離婚(りこん)とは、婚姻関係にある生存中の当事者同士が、有効に成立した婚姻を婚姻後に生じた事情を理由として将来に向かって解消することをいう。本来、婚姻は終生の生活関係の形成を目的としている(故に離婚の予約は許されず法律上無効とされる)。しかし、実質的に破綻状態にある婚姻に対してまでも法律的効力の下に当事者を拘束することは無益で有害であると考えられることから、今日ではほとんどの国の法制は離婚制度を有するとされる。とはいえ夫婦の一方の意思のみによって他方配偶者や子に苛酷な状況を生じさせることは妥当でなく、これらの者の保護のために離婚に一定の制約を設ける立法例が多い。離婚制度は有効に成立した婚姻を事後的に解消するものである点で、婚姻成立の当初からその成立要件の点で疑義を生じている場合に問題となる婚姻の無効や婚姻の取消しとは区別される。離婚の類義語としては、離縁、破婚、離別などがある。なお、婚姻の解消原因には離婚のほかに当事者の一方の死亡(失踪宣告を含む)があり、講学上、「婚姻の解消」という場合には離婚よりも広い意味となる。国ごとに離婚率は異なる。ポルトガルでは離婚率は7割以上。なお、バチカン市国とフィリピン共和国には、離婚制度そのものが法律上無い。古代ローマ法やゲルマン慣習法において離婚は比較的自由であったとされるが、中世に入ってキリスト教の影響のもとに西洋では婚姻非解消主義が一般化することとなる。教会法における婚姻非解消主義は西欧における婚姻法制に大きな影響を与えたとされる。レビ記21章には、祭司が子孫を汚すことのないために、「離婚された女」、「あるいは淫行で汚れている女」をめとってはならないとする規定がある。マラキ書2章16節にはイスラエルの神は離婚を憎むと記されている『新改訳聖書』。イエス・キリストは神の創造から夫婦は一体であり、神が結び合わせたものを、人が引き離してはならないと命じた。イエス・キリストは「不貞」、「不品行」、「不法な結婚」以外に離婚を認めておらず、離婚された女と結婚する者も姦淫の罪を犯すと教えた。イエス・キリストのこのことばはカトリック教会でもプロテスタント教会でも、離婚を禁じるイエス・キリストの命令であると受け止められてきた。ただ、現実には夫婦間に不和を生じて婚姻が実質的に破綻状態となる場合もあるため、教会法では離婚の否定を原則としつつ、婚姻の無効、未完成婚、別居制度などの方法によってこれらの問題の解決が試みられたとされる。ローマ・カトリック教会では教会法上離婚が存在しない。民法上の離婚をして再婚をした場合は、教会法上の重婚状態とされ、その罪のため聖体拝領を受けることが出来ない。性的に不能であった場合は結婚そのものが成立していないので、バチカンにはかったうえで婚姻無効が認められることがあるが離婚ではない。ペトルス・ロンバルドゥスの『命題集』4.31は、配偶者が姦通して離れた場合でも再婚してはならないとしている。ウェストミンスター信仰告白は相手が姦淫の罪を犯した場合にのみ離婚を認めている。潔白な方は罪を犯した配偶者を死んだ者として扱う。マーティン・ロイドジョンズも離婚が認められる唯一の理由は、相手の姦淫だと断言している。モーセの時代の司法律法で姦淫は死刑になるため、離婚ではなく、死刑によって結婚が終了した。ジャン・カルヴァンは『キリスト教綱要』4篇19章「5つの偽りの聖礼典」の37「ローマ教会の婚姻に関する無意味な規定」で相手が姦通の罪を犯したために離婚しても、再婚してはならないとするローマ教会の規定を「迷誤を隠蔽」し専制を行っているとして批判している。近代以降、西欧においては離婚の法的規律は教会によるものから国家によるものへと移行した(婚姻の還俗化)。そこでも当事者の合意による婚姻の解消には消極的であり、配偶者の一方に夫婦間の共同生活関係の継続を困難にさせるような有責行為がある場合に限って、有責配偶者への制裁として、その相手方からの離婚請求のみを認める有責主義(主観主義)がとられ、現在でもカトリック教国でこの法制をとる立法例が多いとされる。これは根本では「現在ある人間関係を維持する」ことを意識している。同意のない離婚を事実上不可能にし、離婚の選択権を、離婚の原因(落ち度)の無い配偶者にゆだねている。これによって、配偶者が現在の人間関係を続けることを望めば、離婚できないようにしている。その後、自由主義の浸透とともに1960年から1970年代にかけて欧米では次々と離婚法改正が図られ、夫婦間の共同生活関係が客観的に破綻している場合には離婚を認める破綻主義(客観主義・目的主義)への流れを生じるに至ったとされる。日本では夫婦のまま長生きする「共白髪」を理想とはしながらも夫婦が分かれることも当然にあり得ることと考えられ、また、西欧のように教会法における婚姻非解消主義の影響を受けることがなかったため、法制上における離婚の肯否そのものが議論となったことはないとされる。ただし、日本では離婚そのものは認められてきたものの、律令制のもとで定められた七出や三不去、また、後には三行半の交付による追い出し離婚など、いずれも男子専権離婚の法制であったとされる。だが実際には、江戸時代の離婚は、現在と同様に協議離婚が殆どであり、離婚するにあたっては夫が妻に三行半を差出すことが義務付けられ、三行半がない離婚は処罰の対象とされた。離婚権のなかった女性にとって江戸時代までは尼寺が縁切寺としての役割を果たし、一定期間その寺法に従えば寺の権威によって夫側に離縁状を出させる仕組みとなっていた。北条時宗夫人である覚山尼は鎌倉に東慶寺を創建して縁切寺法を定め、三年間寺へ召し抱えて寺勤めをすることで縁切りが認められるとしていた。また、寺院の縁切寺と同様に神社にも縁切り稲荷と呼ばれる神社が存在した。榎木稲荷(東京)、伏見稲荷(京都)、門田稲荷(栃木)が日本三大縁切稲荷とされている。江戸時代には女性が現金収入を得る手段である養蚕地帯において離縁状が数多く残されている。妻側からの離婚請求が認められるようになったのは明治6年の太政官布告からである。ただし、前近代の全ての時代で、男性優位の離婚だったわけではなく、ルイス・フロイスの日本史によれば、戦国時代の日本の女性は自由に離婚が可能であり、また何回離婚しても、何回妊娠して堕胎しても、社会的に問題はなかったとされる。明治民法の起草時においても離婚制度を設けることそのものについて異論は出ず、また、離婚の形態についても法典調査会で検討されたものの日本人は裁判を望まない気風であり協議の形で婚姻を解消できる制度の必要性が挙げられ、協議離婚を裁判離婚と並置する法制がとられるに至ったとされる。これには立法としては旧来の追い出し離婚を排斥するという意味があるが、社会的な事実においても当事者の自由意思による離婚が行われていたか否かという点については別に問題となる。日本の近代離婚法は、旧法時から公的審査を要件とせず、夫婦関係が破綻して離婚の合意さえあれば、離婚届の提出で離婚しうるとしていたことから、既に破綻主義的な要素を含んでいたとされ、この点は、1970年代になって破綻主義が一般化した欧米諸国と比較すると、驚くべき特徴とされる。日本法では、離婚について民法(明治29年法律第89号)からに規定があり、その他、戸籍法(昭和22年法律第224号)、家事事件手続法(昭和22年法律第152号)、人事訴訟法(平成15年法律第109号)及びこれらの附属法規において定められている。現行法は、離婚の形態として、協議離婚(協議上の離婚)、調停離婚、審判離婚、裁判離婚(裁判上の離婚)を規定している。夫婦は、その協議で、離婚をすることができる()。これを協議離婚(協議上の離婚)という。協議離婚という制度そのものは1804年のフランス民法典のほか現在では韓国・中国・台湾などでも採用されているが、日本法における協議離婚は多くの国でとられるような公権による当事者意思の確認手続を有しておらず、離婚手続としては当事者の合意と届出のみで成立する点で世界的にみても最も簡単なもので特異な法制であるとされる。日本では離婚のほぼ90%が協議離婚である。協議離婚は戸籍法の定めるところにより届け出ることを要する(・1項)。この届出は当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で又はこれらの者から口頭でしなければならない(・2項)。離婚の届出は、その要式性に関する規定(2項)及び親権者の決定の規定()その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない()。ただし、離婚の届出がこの規定に違反して誤って受理されたときであっても離婚の効力は失われない()。届出がない場合には法律上の離婚の効果は生じないが(協議離婚における届出は創設的届出である)、事実上の離婚としてその法律関係の扱いについては問題となる。離婚は当事者が離婚意思をもって合意すること要する(通説・判例)。戸籍実務では夫婦の一方が他方に離婚意思がない(翻意した場合を含む)にもかかわらず離婚の届出が行われるのを防ぐため、当事者の一方が離婚の届出について不受理とするよう申し出る制度として離婚届不受理申出制度が設けられている(昭51・1・23民事2第900号民事局長通達)。家庭裁判所の調停において、夫婦間に離婚の合意が成立し、これを調書に記載したときは、離婚の判決と同一の効力(ここでは、いわゆる広義の執行力)を有する(家事事件手続法268条)。離婚の訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない(同法244、257条)。これを調停前置主義という。離婚調停成立後、調停申立人は10日以内に離婚の届出をしなければならない(戸籍法77条。協議離婚の届出とは異なり報告的届出となる)。調停が成立しない場合においても、家庭裁判所が相当と認めるときは、職権で離婚の審判をすることができ(家事事件手続法284条)、2週間以内に家庭裁判所に対する異議の申立てがなければ、その審判は、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法287条)。2週間以内に異議申立てがあれば審判は効力を失うため実際あまり利用されていない。協議離婚、調停離婚が成立せず、審判離婚が成されない時に、判決によって離婚すること。裁判離婚の成立は離婚総数の1%程度である。離婚の訴えは、家庭裁判所の管轄に専属する(人事訴訟法4条1項、2条1号)。つまり、家庭裁判所に訴えを提起する必要があり、地方裁判所での審理を希望することは不可能である。離婚の訴えに係る訴訟において、離婚をなす旨の和解が成立し、又は請求の認諾がなされ、これを調書に記載したときは、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法37条、)。裁判上の離婚にはに定められている離婚原因が存在しなければならず、夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる(1項)。もっとも、離婚事由に該当するときであっても、裁判所は、一切の事情を考慮して婚姻の継続が相当であると認めるときには、離婚の請求を棄却することができる(770条2項)。裁判所は、1項の第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる(2項)。離婚の形態としては協議離婚と裁判離婚があった。旧民法では夫婦は何時でも協議上の離婚をすることができる(旧808条)。ただし、満25年に達しない者が協議離婚をするには婚姻についての同意権者の同意を得ることを要する(旧809条)。戸籍吏は法律上の要件を満たさない届出を受理することはできないが、これに違反して届け出を受理したときといえども離婚の効力は妨げられない(旧811条)。子の監護権については協議で定めのない限り原則として父に属すが、父が離婚によって婚家を去った場合には母に属す(旧812条)。裁判上の離婚は、民法上の離婚原因がある場合に限って提起しうる(旧813条)。ただし、民法上の一定の離婚原因については、夫婦の一方が他の一方の行為に同意したとき、宥恕したときには離婚を提起することができなくなる(旧814条)。また、離婚原因の発生から一定の期間が経過すると訴えを提起する権利が時効消滅するものも含まれていた(旧816条)。なお、協議離婚における子の監護権の規定(旧812条)については、裁判離婚にも準用されるが、裁判所は子の利益のため監護権について異なる処分を命じることができる(旧819条)。国際私法上、本国人と外国人との間の離婚、本国に常居する外国人の離婚等の渉外離婚(国際離婚)については、どこの国の法を適用すべきかという準拠法の問題を生じる。日本の法の適用に関する通則法は、離婚について、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法によるとした上で(法の適用に関する通則法27条本文・25条準用)、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は日本法によると定める(法の適用に関する通則法27条但書)。日本では協議離婚の制度が認められているが、離婚するか否かを当事者の完全な意思に委ねる制度を採用する国は比較的少数であり、離婚そのものを認めない国、一定の別居期間を経ないと離婚が認められない国、行政機関や裁判所による関与を要求する国などがある。このように国によって離婚の要件や手続(特に手続に国家が関与する方法・程度)が異なるため、ある国での離婚の効力が、別の国では認められないこともありうる。例えば、裁判による離婚制度しか存在しない国では、当事者の意思に基づく協議離婚はありえないから、日本で成立した協議離婚の効力が認められるとは限らないし、裁判所が関与する調停離婚についてもその効力が認められる保障がない。このような事情があるため、裁判離婚しか認めていない国の国籍を有する者が日本で離婚する場合は、離婚の準拠法の問題もあり、当事者による離婚の合意ができている場合でも、前述の審判離婚や裁判離婚をする例が少なくない。国際結婚の増加と共に、国際離婚も増加傾向にある。日本における届け出によれば、平成18年の離婚件数25万7475件のうち、夫妻の片方が外国人であったのは1万7102件(6.6%)であった。千葉前法務大臣は、アメリカ合衆国などの要請を受けて、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の批准を前向きに検討していると述べた。日本政府は2010年(平成22年)8月14日、ハーグ条約を翌年に批准する方針を固めた。その後、第180回国会において批准承認案が提出され(2012年(平成24年)3月9日)たが、第181回国会まで継続審議になったものの衆議院解散で一旦廃案となった。ついで第183回国会に再度、批准承認案が提出(2013年(平成25年)3月15日)され、2013年(平成25年)5月22日に国会の承認がされた。法律上の離婚制度そのものが無い国家として、世界では2国あり、バチカン市国とフィリピン共和国である。この様な場合『婚姻の無効』を申し立て、認められなければならない。2011年までは、マルタ共和国も離婚制度が法制化されなかった。内閣府の平成19年度(2007年)「男女共同参画社会に関する世論調査」によれば、「相手に満足できないときは離婚すればよいか」との質問に対して、賛成派(「賛成」と「どちらかと言えば賛成」の合計)が46.5%にとどまったのに対して、反対派(「反対」「どちらかといえば反対」の合計)が47.5%となり、23年ぶりに反対派が賛成派を上回るという結果が出た。賛成派は1997年の54.2%をピークに毎回減り続けており、一昔前に比べると、離婚に対して寛容ではなくなってきていることが窺える。結婚した者が、あっという間に離婚することを俗にスピード離婚という。それの最も早いものが、下記の成田離婚である。新婚旅行から帰ってきてから、すぐにの離婚。旅行中における価値観の相違などで喧嘩し、離婚に至るもので、新婚旅行に海外を選ぶ夫婦が増えかつ、成田国際空港が海外への発着の中心だった1990年代頃から使われている。実際には夫婦関係が失われているが、何らかの事情があるために同居を継続しつつも法的には離婚していない状態は、俗に家庭内離婚と呼ばれている。中高年の夫婦の離婚のこと。1969年(昭和44年)には新聞記事で、夫の退職を機に、それまで経済的な理由で離婚を控えていた妻が「いただくものはいただいてさっぱりし、老後を一人で送る」形で高年齢層の離婚が「じりじりと増えつつある」と報じられており、この時代から中高年夫婦の離婚増加が話題になっていたことが窺える。2007年(平成19年)4月の年金制度の変更で、夫の厚生年金を離婚時に分割できるようになった(それまでは、離婚したら妻はもらえなかった)ときには、中高年夫婦が高い関心を寄せたという。実際に、相談件数は急増し、離婚を考えている者は多いという。夫婦共働きや、妻の家名の維持等、さまざまな理由で、夫婦のいずれもが旧姓を使い続けたいような夫婦において、事実婚へ移行するために離婚をする例が近年増えている。こういった離婚をペーパー離婚とも言う。なお、事実婚はさまざまな法律上の不利が存在するため、選択的夫婦別姓制度の導入を望むカップルもペーパー離婚予備軍として多く存在するといわれる。「人口千人あたりの、一年間の離婚件数」(「人口千人あたりの、生涯のどこかで離婚する人数」とは異なる)のことを普通離婚率というが、これは人口の年齢構成の影響を強く受ける。これ以外の離婚率を特殊離婚率という。特殊離婚率には、例えば男女別年齢別有配偶離婚率や、結婚経過年数別離婚率などがある。日本では、普通離婚率は1883年(明治16年)には3.38であったが、大正・昭和期にかけて低下し、1935年には0.70となった。その後1950年前後(約1)および1984年(1.51)に二度の山を形成したが、1990年代から再び上昇し、2002年には2.30を記録した。日本では平成元年から平成15年にかけて離婚件数が増加し、その後減少している。厚生労働省「人口動態統計」によると、平成14年の離婚件数は約29万件、平成18年は約25万件となっている(離婚率でいえば、平成17年で人口1000人あたり2.08である)。平成14年を境に減少傾向となっており、離婚率が3.39であった明治時代に比べれば少ない(これは、明治時代の女性は処女性よりも労働力として評価されており、再婚についての違和感がほとんどなく、嫁の追い出し・逃げ出し離婚も多かったこと、離婚することを恥とも残念とも思わない人が多かったことが理由とされている)。現代の離婚の原因の主なものは「性格の不一致」である。また、熟年結婚が熟年夫婦による離婚の数値を押し上げている。厚生労働省が定義する「離婚率」とは異なるが、マスコミなどで言われる「3組に1組が離婚」などの表現は、全国の「その年の離婚件数」を全国の「その年の新規婚姻件数」で割った数字である。若者の少ない現代の人口ピラミッドでは高い数字となり正確ではないという意見もあるが、その年1年間の離婚率しか表さない普通離婚率とは違い「生涯のどこかで離婚する割合」を示唆する上では一つの目安になっている。なお、厚生労働省「平成21年 人口動態統計」をみると過去40年間の婚姻数が3202万人、同じく30年間の離婚数が748万人となっており離婚率は23%ともっとも婚姻数が多い1970年代を含めたデータであるにもかかわらず「4組に1組が離婚」と比較的高い数字が出ている。ワシントン大学教授のジョン・ゴットマンは、新婚のカップルにインタビューを行って、5年後に離婚しているかどうかを、90%の精度で予測した。日本の司法統計によれば、離婚の申し立てにおいて、夫からの申し立て理由は「性格が合わない」、「異性関係」、「異常性格」の順で多い。また妻からの申し立て理由は、「性格が合わない」、「暴力をふるう」、「異性関係」の順で多い。アメリカでは、政府や大学公開講座や宗教団体などが、健全な家庭生活を維持・増進させるための活動をしているが、そうした団体の一つであるThe National Marriage Project(バージニア大学)は、離婚の原因は「家庭の運営に必要な知識を持っていないこと」であるとして、必要な情報を提供している。また、Marriage Builders (ウィラード・ハーリ)は、「心からの合意の原則」など、考え方の食い違いを調整するための概念について解説している。また、Smart Marriage では、離婚の原因は「意見の食い違いを調整する技術を持たないこと」であるとして、その技術を習得するための教育を行い成果を挙げている。Marriage Saversも同様である。また、アメリカ合衆国政府は、米国厚生省の「健全な家庭生活への新しい方法」や、「国立健全な結婚情報センター」の結婚教育などにより、アサーティブネス、交渉、コミュニケーション能力、人間関係の教育などについて情報提供を行っている。PREPという結婚教育プログラムは、カップルに効果的なコミュニケーションの仕方と、争いをコントロールする技術を教える。この結婚教育プログラムは、本またはビデオまたは講習という形で提供される。このプログラムを行ったカップルが、結婚後5年以内に離婚する割合は、半分に減る。PREPでは、「話す人-聞く人の技法」が行われる。男性と女性では、コミュニケーション(会話)の目的や内容が異なっている。男性は、階級のような序列の中にいる。男性が話す内容は、直接的で簡潔であり、最終的な結論を端的に述べたものである。男性は、問題解決を目的とした機能的な情報伝達を上から下へ行っている。女性は等質な融和の集団の中にいる。女性が話す内容は、相互の協調を目的とした私的で感覚的な情報交換である。女性は、会話を通じて、相手と親密に喜怒哀楽を共有する。争いは、男性にとっては、上下関係を決めるための手続きであるが、女性にとっては、関係の破綻を意味する。コミュニケーションの男女差に対して、相手の方式を邪悪なものと決め付けたり、自分の方式をさらに強く押し付けたりすると、コミュニケーションの失敗が拡大し、紛争はエスカレートして、苦痛が蓄積する。コミュニケーションの方式に違いがあることを理解して、自分の真意を正しく伝え、相手の真意を正しく理解することが必要である。(詳細は、「コミュニケーションの男女差」を参照)1960年代までは、離婚は特に避けるべきことであるとは考えられていなかった。独身時代に付き合う人を何人かかえてもそれが普通であるように、結婚してから相手をかえるのも当然であると受け止められていた。しかし1970年代に入って、ウォーラースタインを始めとする研究により、離婚が子供に悪影響を与えることが知られるようになると、離婚を避けるための方策が模索された。1970年代のアメリカにおいて、大学に在籍し心理学的カウンセリングを実地に行っていた研究者たちが、離婚しかけているカップルに対してカウンセリングを始めたのであるが、当時は事実上、誰も離婚を止めることはできなかった。こうして「なぜ人は離婚するのか。どうすれば離婚を防ぐことができるのか」というテーマで、研究が始められるようになった。研究のスタイルは大きく分けて二つある。一つは離婚したカップルと離婚していないカップルを多数集めて、各集団の特質の差を比較する方法である。こうした研究から離婚をきたしやすい特質が明らかにされた。10代での結婚、貧しいこと、十分な教育を受けていないこと、子供ができないこと、前の結婚からの子供がいること、再婚や再々婚であること、結婚前に同棲していたこと、信仰心が薄いこと、違う宗教を信じていること、都市に住んでいること、離婚している親に育てられたことなどである。もう一つの方法は、離婚したカップルと離婚していないカップルに対して、質問や観察やテストを行い、なぜ離婚したのか、あるいはなぜ離婚しないのかを調べる方法である。離婚した後で調べる後ろ向き研究の他に、結婚して間もないカップルに対して観察を開始しその後の展開を調べる前向き研究も行われる。こうした研究から分ったことは二点ある。第一の点は、離婚するカップルも仲の良いカップルも同じように争いを起こすのであるが、仲の良いカップルではコミュニケーションを通じて相互に納得できる妥協点に到達するのに対して、離婚するカップルではそれができず、片方が一方的に決めるだけになる点である。不満と苦痛が蓄積して離婚に至る。第二の点は、片方による結婚生活への関与が減少すると、コミュニケーションの絶対量が不足し、夫婦の人間関係が維持できなくなる点である。相手の意図が分らないと、最悪の事態を想定して、関係が悪化することがある。情報の空白は、マイナスの印象や思考で埋められやすい。働き過ぎの夫や、仕事と育児に時間とエネルギーを取られる妻などにおいて、夫婦同士の交流が充分に確保されなければ、夫婦の関係は消滅していく。ただし、それらは不和の症状に過ぎないので、対策としては、単にそれらを避けるだけでなく、夫婦の関係を深化させることが必要である。それには、相手が結婚生活に求めるもの(例、愛情豊かな関係)を正しく認識し、それを与え、さらに自分が結婚生活に求めるもの(例、性的満足)を把握して正直に説明し、それを与えてもらう必要がある。離婚に関係する心理学理論には以下のようなものがある。かつて、離婚は子供に何の影響も与えないと考えられていた。アメリカの心理学者ジュディス・ウォーラースタインは、親が離婚した子供を長期に追跡調査して、子供達は大きな精神的な打撃を受けていることを見出した。子供達は、両方の親から見捨てられる不安を持ち、学業成績が悪く、成人してからの社会的地位も低く、自分の結婚も失敗に終わりやすいなどの影響があった。また、バージニア大学のヘザーリントン教授は、実証的研究を行って次のように述べた。「両親がそろっている子供のうち、精神的に問題が無い子供は90%であり、治療を要するような精神的なトラブルを抱えている子供は10%であるのに対して、両親が離婚した子供では、それぞれ75%と25%である。」(1993年)。離婚が子供に悪影響を及ぼすことについて、多くの国で大規模な追跡調査が行われ、悪影響が実際に存在することが確認された。棚瀬一代は、親の離婚で壊れる子供たちについて報告した。また各国で、子供から引き離された片親が片親引き離し症候群(PAS)にかかるとの報告も存在する。ケンブリッジ大のマイケル・ラム教授は、離婚が子供の成育にマイナスの影響を及ぼす要因として、次の5つを挙げている。(1)非同居親と子供との親子関係が薄れること、(2)子供の経済状況が悪化すること、(3)母親の労働時間が増えること、(4)両親の間で争いが続くこと、(5)単独の養育にストレスがかかること子供の健全な発育には、父親の果たす役割も大きい(父親の役割)。こうした事実を踏まえて、欧米各国では、1980年代から1990年代にかけて家族法の改正が行われ、子供の利益が守られるようになっている。米国価値研究所Institute for American Valuesの調査結果による離婚と事実婚についての主な代償として(1)離婚や未婚、再婚した家族で育った娘が未婚の母になる率は3倍に達する。(2)親が離婚した子供は両親がそろった家庭に育った子供と比べて社会人になったとき、失業率や経済的な困窮が増加している。(3)母子または父子家庭で育った子供は、結婚している実の両親の家庭に育った子供に比べて2倍の確率で30代初めまでに実刑を受けているが挙げられる。またペンシルベニア州立大学ポール・アマトPaul Amato教授によれば、安定的な結婚を1980年の水準まで上昇させれば、停学になる子供を50万人、非行・暴力行為に走る子供を20万人、喫煙する子供を25万人、心理療法を受ける子供を25万人、自殺志向の子供を8万人、自殺未遂の子供を2万5千人、それぞれ減らせるとしている。日本も批准した子どもの権利条約では、その対策として、(1)子供の処遇を決めるに際しては、年齢に応じて子供の意見を聞くこと、(2)別居が始まれば両親との接触を維持することを求めている。離婚の悪影響を少なく抑えるための条件は、二人の親の間で争いが少なく、近くに住んで、再婚せず、二親とも育児に関わり、育児時間が50%ずつに近いことである。2010年(平成22年)3月9日の衆議院法務委員会で、千葉景子法務大臣(当時)は、次のように述べた。「離婚したあとも、両親がともに子供の親権を持つことを認める『共同親権』を民法の中で規定できないかどうか、政務3役で議論し、必要であれば法制審議会に諮問することも考えている。」民主党や自民党などの超党派議員は、平成23年の通常国会に、離婚後の子供との面会を保証する法案を提出する準備をしている。人は、結婚から大きな利益を得るが、離婚により、その利益は失われる。学歴や職歴がおなじであれば、結婚している男性は、独身や離婚後の男性よりも、平均して、より多くの収入を得る。結婚している男性は、より健康で、精神的に安定し、より長生きする。(例えば、40歳の時点で離婚している者は、結婚している者に比べて、男性で約10歳、女性で約5歳、寿命が短くなる)。結婚している女性は、独身、同棲中、離婚した女性と比較して、経済的に、より豊かになる。ストレスが少なく、幸福感がより強くなる。また両親が結婚している子供は、片親や、親が再婚後の子供と比較して、学業成績がより良好で、精神的なトラブルが少なく、成人してからの社会的地位がより高く、結婚生活もうまく行く。子供は両方の親から多くを学ぶのである。また結婚した家庭は、地域における人間関係の拠点になり、社会のネットワークに貢献する。離婚により、こうした結婚の利点は失われる。女性については、寡婦とそうでない女性を比べると、寡婦の方が貧困率が高いという。「結婚は勢いでできるが、離婚には体力が必要」という言葉がある。この言葉について、作家の佐藤優は「結婚は相互信頼を前提とするものであるが、離婚は相互不信を前提とするため」という分析している。また、離婚後、姓を戻しても戻さなくてもそのことで女性(あるいは改姓した男性)が精神的なダメージを受けることがあり、その理由から選択的夫婦別姓制度の導入が必要、といった意見がある。離婚によって収入を得ている職業としては、弁護士(法曹)、探偵などが挙げられる。人によってはこのような職業・業務を「離婚関連産業」「離婚産業」などと呼んだりすることがあり、また、離婚関連のお金の動きを「市場」と見なし、「離婚関連市場」などと呼ぶ人もいる音楽
出典:wikipedia
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