存の空気ばね台車を若干設計変更してフィードバック制御またはフィードフォワード制御による制御装置を追加するだけで済むため、軽量かつ低コストである上に傾斜角度2度の場合でも基本速度+25 km/h程度(261系気動車、R600 m以上)の曲線通過速度向上が実現でき、費用に対し充分な効果がある。日本での営業車両としては、コストパフォーマンスを重視する私鉄や各JR旅客会社の在来線用新型特急車両などに採用されているほか、新幹線のN700系とE5系、E6系にも採用されている。床面の左右(枕木)方向の移動はなく、垂直方向に発生する荷重変化も少ないため、乗り心地に違和感が無い。2006年3月に北海道旅客鉄道(JR北海道)が発表した。鉄道総合技術研究所、川崎重工業との共同開発。制御付き自然振り子式と、空気ばねによる車体傾斜とを組み合わせた世界初の技術で、従来の振り子式を上回る8度(制御付き自然振り子式6度+空気ばねによる車体傾斜2度)の傾斜角を実現させるもの。単なる制御付き自然振り子式に比べ、乗り心地の向上も図られると言われるが、これは、振り子式による床面の左右移動量を空気ばねによる車体傾斜によってある程度抑えることができるためである(JR北海道のプレスリリースの図も参照)。今後、試作台車をキハ283系気動車1両に取り付け、走行試験(札幌、函館近郊を予定)が2009年を目処に行われるとされていたが、車両限界の関係から、既存のキハ281系・キハ283系へ搭載しての実用化は難しいという。なお、2016年3月の北海道新幹線新青森 - 新函館北斗間開業後には函館 - 札幌間にこのシステムを搭載した車両を投入する予定とされていた。実用化されれば曲線を含む全線での140km/h運転が可能となり函館 - 札幌間で約20分の短縮が見込まれていたが、2011年以降、JR北海道で重大事故や不祥事が相次いだほか、北海道新幹線の開業を控えスピードより安全性を優先する方針に変わったことから、2014年9月10日に搭載車両であるキハ285系気動車の開発中止が量産先行車の落成を目前にして発表された。車体傾斜システムを搭載した車両は、一般的に車体断面積が小さい。これは傾斜時に線路周辺の構造物と干渉しないよう、幅を狭める必要があるためである。他にも下記の通り電車における集電の問題や、気動車における駆動トルク反力の問題やプロペラシャフト継手の伸縮摺動性など、車体傾斜に伴う問題を克服する工夫をしている。架線から取り込んだ電気によって回転する主電動機から発生した運動エネルギーにより走行する電車方式の振り子式車両は、そのままでは車体の傾斜によって架線に接触するパンタグラフの位置が変化する。これを防ぐためには、当該路線を走る電車がすべて振り子式車両であるとの前提で架線の位置を傾斜した車体でのパンタグラフの位置に最適化して架設するか、あるいは振り子式車両側で車体が傾斜してもパンタグラフの位置は変わらないようにする必要がある。車両側でパンタグラフの位置変化を防ぐためには車体の傾きに関わらずレールに近い台車枠と、パンタグラフとの位置関係を固定する必要があり、そのための機構が開発された。日本で実用化されている方式には、ワイヤー式と台車直結式がある。ワイヤー式では傾斜する車体の外周部を迂回させたワイヤーで台車枠と可動式のパンタグラフ基部とを結び、台車直結式では傾斜する車体内部を貫通された支持枠が台車枠とパンタグラフ基部とを結ぶことで、それぞれ車体の傾斜に関係なく軌道面に対するパンタグラフの位置が固定されるようになっている。海外では台車直結式が多いが、スイスのICNなど一部ではパンタグラフを電動で能動傾斜させる方式も実用化されている。また、ディーゼルエンジンの出力を変速の上で駆動に用いるディーゼル方式の振り子式車両でも、単純にディーゼルエンジンを持つ車両に振り子による車体の傾斜機構を加えただけでは、車体の長軸方向に走る推進軸の回転トルクによって車体の傾きが偏るという問題が生じる。これを避けるために、ディーゼルエンジンを2基備えて、推進軸の回転方向が互いに逆向きになるようにして、その相互の反作用によって偏向をキャンセルするといったことが行われる。また、通常の気動車に比べ遙かに大きな変位を吸収しなくてはならなくなる伝達系ジョイントは極めて大きな問題となる。ヨーロッパでは1940年代から開発が行われ、イタリアのフィアット社(鉄道部門はアルストム社に吸収)やスウェーデンのアセア社(鉄道部門はABB、アドトランツを経て現在はボンバルディア・トランスポーテーション社に吸収)が油圧シリンダーによる強制車体傾斜式を開発し、欧州各国に普及した。車体傾斜が動作すると天井付近を回転軸にして床が動く日本の自然振り子とは異なり、床付近を軸に車体上部が振れるため、座っていると頭を持っていかれるような感覚がある。また車体を正面から見ると裾がすぼまっている(極端に言うと上辺が長い台形に見える)のが特徴的。山岳国ゆえ線形の悪い線区が多く、古くから車体傾斜式車両の開発に熱心だった国である。1957年と1967年には車体傾斜式車両の試作車2種類が製作され、さらに1971年には、後のペンドリーノの原型となる試作車Y-0160がフィアット社により完成された。1975年には、初めて営業投入されるETR401が完成した。フィアットの元からの技術に加え、英国鉄道 (BR) が1970年代に開発したAPTの技術も購入して発展した。ペンドリーノの項目も参照。高速新線(ディレッティシマ)の走行も考慮されているが、高速新線でない在来線でも、安価に高速化を実現できるため、イタリア以外にも多くの国(高速新線を建設するほどの需要や経済的余裕がない国)に輸出されている。現在はかつてAPTが試験走行した英国の西海岸線にも導入されている。スペインは当初イタリアに倣った車体傾斜式車両を開発していたが、1980年にタルゴ社が自然振り子式のタルゴ客車を開発して以降は長らく自然振り子式が主流となっていた。現在では強制車体傾斜式も増えている。スウェーデン国内の鉄道は曲線が多いため、1970年代からスウェーデン国鉄とアセア社によって車体傾斜車両が開発されており、国外へも輸出されている。実用化はペンドリーノより遅れ1989年となっている。ドイツは日本同様、車体傾斜式気動車を大量に採用しているが、当初はトラブル続きだった。東海岸のクイーンズランド鉄道 (QR) が1998年からノース・コースト線で、日本の技術を基にした振り子式車両を運行している。山岳国ではあるがイタリアやスペインに比べて投入が遅れており、営業運転開始は最近になってからのことである。フランスは国土が比較的平坦であることと、高速化を高速新線 (TGV) の建設で対応してきたことから試作にとどまっている。日本での車体傾斜は、前述のとおり1961年の小田急電鉄と住友金属工業との共同研究による、空気バネ式自然振り子システムのFS30X型試験用連接台車の開発にはじまる。その後1960年代、小田急電鉄と三菱電機が共同で台車左右の空気ばねの圧力差を利用した上記の空気ばねストローク式に相当する車体傾斜装置の実用化試験を行うが、当時は制御技術そのものが未熟で期待した性能が得られず、実用化は見送られた。これと同等のシステムは、小田急での実験から四半世紀以上が経過した1996年に製作されたJR北海道キハ201系気動車でようやく実用化された。当時の国鉄も1968年にTリンク式自然振り子システムのTR96形台車を装着したトキ15000形貨車により試験を行うが、リンク部の摩擦抵抗による動作遅れや動作不良が確認された。その後は1969年に、リンク式より確実に動作するコロ軸支持式の自然振り子式を採用した591系試験電車が試作され、そこで得られたデータを基に特急形車両の381系電車が量産され、中央西線・紀勢本線・伯備線の順でそれぞれの電化とともに投入された。民営化後はJR四国が鉄道総合技術研究所とともに世界初の制御付き自然振り子式気動車を実用化し、普及に弾みをつけた。その一方で2000年代に入ると加減速性能の向上やコストパフォーマンス面などの点からE257系・287系のように非振り子式車両への投入と回帰が行われているケースもある。速度向上は、国鉄・JRの在来線で半径600mの曲線を基準とした場合、車体傾斜無しの場合は基本の速度が90km/h、特に高性能な車両において最高110km/hとなっているが、初期の自然振り子式車両である381系で最高110km/h、制御付き自然振り子式で最高125km/h、空気ばね車体傾斜式で115km/hとなっている。速度向上率は曲率半径によって異なるほか、カント量や緩和曲線長や走行する線路の規格などの条件によっても変わる。また車両の設計上では上記より速い速度となっているものも幾つか存在する。下記のほか、開発中のフリーゲージトレインへの搭載が検討されている。搭載するシステムの種類などは不明。
出典:wikipedia
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