トロイア戦争にかかわる伝説(トロイアせんそうにかかわるでんせつ)では、トロイア戦争にかかわる伝説について記す。この『イーリアス』以後の章は3世紀頃小アジアのスミュルナで活躍した詩人クィントスによる書物の要約である。クィントスは自分のこの書物に特にタイトルをつけていなかったので、この書物は『タ・メタ・トン・ホメーロン』(ホメーロスの続き)とか『ポスト・ホメリカ』(ホメーロス以後)と呼ばれていた。主な内容は、ペンテシレイアの物語、メムノーンの物語、アキレウスの死、アイアースの死、エウリュピュロスの参戦、ネオプトレモスの参戦、ピロクテーテースの参戦、パリスの死、木馬の計略、トロイアの陥落である。『タ・メタ・トン・ホメーロン』には『イーリアス』以後トロイアが陥落するまでの代表的な物語をほとんど収めているが、ヘレノスがトロイア陥落のための予言をした事についてのみは例外的に触れられていない。このため我々はこのヘレノスに関する物語のみは他の書籍を参考した。(この章の作成には、松田治による『タ・メタ・トン・ホメーロン』の日本語訳『トロイア戦記 講談社学術文庫』を参考にした)。ヘクトール亡き後、アマゾーンの女王ペンテシレイアがトロイアー勢の援軍としてきた。ペンテシレイアはアレースの娘でヒッポリュテーの姉でもある。ペンテシレイアはアキレウスの強さを知らなかったため、トロイアーについたペンテシレイアはトロイアー勢に、アキレウスを倒してアカイア勢の船団に火をつけることを約束した。しかしアンドロマケーは夫であるヘクトールを殺された事でアキレウスの強さを知っていたため、ペンテシレイアの事を思慮の足りない女性であると思うだけであった。戦場に出たペンテシレイアは、名高いアキレウスやディオメーデースと戦うため、アカイアの雑兵を幾人も殺しながら戦場を駆け巡った。ペンテシレイアが奮戦する様子をみたトロイアーの女性達は、ペンテシレイアに倣って戦いに赴こうと武装した。しかしアンテーノールの思慮深い妻テアーノーが彼女達を止めたので事無きを得た。戦場を駆け巡るうちにペンテシレイアはついにアキレウスと大アイアースの二人に出会った。ペンテシレイアは二人に挑発の言葉を投げかけたものの、ペンテシレイアの放言にアカイア勢は嘲笑するだけであった。ペンテシレイアは二人に戦いを挑み、まずアイアースに槍を投げたが、槍はアイアースの脛当てを貫くにとどまった。槍が無駄になった事を悔しがるペンテシレイア。アキレウスはペンテシレイアに一騎討ちを挑み、彼女の胸を傷つけた。ペンテシレイアは動揺し、アキレウスに命乞いすることも考えたがアキレウスはその隙を与えず、ペンテシレイアをその乗馬ごとケイローンから譲り受けた槍で貫いた。ペンテシレイアが死ぬとアキレウスは死者を嬲ろうとまずペンテシレイアの兜を剥いだ。兜の下から現われたペンテシレイアの顔があまりに美しかったため、アキレウスはペンテシレイアを殺した事を後悔し、苦悶した。アキレウスが懊悩する様子を見たテルシーテースは、アキレウスを嘲笑した。これにアキレウスは激怒し、アキレウスはテルシーテースを殴り殺した。テルシーテースはアカイア勢に嫌われていたため、アカイア人達はテルシーテースの死をむしろ喜んだが、テルシーテースと血縁関係にあるディオメーデースのみはアキレウスに対し立腹した。しかしアカイアの兵士達が彼をなだめたため大事には至らなかった。アガメムノーンとメネラーオスが高貴なペンテシレイアに称賛の意を覚えたため、二人はトロイアー人達に彼女の遺体を引き取る事を許可した。ペンテシレイアの死を知ったトロイアー人達は、彼女の死を嘆き、彼女の死体に宝石を乗せて遺体を火で燃やした。そして裕福なラーオメドーンの墓に彼女を共に埋葬した。ヘーラクレースの孫にあたるエウリュピュロスがトロイア側に加勢するため現われた。カルカースは、イーリオンを陥落させるための条件をヘレノスが知っている事を予言した。この頃プリアモスの子である予言者ヘレノスは、10年にわたる戦争に倦んだため山中に隠れ、戦争を避けようとしていた。しかしカルカースの助けを借りたオデュッセウスがいち早くこれを察知し、ヘレノスを捕らえてイーリオンを陥落させる方法を詰問した。するとヘレノスは、イーリオンを陥落させるために必要な三つの条件を言った。その三つとは、ヘーラクレースの弓を手に入れる事、アキレウスの子ネオプトレモスが参戦する事、イーリオンからパラディオンを奪還する事であった。(注:アポロドーロスの『ビブリオテーケー』では、ヘーラクレースの弓を手に入れるという条件の代わりにペロプスの骨をギリシアから持ってくる事を挙げている)。ネオプトレモスの参戦理由についてクィントスは普通知られている伝説とは異なるものを紹介している。普通に知られている伝説は、ヘレノースの予言によりトロイアを陥落させるためにネオプトレモスの参戦が必須であったため、ネオプトレモスが参戦する。しかしクィントスはこの説を採っていない。クィントスの『タ・メタ・トン・ホメーロン』では、ネオプトレモスを参戦させるよう提案したのはカルカースである。『タ・メタ・トン・ホメーロン』でカルカースはネオプトレモスを参戦させる理由として、「彼は我々全員に大いなる光をもたらすはずだ」と述べている。しかしネオプトレモスの参戦がトロイアを陥落させるために必須である、とまではいっていない。ピロクテーテースの参戦は、クィントスにとってもトロイアを陥落のための条件の一つである。「悲痛な戦闘に熟達したピロクテーテースがギリシアの軍団に参戦する前に、イーリオンの都が倒されるのは、運命の望むところではなかった」(松田治訳)事をカルカースが鳥の飛び方を見て知り、内臓占いで確認する。アカイア勢が勝利する三つの神託の一つであるネオプトレモス=ピュロスは、アキレウスの死後にトロイア戦争への参戦を求められる。母デーイダメイアの反対を理由に従軍を拒否していたピュロスは、それでも食い下がるオデュッセウスらに「メネラーオスとヘレネーの娘ヘルミオネーと結婚させてくれるならば」という条件を提示する。これは断られる事を見越しての要求であったが、メネラーオスが承諾したため、ピュロスはしかたなく従軍に同意する。オデュッセウスから父の武具を引き継いだピュロスは義理の祖父ポイニクスより「ネオプトレモス(新しき戦士)」の名を授かり、トロイア勢との戦いで父に負けないほどの活躍を見せる。しかしヘルミオネーは従兄であるオレステースと婚約していたため、彼女を略奪したことがネオプトレモスの死を招くことになる。トロイアーへと向かう途中、彼らはレームノス島へと立ち寄り、ピロクテーテースからヘーラクレースの弓を得ようとした。ピロクテーテースにはアカイア人達にレームノスに置き去りにされて以来、ヘーラクレースの弓で捕らえた鳥獣を食べて生きながらえていた。置き去りにされた恨みがあるピロクテーテースがアカイア人達に快くヘーラクレースの弓を渡すとは思えなかったため、オデュッセウスは策を弄して弓を奪おうと考えた。オデュッセウスは彼らの中で唯一ピロクテーテースと面識のないネオプトレモスをピロクテーテースの元へと派遣し、隙を見て弓を奪おうと企んだ。しかしネオプトレモスはオデュッセウスと共に弓を奪おうと奸計を弄しているうちに、自らの企みを恥じたため、弓を奪おうとするオデュッセウスにむしろ抵抗をした。しかし、突如現われたヘーラクレースの霊魂がピロクテーテースにトロイアー戦争への参戦を命じたため、ピロクテーテースはヘーラクレースの弓を持ってトロイアーへと向かった。トロイアーに到着した後オデュッセウスはパラディオンを奪還するため、ディオメーデースと共に闇に乗じてイーリオンへと潜入した。オデュッセウスは、ディオメーデースの肩車で、予め見つけておいた低みから城壁を越えてイーリオンへと侵入した。オデュッセウスは乞食に姿をやつして、予め内通していたヘレネーに会い、ヘレネーの導きでパラディオンのあるアテーナー女神の神殿を目指した。プリアモスは偽のパラディオンを幾つも作り、パラディオンを奪われるのを阻止しようとしていたが、オデュッセウスはヘレネーから真のパラディオンがどれであるかを知り、パラディオンを持ち帰った。(注:別伝では、後に小アイアースがアテーナー女神の神殿でカッサンドラーを犯した時パラディオンが未だ神殿にあった事になっている)ギリシア勢の陣地につれてこられたピロクテーテースは、アスクレーピオスの子ポダレイリオスの治療を受け、戦闘ができるところまで復活した。ヘーラクレースの鎧を身にまとって出陣したピロクテーテースは、城壁の上から放たれたパリスの弓矢を紙一重でかわすと、ヒドラの毒を塗ったヘーラクレースの弓矢で逆にパリスを射抜く。瀕死の重傷を負ったパリスは、退いてイーデー山に行き、かつての妻オイノーネーに傷の治療を求めるが拒絶され、イーリオスに戻る途中で死んでしまった。オイノーネーは後悔してパリスに追いつこうとするが、すでに死んでしまった後だったので、自殺して果てたという。難攻不落のイーリオン城門を突破するため、オデュッセイアの練った計略にしたがってエペイオスは巨大な木馬を建造した。アカイア軍はオデュッセウスらが乗り込んだ木馬と、トロイア軍に顔の知られていないシノーンを残して近隣のテネドス島へ撤退する。(注:木馬建造の理由が、アカイア軍が勝利するための三つの神託のうち最後の一つ「イーリオンの城門が壊される」を実現するためとされている伝承も存在する)翌朝になってアカイア軍が消えたことに気づいたトロイア軍はシノーンを捉えて詰問するが、シノーンによって「アカイア軍は逃げた。この像はアテナの怒りを鎮めるためのもので、巨大なのはトロイアに木馬が運び込まれたらアカイアが負けると預言されたからだ」と欺かれ、カッサンドラーの警告を無視して自らの手で門を壊し、木馬を運び込んでしまう。夜半、戦勝の祝宴によってトロイア人が酔い潰れた頃を見計らって木馬から抜けだしたオデュッセウスらは、松明で合図を出し、待機していた味方を呼び寄せる。イーリオンへ侵攻したアカイア軍は市内で暴れまわり、一方的な虐殺と略奪が繰り広げられた。メネラーオスはデーイポボスを殺してヘレネーを奪い返し、小アイアスはアテーナーの神殿でカッサンドラーを強姦して神の怒りに触れ、カッサンドラーは略奪品としてアガメムノーンへ献上される。そしてネオプトレモスがヘクトルの子である王子アステュアナクスを城壁から落として殺し、最後にトロイア王プリアモスを討ち取ったことでイーリオンは陥落、ここにトロイアは滅亡した。その後、オデュッセウスの帰国譚『オデュッセイア』、生き延びたアイネイアースが自らの王国を築き上げる『アエネーイス』、アガメムノーンの息子オレステースによる復讐劇『オレステイア』へと伝説は続いていく。
出典:wikipedia
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