掃除機(そうじき)は、ゴミやホコリを容器内に回収する電気製品(清掃用具)である。しばしば電気掃除機(でんきそうじき)ともいう。世界最初の真空掃除機は、1868年にシカゴのアイヴス・マガフィー(Ives W. McGaffey)によって発明された。原理は、手でレバーを引いて負圧を作り出し、その力によってノズルからゴミを吸い取り容器に溜めるという簡単なものであった。彼は1869年6月8日にこの特許を取得し、ボストンにあるカーペット清掃会社に売り込むことに成功した。こうして誕生した世界最初の真空掃除機がシカゴとボストンで発売されたが、当時としては$25もする高価なものであり、ノズルをゴミに当てながらいちいち手でレバーを引くのが面倒という欠点のため、やがて市場から姿を消していった。1876年、ミシガン州グランドラピッズのメルヴィル・ビッセルは妻のためにカーペット上のおが屑を掃除するための掃除機を作った。間もなく、Bissell Carpet Sweepers として製品化。メルヴィルが1889年に亡くなると、妻のアンナが社長となり、当時最も強いビジネスウーマンと呼ばれるようになった。1899年、電動機駆動の掃除機をジョン・サーマンが発明した。Bissell社は今も掃除機を含む掃除用品のメーカーとして存続している。最初の電気式真空掃除機は、1901年にイギリスのヒューバート・セシル・ブース(Hubert Cecil Booth)が発明したもので、布フィルターを備えていた。彼は列車の座席から塵を吹き飛ばす装置のデモンストレーションを目にし、塵を吸い取った方がずっと役立つと考えた。そのアイデアを試すため、彼はレストランの椅子の上にハンカチを広げ、それを自分の口で吸いつけ、さらに塵を吸い付けてみた。塵がハンカチの下面に集まったのを見て、彼はそのアイデアがうまくいくと確信した。ブースは Puffing Billy と名付けた大きな装置を作った。石油を使った内燃機関を動力源としていたが、後に電動機を使うようになった。掃除すべき建物の前まで馬で引いていったという。ブースは British Vacuum Cleaner Company を創業し、その後数十年に渡って発明の改良を行った。家庭用掃除機の市場では後述するフーバー社の製品に負けたが、産業市場に活路を見出し、工場や倉庫で使う業務用機種を生み出していった。ブースの会社は気送管の会社 Quirepace Ltd. の一部門となって存続している。1905年、イングランドのバーミンガムにある Walter Griffiths Manufacturer が人力の掃除機の特許を取得した。これは運搬や収納が容易で、1人の人間(召使など)が鞴のような仕掛けを操作し、それを動力として着脱可能な柔軟なパイプを通してゴミを吸い上げる方式である。パイプの先には様々な形状のノズルを装着できる。形状としては現代の家庭用掃除機によく似ている。ニュージャージー州の発明家 は1903年から1913年までに9件の特許を取得し、アメリカでの電気掃除機産業の基盤を築いた。ブースが自身の発明のアメリカでの特許を申請したのが、Kenneyの競合する特許が成立した後で、ブースがアメリカで特許権を主張できなくなったためである。1919年に創設された Vacuum Cleaner Manufacturers' Association の会員資格は、Kenneyの特許のライセンス供与を受けていることだった。最初の家庭用の電気掃除機は1905年、アメリカのチャップマン・アンド・スキナー社から売り出された。ただしこれはポータブル型ではあったが重さが92ポンド(約40キロ)もあった。そして、1907年、オハイオ州で学校用務員をしていたジェームズ・マーレー・スパングラーは、扇風機と箱と枕カバーを使って電気掃除機を発明した。これがアップライト型掃除機の原型である。スパングラーのデザインは、単に吸引するだけでなく、大きめのゴミを集めるための回転ブラシを備えていた。スパングラーは自身で発明を商業化する資金がなかったため、1908年6月2日に取得した回転ブラシの特許を、彼のいとこの夫W・H・フーバーに売却した。フーバーは革製品などを販売する Hoover Harness and Leather Goods という会社を経営しており、自動車の発明によって売り上げの落ちつつある革製品以外の新商品を求めていた。フーバーは Electric Suction Sweeper Company と社名を変え、1908年に最初の機種 'Model O' を70ドルで発売した。これが初の商業用モデルとなった。欧米ではフーバー社は今でも電気掃除機を含む家庭用掃除用品メーカーとして存続しており、イギリスでは電気掃除機を使うことを "hoover" という動詞で表したりする。1910年、P・A・フィスカーは Nilfisk と名付けた掃除機の特許を取得した。ヨーロッパ初の電気掃除機である。フィスカーの掃除機は17.5kgの重量で、人1人でも何とか使用可能だった。その会社は現在もNilfiskとして運営されている。日本で発売された最初の電気式真空掃除機は、芝浦製作所(東芝の前身)が1931年に発売したアップライト型(ホウキ型と呼ばれていた)だった(写真)。登場からしばらくの間、電気掃除機はぜいたく品だった。しかし第二次世界大戦後、中流階級でも一般的になっていった。特にじゅうたんを多用する西洋で先に一般化した。世界の他の地域では木やタイルや畳の床が一般的で、掃除機を使わなくともほうきや雑巾やモップで十分掃除できたためである。日本では、進駐軍家族団地「ワシントンハイツ」に於ける電化製品メンテンス工事を、特別調達庁(SPB)から請け負っていた東京の太平興業が、米国製品を参考に1949年に自社開発、秋葉原等で販売を開始した。しかし当時の日本家屋のほとんどは畳と板間であり、上記のとおりわざわざ高価な掃除機を購入するまでもなく「はたき」や「箒」でゴミを家の外に掃き出す方が簡単で早かったため、真空掃除機は殆ど普及しなかった。しかし、1960年代に団地(公営団地)ブームが起こると、近所迷惑のため家の外にゴミを掃き出すことが難しくなり、ほうきの簡便さが半減したため、まず掃除機が団地に受け入れられた。また、団地や新しい家には洋室が取り入れられ、(土足ではないのに)絨毯が流行したためほうきでは掃除しにくくなり、絨毯の毛の中に溜まったホコリによってノミが大量発生することも多かった。このため真空掃除機の優位性が高まり、一般家庭に普及し始めた。初期の真空掃除機は、使い捨てではない布フィルターなどが使われていたため、ゴミ捨ての際には大量のホコリが舞い、またフィルターを水洗浄をしないと吸引力が回復しないなどの面倒が多く、敬遠する人も多かった。しかし、紙パック式真空掃除機が1980年の初め頃に発売されると、使い捨ての紙パックフィルターによってこれらの問題が一気に解決されたため、ほとんどの家庭に普及するようになった。1990年代になるとサイクロン式掃除機が増えてきた。その原理は古くから知られており、1928年からサイクロン式掃除機を製造していた会社もある。近年のサイクロン式掃除機は、1985年にイギリスのデザイナージェームズ・ダイソンが工業用粉体分離器にヒントを得たものである。このアイデアに感銘を受けたシルバー精工がライセンスを取得して製造・販売に乗り出すなど、当初は日本で高く評価され、1993年にイギリスで1号機の DC01 が200ポンドで発売された。普通の掃除機の2倍の値段だったため売れないと思われたが、ダイソンは今ではイギリスで最も売れている掃除機ブランドとなった。1997年にはミノルタがロボット型掃除機の「ロボサニタン」を発表。製品化には至らなかったが、メディアで報じられ清掃業者などから反響があった。そして2000年代になると、ルンバなどに代表される製品化された家庭用ロボット掃除機が登場するようになった。その他、健康志向の高まりを受け、排気が従来に比べ綺麗で、空気清浄機代わりにもなる掃除機や、風圧で本体が宙に浮く掃除機なども登場している。ほうきなど、他の清掃用具と比較した際の特徴は以下の通り。ダストピックアップ率とは、IEC(国際電気標準会議)が定めた主としてカーペットの清掃能力を表す指標であり、標準として定められたカーペット面に基準量のスタンダードダストを器具で散布しローラーで押し広げた後、一定の速度・動作・回数で掃除機で吸引し、回収できたスタンダードダストの重量の割合をパーセントで表したものである。ただし、ダストピックアップ率の高い掃除機が、日本の畳やフローリングで必ずしも高い清掃能力を発揮する訳ではない。このため、ダストピックアップ率がJISでは「じんあい除去能力」と訳され、規定もされているが、JISによる性能表示義務がなく、一般市場では使われていない。なお、JIS C 9108の「C.1.3.2 試験用じゅうたんの前処理」には次のような注記がある。吸込仕事率とは、空気力学的動力の最大値、すなわち掃除機の空気を吸い込む能力を表すもので、一般にいわれる吸引力のことである。車に例えれば馬力に当たる。ただし、掃除機の清掃能力はノズルの構造にも大きく依存するので、吸込仕事率に清掃能力が比例するとは限らない。このため、掃除機のメーカーは、吸込仕事率を高める研究だけでなく、清掃能力の高い床用ノズルの開発にも余念がない。一般的に、吸込仕事率の高い掃除機の方が、1つのノズルで様々な種類・大きさのゴミや、様々な床に対応することが容易になる。吸込仕事率は、掃除機の本体の吸引パイプに測定装置を接続し、バルブを操作して風量と真空度を変えながら、風量×真空度が最大になる値を求めたもので、単位はW(ワット)である(詳細はJIS C 9108「付属書A(規定)吸込仕事率の測定方法」参照)。吸込仕事率は次の計算式で算出される。吸込仕事率はJISによって性能表示が義務付けられている。騒音値とは、無響室において最大風量で運転している掃除機本体から1m離れた場所の音量を表したものであり、ノズルを床から10cm上方に浮かせて固定し、回転ブラシを止めた状態で測定され、単位はdB(デシベル)である(詳細はJIS C 9801 の「付属書B(規定)騒音測定方法」参照)。なお、JISでは家庭用掃除機の騒音は次の値以下でなければならないと規定されている。参考として、騒音値の指標になる環境の一覧を示す。騒音値はユーザーに取って分かりやすく、しかも有用な指標だが、JISによる性能表示の義務付けがないため、騒音値が大きい製品などでは公表されないことがある。メーカーにより、ノズル、ヘッド、ブラシなどとも呼ばれている。ほとんどの床移動型家庭用掃除機には床用吸込口、棚用吸込口、すきま用吸込口が標準で付属する。吸引されたゴミを、袋状になった紙パックで濾し取る方式。紙パックがゴミ袋とフィルターの役割を兼ねているため、面倒なフィルター掃除が不要であり、ゴミ捨ては紙パックごと捨てればよいという手軽さと清潔さがある。また、紙パック内でゴミが自然に圧縮されるので、ゴミ捨ての回数が少なくてすむ長所がある。デメリットは、ゴミが溜まってくると内面に付着した微粒子によって吸込力が落ちるという欠点が指摘されているが、自動で紙パックを叩くなどしてホコリを落とし、ほぼ満杯まで吸引力を維持できる製品が出ている。紙パックは使い捨てのため購入しなければならず、このランニングコストや、取付部の構造が特殊な専用品の場合その供給に製品寿命が左右される、常に予備を購入しておかなければならない煩わしさがある。しかし、これはサイクロン方式の頻繁なゴミ捨てや、面倒なフィルターの水洗浄と対比されるべきものである。なお、近年は専用の紙パックを購入せずともティッシュペーパーで代用できるタイプのものもある。本来、サイクロンとは1886年にアメリカのモース(M.O.Morse)によって発明された粉体分離方式を指す言葉で、原理はコーン状の筒の中で空気を回転させ、遠心力によって空気と粉体を分離するものである。この方式を1983年にイギリス人の発明家ジェームズ・ダイソンが掃除機に応用した。以来、ダイソンの掃除機の商業的な成功の影響で、サイクロン方式といえば、まずダイソン社の掃除機のことであるとされることが多くなった。ダイソンの掃除機は遠心分離だけで埃をほぼ完璧に分離してきれいな空気を排出するとされる。わずかに取りこぼした埃を後段のフィルターで濾し取る仕組みであるから、フィルターの目詰まりによる吸引力の低下は紙パック方式よりも緩慢であるとされる(ダイソン社の主張)。2006年に行われた日本の国民生活センターのテストでは、ダイソンのサイクロン掃除機はダイソン社の主張通り紙パック式よりも吸引力の低下は緩慢であったが、ダイソン以外のサイクロン掃除機は「掃除を重ねて行くと吸込力が紙パックと比べて低下しやすい」とのテスト結果が出ている。フィルターの水洗浄は、西洋の環境で使う場合は月に一度、日本の環境で使うならばおよそ半年に1度で良いとされる(ダイソン社の主張)。この方式の掃除機の欠点は効率が悪いことであり、吸込仕事率は紙パック式掃除機のおよそ1/3である、とされてきた。しかし、2015年8月にパナソニックが、ダイソンと同等の粉体分離方式の MC-SR530G / MC-SR33G を投入したが、従来の日本の紙パック掃除機の水準の吸引仕事率(200Wだが、従来日本においては1000Wが標準とされてきた消費電力の方を720Wに低減させている)を実現している。なお、この2機種の発売により、ダイソンの粉体分離方式の独占は終わっている。なお、パナソニックも排気フィルター清掃間隔は半年から1年程度としている。一方、モースのサイクロン粉体分離方式を使わない掃除機も、サイクロン方式と呼ばれることが多いが、原理としては同様に吸い込んだ空気を回転させて、遠心力で大きなゴミや砂などを分離させているので、サイクロンの名が付いても不思議ではない。この排気にはまだ微粒状のホコリが多量に含まれているため、別途フィルターで濾過する。多くは蛇腹になったフィルターを使用するなどして効率を上げており、吸込仕事率は紙パック方式とほとんど変わらないものもある。欠点は、フィルターの目詰まりによる吸込仕事率の低下であるが、自動的にフィルターのチリを叩き落として、吸込仕事率を落ちにくくしている機種も多い。こまめにフィルターの水洗浄をすれば、吸込仕事率の低下は避けられる。一般にサイクロン掃除機は、紙パックを必要としないという点では経済的であるが、頻繁なゴミ捨てと、ゴミ捨ての時にホコリが舞うという欠点がある。また、定期的なフィルターの水洗浄では、完全に乾くまで待たねばならず、その間掃除をすることができない欠点もある。排気を吸込口へ戻し、ノズルから吐き出すことによってホコリを効率よく浮き上がらせ、再び吸引するユニークな方式。このためホースが2重構造になっており、内側を吸気、外側を排気が流れる。排気が本体と吸込口を循環するため、総排気量が非常に少なく、排気によるホコリの舞い上げが少ないメリットがある。また、モーター室が密閉に近い構造になるため運転音が静かになる。ただし、本体からもモーター冷却のためのわずかな排気を排出している。モーター冷却性能が劣ることから消費電力を抑える必要があり、結果として吸込仕事率は小さい。1999年にサンヨーから世界で初めて発売されたが、2009年5月現在、同社のラインナップにこの方式を採用している製品はない。吸水掃除機は、水分を含んだ物品の吸引を可能とした真空掃除機である。水分を含んだものの回収や、液体の回収が効率的に可能である。容器に入れた数リットルの水をくぐらせる吸引掃除機も存在する。洗剤等の界面活性剤を混ぜた水フィルターを透過する事で花粉等の微粒子を取り除く事ができる。内陸部で湿度の低い日本国外では普及しているが、水フィルターを通す時に排気中の湿度が上昇するため湿度の高い日本では季節によっては使用が適さない場合もある。また泡の中に浮遊する微細な塵は水を通過してしまうため、完全な埃の除去には水とは別途フィルターが必要となる。電源コードには赤い印と黄色い印が付けられているが、これはJISで定められたもので赤と黄色の印の間隔は800ミリメートルと規定されている。各社の理由は異なるが黄色は「この線まで十分引き出して使用する」という目印になっている。1985年の科学万博では芙蓉ロボットシアターでメチルアルコールを燃料とする内燃機関を搭載したクリーナーシャークが展示された。家庭用には2001年11月にエレクトロラックス社のトリロバイト(日本では2002年9月5日発売)、2002年9月にiRobot社のルンバ(日本では2004年発売)が発売された。日本企業では2007年12月にバンダイの子会社であるシー・シー・ピー社が「SO-Zi プレミアム」の販売を開始し、2011年9月にはその機能向上版の「ラクリート」が代替機種として発売された。又2009年11月にツカモトエイム社がロボットクリーナー「AIM-ROBO1」を販売開始している。製品化はされなかったがパナソニックは2002年3月、日立は2003年5月に家庭用ロボット掃除機の試作機を発表した。業務用にはミノルタが1997年に「ロボサニタン」を発表したが製品化は見送られた。しかしその技術はフィグラ社に引き継がれ、2009年に「エフロボクリーン」として製品化された。富士重工と住友商事も2001年に「ロボットによるビルの清掃システム」を実用化し、2006年には清掃性能や安全性、コストメリット等が認められ「今年のロボット大賞2006 経済産業大臣賞」を受賞している。サイクロン方式、紙パック方式とも、上位モデルにはHEPAフィルターやULPAフィルターなどを備えクリーンな排気を謳う製品が。また、静粛性もアピールポイントとなり、モーターの運転音がほとんどしない機種も。サイクロン方式はゴミ捨てやフィルターのメンテナンスを厭わないユーザーに人気があり、逆に、紙パック方式は掃除を簡単に済ませたいユーザーに人気がある。一般にサイクロン方式は、同クラスの紙パック方式よりも価格が高めに設定されていることが。現在は、サイクロン方式と紙パック方式が共存している状態である。
出典:wikipedia
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