キリン("Giraffa camelopardalis")は、偶蹄目キリン科キリン属に分類される偶蹄類。もっとも背が高い動物であり、体にくらべ際立って長い首をもつ。アフリカ中部以南のサバンナや疎林に住む。ウガンダ、エチオピア、カメルーン北部、ケニア、コンゴ民主共和国北東部、ザンビア、ジンバブエ、ソマリア、タンザニア、チャド南部、中央アフリカ共和国、ナミビア、ニジェール、ボツワナ、南アフリカ共和国、南スーダン、モザンビークアンゴラ、ナイジェリア、マリ共和国では絶滅したと考えられ、エリトリア、ギニア、セネガル、モーリタニアでは絶滅した。スワジランド、ルワンダには再導入された。和名「キリン」は、鄭和が連れ帰ったキリンを中国の伝説の生物である「麒麟」として永楽帝に献上した故事にちなみ、近代になって命名されたものである。キリンを「麒麟」と呼ぶ例にはほかに韓国語・朝鮮語の「」(、文化観光部2000年式:girin、マッキューン=ライシャワー式:kirin)がある。なお、中国語では(台湾ミン南語を除き)キリンは「麒麟」ではなく、「長頚鹿」(“長いくびの鹿”、、、)と呼ぶ。種小名"camelopardalis"は、「ヒョウ模様のラクダ」の意。ローマ時代からの古い言葉である。英名giraffeは、古代アラビアの呼称で「速く走るもの」を意味する"xirapha"に由来するとされる。日本語でもごくまれに、英名にもとづいて「ジラフ」と呼ぶことがある。角先端までの高さオス4.7 - 5.3メートル、メス3.9 - 4.5メートル。体重オス800 - 1,930キログラム、メス550 - 1,180キログラム。体色は橙褐色や赤褐色・黒と、淡黄色からなる斑紋が入り、この斑紋は個体変異がある。犬歯は2 - 3又に分かれ、枝から葉だけをしごくのに適している。長さ約45センチメートルに達する舌を持ち、柔軟性のある唇も合わせて木の枝にある棘を避けながら採食を行うことができる。オス、メスともに頭に2-5本の皮膚におおわれた角がある。多くの哺乳類と同様に頸椎の数は7個であるが、それぞれが大型かつ長い。頭部と長い頸部は発達した筋肉と靭帯で支えられ、肩が隆起する。第4・第5胸椎の棘突起は発達し、頸部を支える筋肉の付着部になっている。血管には弾力性があり、頭部を下げた際の急な血圧の変化にも対応することができる。頸部の静脈には弁がついており、血液が逆流することを防いでいる。視覚は特に優れているが、嗅覚・聴覚も発達している。心臓から脳までの高低差は約2mある。脳まで血流を押し上げる為、動物の中で最も高い血圧を有する。キリン科に属するキリンとオカピの後頭部には「ワンダーネット(奇驚網)」と呼ばれる網目状の毛細血管が張り巡らされている。この「ワンダーネット」が急激な血圧の変化を吸収するため、急に頭を上げ下げをしても、立ちくらみをすることがない。脚が鬱血しないように、皮膚が硬質化している。頭部の骨化はオスで顕著で、頭骨の重量がメス(4.5キログラム)の約3倍の15キログラムに達することもある。分布域によって9-12亜種に分けられる。2005年現在では6亜種とする説もある。体表の模様などが異なる。脚の模様の有無も重要な判別材料となる。以下の分類はGrubb(2005)に、分布(9亜種に分ける説)はFennessy et al,(2016)、和名はPutman・斎藤訳(1986)・西木(1992)に、英名はPutman・斎藤訳(1986)・Fennessy et al,(2016)に従う。上記に加えて以下の亜種を認める説もある。こちらの和名はPutman・斎藤訳(1986)に従う。2016年に核DNAやミトコンドリアDNAの分子系統解析からの4種に分割する説が提唱された。アカシア属・カンラン科"Commiphora"属・シクンシ科"Combretum"属などが生えた草原、"Terminalia"属からなる疎林などに生息する。構成や個体数が変動する繋がりの緩い10 - 20頭程度の群れで生活している。セレンゲティ国立公園での800日間にわたる観察では、群れの構成が24時間以上変わらなかったのは2例のみだったとする報告例がある。メスの行動圏は約120平方キロメートルに達し、オスの行動圏はより小さいが、群れに含まれず単独で生活する若獣のオスであればより広域となる。行動圏内で主に活動する範囲は中心部に限られ、外周円状に緩衝地帯があると考えられている。行動圏が他の個体と重複した場合はそれらの個体と群れを形成する。通常は直立したまま休息や睡眠を行うが、安全が確保されていれば2 - 3時間にわたり座って休むこともある。前肢と片方の後肢を内側に曲げて地面に座り、眠りが深くなると首は丸めて体に乗せる。1日の睡眠時間は諸説あるが、眠りが深くなった姿勢をとるのは1日に3 - 4分、長くても10分と言われている。食物の葉から摂る水分のみで、水を飲まなくても生きていくことができるため、アフリカに住む他の草食動物と異なり、乾季になっても移住をしない。時速50 - 60キロメートルで走ることができるが、足が長いため加速性は悪い。ほとんど鳴くことはないが、唸り声や鼻を鳴らす声など様々な声を出すことはできる。鳴き声は牛にやや似た声で「モー」と鳴く。ただし滅多にその鳴き声を披露することはなく、動物園の飼育員ですらごくごく稀にしか聞けないという。食性は植物食で、主にアカシア属・シクンシ科などの木の葉、若芽、小枝などを食べるが、果実や草本を食べることもある。アカシアなどの棘のある食物は舌や唇でよりわけ、口内では粘着性の唾液で覆ったあと溝のある口蓋で押しつぶして飲み込む。オスは頸部を伸ばした姿勢でより高所の、メスは頸部をねじった姿勢で肩の高さくらいにある低所や低木の葉を食べすみわけを行っている。主に薄明薄暮時に採食を行い、昼間は反芻を行う。高木の葉はイネ科植物と異なり乾期でもあまり質が低下せず食物の制限があまりないため、乾期になれば水場周辺の木の葉を食べることで大規模な移動もせず周年繁殖することもできる。食物が新鮮であれば数か月は水を飲まなくても生存することができる。飲水や低木の葉を食べる時、地面に落ちた果実を食べる時はしゃがまずに前肢を大きく左右に広げ、立ったままで水を飲む。これは敵に襲われたときにすぐに逃げることができるためであると考えられる。幼獣の捕食者は主にライオンが挙げられるが、生後3か月以内であればハイエナ・ヒョウ・リカオンにも捕食される。幼獣が襲われた時には、母親が蹴りで応戦する。この蹴りによって、ライオンを殺すこともある。キリンは時おり小鳥などの小動物を食べることもあるという。『キリン ぼくはおちゃめなちびっ子キリン』によると、多摩動物公園のキリンたちがトンカツや鳩を食べるので、高タンパクの飼料に切り替えると、めったに肉食しなくなったという。同書には、当時話題をまいた鳩をくわえた写真や、鳩の背後で舌を伸ばす写真が掲載されている。オスは背比べにより優劣を決定するが、オス同士が首をぶつけ合い儀式的に争う(ネッキング)ことがあり特に優劣が決まっていない若齢個体のオスで多い。優位のオスは行動圏内を巡回し他のオスには背比べで優位を誇示しつつ、発情したメスがいれば交尾を行う。妊娠期間は453 - 464日。体高1.7-2mの子供を1頭出産する。出産間隔は平均20か月。出産時に幼獣は2メートルの高さから落下することになるが、長い体が弓状にしなることで落下の衝撃を和らげている。生まれた子供は20分程度で立つことができるようになる。授乳期間は10か月。生後2週間で植物質を食べるようになる。生後3か月以内の死亡率はセレンゲティ国立公園で50 %。生後1年以内の死亡率はセレンゲティ国立公園で58 %。ナイロビ国立公園で73 %とされる。幼獣同士で群れを形成する傾向があり、メスは授乳期間を過ぎるとそのまま産まれた群れに合流し、オスは若獣のみで群れを形成し生後3 - 4年で産まれ育った行動圏から移動する。オスは生後42か月で性成熟するが、繁殖に参加するのは生後8年以降となる。寿命は25年。アフリカではキリンは土と骨を舐める事によりミネラルを摂取し、まとわりつくダニはウシツツキが食べている。中国では『明成祖実録』よりベンガルの遣使から本種を麒麟として永楽帝に献上したとされ、『榜葛刺進麒麟図』に本種が描かれている。和名としてのキリンは1874年に田中芳男訳纂『動物学初篇哺乳類』において「麒麟、又豹駝」として登場したのが初出とされ、中国の故事に由来すると考えられている。一方で1798年の森島忠良纂『蛮語箋』にカーメロ、パルダリュスの訳語として麒麟が登場するが、1857年の箕作阮甫編による増補改定版ではこの麒麟の記述は消失している。生息地の破壊、乾燥化、密猟などにより生息数は減少している。南部の個体群は増加傾向にある一方で、北部の個体群は減少傾向にあり種全体としても減少傾向にあると推定されている。日本では1907年に初めて恩賜上野動物園で飼育された。ハーゲンベックより本種を購入し恩賜上野動物園園長だった石川千代松によって、本種の和名がキリンと定められそれが広まった。ドイツから2頭のキリンが3月15日に海路で横浜港に到着し鉄道で輸送する予定であったが、経路途中の神奈川のトンネルと品川の陸橋をくぐることができないと判明したため、船で隅田川から日本橋浜町河岸につけ大八車で上野動物園に運び3月18日に入園したとされる。しかしこの時来日した2頭は、越冬できず翌年死亡している。原因は熱帯の動物だからという事で、過剰に暖房に注意を払った事による換気不足と考えられている。なお「キリン」の和名は、この時に当時の動物学者石川千代松によって鄭和の故事に基づき定められたものといわれていたが、実際には江戸時代にもすでに使用例がある。1933年に2度目の輸入で運び込まれた2頭については、冬期の暖房温度を20度から15度に下げてみた所、問題なく越冬し、1937年に繁殖に成功した。ちなみに第二次世界大戦中は動物園でも暖房を行う余裕など無かったが、2頭は無事生き延びており、暖房そのものが不要であったとされた。キリンは法律上、ペットとして飼育できる。これは日本国内で個人が飼育できる最大の陸上哺乳類である。しかし実際に飼うとなると多額の費用が必要である。寿命は長く、30年以上生きたことがある。なお、輸入には検疫が必要である。日本ではギラファ・カメロパルダリス(キリン)として特定動物に指定されている。キリンは人間の食用とされることがある。古代イタリアのポンペイでは、住民がキリンやフラミンゴの肉を食べていたことが分かっている。キリンの個体数が多い国では、今でも個体数調整のため、キリンを狩猟して食べることがある。また、イスラエルのラビ(ユダヤ教指導者)によれば、キリンはカシュルートに当てはまる動物であり、ユダヤ教徒が食べても良いという見解を発表した。ただし、ユダヤ教徒が多い地域では、もともとキリンの肉や乳は一般的な食べ物ではない。
出典:wikipedia
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