パーソナル無線(パーソナルむせん)は、900MHz帯を利用する簡易無線の一種である。総務省令電波法施行規則第9条の3第1号に「900MHz帯の周波数の電波を使用し、かつ、法第4条第2号の適合表示無線設備のみを使用する簡易無線局」と規定している。無線局免許手続規則第2条の2にも同様の規定がある。マルチチャネルアクセス無線(MCA無線)技術を使用しており、チャンネルは158(当初は80)、空中線電力は最大5Wと無線従事者が不要な音声通信用免許局としては最大で、第四級アマチュア無線技士の最大20W(1996年(平成8年)までは50MHz帯以上は最大10W)と比べても遜色は無く、変調方式はFMで、雑音の少ない明瞭な交信ができる。ちなみに市民ラジオは、27MHz帯、最大8チャンネル、最大500mW、AMである。簡易無線であるので各種の事業に使用でき、不特定の相手との交信というアマチュア無線類似の使用もできる。利用にあたっては、総合通信局(沖縄総合通信事務所を含む。以下同じ。)から無線局免許状を取得し、更に無線機に同梱されているROMカートリッジ(無線設備規則にいう「呼出名称記憶装置」)を情報通信振興会(旧称、電波振興会、電気通信振興会)に提出し、有償で必要な情報を書き込んでもらわねばならない。このROMカートリッジを無線機に装着しなければ送信できず、一度無線機に装着すると取り外せない構造になっており、情報の不正な改竄を防いでいる。つまり、それぞれの無線機には初めて申請した際の呼出名称(10桁の数字)が固定され、所有者(免許人)が変わっても呼出名称は変わらない。注 新規開設・再免許、チャンネル数増加となる機種変更は不可。チャンネル数が同数以下の機種変更と免許状再交付のみ可。開設の条件などとされている。無線局の免許人として外国籍の者が原則として排除されることは、電波法第5条第1項に欠格事由として規定されているが、第2項に例外が列挙され第7号に「自動車その他の陸上を移動するものに開設し、若しくは携帯して使用するために開設する無線局又はこれらの無線局若しくは携帯して使用するための受信設備と通信を行うために陸上に開設する移動しない無線局」があるので、外国人や外国の会社・団体でも開局できる。無線機特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則による適合表示無線設備でなければならない。電波の型式、周波数、最大空中線電力呼出名称総合通信局別に以下の中から指定される。無線機を変更する場合は新たな呼出名称が指定されるが、廃止された局で使用していた無線機を使用して新たに開設する場合は、過去に指定されていた呼出名称が指定されるので、免許申請書には呼出名称を申請書類に記入しなければならない。種別コード無線局の種別コードはPA有効期限免許の有効期限まで。#沿革を参照。無線機には、「群番号」と呼ばれる5桁数字(後述の通り158チャンネル機は1英字の特定群番号も可)の設定を要し、同じ群番号の局の間でのみ通信が可能になる。アマチュア無線における不特定の局に対するCQ呼出しに相当する群番号は00000である。通話用チャンネルは自動的に設定され、特定の周波数を占有できない。無資格で運用するために数々の法規制の緩和事項や制限事項がある。緩和事項制限事項アマチュア無線と比較すると無線設備規則により、などである。1970年代から急速に増加し社会問題化してきた大出力、多チャンネルの不法CBを排除するため、1981年(昭和56年)5月の電波法一部改正(1983年(昭和58年)1月施行)により、罰則の対象が免許を受けないで無線局を「運用した者」から「開設した者」と広がったが、一方で不法CBの増加は、モータリゼーションの進展に伴い、車載可能な近距離用無線電話システムに対する大きなニーズが生じていることを示すものであり、このようなニーズに対応するためにパーソナル無線は法制化された。1982年12月に登場し、初期にはアマチュア無線機メーカーのほかにも、大手家電メーカーや音響メーカーが参入し多くの機種が発売された。不法CBから移行してきたトラックなどに取り付けられることが多かったほか、映画『メイン・テーマ』(1984年(昭和59年)公開)でパーソナル無線が使用され一部の若者の間でも流行した。大手家電メーカー製品の場合、設計や製造は傘下の業務無線機メーカーまたは業務無線機担当部署があたったため、民生品にもかかわらず、内部構成はアマチュア無線機ではなく業務用無線機の流れをくむ、受信感度よりも信頼性を重視したものであった。また、無線機やアンテナのメーカーが日本電子機械工業会(現 電子情報技術産業協会)傘下に任意団体パーソナル無線普及促進協議会(略称はPRPC)を設立し、自主規制としてアンテナの頂部を橙色にし「オレンジトップ」と称していた。1986年(昭和61年)には、チャンネル数が80から158に倍増し、PRPC自主規格による特定群番号が設定されるなどより利便性が高められた。更に1987年(昭和62年)には、電波システム開発センター(略称はRCR、現 電波産業会)が、標準規格「RCR STD-11 900MHz帯簡易無線局の無線設備(パーソナル無線)」を策定した。しかし、高度な通信性能の割りにチャンネル数が少なく都市部で混信が頻発した事、違法局グループが違法改造機で特定チャンネルを独占し、グループ以外の局を排除・妨害した事などの結果、自由な利用が困難となっていった。また、アマチュア無線機と比較すると高価で、無線機やアンテナに厳しい制限事項(#運用を参照)があり使用上の工夫がやりにくかった。さらに、ハンディ機の不振(少機種あったが、アマチュア無線機と比較して大形の筐体と重量、大消費電力のために、操作性が劣っていた。これは900MHz帯という当時としては高い周波数を利用することによる。)や、1993年(平成5年)より電波利用料が徴収されるようになった事など様々な原因により利用者が減少した結果、無線機の売れ行きも減少し、1990年代に入るとほとんどのメーカーは市場から撤退した。その後、違法競走型暴走族などが連絡用に中古機を買って運用する例もあったものの急激な減少に歯止めはかからなかった。21世紀に入ると携帯電話の急速な普及に伴い、周波数の割当て変更が提起され、2012年(平成24年)から周波数を共用、2015年(平成27年)11月30日が使用期限とされた。但し、後述のように使用期限決定以前の免許については、その有効期限まで有効とされる。登場の一年ほど後から、利用者には分からないはずのチャンネルを表示する「チャンネル表示」、任意のチャンネルを指定できる「チャンネル固定」、ROM無しで送信できる「ROM無し送信」、送受信周波数範囲を拡大しパーソナル無線周波数帯を逸脱する「多チャンネル化」など、俗に「スペシャル機」などと呼ばれる違法改造機(パーソナル無線機の改造は電波法違反である。)による、特定チャンネルの占有やパーソナル無線周波数帯の上下で運用する各種の業務無線に妨害を与えるオフバンド運用、また出力を増幅して空中線電力を増大する装置(パワー(ブースター)アンプ)を接続し、不法CB無線と同様に幹線道路沿線のテレビ・ラジオをはじめ店舗の自動ドアの開閉などにも影響を与えるなどの違法無線局が問題となっていった。パーソナル無線機の改造には、ソフトウエアのソースコード、メモリマップ、コントロール仕様などの情報やICEなどの開発システムが必須である。初期の機種は一般的なEPROMが使われていた為、改変したデータをROMに書き込んで挿し換えるだけもしくは簡単な変更で改造が出来た。その後、改造対策として使われるようになった、一般には手に入りにくい面実装ROM内蔵CPUも、改変したデータが書き込まれたCPUと交換して改造されていた。樹脂などで固められた基板は樹脂を溶かしたり、基板ごと交換する荒技も存在した。出力を増大するパワーアンプはUHF帯ゆえに比較的高い技術が必要であった。当時のトランジスタでは単品では50W程度が限度だったため、これを超える出力の物は複数のアンプの出力を合成して100~200Wの出力を得ており、200W以上の物はほとんどなかったようである。1992年(平成4年)より、パーソナル無線の周波数帯を逸脱して運用する違法局に対して警告するため、電監規正局が免許されている。種別は特別業務の局、免許人は総務省、通信の相手方は「本無線局の発射する周波数の電波が受信可能な受信設備」、空中線電力は25~100Wで、無線機に接続したボイスレコーダーに録音された内容を一方的に送信する同報通信を行うものである。電監規正局の操作は、第三級陸上特殊無線技士(50Wを超えるものは第二級陸上無線技術士)以上の無線従事者またはその監督下でなければ行うことは出来ない。1994年(平成6年)には、違法運用する無線局は特定不法開設局と、無線機は不法に使用される可能性があるとして指定無線設備とされ、販売業者に対し購入者に免許取得を告知する義務が課された。経緯2005年(平成17年)12月に無線設備規則が改正され、スプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準が変更された。経過措置として旧基準の適合表示無線設備による免許申請や変更申請が可能な期間は「平成19年11月30日」(後に「平成29年11月30日」に延長)まで、既に免許されている無線局が再免許される期間は「平成34年11月30日」までとされた。施行と同時に「RCR STD-11」も改定されたが、すでに全部の無線機メーカーが市場から撤退し、新基準による無線機を開発・製造するメーカーも無くなっていた。2006年(平成18年)には、パーソナル無線廃止が検討されていることが公表され、廃止への方向付けがなされた。パーソナル無線を代替する無線システムも検討され、2008年(平成20年)に、400MHz帯簡易無線デジタル化の為、告示周波数割当計画が改正され、その一環として351MHz帯に計35チャンネルが割り当てられ、登録局制度の導入による無線機のレンタル、レジャー目的や上空での使用、不特定の相手との交信が認められ、2009年(平成21年)から登録が開始された。2011年(平成23年)には、局数の減少及び周波数逼迫により2012年(平成24年)から携帯電話にこの周波数帯を割り当てる予定であることから、廃止を前倒しすることが提起され、8月30日には免許の有効期間が5年間に短縮、12月には周波数割当計画改正により14日より使用期限が「平成27年11月30日」とされ、以後発給される免許の有効期限も同日となった。経過措置使用期限の決定に伴い、パーソナル無線が特定周波数終了業務の対象となった。これは、周波数割当変更の公示日以前、つまり使用期限決定以前に免許された無線局に対し、廃止することを条件に登録周波数終了対策機関が給付金を交付するものである。2012年(平成24年)2月には登録周波数終了対策機関に協和エクシオが指定され、給付要領が認可された。給付金額は、電波利用料を原資に特定周波数変更対策業務及び特定周波数終了対策業務に関する規則による式に告示された額で次のように計算される。また、免許の有効期間が5年以内のものは、廃止と同時に音声通信用簡易無線免許局への変更もできるとされた。対象となるのは事実上、「平成23年8月31日」以降に複数局を新規開設・再免許した法人・団体(個人事業者を含む。)に限定される。一方、この周波数帯を利用する事業者はソフトバンクモバイル(現 ソフトバンク)に決定し、7月25日からプラチナバンドという名称で携帯電話サービスを開始した。これにより、パーソナル無線に混信が起きることが不可避となった。ただ、携帯電話はデジタル変調なのでアナログ変調のパーソナル無線と相互に傍受されることはない。同時に改造機や免許の有効期限切れのパーソナル無線機の使用は、電波法第110条第1号の不法開設の「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の罪に問われることはもちろんであるが、携帯電話通信を妨害することは同法第108条の2第1項の重要無線通信妨害として「5年以下の懲役又は250万円以下の罰金」の罪としてより重く罰せられることがある。なお同条第2項により未遂罪も罰則の対象である。2015年(平成27年)10月30日に給付金交付の受付けは終了して、11月30日の使用期限を迎え「平成23年12月14日」以降に免許された局が一斉に廃局となった。この日現在の局数は7,755局であった。使用期限後使用期限後の2015年12月1日からは、新規開設・再免許はできないが免許の有効期限が「平成27年12月1日」以降の既設局はその期限まで利用できる。但しチャンネル数を増やす変更はできないとされた。電波法では、免許を有効期限前に取り消すことは第6章監督によるが、パーソナル無線については、第75条により免許人が欠格事項に該当する場合か、第76条第4項により電波法令に反した運用をした場合のみしかないので、これ以外に免許を取り消すには電波法改正を要するからである。使用期限直後の12月5日現在の局数は6,833局で11月30日に有効期限が満了したのは約900局とみられる。無線機メーカーアンテナメーカー不法CBが流行した時代に山梨県にあるNASA通信は「NASAパーソナル無線」と称した37MHz帯のAM無線機を製造販売していたが、これは本項目とは関係ない。同機を送信できる状態で所持しているだけで電波法違反に問われる。NASA通信は「小電力なので違法ではない、緊急時には同一周波数を使用している自衛隊に協力出来る」と強弁していたが各地での裁判ではすべて敗訴している。
出典:wikipedia
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