社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし)は、労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行等を行い、また企業を経営して行く上での労務管理や社会保険に関する相談・指導を行う事を職業とする為の資格、およびそれを職業とする者をいう。略称として「社労士」や「労務士」とも呼ばれる。ローマ字で社会保険(Syakaihoken)労務士(Roumushi)の各頭文字を取って「SR」とも置き換えられる。社会保険労務士の徽章は、菊の花弁の中央にSRの文字が付されている。素材は、純銀の台座に純金貼りが施されており、中央SR部はプラチナ製。主務官庁は厚生労働省で、もともと旧厚生省と旧労働省の共管とされていた。社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする(第2条)。 ただし、これらの事務を行うことが他の法律において制限されている事務並びに労働社会保険諸法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用についてこれらの給付を担当する者のなす請求に関する事務(レセプトの作成等)は含まれない。1~7の業務は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が原則として他人の求めに応じて報酬を得て行ってはならない。さらに、3~5の業務(紛争解決手続代理業務)については、特定社会保険労務士でなければ行うことができない。なお8の業務は業務制限の対象外であるので、社会保険労務士でない者であっても、他人の求めに応じ報酬を得て業として行うことができる(第27条)。例えば、具体的な個別労働関係紛争について、労働者があっせん等によって紛争を解決する方針を固める以前にあっせん制度等を説明することは、8に該当するので特定社会保険労務士でなくても行えるが、あっせん等により紛争を解決する方針を固めた以降に行われる相談は、紛争解決手続代理業務に該当するので、たとえ受任前であっても特定社会保険労務士のみが行うことができる(平成19年3月26日基発0326009号・庁文発0326011号)。社会保険労務士の業務は、主として企業との顧問契約にある。企業の人事・労務諸問題に関する相談、社会保険・労働保険諸手続きの事務代理・提出代行、給与計算などが主軸となる。又、ファイナンシャル・プランナー資格やDCプランナー、DCアドバイザー資格、モーゲージプランナー資格を併せ持ち、年金・資産運用に関するコンサルタント業を主とする実務家や税理士、中小企業診断士、行政書士といった他士業資格を保有した上で多角的な活動を行う実務家もいる。最近では、労働トラブルの増加に伴い「個別労働紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、当事者を代理して具体的な解決策を提案するなど労使双方の諍いの解決に尽力する社会保険労務士(裁判外紛争解決手続制度の代理業務を行う場合は、特定社会保険労務士としての付記が必要)も増えている。1980年8月末日の時点で行政書士であった者は、社会保険労務士の独占業務に関わる書類の作成を行うことが認められるが、提出代行(行政機関への提出を代理すること)及び事務代理(書面の内容を自らの判断で修正すること)は認められておらず、使者(行政契約の場合は代理もあり)として提出できるのみに留まる。また、特定社会保険労務士に認められる裁判外紛争解決手続業務に伴うあっせん代理も認められていない。税理士の行う付随業務(租税債務の確定に必要な社会保険労務士事務)についても、提出代行、事務代理並びあっせん代理は認められていない。なお、アウトソーシング等を行う法人組織、経営コンサルティング会社等の社会保険労務士無資格者や、労務管理士などと称する社会保険労務士でない者が社会保険労務士業務を行えば、社会保険労務士法違反となる(第27条)。また、有資格者従業員の社会保険労務士開業登録をもって上記職務を行うアウトソーシング会社も見受けられるが、実態として指揮命令関係等が存在する場合は、「非社労士との提携の禁止」として、当該社労士は社会保険労務士法違反となる(第23条の2)。社会保険労務士は、各人の状況に応じて下記の通り区分けされ、それに応じた登録を行う。個人で事務所を開き(社会保険労務士法人所属者を含む)、多企業からの依頼に応え、人事・労務管理の専門家として、従業員の採用から退職に至るまでの労働・社会保険に関する諸問題を処理し、更には個人的な年金等の相談に業として応じることができる。主に多くの中小企業、零細企業を対象として多角的に人事・労務管理業務を行う。開業社会保険労務士は、厚生労働大臣の許可を受けた場合でなければ、2以上の事務所を設けてはならない(第18条)。業務の性質上、社会保険労務士本人が事務処理を行わなければならないためである。また業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、依頼を受けた年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所及び氏名又は名称その他厚生労働大臣が定める事項を記載しなければならず、この帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければならない(第19条)。正当な理由がなければ依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く)を拒んではならない(第20条)。企業や団体に属し、当該企業内に限定された社会保険労務士としての仕事を行う。大企業の管理部門に所属し、企業内での人事・労務管理に専業従事する者が多い。また、勤務社会保険労務士が、特定社会保険労務士として付記を受けた場合も、所属する企業に関連した裁判外紛争解決手続業務を行うに留まる。勤務士業登録が正式に資格として認められているのは、士業の中でも社会保険労務士だけであり、資格としての存在意義が企業経営と密接に関係していることの裏付けであるとも言うことができる。企業に所属しているものの営業、経理、専門職等、社会保険労務士業務と直接関わらない職種に従事している者や、専業主婦、何れの企業・団体にも所属しないフリーランスを対象としたものが「その他登録」である。なお、全国社会保険労務士会連合会においては、「勤務」と「その他」を合わせて「勤務等」という表記方法を用いている。業務を組織的に行うため、社会保険労務士が共同し、社会保険労務士法人を設立できる(第25条の6以下)。社会保険労務士法人は、その多くの規定を旧商法・会社法の合名会社を見本とし、社員(出資者である無限責任社員のこと)たる社会保険労務士すべてが無限責任を負い、定款に特段の定めがない限り全社員が代表権・業務執行権を有する。社員は、個人で別に社会保険労務士の事務所を開設できない。また社会保険労務士でない者は社員となることはできない。2016年(平成28年)1月1日より、社員一名のいわゆる一人法人の設立が可能となった。社会保険労務士法人は、その名称中に「社会保険労務士法人」という文字を入れなければならない。社会保険労務士であっても、以下のものは社会保険労務士法人の社員となることはできない(第25条の8)。社会保険労務士法人は、社会保険労務士としての職務に加え、定款で定めるところにより、以下の業務を行うことができる(第25条の9)。 社会保険労務士法人を設立するには、その社員になろうとする社会保険労務士が、共同して定款を定めなければならず、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する(第25条の10~第25条の12)。成立したときは、成立の日から2週間以内にその旨を主たる事務所の所在地の社会保険労務士会を経由して全国社会保険労務士会連合会に届出なければならない。定款には、少なくとも以下に掲げる事項を記載しなければならない。 社会保険労務士法人の事務所には、その事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている社会保険労務士会の会員である社員を常駐させなければならない(第25条の16)。例年、8月の第4日曜日に実施される。試験の管轄は、かつて国であったが、現在は厚生労働大臣の委託を受けて全国社会保険労務士会連合会(連合会)が管轄し、社会保険労務士試験センターが試験事務(合格の決定に関する事務を除く)を行っている。次のいずれかに該当する者は、当然に社会保険労務士となる資格を有しない(第5条)。 次の1~4に該当する者は、社会保険労務士の登録を受けることができない(第14条の7)。また、登録したものの次の4~6に該当するに至った場合は、連合会は当該登録を取消すことができる(第14条の9)。これらの処分は連合会に置かれた資格審査会の議決に基づいてしなければならない。また、連合会が登録を拒否しようとする場合においては、あらかじめ申請者にその旨を通知して弁明の機会を与えなければならない。社会保険労務士に対する懲戒処分は、「戒告」「1年以内の業務停止」「失格処分」の3種類である(第25条)。厚生労働大臣は、社会保険労務士が、故意に、真正の事実に反して申請書等の作成、事務代理もしくは紛争解決手続代理業務を行ったとき、又は不正行為の指示等を行ったときは、1年以内の業務停止又は失格処分をすることができる。社会保険労務士が、相当の注意を怠り、これらの行為をしたときは、戒告または1年以内の業務停止の処分をすることができる(第25条の2)。厚生労働大臣は、社会保険労務士が、申請書等の添付書面もしくは付記に虚偽の記載をしたとき、社会保険労務士法及びこれに基づく命令もしくは労働社会保険諸法令の規定に違反したとき、又は社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったときには、いずれかの懲戒処分をすることができる(第25条の3)。社会保険労務士会又は連合会は、社会保険労務士会の会員について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは、厚生労働大臣に対し、当該会員の氏名及び事業所の所在地並びにその行為又は事実を通知しなければならない。また、何人も、社会保険労務士について懲戒事由に該当する行為又は事実があると認めたときは、厚生労働大臣に対し、当該社会保険労務士の氏名及びその行為又は事実を通知し、適切な措置を取るべきことを求めることができる(第25条の3の2)。厚生労働大臣は、いずれかの懲戒処分をしようとするときは、公開の審理による聴聞を行わなければならない(第25条の4)。懲戒処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、その理由を付記した書面により当該社会保険労務士に通知するとともに、官報をもって公告しなければならない(第25条の5)。戦後、いわゆる労働三法が制定され、労働者の権利が法的権利となる。さらに経済成長と相まって、急速に労使間の対立やストライキが頻発する。また、特に1960年代における日本経済の急激な成長により、税収や企業からの社会保険料が増加し、厚生年金・健康保険・労災保険・雇用保険も発展する。しかし、補償額の高度化・制度の複雑化を伴い、煩雑な社会保険の仕組みと申請・給付に係る事務手続きにより中小企業等では対応が困難となる。これらに対応する専門家の必要性から、人事・労務・総務部門の業務を行う職業が発生した。当初、これらの請負業務を合法的に行いうる有資格者は行政書士であったが、狭義総務を除く人事・労務分野のより専門的な知識を持った人材が必要とされた。そこで1968年、社会保険労務士法が議員立法により制定された。制度発足時の経過措置として、行政書士が試験なく特認として社会保険労務士資格を取得し、およそ9,000名が社会保険労務士となる。2007年4月の司法制度改革で、裁判外紛争解決手続制度の代理権が認められる。2009年のリクルートの調査では取りたい資格の10位、ニーズが高まりそうな仕事の9位である。
出典:wikipedia
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