歩兵戦闘車(ほへいせんとうしゃ(IFV:Infantry Fighting Vehicle または ICV:Infantry Combat Vehicle)は、車内に歩兵を乗せることができる装甲戦闘車両(AFV)。装甲兵員輸送車(APC)のように歩兵を運ぶばかりではなく、積極的な戦闘参加を前提とし、強力な火砲を搭載している。さらに乗車歩兵の乗車戦闘ができるようになっている物が多い。APCより高価であるため財政的に豊かな国ほど多く配備されている。BMPシリーズに限っては冷戦期に東側諸国が供与したものが現在でも使用されていることが多い。歩兵戦闘車は、下記のような要件を備えている。近代の戦場における歩兵の移動には、半装軌車(ハーフトラック)や、トラックが使われてきたが、不整地(オフロード)における戦車の移動速度が向上したため、戦車と共に行動することが難しくなった。また、第二次世界大戦前の用兵思想の変化から兵員輸送車両も移動中に砲火を浴びたり、直接戦闘に参加する場合が多くなり、防御力の付加を必要とした。このため、装甲化された半装軌車や、無限軌道による装甲兵員輸送車が開発されたが、これらは武装として機関銃程度しか装備しておらず、歩兵支援には火力が足りない上に、戦場で敵の同種車両と遭遇した際に、軽戦車や歩兵戦車のような直協車両を伴わない限り、これを撃破できないという欠点もあった。このことから、1950年代後半、フランス陸軍はAMX-VCI装甲兵員輸送車に7.5mm AA-52機関銃を取り付けていたが、12.7mm M2重機関銃を取り付けたもの(AMX-VCI 12.7)や最終的に20mm機関砲を搭載したもの(AMX-VCI M-56)が配備された。兵員室に10名の乗車が可能だった。26種類の派生車種合計で3,000輌程度が生産された。これは、歩兵戦闘車の嚆矢ということができる。そして1950年代後半、西ドイツ陸軍は、アメリカ製のM113装甲兵員輸送車と共にフランスのオチキスが開発したSP1Aを基にしたクルツSPz 11-2装甲偵察車、スイスのイスパノ・スイザが開発したHS30を基にしたラングHS.30歩兵戦闘車を採用した(ラングは史上初の「歩兵戦闘車」の名称を冠した車両となった)。これらは当初より20mm機関砲を備え、兵員室にクルツは3名、ラングは5名を収容できる。また、ラングは乗車戦闘も可能だった。ラングは車両としての信頼性の問題から大改修が必要とされたが、クルツは7種合計2,374輌、ラングは6種合計4,472輌が生産された。この車両の実績はマルダーが開発される動機となった。独仏両国から10年ほど遅れた1966年、ソビエト連邦軍はBMP-1を発表した。BMP-1は、AMX-VCIやSpz HS.30よりも大口径の火砲と対戦車ミサイルによる強力な攻撃力と、強化された装甲による防護能力を備えていた。また、兵員室には1個分隊をまるごと収容できるうえに、ここにはガンポートが設置され、密閉された兵員室から歩兵が射撃できるようにされた。これは、核戦争の際に歩兵を放射性降下物から守ることができ、非常に重要であると見なされた。BMP-1は西側諸国に「BMPショック」と言うべき衝撃を与えることとなった。先駆者であったドイツは、Spz HS.30の運用実績を踏まえ、BMP-1と同様に乗車戦闘能力を備えた歩兵戦闘車としてマルダーを開発していたが、これの配備が急がれることとなった。また、もう一方の先駆者であったフランスでも、AMX-10Pの配備が急がれた。しかし、BMP-1にもっとも大きな衝撃を受けたのがアメリカ陸軍であった。アメリカ陸軍の歩兵戦闘車は、MICVの名前のもとで1958年より計画されていたものの、まだ試作車すら完成していない状況にあったのである。このため、MICV計画は加速され、のちにM2ブラッドレーを生み出すことになる。なおこの間のヴェトナム戦争においては、現地部隊においてM113を改造した応急の歩兵戦闘車型が多用された。一方で陸上自衛隊の73式装甲車のように、歩兵戦闘車としての能力付加を見送り、純粋な兵員輸送車として制式化された例もある。これらの第1世代IFVは、従来の装甲兵員輸送車の延長線上で設計されており、浮航性を得るために、車体は軽量なアルミ合金で作られていた。しかし、重武装化によってIFVが敵に与える脅威が増大したのに伴って、IFVに向けられる敵の脅威も増大しており、装甲はさらに強化される必要があった。このため、最近になって新規開発されたIFVは浮航性をあきらめ戦車同様の素材を用いる事が多い。特に人命を重視する西側ではこの傾向が顕著であり、89式装甲戦闘車やプーマが典型例である。また、BMP-1をはじめとして、IFVの多くがガンポートを備えている。兵員室に乗車した歩兵部隊は、このガンポートから小銃を射撃できるので、車内にいながらにして戦闘を行なうことができる。これは、車両の火力を増強するとともに、核戦争下などNBC兵器で汚染された環境にあって、歩兵たちをこれらの脅威に曝すリスクを低減するために要求されたものであった。しかし装甲に穴を開けることで強度が低下するにもかかわらず、ガンポートから発揮できる火力は比較的限定的なものであるので、新型車両ではあえてガンポートを付けないこともある。装甲強化の要求も非対称戦争増加の時勢から高まる一方であり、既存の車両においても、装甲を追加するのに伴って、ガンポートが塞がれる例が増えている。搭載する火砲としては、西側の第1世代IFVは20mm口径の機関砲を、東側のBMP-1は73mm低圧砲を搭載していた。このうち、BMP-1の73mm低圧砲については、弾道の安定性や砲そのものの信頼性に問題があったことから、後継のBMP-2からは、西側諸国と同様に中口径機関砲に変更された。一方、西側においても、20mm口径弾は火力支援能力に不満があった。貫徹力は高いが、炸薬量不足で榴弾の威力が低かった。そのため後発の各国では大口径化が志向されることとなり、1981年に就役したアメリカ陸軍のM2ブラッドレーでは25mm口径、1986年に就役したイギリス陸軍のウォーリアでは30mm口径、1989年に就役した陸上自衛隊の89式装甲戦闘車では35mm口径、1993年に就役したスウェーデン陸軍のStrf 9040では40mm口径が採用された。さらに近年では空中炸裂弾を採用することで被害半径を広げる工夫が行われており、Strf 9040、プーマなどが装備している。また、近年では、装輪式の歩兵戦闘車を採用する国も増加している。これは、低強度紛争・戦争以外の軍事作戦の頻度増大と防衛予算の縮小を受けて、不整地踏破能力・戦術機動力とのトレードオフのもとでライフサイクルコストの低減と作戦・戦略レベルでの機動力向上を図ったものである。代表的なものとしては、アメリカ海兵隊のLAV-25、フランス陸軍のVBCIなどがあり、また、陸上自衛隊も近接戦闘車の開発を計画している。
出典:wikipedia
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