明智 小五郎(あけち こごろう)は、江戸川乱歩の小説に登場する架空の私立探偵。『D坂の殺人事件』で初登場。この際の姿は、タバコ屋の二階に間借りしており、喫茶店で冷やしコーヒーを嗜む、定職を持たない貧窮書生であった。服装には無頓着で、木綿の着物によれよれの兵児帯、髪はモジャモジャ。にこにこといつも笑顔を絶やさず、痩せ型で、変に肩を振る歩き方をし、興奮するとモジャモジャの髪を掻き回す癖がある(この人物像は、のちに横溝正史が自作の探偵とした金田一耕助によく似ている)。この『D坂の殺人事件』では、着ていた浴衣の派手な縞柄による錯覚から、友人の「私」から犯人と疑われることとなっている。探偵小説好きで、四畳半しか無い下宿先の自室は、四方を寝る場所もないほどの本の山に埋められている。愛煙家で、歳はこの時点で「二十五を越してはいまい」と劇中察せられている。乱歩は明智の起用をこの『D坂の殺人事件』一作だけにするつもりでいたが、評判が良かったため、『心理試験』で再登場して以後、乱歩の代表的探偵キャラクターとなった。次に登場した『心理試験』は「『D坂の殺人事件』から数年後」と設定され、すでにしばしば困難な犯罪事件に関わり、その珍しい才能を現して、専門家はもちろん一般の世間から立派に認められた名探偵となっており、前作のような書生ではなくなっていた。次作の『黒手組』では、再び明智はタバコ屋の二階に下宿する書生として登場しているが、次々作の『屋根裏の散歩者』では洋服を着た姿が見られる。これらの作品はすべて大正14年に発表されたものである。この時期の明智は「天才型探偵」として現れ、「僕の興味はただ『真実』を知る点にある」と語り、警察とそれほど連携もしていない。明智のこの姿は、翌年大正15年発表の『一寸法師』以後、より一層洗練されたものとなる。ここでは明智は御茶ノ水にある「開化アパート」(架空の建物。モデルは大正14年竣工の「御茶ノ水文化アパート」だとされている)2階の表3室を事務所とし、上海で事件を解決してきたあと暇を持て余す有名な素人探偵として登場。派手な浴衣や木綿の着物姿から、上海で誂えた黒の支那服や、背広を着こなして、貧窮下宿時代からの友人小林紋三から「いくぶん、見栄坊になった」と称される洋装の紳士となっている。こちらの明智も「モジャモジャの頭」、「にこにことした朗らかな笑顔」、「伯龍そっくりの顔」、「飄々とした行動」、「本に埋もれた生活」は変わらないが、葉巻タバコの「フィガロ」を好み、コーヒーを「カフィー」と呼んで飲むなど、西洋通またはキザなキャラクターとなり、その卓越した推理力から、警察関係者からは「奇人」と呼ばれる存在となっている。『蜘蛛男』での明智は「『一寸法師』事件から3年ぶりの帰国」となっており、インド帰りで登場したその姿は「鼻の高い日に焼けた顔」、「白い詰襟の上下にヘルメット帽」と、「まるで植民地の英国紳士か、欧州の印度紳士」と形容されるものとなっている。続く『魔術師』では、明智の年齢は「30代後半」となっている。『黄金仮面』では、明智は「『蜘蛛男』事件の際はホテル住まいをしていたが、このあと御茶ノ水の開化アパートの2階2室を借り、それぞれ事務所と寝室に使っている」と説明されている。この寝室には、明智の変装用の小道具が収納されている。この『黄金仮面』など、連載当時の挿絵では、明智は口髭を生やした姿で描かれたものがあった。また、文中では「モジャモジャ頭」と記述されているにもかかわらず、なぜかどの挿絵でも、これに反して整髪した頭で描かれていた。明智の探偵方法は、証拠の科学的な検証は「好きでない」として専門家に任せ、論理的演繹によって犯行や犯人をあぶり出すという手法である。乱歩は時代時代に明智像を合わせていったため、やがて明智探偵は部下や自動車を使って悪漢を追ったり、「石礫で遠方の標的を正確に打ち飛ばす」、「犯人が気づかないうちにピストルから弾丸を抜いてしまう」といった手品まがいの芸当も見せるなど、現実感希薄な天才・英雄タイプの「行動型探偵」に変身していった。また、探偵手法として「変装」を得意とするようにもなり、この変装は友人の波越警部らにも見破れない本格的なものである。謎と見ると放っておかれず、仕事抜きで事件に関わっていくことも多い。また国家的事件の解決のために、朝鮮やインドなど海外に出張することも多い。「人間豹」などのおよそ人間とかけ離れた半人半獣とも戦った。この明智探偵は子供向けの「少年探偵団シリーズ」と並行して、戦後も引き続き乱歩の探偵小説で活躍している。1936年(昭和11年)に『少年倶楽部』で「少年探偵団シリーズ」が企画された際、小林少年らの後見人として、明智の名が挙がり、江戸川乱歩もこれに応じてその第一作『怪人二十面相』から明智が登場するようになった。活動拠点も千代田区采女町の開化アパート2階に変わり、ここで「明智小五郎探偵事務所」を構えている。助手の小林芳雄を団長とする「少年探偵団」や、警視庁の中村警部に力を貸し、数々の難事件を解決する。妻は文代(ふみよ)で、彼女も「探偵としての資質は高い」と文中説明されている。この「少年探偵団」シリーズに登場する明智は、ほぼ完璧な超人として縦横無比な活躍ぶりを見せる。髪はモジャモジャで容姿端麗。愛煙家。30歳前後の非常に印象の良い背広姿の紳士となっている。作中では推理の結果は常に人前で明かし、行動の描写が中心で、内面の心理描写はほとんどない。終生のライバルは怪人二十面相で、二十面相の向こうを張る変装の名人であり、互いに変装合戦を繰り返し、裏をかき合う。柔道の達人で、『怪人二十面相』で明智は「柔道三段」の腕前とされている。二十面相は「柔道五段」(『おれは二十面相だ!!』)、または「柔道三段」(『怪人と少年探偵』)と称されているが、『少年探偵団』で明智の柔道技は「二十面相とは段違いの力量だ」と説明されている。また、強靭な意志によって、二十面相と互角の催眠術を操ることができる。劇中では「怪人」である二十面相に対し、「巨人」と称せられている。一般的にはこのシリーズにおける明智小五郎が、名探偵の代名詞として記憶されている。ポプラ社版の『少年探偵団』シリーズでは、明智の登場しない乱歩の原典を、乱歩以外の代作者が改変したものがあり、明智が敵の罠に堕ちたりと、乱歩の描く超人としての探偵像にそぐわないものもある。高木彬光の神津恭介、横溝正史の金田一耕助と並んで「日本の三大名探偵」と称される。『魔術師』事件で懇意となった文代を妻としているが、その他の家族は描写されていない。『吸血鬼』事件以降、15歳くらいの小林という少年を助手として、潜入捜査や斥候役を担わせている。文代は少年探偵団シリーズの中盤から『長年の病気で高地療養に行っている』という説明で登場しなくなり、以後は小林少年と一緒に明智探偵事務所で暮らしていると説明されている。『少年探偵団』シリーズでは、怪人二十面相に対抗して「少年探偵団」という学童たちの探偵団を組織し、面倒を見ている。このほかに『青銅の魔人』で、浮浪児たちによる「チンピラ別働隊」という探偵団を組織している。赤井という名の自分そっくりの影武者がいる。また、文代の姪の花崎マユミという少女を少女助手として使っている。マユミは少女雑誌連載終了後はほとんど留守番役である。警視庁とも密接に連携し、赤松警視総監以下、捜査一課の「鬼刑事」と異名をとる波越警部や、中村善四郎警部ともども、明智を高く評価し、協力を仰いでいる。人物像として、『D坂の殺人事件』で「私」(明智の友人の無職の青年)が、講釈師の五代目神田伯龍に「歩き方から、顔つき、声音までがそっくり」と語っている。乱歩は当時、まだ若かった頃の伯龍の講釈をよく聞いていた。命名元には諸説あるが、戦国武将の明智光秀とその変名とされる「荒深小五郎」から採ったとの説、あるいはこの明智と桂小五郎の名を合わせたとする説がある。(タイトルはポプラ社版のもの)明智小五郎は、戦前から映像作品に登場している。戦後は子供向けの「少年探偵団」物が数多く製作された。1994頃には「乱歩生誕100周年」に合わせ、相次いで初期作品が映像化された。「もじゃもじゃ頭に書生姿」の明智が登場している作品もある。江戸川乱歩の小説作品を原作とし、明智小五郎を翻案登場させたテレビドラマは、舞台を現代に変えるなどしてたびたび映像化されている。ことに「少年探偵団」の登場しないアダルト層を対象とした『土曜ワイド劇場・江戸川乱歩の美女シリーズ』(テレビ朝日系)は、天知茂の当たり役となり、長期シリーズ化された。また「少年探偵団」を主役とする子供向けドラマも、たびたびテレビドラマ化された。どちらの趣向の作品も、登場する明智は「背広姿の名探偵」である。※は時代設定を現代にしている『黒蜥蜴』は乱歩作品の中でもたびたび舞台の演目となった。明智が有名な探偵キャラクターであるため、乱歩以外の作家作品にもしばしば明智が登場する。作品の舞台が昭和初期であるため、映像作品で現代に舞台を移した場合、明智小五郎の代わりに、「明智小五郎の孫」が登場する場合がある。設定などはその作品によって異なる。「明智小五郎の孫」を演じた俳優には以下のような面々がいる。『人間豹 (江戸川乱歩文庫)』、春陽堂書店
出典:wikipedia
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