東部丘陵線(とうぶきゅうりょうせん)は、愛知県名古屋市名東区の藤が丘駅から愛知県豊田市の八草駅までを結ぶ、愛知高速交通の磁気浮上式鉄道路線。愛称は「リニモ (Linimo)」。常電導吸引型 (HSST) による、日本初の磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)の常設実用路線。軌道法に基づく軌道として特許され、2005年に開催された愛知万博(愛・地球博)の未来感と会場アクセスの目的を兼ねて建設された。万博閉幕後は名古屋市営地下鉄東山線や愛知環状鉄道線と連絡し、名古屋市内と東部丘陵地域を結び、これまで鉄道空白地帯だった長久手町(現在の長久手市)に鉄道が通るようになった。路線はおおむね愛知県道6号力石名古屋線に沿って建設され、藤が丘駅からはなみずき通駅ホーム半ばまでの区間は地下線、はなみずき通駅付近で地表へ上り、以東の八草駅までの区間は高架線となっている。「リニモ」ではATOによる無人自動運転を採用している。ただし、操縦者の教育訓練のためや、貸切運転時に有人手動運転を行うことがある。また、運転は行わないが、地下区間である藤が丘 - はなみずき通間と、最終列車である藤が丘0:05発の愛・地球博記念公園行き、早朝の時間帯に運行される八草5:30と5:48発、藤が丘5:50発に限り全区間で乗務員が乗務する。なお万博期間中は全車両において乗務員が乗務していた。安全面にも配慮して全駅にホームドアが整備されている。通常は藤が丘駅、愛・地球博記念公園駅、八草駅を除いて無人駅だが、窓口自体は設置されており、イベントなどの時には臨時に駅員が配置されることがある。各駅にある「改札口」と「出口」看板には日本語・英語・中国語・朝鮮語表記のほかにポルトガル語表記もある。瀬戸市及び日進市内に路線は通っていないが、当線を運営する愛知高速交通には両市とも株主として一定の金額を拠出している。HSSTのインフラ整備には、従来の中容量輸送の代表ともいえるモノレールはもとより、新交通システムに比べ多額の投資が必要となるが、これまでの鉄道システムとは異なり、車輪を持たないため、レールと車輪の接触による騒音・振動がなく、また、推進力は車輪とレールの接触による粘着力に依存しないリニアモーターによるため、加・減速や登坂性能に優れ、ゴムタイヤ式よりもさらに静かで乗り心地がよく、最高速度も上回る、などの多くの利点を持つ。車両は常に浮いており、停車中は機械式ブレーキにより静止させている。扉が閉まり発車するときに「ドン」という音がする。これは、機械式ブレーキ解除の際に発する音である。最高速度は約100km/hで、藤が丘 - 八草間の所要時間は約17分。最終列車として藤が丘0:05発の愛・地球博記念公園行きがあるほかは、藤が丘 - 八草間の全線運転である。年度初めは臨時列車が運行されることもある。2013年3月16日のダイヤ改正で、平日ダイヤが大学開講期間(4 - 7・10 - 1月)の平日に適用する平日第1ダイヤ、大学休講期間(2・3・8・9月)の平日に適用する平日第2ダイヤに分けられた。運転間隔は、平日朝ラッシュ時は6分間隔、大学開講期間はラッシュ以降も7 - 8分間隔、平日夕は7 - 8分間隔、平日昼間・土曜休日は10分間隔。2013年3月15日までは、平日朝ラッシュ時は7分間隔、夕方も10分間隔の運行体系だった。2005年3月6日の開業時から9月26日まで、愛知万博輸送を前提とした運行体系が採られた。東部丘陵線(リニモ)との乗換駅となる愛知環状鉄道の八草駅は2004年10月10日から2005年9月30日の間、「万博八草」駅と改称されていた。リニモの八草駅は開業時から2006年3月31日まで「万博八草」駅だった。また愛・地球博記念公園駅も開業時から2006年3月31日まで「万博会場」駅だった。運転間隔は朝と夜が6 - 15分間隔、昼間が5 - 7分間隔だった。3月19日から万博終了までの土曜・休日には昼間8 - 10時台と夜20 - 23時台に藤が丘 - 万博会場間と万博八草 - 万博会場間に区間列車が運行された。東部丘陵地域が「あいち学術研究開発ゾーン」として学術研究施設や公園、宅地開発が進められることになり、輸送需要の増加に対応でき、交通渋滞に悩まされない軌道系交通機関が求められることになり、元来あった藤が丘 - 長久手間に地下鉄1号線(東山線)を延伸する計画を発展させる形で東部丘陵線の構想が生まれた。1992年(平成4年)の運輸政策審議会で「2008年までに中量軌道系の交通システムとして整備することが適当」と答申。その後「東部丘陵線導入機種選定委員会」が跨座式モノレール、新交通システム、磁気浮上システムの中から、などの理由で磁気浮上システムを選定し、方式としては、日本航空が開発し、中部HSST開発によって名鉄築港線沿いにあった大江実験線で走行試験が重ねられて来た常電導吸引型 (HSST) が採用された。また、愛知万博が長久手町(当時)の愛知青少年公園などを会場として開催されることが決まり、その鉄道系のアクセス路線の一つとして位置付けられた。2000年に運営主体として愛知高速交通株式会社が設立され、2002年に着工された。2004年から完成した本線で試運転が重ねられ、2005年3月6日に開業を迎えた。総事業費は約997億円、このうち愛知高速交通施工分は約356億円である。万博輸送に際し、リニモは藤が丘駅で接続する名古屋市営地下鉄東山線との輸送力のギャップから、同駅で乗客が滞留する可能性を指摘されていた。6両編成の東山線は1時間あたり14,500人の輸送量があるのに対し、リニモは3両編成で1時間あたり4,000人の輸送量しかない。このためか、日本国際博覧会協会では名古屋駅から鉄道で会場へ向かう場合には東海旅客鉄道(JR東海)が中央本線高蔵寺駅経由で愛知環状鉄道線の万博八草駅へ直通運転する「エキスポシャトル」の利用を推奨していた。愛知万博内覧会が行われた2005年3月19日には、前面展望を見たい乗客が車両の前方に集中したことを重量検知装置が過積載と判断したことで、一時発車不能になる事態が発生した。同様に開幕前日の3月24日には浮上装置の故障で浮上不能になるトラブルが発生した。これらに対して、一部のマスコミなどで「予測が甘かった」、「車両をもっと増やすべき」などといった意見が見られたが、この沿線は普段はそれほど多くの輸送力を必要としていないため、車両を増備しても万博閉会後に余剰となる車両は有効活用できないのが実情であった。普通の軌条(レール)を用いた愛知環状鉄道では、万博に向けて2000系電車を増備し、閉会後に余剰になった旧式の100・200・300形電車をえちぜん鉄道に譲渡し、つくば科学博時の常磐線415系電車では、万博開会前に新車を増備して閉会後に旧型車を淘汰し、大阪万博時の北大阪急行電鉄では、閉会後、大阪市交通局に増備車を譲渡したが、日本国内唯一のHSST方式による新規開業路線である東部丘陵線ではこうした手法を採ることも不可能であった。運行会社は、万博閉幕後の利用者数を1日あたり約31,000人と想定し、債務返済に向けての前提ともなっていた。しかし、閉幕後6か月間の一日平均利用者数は約12,000人程度と低迷。その後の利用者数は年々増加しているものの、赤字体質の脱却という経営問題は依然解消されていない。2007年10月には愛知県が長久手町(当時)に対し、リニモの今後の固定資産税について減免を打診していたことが明らかとなったが、長久手町は「減免するより、税収を乗客増に生かすべきだ」としてこの打診を断っている。利用者数低迷の原因として、以下のような点が挙げられている。運行会社が学校側に対して藤が丘駅からではなく最寄駅からバスを運行することなどを働き掛けた結果、愛知学院大学が2006年(平成18年)4月から長久手古戦場駅から同大学までのバスを発着させたこともあったが、もともと同大学から藤が丘駅までの直行バスが頻繁運行されている上に藤が丘駅から利用すると回り道になることもあって、利用者は僅少で2007年(平成19年)1月末で廃止になった。 2010年(平成22年)4月より、長久手古戦場駅から愛知学院大学・名古屋外国語大学・名古屋学芸大学・名古屋学芸大学短期大学部を巡る無料通学バスの運行が名鉄バスにより開始されている。愛知学院大学へ行く場合、リニモ藤が丘駅から長久手古戦場駅までの定期券を購入し、かつ同駅からこのバスに乗車した場合では、藤が丘駅から有料の路線バスで通学するケースに比べ、月1800円程度割安となるため、このルートに切り替えた学生も出ている。だが、愛知学院大学は藤が丘駅までのバスを引き続き頻繁運行しているほか、他の3大学も地下鉄東山線上社駅や地下鉄鶴舞線赤池駅までスクールバスを運行しており、伸び悩みが見られる。これまでにも、利用者のさらなる増加を狙って、2006年7月15日の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)開園に合わせて、「Linimo1DAYフリーきっぷ」(大人800円、子供400円)の発売を開始したり、愛知県の事業として、2007年6月16日から通勤定期券利用者を対象とした自転車の貸し出しの実施や、長久手町(現在の長久手市)で行われる催事にてリニモの利用を積極的に働きかけるなどの施策を実施しているが、抜本的な経営状況の改善には至っておらず、今後も利用拡大へのさらなる施策が必要な状況にある。2008年度においては、長久手町がはなみずき通・杁ヶ池公園・長久手古戦場・公園西の各駅前に自転車駐輪場を増設する施策を講じている。さらに2009年度からは愛・地球博記念公園駅北側の空き地を駐車場として整備し、パークアンドライドによる利用の推進も図っている。2015年現在、長久手市は都市計画の下、長久手古戦場駅周辺で大型商業施設イオンモール及び住宅地・駅前広場リニモテラスの開発を、公園西駅周辺で大型商業施設イケア及び住宅地開発を進めている。また、2015年8月には公園西駅近くに歩行者・自転車用ゲートを新設し、リニモとも利便性の向上を図っている。2011年より、愛知県企画の地域おこし愛知ぽぷかる聖地化計画と連携した取り組みを行っている。2012年には東部丘陵線(リニモ)のキャラクターをリニモたんとし、全国の公募イラストから決定する『リニモたん総選挙』を行っている等、その他各種イベントとも積極的な連携を図っている。東部丘陵線の近年の輸送実績を下表に記す。表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。「鉄道統計年報」及び「数字でみる鉄道」(国土交通省鉄道局監修)、決算広告より抜粋東部丘陵線の近年の収入実績を下表に記す。表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。鉄道統計年報(国土交通省鉄道局監修)、損益計算書より抜粋愛知高速交通の近年の決算を下表に記す。表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。2007年度(平成19年)決算より運輸・技術部門従事者の人件費及び経費の一部を販売費・一般管理費から運輸営業費に振り替えているため単純比較はできない。全駅愛知県に所在。大人普通旅客運賃(小児半額)。2014年4月1日改定。manacaを除くリニモ各駅で販売されるすべての乗車券は、地下鉄線・愛知環状鉄道線など他社線は一切利用できない。過去には以下のカードや乗車券が発売されていた。
出典:wikipedia
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