ハイブリッド車("Hybrid car" )は、2つ以上の動力源を持つ自動車。略称はHV("Hybrid Vehicle" )。本稿では自動車のハイブリッドカーについて述べる。鉄道車両のハイブリッドカーについてはハイブリッド機関車および日本の電気式気動車#電気式の将来(ハイブリッド気動車)を参照。ハイブリッドカーとは2つ以上の動力源(原動機)を持つ自動車の通称である。2つ以上の動力源を持つ車両(自動車だけに限らない)をHV() と呼ぶ。日本で一般的にハイブリッドカーと呼ばれる車両は内燃機関(エンジン)と電動機(モーター)を動力源として備えたHEV()である。車種によって違いはあるものの、運転条件によってエンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーターを同時に使用して走行するものなどがある。EV()のように直接充電できるものはPHV()と呼ばれる。自動車と鉄道の中間形態として架線式電気自動車(トロリーバス)とハイブリッドバスの利点を合わせた架線式ハイブリッドトロリーバスなどもある。(詳細:トロリーバス参照)なお“モーター”とは、「モータースポーツ」「モーターショー」といった言葉が示すように、広義では電動機だけを指すものではないが、一般的に原動機の種類を表す言葉として使われる場合には“モーター=電動機”また“エンジン=内燃機関”とされることがほとんどで、電動機のみを搭載する自動車(EV)が「エンジンを持たない車」「モーターで走る車」などと称されることもある。日本や北米ではエンジンの回転力を直接動力として利用することに加え発電機を回すために利用するタイプのハイブリッドカーが多く存在する。発電機の動力源は主にエンジンであり、補助的に二次電池や回生ブレーキを用いる。自動車が普及を始めた19世紀後半においては、赤旗法による英国の蒸気自動車の開発停滞にもかかわらずガソリン自動車の性能は蒸気自動車 や電気自動車に劣っていた。特に、蒸気貯めに圧力を蓄えたり鉛蓄電池に電気を蓄えたりするため始動トルクが大きく、ニードル弁や抵抗器操作で無段階変速が可能な蒸気自動車や電気自動車に比べ、ノッキングなど低速性能が悪くアクセル・クラッチ・減速ギヤないしプーリー切替の同時操作を強いられるガソリン車の操作性は劣悪であり、複雑な精密機械であるトランスミッションの故障も多かったため敬遠された。20世紀初頭に出現した車軸を電力で回転させる自動車は移動に用いるエネルギー源として内燃機関のみを用いるためハイブリッドと呼ばない。サスペンションの動きに合わせた機械式駆動系が満足に作れなかったため電動機で車軸を動かしていた。第1次世界大戦を経て機械駆動系の信頼性向上とコストダウンが進展し、フォード・モデルTの登場によるガソリン車の急激な普及により市場から消えていった。20世紀後半になると導電性プラスチックポリアセチレンの発見に端を発する高性能なリチウムイオン二次電池や、小型で強力なモーターを可能にするネオジム磁石が相次いで日本で開発され、電気自動車に必要な技術が急速に発展した。20世紀末からガソリンエンジンと蓄電池を搭載したハイブリッドカーが主に日本と北米で販売された。エンジンによる発電に加え回生ブレーキを併用し、主に低速時に電力を用いて走行することで内燃機関単独で走行するのに比べ燃費を向上させたものである。2000年代には電動機のコアに鉄損の少ない専用の電磁鋼が使われるようになり、同年代末からはコンセントから充電できるプラグインハイブリッドカーが中国や日本で販売された。2008年の北京モーターショーでは中国メーカーがプラグインハイブリッドカーを発表し、2010年のジュネーブモーターショーでは欧米メーカーが相次いでハイブリッドカーを発表した。※後述するシリーズ・ハイブリッドと誤解されやすい電気駆動という別概念がある。これは駆動系(パワートレイン、動力伝達機構)を電気にしただけのものである。駆動用の発電機を回すために内燃機関を用いる移動体を「ガス・エレクトリック」もしくは「ディーゼル・エレクトリック」(内燃機関としてのタービンエンジンを用いるものは「ターボ・エレクトリック」と呼ぶ)と呼ぶが、これらは発電により得られた電力を蓄えるバッテリーを有しておらず、ただ単に内燃機関によって発電機を回すことにより得られた電力でモーターを直接駆動しているだけのシステムであるため、内燃機関が停止すると走行できない。したがって走行は内燃機関のみに依存しているとみなすことができるため、HVではないとされる。これらは「ガスタービン原動・エレクトリック駆動」、「ディーゼル原動・エレクトリック駆動」および「タービン原動・エレクトリック駆動」の略称である。発電と駆動の方法により、「シリーズ方式」、「パラレル方式」、「スプリット方式」に大別できる。最も構造と制御が単純なシリーズ方式が世界的には主流である。なお、シリーズ方式とパラレル方式を融合した「シリーズ・パラレル併用方式」もあるが、大型自動車を含め試作車レベルでは存在するものの、市販車としてはいまだに登場していない。シリーズ方式(直列方式)は、エンジンを発電のみに使用し、モーターを車軸の駆動と回生のみに使用するもの。言わば『エンジンを発電用の動力源として搭載した電気自動車』である。実際の仕組みは、エンジンで発電機を駆動し、発生した電力を大容量バッテリーに一旦蓄え、その電力でモーターを駆動し、走行する。電気自動車の大きな欠点として、出先で充電設備を確保しにくい点、充電時間が長い点、1充電あたりの走行距離が少ない点などが挙げられるが、シリーズハイブリッド方式では内燃車同様に燃料を補給するだけでこれらの欠点から解放される。エンジンで発電しモーターで走行する方法自体は、ガス・エレクトリックやディーゼル・エレクトリックおよびターボ・エレクトリックと呼ばれる方式があり、これらは古くから鉄道車両・船舶で実用化されたすでに「枯れた」技術である。初期のハイブリッドカーはこれをベースとしており、発電機とモーターの間に大容量バッテリーを追加することで、エンジンと発電機双方の小型化と、エンジンの使用率低減が可能となり、効率を改善した。このような事情から、設置スペースの問題を無視すればエンジン選定の自由度が最も高いシステムであり、コントロール面で劣るタービン系も採用できるのが当システム最大の特色でもある。自動車用燃料としての税制面での整備が必要となるが、タービンエンジンでは、通常自動車用として使われていない灯油などのケロシン系燃料の使用が可能となる。また、燃料が切れた場合や静粛性が求められる場合でも、バッテリー残量に余裕があれば、エンジンを止め、モーターのみ(EVモード)で走行することが可能である。モーター駆動であるため出力制御が容易で、通常の自動車に必須なトランスミッションが不要であることが利点であるが、内燃車と電気車のシステムが共存するため、システム占有体積と重量が大きくなること、エンジン動力を一旦電気に変換する際に発生する熱エネルギーの損失が多く、回生制御が働かないと効率が落ちることが欠点となる。この点を補うため、マイクロガスタービンと小型超高回転発電機を組み合わせたものが試作されている(ボルボ・ECC)。また、マツダでは、軽量化に加えエミッション低減のために、自社の技術を生かした水素ロータリーエンジンを使う試みもなされている。パラレル方式(並列方式)は、搭載している複数の動力源を車輪の駆動に使用する方式。エンジン出力 = トルク × 回転数の関係にあるため、エンジンの低回転時には十分なパワーが得られないばかりかアイドリングを含めて効率が悪く、排出ガスの浄化能力も落ちる。一方、モーターは起動時に最大トルクを発生するものが多いため、発進時や急加速時など、エンジンが苦手とする熱効率が悪く有害排出物の多い範囲をモーターに受け持たせるといった、両者の「いいとこどり」ともいえるのがパラレル方式である。この場合、エンジンは通常の内燃車と遜色のない出力を備えるものが多く、内燃車同様の許容量のトランスミッションを持ち、それを介して車輪の駆動を行い、同時にモーターを用いた発電(充電)も行う。回生ブレーキの発電機としても用いられるモーターは発進から中速域までを受け持ち、車両総重量に比較して小型で出力も小さい。よって、バッテリーの容量も少なくて済む。バッテリーの残量が少ない場合は、通常の内燃車と同様に全速度域にわたってエンジンのみでの走行が可能である。このように、従来の内燃車を主とした構成のため、モーターアシスト方式とも呼ばれる。一般に、モーター1基で実現可能という設置重量および体積面と、エンジンによる直接駆動もできるなどの効率面でシリーズ方式よりも優れている。ただし、双方の動力源の利点を活かすための構造や制御が複雑とされ、モーター1機ゆえに発電と駆動を同時にできないという欠点がある(モーターの使用頻度が高まるほど充電時間が短くなる)。また、ハイブリッドシステム自体には速度を制御する機能が盛り込まれておらず、通常の自動車と同じトランスミッションが必要という、他方式にない欠点もある。ただし、この点を逆手に取った伝達効率に優れるMT仕様のハイブリッドカーも存在する。※日立製作所が開発し、一時期の日産自動車とマツダの小型車に採用されていたe-4WDシステムは、ガソリンエンジンの前輪駆動車の後輪にモーターアシスト機構を追加したものであるが、アシスト範囲が極めて限定的で、モーター専用のバッテリーも持っていないため、ハイブリッド車には含まれない。スプリット方式(動力分割方式)は、エンジンからの動力をプラネタリーギアを用いた動力分割機構により分割(スプリット)し、発電機と車輪の駆動へ振り分けたり、エンジンとモーターからの駆動力を自由に合成することが可能な方式である。発進時や低速走行時にはバッテリーに蓄えられた電気でEV走行、通常走行時にはエンジンを最大トルク近辺の燃料消費率の低い回転域で使用し、プラネタリーギアを介した発電機で同時にバッテリーへも充電を行いながら速度制御を行う。燃費悪化の原因となるエンジン出力の変化を極力抑えていることもこの方式の特徴である。スプリット式は動力分割機構(遊星ギア)を用いて、発電機とモーターの回転制御を行うことでトランスミッションの役割を持たせることができるため、従来型のトランスミッションは特に必要ない(登載できないわけではない)。制御範囲は広いが、エンジン・モーター・発電機の回転数の縛りは残るため、エンジントルクの直接利用範囲は限られ、通常の速度域では発電機を介した電気駆動が駆動力の大部分を占める。電気駆動の際には必然的にエネルギー変換ロス(熱)が生ずるが、エンジンの高効率域を利用する制御になっているため、全体的な効率は高くなる。他の方式に比べると部品点数が少なくシンプルであるが、動力分割機構の制御が非常に複雑、かつ特許面の絡みもあり、上記の方式に比べ採用メーカーの数では少数派に属する方式であり、当初は採用車種の選択肢が少ないのが当システム最大の欠点となっていた。また、機構上エンジンとモーターを切り離せないため、加速力を重視した設定にすれば燃費が、燃費を重視した設定にすれば加速性能が悪化するという弱点がる。この弱点を克服したのがLC500hに搭載されたマルチステージハイブリッドシステムであり、従来のシステムに有段ギアが組み合わされている。また、独創的仕様のためフリクションロスの影響が燃費に直結しやすく、出力向上の足かせが多いのも欠点の一つである。ただし、制御の問題が解決されればトランスミッションを省くことによるコストダウンと軽量化という利点が生きるため、パラレル方式に比べ商品化上の不利は少ないといわれている。当初は同じ排気量のオットーサイクルエンジン車に比べて動力性能で劣勢であったが、バッテリーとモーターの出力向上と制御の改良により、モーターの特徴を生かしたガソリンエンジン車以上の加速も可能となった。制御と動作に関しては「無段変速機#電力・機械併用式無段階変速機」を参照。エンジンの出力は高負荷運転を考慮して設定されているため、低速度では必ずしも効率は高くない。乗用車に広く使われるガソリンエンジンは、軽負荷では効率が著しく下がる。そこで低速域や軽負荷領域では効率の低いエンジンを停止して、電気モーターのみで走行することによって燃費の改善と、有害排出物の低減ができる。また、本来必要なエンジンより出力の小さいエンジンに電気モーターでアシストすることによって、それらを改善するという考えもある。さらに、自動車向きではなく使えなかった種類の熱効率の高いエンジンを、電気モーター主力とすることで利用可能とした組み合わせもある。車両総重量に対して排気量が少なく出力が低いものや、アトキンソンサイクルエンジンなど、軽量化・高効率化したエンジンを使用することができる。減速時に電動機を発電機として用いることにより運動エネルギーを電気エネルギーに変換して二次電池に蓄える。ハイブリッドカーに限らず新幹線のような電気鉄道で広く用いられているが、回生エネルギーを架線に返すので、同時に力行する電気車(電気機関車や電車)がないと有効に使えなかった。今では電気鉄道でも変電所の定置型二次電池に充電させ、いつでも回生を有効にすることが企画されている。ハイブリッドカーに限らず電気自動車やソーラーカーなど、二次電池と電動機で走行する車両では「回生ブレーキ」でエネルギー効率を向上できる。より有効に回生電力を蓄えるため、より大容量の蓄電装置が必要になる。付随輪にモーターを追加することで、トランスファー、センターデフ、プロペラシャフトが不要となるため、全輪駆動化も比較的容易である。ハイブリッド自動車は内燃機関およびその補機一式と電動機および駆動用バッテリと燃料タンクを1台の車に搭載するため、全般に同程度の排気量のガソリン車と比較して15-20%ほど重量が増加する。重量の増加は燃費の悪化に加えタイヤやブレーキと言った車体、及び路面のダメージを増大させる。また、モーターやバッテリーにはレアアース(希土類金属)やコバルトなど産地が偏っている鉱物(レアメタル)を利用するため価格が高騰しやすく、安定した資源確保が困難になることも懸念される。またHV化においては駆動用バッテリーやモーターの搭載により車室空間が犠牲となり、スペアタイヤや3列目シートなどを廃さなければならなくなった車種が存在する。(内燃車とHVが存在する車種の例:ホンダ・フィットハイブリッド、三菱・アウトランダーPHEV。HV専用車種の例:ZE2/ZE3ホンダ・インサイト) 特にスペアタイヤを廃してしまった場合はランフラットタイヤのサイズ設定がない場合パンク応急修理キットで対応することを強いられている(=サイドウォールの損傷やバーストには対応できない)現状がある。ハイブリッドカーは従来型の内燃車(ガソリン車やディーゼル車など)に対して部品点数が多くなるため、必然的に内燃車に比べ、製造・廃棄にかかるコストがHV特有の部品の分だけ、環境負荷と金銭の両面で高くなる。また、バッテリーをリサイクルするにしても行程が長くなるという問題がある。トヨタが公開しているPV(リンクをクリックすると特殊なファイルへ直接アクセスする。拡張子「.asx」のファイルが開けない場合閲覧できない)によると、そのリサイクル行程は「一度全国の解体屋からバッテリーを愛知陸運に集め豊田ケミカルで解体・下処理・破砕、その後住友金属鉱山で精錬、プライムアースEVエナジーで製品化した後トヨタの工場で車両に搭載」…つまり全国→愛知県→愛媛県→静岡県→愛知県→全国…という、通常の自動車リサイクルに比べ大がかりな流れになっている。そしてHVはエンジンも搭載しているのでEVとしてだけではなく、内燃車としてのリサイクル行程も必要になってくることに注意が必要である。このように製造・廃棄の部分ではガソリン車より環境に悪いことを考えるとHVをエコカーとして成立させるにはセールスポイントでもある燃費や低排出ガス性能で帳消しにする必要があるが、それが十分達成できているかには疑問が残る。例えばトップ・ギア Series11 Episode1でプリウスをとり挙げた際にはこの点がかなり痛烈に指摘されており、司会のジェレミー・クラークソンは「長期的に見るとランドローバー・ディスカバリーよりも環境に悪いという主張もある」とコメントしている。ガソリンハイブリッド車両はガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせているため、通常の車に搭載される12Vのバッテリーに加え、最大600Vで電気モーターを回すHVバッテリーを搭載している。このバッテリーは通常のバッテリーと比べ電圧が高いなどの理由から感電の際の危険が大きい。特に大型機械に搭載されているキャパシタ(コンデンサ)も同様の理由により感電した場合死亡事故にも繋がりうる。整備工場や事故現場などにおける感電事故が懸念されており、メーカーがレスキュー時の専用マニュアルを公開していることもある。ハイブリッドカーはモーター走行時の騒音が小さいため、主に低速時に歩行者、特に音で接近を判断する視覚障害者からの認知が遅れる可能性があり、危険性が指摘されている。また、静穏性を悪用したひったくりが発生するという事態にまでなっている。電気自動車も含め走行中に人工的に音を発生させる装置の義務化がハイブリッドカーメーカーや政府によって進められているが、ジェット機の音を小さくしたような音であるため新たな騒音源になることが懸念される。ただし、この「ハイブリッドカーはモーター走行時の騒音が小さい」という前提に関しては、自動車の走行時の騒音は、実際にはエンジン音や排気音よりも、むしろロードノイズ(タイヤ騒音)の方が大きく、相対的に車重の重いハイブリッドカーは必然的にロードノイズも大きいことから、必ずしも正しいわけではない。逆に、モーターのカン高い回転音がロードノイズを掻き消してしまうことから、自動車の接近そのものの認知が遅れるのであるとの指摘も存在する。ガソリンとハイブリッドとの両者をラインナップする同車種で比較した場合、車両価格には大きな隔たりがある。もっとも極端な例を挙げるとダイハツ・ハイゼットカーゴのケースがあり、HV化で価格が2倍以上になってしまった。それと燃費改善率の低さがネックとなり販売不振、生産終了となったことを受けダイハツは「HVは軽には不適」としており、ダイハツは後年、新型車のティザーを兼ねた企業CMにおいてHVの高コストを背景に「第3のエコカー」(高効率内燃機関車)を提唱した。また、ハイブリッドカーには(駆動用)バッテリーの交換費用など、ガソリン車にはないコストが発生する。一方で軽自動車においてもマイルドハイブリッドを拡張したシステムが新たに採用されるなど、技術の応用によって費用と便益は今後も変動してゆくとみられる。また上の「環境負荷の増大」でも述べたように、内燃車とEVの両方の機構を持つという性質上廃棄時に掛かるコストは金銭的にも高くなる。小型セダンのトヨタ・カローラアクシオ(E16#型)を例として、購入時の差額を燃料費の差額だけで回収する事を検討した場合の費用と期間の計算を下記表に示す。なお、表中の各値は、何れも2013年8月現在のメーカー公表値を元にしている。各種点検・整備にかかわる費用やエコカー減税、その他の減税、免税、割引制度等については考慮していない。*ガソリン単価を150円/L、年間の走行距離を10,000kmとした試算内燃機関と電気モーターの二種の動力源を装備した「エンジン=電気式ハイブリッドカー」の歴史は古く、初期の自動車の時代ではエンジン技術は未熟で高出力エンジンは製造が難しかったため、エンジン出力不足をモーターで補助するハイブリッドカーが考えられ、一部で用いられた。日本や北米ではハイブリッドカーが環境に優しい車として認知されている。理由としては、両国都心部は高加減速能力が重要視される環境ゆえに、この能力が高いモーターを利用するハイブリッドカーの利点が活かしやすいという事情が挙げられる。ハイブリッド技術の開発には数千億円単位の開発費がかかるため、独自に開発費を負担できない国内の自動車メーカーが2009年後半に相次いでハイブリッド技術を持つ有力メーカーと提携している。世界的な2050年までの二酸化炭素排出量半減の流れを見ると、ハイブリッドカーを普及させても自動車からの二酸化炭素排出量を半減させることは難しい。そのような事情もあってか、ハイブリッド技術で先行したトヨタ自動車や本田技研工業に対し、日産自動車や三菱自動車工業は電気自動車の量産を目指している。ブラジルやアメリカでは自国で生産されるサトウキビや穀物や果物を原料としたバイオエタノールを燃料として利用できるフレックス燃料車が1000万台以上存在している。摂氏15度以上ではバイオエタノールのみで走行できるため年中温暖な赤道から亜熱帯地域で適している。ヨーロッパメーカーは、高加減速能力より高速能力が重要視される環境が災いしたのかハイブリッド技術で後れを取っており、開発資金が安く開発期間も短く済む上に品質の良い軽油の調達が容易という事情もあり、高速能力ではハイブリッドカーに勝る低燃費ディーゼル車および過給器と小排気量化を組み合わせたダウンサイジングコンセプト車の開発を優先している。ただし、技術力それ自体にメーカーごとの差が大きく、2015年現在、日本において「ガソリン・ハイブリッド」「ディーゼル・ハイブリッド」「プラグイン・ハイブリッド」という3種類ものハイブリッドカーをラインアップする唯一の自動車ブランドはメルセデス・ベンツである。世界的な原油価格の高騰と各国政府による補助金により先進国ではハイブリッドカーの販売は伸びているが自動車離れの傾向は止まっていない。また、日本や北米ではハイブリッドカー以外の車の販売が全体に落ち込んでいる。メーカーによってはハイブリッドカーが主力商品となることも考えられる。発展途上国においては日本メーカーの作るハイブリッドカーは価格が一般庶民の手には届かずあまり売れていない。現地メーカーによる低価格のガソリン車や電気自動車のほか、低価格の電動バイクは増えており、先進国とは違った需要が存在する。大型自動車では、1991年に日野自動車が路線バス用としてディーゼルエンジンと電気モーターによるパラレルハイブリッド方式のHIMR(Hybrid Inverter-controlled Motor & Retarder System = ハイエムアール)を試作し、東京都交通局などで試験運行を開始した。1994年に型式(かたしき)承認を取得し、大型路線バスブルーリボンシリーズの1モデルとして正式発表している。日野自動車は改良を続け、1995年には小排気量エンジンに変更して排出ガス値と燃費を改善し、2001年にはワンステップ化、2005年にはノンステップ化を実現した上で、親会社のトヨタからプリウスの技術を流用、価格を下げることにも成功している。このモデル以降はHIMRの呼称をやめ、単に「ハイブリッド」と呼ぶようになった。また、観光タイプ(日野・セレガ)の製造も行われている。一方、日野自動車以外の日本のバスメーカー3社は、電気式より構造が単純であることなどから、減速時のエネルギーで作動油を蓄圧タンクに入れ、タンク内部の窒素ガスを圧縮し、発進時などに油圧として動力を取り出す、蓄圧式ハイブリッド車を開発した。嚆矢は三菱ふそうのMBECS(エムベックス)で、1993年から試験運行を開始し、1995年に同社の大型路線バスエアロスターをベースとしたMBECS IIを正式発売し、1998年からは、ワンステップバス対応のニューエアロスター用のMBECS IIIも発売開始した。また、日産ディーゼル工業(現・UDトラックス)がERIP(エリップ)、いすゞ自動車はCHASSE(シャッセ)を開発している。しかし、このタイプは思ったほどの排出物低減効果が見られなかったことや、路線バスで並行して要求されていた低床化に対応できなかったことから販売は少数に留まり、2000年度をもって、各社とも撤退してしまった。日産ディーゼルは、大電流の出し入れ速度に優れる電気二重層コンデンサ(スーパーキャパシタ)を用いた、キャパシタハイブリッドを独自に開発し、日野自動車に技術供与も行った。同社は大型車用ディーゼルエンジンの窒素酸化物低減でも、コモンレール噴射方式に大量のEGRとDPFの組合せを採る各社とは異なり、唯一ユニットインジェクターと尿素SCRシステムを採用するなど、独自性が際立っていた。しかし、その後同社もコモンレール噴射方式に移行し、尿素SCRシステムとを組み合わせで三菱ふそうトラック・バスに技術供与し、一旦は相互OEMの関係となっていたが、2010年10月にその契約を終了し、バス生産から撤退している。その後三菱ふそうはディーゼル・電気式ハイブリッドバスHEVを試作し、2002年に遠州鉄道で試験運行を行い、2004年から正式にエアロスターHEVノンステップとして販売、2007年からは改良を施され、エアロスターエコハイブリッドとして発売された。HEVはHIMRと異なり、ディーゼルエンジンを発電専用とし、駆動にはもっぱら電気モーターを使用するシリーズハイブリッド方式である。いすゞ自動車も、東京モーターショー2011でエルガハイブリッドを参考出品し、日野自動車と同じくパラレルハイブリッド方式を採用しており、またバッテリーの位置も他社と異なり最後部の非公式側の2席分にバッテリーを搭載している。なおエルガハイブリッドは2012年8月に正式発売された。2003年8月22日より、米・製マイクロガスタービンを使ったニュージーランド・デザインライン製ガスタービン発電シリーズハイブリッド方式電気駆動バスが、日の丸自動車興業によって東京駅周辺で無料巡回バスとして運行されている。旅客輸送を除く車両においても古くから電気駆動は使われており、鉱山で活躍するオフロードダンプなどの超大型機の駆動装置には現在でも「ディーゼル・エレクトリック方式」が使われ続けている。これは未だ極端に大きな出力を受けるクラッチが流体クラッチもしくはトルクコンバーターしか存在せず、電気的な接続をした方が構造全体で有利になるためである。大馬力を伝達できる「はすば歯車」を量産する工作機械が第二次世界大戦の直前に米国で開発されるまで、大型機はほとんど電気駆動だった。第一次世界大戦時に開発された黎明期の戦車の1つであるフランスのサン・シャモン突撃戦車や、同じくフランスにより開発されるも製造は戦後となったシャール2C超重戦車は「ガス・エレクトリック」方式の駆動装置を搭載しており、第二次世界大戦時にはドイツでポルシェ社により開発された重戦車、VK4501(P)にガス・エレクトリック方式のエンジンが搭載され、その自走砲型であるエレファント重駆逐戦車や、同じくポルシェ社により開発・製造された世界最大の戦車であるマウス (戦車)でも同様の駆動方式が採用された。第二次大戦後、材料の改良と工作機械が広く普及したため、50t級の重戦車まで機械駆動系で問題なく実用化できるようになり、電気駆動方式は軍用車両の駆動装置としては顧みられなくなったが、最近になって各国で開発されている軍用ハイブリッド車は単なる大馬力用電気駆動車ではなく、ハイブリッド特有の利点を得るために計画されている。軍用大型トラック向けには民生用と同様に燃費の向上を目的として回生ブレーキ込みのハイブリッドシステムが開発されている。モータースポーツの世界においても、主に自動車メーカーの技術アピールなどの理由からハイブリッドカーが参戦する例が見られる。ツーリングカー分野では、2006年にスーパー耐久の一戦である十勝24時間レースにレクサス・GS450hが出場した(実際のチームオペレーションはサードが行った)。ハイブリッドカーを用いたワークス・チームによる本格的なレース参戦はこれが嚆矢とされる。トヨタでは翌2007年にも、前年に使用したGS450hの機構をスープラに移植して十勝24時間レースに参戦し総合優勝を果たしている。その後2010年よりスーパー耐久・ST5クラスにプリウス、インサイト、CR-Zの3車種が参戦を認められている。2012年からはSUPER GT・GT300クラスにプリウスとCR-Zが参戦している。ただしハイブリッド機構の要ともいえるバッテリー(リチウムイオン電池)が日本の輸出規制に引っかかるという理由で、日本国外のレースではハイブリッドシステムを外して参戦しなければならないといった問題も発生していたが、2013年からは問題を解決して仕様変更をすることなく海外レースに参加できている。そして2014年シリーズではGT500クラスでNSXがハイブリッドシステムを搭載して参戦しているが、こちらも海外で問題なく同じ仕様で参戦できている。純レーシングカーの世界でも、2009年よりF1で使用されている運動エネルギー回生システム(KERS)のうち、回生ブレーキを用いた電気式システムが事実上のハイブリッドシステムとなっている。スーパーフォーミュラでもKERSと同種のシステムである「System-E」が使われる予定であるが、当初の予定だった2012年や2014年からの導入は見送られ、2015年からの導入が図られている。2012年に始ったFIA 世界耐久選手権では、トヨタがハイブリッドカーのTS030で参戦する(実際の車両開発はTMGが行う)。アウディはディーゼルエンジンのR18にフライホイール式蓄電システムを搭載するR18 e-tronクワトロを投入し、同年のル・マン24時間レースでハイブリッドカーとしての初勝利を飾った。
出典:wikipedia
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