K1は、大韓民国の第2.5および第3世代主力戦車である。元々の制式名は88戦車(88전차、パルパルチョンチャ)。韓国陸軍は、創設以来M41やM48パットンなどのアメリカ製戦車を主力戦車として運用してきた。一方、国境を接する北朝鮮の朝鮮人民軍陸軍は、115mm滑腔砲を装備するT-62を「天馬号」の名でライセンス生産するなど戦車部隊を強化し、さらに強力な125mm滑腔砲を装備するT-72の配備も時間の問題とされていた。これらの滑腔砲を装備するソ連製戦車に対し、M48やM60パットンなどの既存の戦車やそのアップグレートでは太刀打ちできないと判断した韓国政府は、独自での戦車開発をめざしたが、当時の韓国には国産戦車の開発経験もノウハウも無く、戦車開発能力が不足していた。そこで、韓国政府はM1エイブラムスを開発したアメリカのクライスラー・ディフェンス社(現:ジェネラル・ダイナミクス社)に製作を依頼し、1980年から同社で設計・開発が行われ、試作車は1983年に完成した。生産は、韓国の現代車輌社(現代精密、現:現代ロテム)が担当して翌1984年から行われ、1987年に「88戦車(パルパルチョンチャ)」として公式に存在が発表された。同時期に大隊規模の訓練検閲が内外の報道陣に公開されている。88戦車という名称は、全斗煥および盧泰愚政権時の韓国が国運を賭けて開催した1988年のソウルオリンピックを強く意識したものである。しかし、盧泰愚が1995年に政治資金隠匿および粛軍クーデター、光州事件の追及を受けて失脚した時期に前後して、88戦車の名称も使われなくなっている。なお、中国にも「88式戦車」という名称の戦車が存在するが、K1戦車との関連性は無い。K1の他、韓国国産戦車(Republic Of Korea Indigenous Tank)を略してROKIT(ロキト)と呼ばれることもある。K1の設計思想は、側面装甲と火力を犠牲にしても軽量化と低視認性を図り、機動性を重視するものとなっている。そのため、主砲はすでに実用化されていた砲口径120mm級の滑腔砲をあえて搭載せず、それまで韓国陸軍が採用していたM48A5K戦車と同じM68A1とした。これは、ロイヤル・オードナンス L7をアメリカでライセンス生産した物である。K1と世代の近いレオパルト2やM1A1が、より強力なラインメタルの120mm滑腔砲を搭載しているのに対して、あえて105mm ライフル砲を選択した理由には、上記の設計思想に加え、車体の大きさの制約や装填手の負担などの問題、さらに平地が少なく長距離の砲撃戦が起こりにくい朝鮮半島の地形的事情が含まれている。また、ライフル砲は滑腔砲と比較し、強風や悪天候の影響を受けにくく、調整が行い易く、命中精度が高いという利点がある。車長用には2軸が安定化された倍率3/10倍切替式の独立型パノラマ・サイトが装備されている。これにより砲手が目標を照準中に車長が次の目標を捜索、照準するハンター・キラー能力を有している。砲手用にはレーザー測距離装置、熱線暗視装置が組み込まれた昼/夜間兼用サイトが装備されている。このサイトも2軸が安定化されており、昼間用は等倍と10倍の切替式、夜間用が3倍と10倍の切替式になっている。弾道計算機はデジタル式で、風向センサーと連動する高度なものとなっている。K1A1では装甲、火器管制装置や外部視察装置も改良されているという。ただし、主砲を120 mm滑腔砲に交換したため砲塔内部の容積は減少し、搭載弾数も47発から32発へと減少している。車体および砲塔前面部分には、アメリカ国内で生産され、解析不能なようにブラックボックス化されたものを韓国国内で組み立てた複合装甲が採用されている。側面には中空装甲(スペースドアーマー)が採用され、車体張り出し部の中空部は燃料タンクも兼ねている。ディーゼル燃料(軽油)は引火点が高いため発火しにくく、HEAT弾のメタルジェットのエネルギーを吸収する効果が高いため、燃料タンクを装甲の一部とみなす設計はイスラエルのメルカバでも採用されている。K1およびK1A1は、レオパルト2やM1エイブラムスのように装填動作の楽な砲塔後方のバスル(張り出し部)ではなく装填手の足もとに即応弾が置かれている。これは、敵弾が命中する可能性が最も高い砲塔を小型化し、砲弾を砲塔リングより下に配置して被弾時の誘爆の可能性を局限させるための設計である。サスペンションは、油気圧とトーションバー併用のハイブリッド式で、第1、2、6転輪が油気圧式、残りの三輪がトーションバー式になっている。姿勢は前後傾斜のみで、前後左右の傾斜や車高の上下は不可能。油気圧式を採用したのは、平地が少なく起伏が多いという朝鮮半島の地形に合わせたもので、同様の姿勢制御機能は、スウェーデンのStrv.103のほか、やはり山がちな地形での運用を想定した日本の74式戦車や90式戦車が備える。車内環境面では、朝鮮半島の厳しい冬に対応するためにヒーターを備え、自動消火装置を持つ。K1は、第1ロット(1986 - 1988年)として205両が17億7,300万ウォンで生産され、以降1989 - 1991年に18億900万ウォンで310両、1992 - 1994年に21億4,200万ウォンで305両、1995 - 1997年に28億3,100万ウォンで207両が生産された。合計生産数は1,027両(派生型が含まれるかどうかは不明)で、K1の生産は第4ロットで終了し、以後は改良型のK1A1の生産に移行した。改良型のK1A1では、装甲の強化、火器管制装置や外部視察装置の改良、アメリカ軍との弾薬互換性を考慮し、主砲を120 mm滑腔砲へ換装するなどの設計変更が行われ、2001年に配備が開始された。K1A1は陸軍の首都機械化歩兵師団と第20機械化歩兵師団、K1は陸軍の第26機械化歩兵師団、第30機械化歩兵師団(K1A1配備予定)、第1歩兵師団、第11機械化歩兵師団、第8歩兵師団(機械化歩兵師団で改編中)の各戦車大隊と偵察大隊、大韓民国海兵隊の第1戦車大隊に配備されている。K1A1は2010年までに484両が生産された。現在、本戦車を通じて得られた生産ノウハウおよび、各種外国メーカーの技術を基に後継のK2 フクピョ(黒豹)を開発中である。当初2011年からの実戦配備を予定しており、2008年には試作車が公開されたが、量産車両では国産化するとされたエンジンおよびトランスミッションの不具合が解決せず生産開始は度々延期されている。現在では2015年の配備開始を目指している。また、K2 フクピョ(黒豹)開発で得られた技術などをフィードバックした性能改良事業も推進中である。2026年(K1A1の改良は2022年)までに約4,000億ウォンの予算を投じてC4Iシステムや衛星アンテナの追加、敵味方識別装置や前後方監視カメラの改良など、主にベトロニクスが強化される。2011年6月、知識経済部(省に相当)傘下の韓国機械研究院はK1A1の変速機に重大な欠陥があるとの結論を出し、これを防衛事業庁と監査院に通報した。国防部はこれまで「変速機に問題があることが明らかになれば、全てをリコール(回収・修理)する」という条件で戦車を配備し続けてきたため、現在使用されている約450両のK1A1全てが回収となる事態もあり得るとみられている。2011年8月、K1A1は自動消火器の不具合で97両がリコールされた。2011年3月に実施された砲撃演習中、火災検知器のセンサーが作動して火災消火用のハロンガスが自動的に車内に放出される事故が発生した。国防部が調査したところ、2010年12月30日以降、装備する火災検知器をアメリカ製のものから韓国製のものに変更した結果、砲塔を左側に旋回して射撃すると、火災検知器のセンサーが誤作動することが判明、全車改修となった。公開演習中のK1A1が障害物を乗り越えようとして失敗する映像が残っているため、車体バランスの悪さなどの問題も考えられる韓国はK1の輸出も決めていたが、購入を打診してきたのはマレーシアのみであった。1997年に韓国はマレーシア向けに改修した「K1M」210両の購入を提案したが、マレーシアは韓国の要求する提案が高価すぎるとしてキャンセルし、より安価なポーランド製のPT-91(T-72のポーランドでの改良型)を採用した。
出典:wikipedia
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