三重水素(さんじゅうすいそ、、記号:H または T)とは、質量数が3、すなわち原子核が陽子1つと中性子2つから構成される水素の放射性同位体である。一般に、トリチウムと呼ばれる。普通の水素(原子核が陽子1つのもの)は軽水素()、質量数が2(原子核が陽子1つと中性子1つ)の水素は重水素(H)、質量数が3(原子核が陽子1つと中性子2つ)の水素が三重水素(H)である。三重水素は軽水素、二重水素よりも重いなど、物理的性質は異なる。しかし同位体の化学的性質は最外殻電子の数(原子番号)によって決まるので三重水素の化学的性質は軽水素と同一である。もともとは 重水素(H) と 三重水素(H)とを併せて重水素と呼ばれていた。トリチウム(三重水素)は、地球環境においては、酸素と結びついたトリチウム水 (HTO) として水に混在しており、水圏中に気相、液相、固相の形態で広く拡散分布している。大気中においては、トリチウム水蒸気 (HTO)、トリチウム水素 (HT) および炭化トリチウム (CHT) の3つの化学形で、それぞれ水蒸気、水素、炭化水素と混在している。なお、海水のトリチウム濃度は、通常は数Bq/Lより少ない。トリチウムは宇宙線と大気との反応により地球全体で年間約72[PBq](7.2京ベクレル)ほど天然に生成される。加えて、過去の核実験により環境中に大量に放出され未だに残っているトリチウム(フォールアウトトリチウム)、原子力発電所または核燃料再処理施設などの原子炉関連施設から大気圏や海洋へ計画放出されたトリチウム(施設起源トリチウム)が地球上で観測されるトリチウムの主たる起源である。高純度の液体トリチウムは、核融合反応のD-T反応を起こす上で必須の燃料であり、水素爆弾(きれいな水爆)の原料の一つとしても利用される。体内では均等分布で、生物的半減期が短く、エネルギーも低いことからトリチウムは最も毒性の少ない放射性核種の1つと考えられ、生物影響の面からは従来比較的軽視されてきた。しかし一方で、トリチウムを大量に取扱う製造の技術者ではあるものの、内部被曝による致死例が2例報告されている。トリチウムの生物圏に与える影響については、環境放射能安全研究年次計画において研究課題として取り上げられたことなどもあり、長期の研究実績に基づいた報告書が公表されている。三重水素は弱いβ線 (18.6 keV) を放射しながらβ崩壊を起こしヘリウム3 (He) へと変わるベータ放射体 (beta-emitter) で、半減期は12.32年である。電子は、5.7 keV の平均運動エネルギーを持ち、残りのエネルギーは反電子ニュートリノによって奪われる。三重水素から発する低いエネルギーのβ線は人間の皮膚を貫通できず外部被曝の危険性がほとんどないため、その酸化物であるトリチウム水 (HTO) は放射性夜光塗料の材料などに用いられている。また、この低いエネルギーであるがゆえに、三重水素の標識化合物は、液体シンチレーション計測法ではないと検知することができない。二重水素 (D) と三重水素 (T) の核融合反応である熱核反応(D-T反応)は、二重水素同士の熱核反応(D-D反応)に比べて反応に必要な温度・圧力条件が低い。そのため、1952年のアイビー作戦にてエニウェトク環礁の一つの小島を消滅させた水素爆弾(きれいな水爆)の原理の中では、D-D反応を起こすための中間の起爆反応として用いられた。現在では、三重水素は、ITERをはじめとする核融合実験炉においては核燃料として研究されている。三重水素(トリチウム)は原子炉においては、炉内の重水 (HDO) の二重水素 (D) が中性子捕獲することでトリチウム水 (HTO) の形で生成される。しかしながら、トリチウム水(HTO)は、化学的性質が水(HO, HHO)とほぼ同一であるため、化学的には水とトリチウム水を分離することはできない。ただし物理的な同位体効果を利用した分離技術は確立されており、トリチウム含有水の蒸留や電気分解、同位体交換法など、いくつか分離方法が存在する。しかしそれでも大量かつ極めて低濃度の水からトリチウム水だけ、分離してまとまった量を回収することはコスト的に非常に困難である。トリチウム水からトリチウムを単離するのは上述のとおり極めて難しいため、高い純度のトリチウムを得るにあたっては回収しやすい形で人工的に生成する必要がある。比較的良く知られたトリチウムの生成方法としては、原子炉内でリチウム Li に中性子を当て(中性子捕獲させ)、トリチウムとヘリウム4(He)に分裂させた上で得るという方法がある。ただし、この方法の場合、十分な量のトリチウムを生成するためには中性子がその分相当量必要となり、やはりトリチウムの価格がデューテリウム(二重水素)に比べて高くなる。宇宙線の中性子または陽子が大気中の窒素または酸素と核反応し、地表面積あたり毎秒0.2[個/cm⋅sec] 程度の割合で三重水素が生成している。地球の表面積を 5.1×10[m]とすると、トリチウムの年間生成量は約72[PBq](P=10)となる。放射性崩壊と天然生成量が平衡にあるとき、その同位対比は地表に存在する水素原子の 10 に相当し、これを1 TU (Tritium Unit) と定めている。発電用原子力施設で発生する液体状の放射性廃棄物については、放射能の時間による減衰、多量の水による希釈などの方法で排水中の放射性物質の濃度を規制基準を超えないように低減させた上で排出することとなっている。トリチウム水については、周辺監視区域外の水中の濃度が60[Bq/cm](=6×10[Bq/L]) を超えてはならないと定められている。トリチウムには海産生物による濃縮効果がないと考えられているので、他の核種よりも多い量が海洋に放出されている。液体状の低レベル放射性廃棄物の海洋放出の安全性については、主に再処理施設に関してだが、次の答申がある。一般的な原子力発電所では年間約1.0〜2.0×10[Bq](1〜2兆ベクレル)ほどトリチウム水を海洋に放出している(表参照)。
出典:wikipedia
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