FM音源(エフエムおんげん)は、Frequency Modulation(周波数変調)を応用する音色合成方式を用いた音源。を中心としてスタンフォード大学のCCRMA(Center for Computer Research in Music and Acoustics)で開発されたものを、日本楽器製造(現・ヤマハ)がライセンスを受け実用化した。倍音減算方式のアナログシンセサイザーにはない複雑な倍音成分を持つ波形を生成することが可能である。また、有限個のパラメーターに基いて波形をリアルタイムに生成するため、PCM音源と比べ生楽器の再現性は低いが、数学的には発振機構が二重振り子のような非線形演算に基づいているため、演奏に合わせて波形生成のパラメーターを変化させることにより倍音成分が大きく変化し、音色を劇的に変化させることが可能である。しかし、その挙動はカオスであるため、パラメータ値の変動による倍音変化は予測し難い。従って、ユーザーからは音色作りが難解であるという欠点を指摘されている。独特の硬質感に富むシャープな音色は、しばしば「金属的」とも表現される。FM音源が奏でるきらびやかで金属的な響きは1980年代のポピュラー音楽に多く取り入れられ、当時を象徴するサウンドとも評されている。また、現在でもFM音源が持つ個性を求めて好んで楽曲へ導入するミュージシャンも少なくない。FM音源の音色の定義に要するパラメーターはせいぜい数十バイト程度であり、メモリーの使用量を筆頭として要求される計算資源が比較的少なく、パーソナルコンピュータ、家庭用ゲーム機、携帯電話などに広く利用されている(詳しくは後述)。自然音のような動的に変化する複雑なスペクトルが、2つの発振器からの合成で現れる、変調合成の一手法である。FM合成器(オペレータ)のキャリア、モジュレータの波形を正弦波とすると、合成される信号波 FM(t) は以下の式で表される。FM合成で得られた出力のスペクトルは、"C"±"nM" ("n" = 1, 2, 3, ...) という、キャリアの周りに、モジュレータ周波数の整数倍で側波帯が現れたものとなる。側波帯成分の振幅はベッセル関数で表すことができる。シンセサイザーや音源チップでは、複数個の合成器を直列あるいは並列につなぎ、様々な合成結果を得る。このつなぎかたをアルゴリズムと呼んでいる。また、ヤマハによる研究開発の過程で、出力をモジュレータにフィードバックするフィードバックFMが考案された。ヤマハ(当時・日本楽器製造)は、FM方式の特許のライセンスを取得し研究開発を進め、1980年にGS1ステージピアノを発表する。その後、1983年に発売されたシンセサイザーDX7によって、一般に耳にする音楽で広く使われるようになり、FM音源のサウンドは広く知られるようになった。また、音源チップは、1980年代のパソコンやアーケードゲーム機、家庭用ゲーム機セガ・マークIIIのFMサウンドユニット、マスターシステム、メガドライブの内蔵音源として大量に使われ、これらから発せられる音としても聞かれることとなった。特にエレクトリックピアノの音色は秀逸で、PCM音源にサンプリングされ今でもよく使用されている。マリンバやオルガンの音などはPCM音源に負けないほどリアルな音が出せる。アコースティックピアノの音のシミュレートは苦手であり、PCM音源に押されて、一時はシンセサイザー市場から消えかけた。しかし、FM音源独自のベロシティによる音色のダイナミックな変化が見直され、ソフトウェアシンセサイザーのFM7やヤマハのDX200やPLG150-DXなど近年もFM音源の機種が発表されている。発声用の「キャリア」だけでなく、変調用の「モジュレータ」にもエンヴェロープの設定が可能であるため、倍音構成の時間変化を伴う音色を作成できる。FM変調による倍音変化は減算式フィルタによる倍音変化に比べて自由度が高いことから、極端な倍音変化を設定することで「にょわーーーーん」などという擬音語で表現されるような、金属的かつ非自然的な「FM音源らしい音」を生み出すことができる。レゾナンス、ワウペダルなどの項目も参考になると思われる。他の方式のシンセサイザーでもレゾナンスなどのパラメータをリアルタイムで変更することによって、ある程度の再現は可能。だが、生産性に問題があり、演奏データの肥大化にも繋がる。逆に、自然な生楽器の再現などにこの自由度を生かすこともでき、減算方式のシンセサイザーに比べてよりリアルな表現が可能である。無論PCMなど録音済み波形を用いる音源に比べれば再現度は劣るが、必要な計算リソースも少ないため、現在でも低コストで多彩な音色が得られる音源装置として有用な選択肢となっている。TX81Zなどの後期のFM音源の機種やSY99などAFM音源の機種では正弦波以外の波形で変調可能になった。1989年に発売されたヤマハのシンセサイザーSY77ではAFM音源へとアップグレードされ、PCM音源を変調させることも可能となる。その完成形が1991年に発売されたSY99と言える。その後、1998年に登場したFS1Rではフォルマントシンギング音源と呼ばれる人の声をもシミュレートできる音源とハイブリッドとなり、オペレータもDX7の6機から8機と増え、変調させられる幅が広がった。最近では携帯電話の着信メロディ再生用に使用されている。一部のチップには、「音声合成モード/複合正弦波合成モード」が用意されている。特定のチャンネルのオペレータに、独立してF-Numberが設定可能になっており、内蔵タイマーのオーバーフロー毎に該当チャンネルのオペレータをキーオンにするというものであり、音源ソース、並びにそこからの変換については、あらかじめ別途行う必要がある。その仕様上、該当するチップにはタイマーが内蔵されており、割り込みの発生源などとしても利用されていた。チャンネルもしくは、オペレータなどの設定により、正弦波を発声するように設定し、制御を行えば、同様の効果を得ることが出来る。PCMなどと比較すれば、必要とするリソースや、チップの機能を使えることによる処理の軽さがメリットとはなるが、FM音源1チャンネルのオペレータの駆動のみという状況と、パラメータとして設定できる値の分解能などの要因で、音質は然程高くは無く、時期によってはその正弦波に波形を分解する処理そのものに労力がかかったこともあって、ゲームアーツのメーカーロゴや、ゲーム中の一部の音声などに用いられた以外での利用は少ない。MA-7では、Humanoid Voiceとして、正弦波合成の出力を用いている。また、日本で携帯電話が普及した2000年前後頃からは携帯機器用音源チップ(MAシリーズ)にも組み込まれ、主にKDDI(auブランド)やソフトバンク(SoftBankブランド)、イー・モバイル(現・ソフトバンクY!Mobileブランド)等の携帯電話に内蔵されている。なお、2014年のパーソナルコンピュータには原則的に搭載されていないが、拡張ボードとして別途購入、搭載は可能。更に、各種コンピュータのエミュレータソフトの流行と共に、PCM音源を使いソフトウェアで波形合成して再生するドライバが有志により開発されている。2015年9月、ヤマハよりRefaceシリーズの一つとしてFM音源を搭載したキーボードシンセサイザreface DXが発売された。さらに、MOTIFシリーズに代わるフラッグシップシンセとして、FM-XとAWM2のハイブリッドシンセであるMONTAGEが2016年に発売された。2オペレータ。内蔵リズム音はハイハット、トップシンバル、タム、バスドラム、スネアドラムの5音。バスドラムを除き1オペレータで生成されるため、FM3ch分のレジスタで5chのリズム音を同時に発音可能4オペレータ。4オペレータ。OPNに対して音色のパラメータが増えている。その中でも特筆すべきは、基準音の整数倍の周波数から大幅に周波数をずらした正弦波で変調をかけられるようになった事で、一般的に「デチューン2」もしくはDT2と呼ばれる。このためOPN系では実現が難しかった、シンバル等の金属製打楽器にみられるような複雑な周波数成分を含むものなどの音作りが容易になった。なお、「デチューン1」に相当するものは、OPN系にも実装されている。4オペレータ。6オペレータ/16chステレオ/32アルゴリズム。オペレータ部(OP)とエンベロープジェネレータ部(EG)に分離している。入力クロックは9.4265MHz。動作クロックは4.71MHzである。OP部はEGから送られる14bitの周波数データを元にSINテーブルの値を読み、同じくEGから送られる12bitのエンベロープ値を使って出力を決定する。内部データは12bit値とシフト値で構成されているが実際の音声信号を得る手順はOPSとOPSIIで若干異なっており、OPSの場合12bitのデータを12bitD/Aコンバータ(BA9221)に対して出力し、得られた信号をアナログスイッチを通してシフトすることで音声信号を得るのに対し、OPSIIでは12bitのデータを内部でシフト操作して15bitデータに変換した上で16bitD/Aコンバータ(PCM54HP)に出力することで音声信号を得ている。DXシリーズやTXシリーズで使用された為かなりの数量が出回ったが、YM2151のようにICとして外販されたわけではないため、情報が公開されておらず内部レジスタ構成などは一切不明である。ジョン・チョウニング著、デビッド・ブリストウ著、広野幸治訳『DXシンセサイザーで学ぶFM理論と応用』ヤマハ音楽振興会、1986年、ISBN 4636208358
出典:wikipedia
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