『銀河鉄道の夜』(ぎんがてつどうのよる)は、宮沢賢治の童話作品。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語で、宮沢賢治童話の代表作のひとつとされている。作者逝去のため未定稿のまま遺されたこと、多くの造語が使われていることなどもあって、研究家の間でも様々な解釈が行われている。この作品から生まれた派生作品は数多く、これまで数度にわたり映画化やアニメーション化、演劇化された他、プラネタリウム番組が作られている。1924年ごろ初稿が執筆され、晩年の1931年頃まで推敲がくりかえされて、1933年の賢治の死後、草稿の形で遺された。初出は1934年刊行の文圃堂版全集(高村光太郎ら編。。)である。未定稿のため本文の校訂が研究者を悩ませてきたが、筑摩書房版全集(『校本宮澤賢治全集』、1974年)の編集過程で綿密な検討が行われ、第1次稿から4次稿まで3回にわたって大きな改稿が行われたことが明らかになった。第1-3次稿(初期形)と4次稿(最終形)の間には大きな差異がある。学校の授業や活版所のシーン、友人カムパネルラが川で行方不明になる挿話などは4次稿で追加されたものである。また、3次稿までは銀河鉄道の旅はブルカニロ博士(後述)の実験により主人公が見た夢だったとされていたが、最終形に博士は登場しない。文圃堂版全集以来、長く読まれてきた刊本では、ブルカニロ博士の存在が大きな位置を占めていたが、博士の登場シーンは破棄された3次稿の混入である。博士の登場しない展開が最終形とされたことで物語世界の設定が大きく変わることになった。以下のあらすじは第4次稿による(筑摩書房版全集の最新版は「【新】校本宮澤賢治全集」、1996年)。漁から戻らない父のことでクラスメイトにからかわれ、朝夕の仕事のせいで遊びにも勉強にも身が入らない少年ジョバンニは、周りから疎外され、あたかも幽霊のような存在として描かれている。星祭りの夜、居場所を失い、孤独をかみしめながら登った天気輪の丘で、銀河鉄道に乗り込み、親友カムパネルラと銀河めぐりの旅をしばし楽しむ。二人は旅の中で出会う様々な人の中に次々と生きる意味を発見して行く。旅の終わりにジョバンニはさそりの話に胸を打たれて、カムパネルラに、みんなの本当の幸いのためにどこまでも一緒に行こうと誓い合うが、カムパネルラは消えてしまう。悲しみのうちに目覚めたジョバンニは、まもなくカムパネルラが命を犠牲にして友達を救った事実を知る。この瞬間、ジョバンニは銀河鉄道の旅が何を意味していたのか気づいて、みんなの本当の幸いのために尽くすことに、生きる意味を悟った。さらに父が間もなく帰ってくることを知らされ、勇気づけられる。こうしてジョバンニは星祭りの夜、幽霊であった自分と決別して、母の元に戻ったのである。銀河鉄道の旅は、銀河に沿って北十字から始まり南十字で終わる異次元の旅であり、ふたつの十字架はそれぞれ石炭袋を持っている。石炭袋が一般に暗黒星雲だと知られるようになったのは最近のことであり、かつては天文分野の専門書でもしばしば「空の穴」と表現されていた。賢治は南北ふたつの石炭袋を冥界と現世を結ぶ通路として作品を構成したとされている。南十字の天上に行かなかったカムパネルラの行方については、ブルカニロ編にふれ輪廻したという解釈や、母の記述にふれ、万物の母の元に帰ったという解釈など、様々に解釈されていて定説はない。『銀河鉄道の夜』の成立には、賢治が盛岡高等農林学校在学時から親密な関係を築いた一年後輩にあたる保阪嘉内の影響が大きく関係していると考える研究者もおり、作品中の様々なモチーフに、20代の頃に賢治と嘉内とが二人で登山し夜を通して共に語り合った体験が色濃く反映され、登場人物の「ジョバンニ」を賢治自身とするなら、「カムパネルラ」は保阪嘉内をあらわしていると考える研究者もいる。ただし第4稿におけるカムパネルラのモデルは、賢治の死別した妹トシであるとする説がある。登場人物の名前について、「ジョバンニ」はイタリアの洗礼名のひとつ(ラテン語におけるヨハンネス)に由来し、「カムパネルラ」は神学者トマソ・カンパネッラ(ちなみに幼名は「ジョヴァンニ・ドミニコ」)からとったという推定がある。天沢退二郎は、作品の成立にいたる草稿の中では、賢治が「ジョバンニ」と「カムパネルラ」の混同ないし混同しかけていた形跡から、「ジョバンニ」と「カムパネルラ」というネーミングに隠れた、双子性に光を当てている。ちなみにイタリア語のCampanellaは「鐘」を意味する単語(またフランツ・リストのピアノ曲に「ラ・カンパネッラ」がある)。現在の底本として、「校本宮澤賢治全集」の鑑賞用普及版である「新修宮沢賢治全集」(1980年)が主流となっている。この物語に日付はないため特定はできないが、登場する星座から初夏から初秋にかけての物語ということが判り、九月の彼岸とする説、八月のお盆とする説、七月の旧盆とする説などがある。物語中で学校の場面が描かれており、夏休み中ではないと想像されること、「カムパネルラ」が釣鐘草の学名("Campanula")と酷似していることに併せて天気輪の丘に釣鐘草らしき花が一面に咲いたこと、銀河鉄道の夜(プリオシン、南十字星、蠍の火、黒い胡桃林、鳥)を連想させる詩「薤露青(かいろせい)」に付された日付(1924年7月17日)、賢治の親友保坂嘉内と行った旅行の時期などから、七月の旧盆の説が有力である。また銀河祭りは、盛岡での盆行事(送り火)に相当する舟っこ流しがモデルであろうとする意見も有力で、それに従えば8月16日となる。賢治の童話の創作は、保坂が3月に退学処分になり、4月の兵役検査の後「自分の命もあと15年」と周囲に漏らした1918年の冬から始まったと証言されている。この年の旧暦の七夕は新暦の8月13日にあたる。琴の星の記述と、四次稿にあるジョバンニとカムパネルラの会話、車掌の台詞から「11時丁度に白鳥座に停車」「南十字座の到着は3時」および「鷲の停車場に2時」の記述を一箇所にとどまって物語の順に見ることは物理的に不可能である。しかし琴の星ベガの南中を見て日本を北上し、北極圏で23時のはくちょう座デネブの南中を見て、タイタニックの乗客の魂を拾い、南北アメリカ大陸上で日本時間午前2時に(作中の記述の通り外は明るい)地下でわし座が南中し、さらに南下し、極夜の南極圏でサソリ座のアンタレスを眺めて、南極点で日本時間の午前3時に南十字座を眺めることは可能である。(賢治は童話『風野又三郎』の中で、風が地球を一周する話を登場させている。さらに童話『猫の事務所』において、南極点に到達したパンポラリスが登場しており、アムンゼンの南極到達の知らせの数ヶ月後に、タイタニックの事故が報じられている。)理論上南北の星座盤を使っても同じことが導かれ、作中において日付と時間、星座の南中時刻が決まっている事から日付が8月13日になる事が導き出される。また8月13日はペルセウス座大流星群の日であり星祭の夜と符合することから「8月13日未明の場面」となる。物語の中心は魔物や幽霊と遭遇しやすいとされる逢魔時(おうまがとき)(日没 - 天文薄明終了)におきた物語であろうと言われている。 ただし決定的な時間の特定はされていない。本作とキリスト教の関連がしばしば指摘されるが、宗教学者からは法華経との関連を指摘されている。賢治は、父親が浄土真宗の熱心な信者であったことから、幼少のころから仏教的な環境で育ったが、18歳のときに『漢和対照、妙法蓮華経』を読み、法華経に興味を持った。国柱会の田中智学の講演会を聴いたことをきっかけに、家出をして上京し、国柱会に入信、同会の講師から法華文学の創作を勧められたことから、『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』『風の又三郎』などの童話を執筆した。後年、国柱会とは一定の距離を置いたものの、法華経への信仰は生涯続いた。1985年制作の劇場用アニメ映画。同年7月13日公開。毎日映画コンクール・大藤信郎賞受賞作。劇中に登場するすべての文字はエスペラントで、表題のラテン文字表記も「Nokto de la Galaktia Fervojo」としている。主要登場人物を人間ではなく擬人化した猫として描いた設定は、ますむらひろしが(アニメ版のもとになった)漫画化に際して施した脚色で、賢治の実弟である宮澤清六は、当初これに反発したが『校本宮澤賢治全集』の編集者である天沢退二郎らの説得により了承。最終的に作品の仕上がりを評価した。研究者の間でも最後まで「猫」への変更を了としない向きもあった。これはますむらの著書『イーハトーブ乱入記』(ちくま新書)に詳しい経緯が記されている。なお、漫画版ではズボンに靴まで履いていたのに対して、アニメ版では上着だけと衣服の着用は最低限度なものになっている。また、この映画を観て「宮沢賢治の原作でも登場キャラクターは猫なのだろう」と勘違いする人が少なからず存在する。小谷野敦(比較文学者)も、この様な影響を及ぼした事は好ましくないとして批判している。なお、本作にはタイタニック号の沈没をモチーフとした(ただし細部はタイタニックと合致せずあくまで架空の)エピソードが登場するが、この映画の音楽を担当した細野晴臣の祖父(細野正文)が実際のタイタニック号に乗船していたことが公開当時奇縁として紹介された。またこの歴史的な惨事に配慮して、船舶事故のシーンのみ猫の世界ではなく人間世界に起きたこととしてリアルに描かれており、ジョバンニらと旅をともにする青年と幼い姉弟も人間の姿となっている(漫画版ではジョバンニ達と同じく猫として描かれていた)。青年は、ますむらひろしの代表作「アタゴオル」シリーズの登場人物を基にデザインされている。エンディングで細野晴臣の音楽に合わせて常田富士男が朗読している詩は、詩集『春と修羅』の「序」の一節である。2007年9月27日の『BSアニメ夜話』でこの作品が取り上げられた。2009年8月13日には『BS夏休みアニメ特選』でこの作品が放送された。地方の局では年末になると深夜に放送する事も多く、また制作にテレビ朝日が関わっていたので既に地上波では何度か放送されている。近年ではBSやCSで再放送される機会が多い。この映画の原作であるますむらひろしの漫画をはじめ、パンフレット、サウンドトラック等のデザインは羽良多平吉が手掛けている。2006年制作の劇場用実写映画。2013年3月6日、NHK BSプレミアムで宮沢賢治没後80年を記念した映像作品による特別番組『80年後のKENJI〜宮沢賢治 映像童話集〜』の第5回と第6回として、それぞれ前編と後編が放送された。2008年、劇団ひまわりのミュージカル。キャストが女性中心で構成されたベガ公演と、男性中心で構成されたアルタイル公演の2種類の公演が行われた。2004-2007年、劇団わらび座のミュージカル。「本作品は多くのミュージカルが制作されてきたが、どれも納得できない」と台本の市川は語る。その反省を踏まえて「原作に忠実に、余計なことを語らない。」をモットーに「今までの脚本家人生で最高の作品のひとつに仕上がった。」とのこと。2001年、宝塚歌劇団星組のミュージカル。2012年、ネルケプランニング企画製作のミュージカル。「銀河鉄道の夜」を題材にしたまったく新しいタイプの 「ソング・ダンス・ミュージカル」。東京演劇アンサンブル公演、ブレヒトの芝居小屋。初演1982年2月9日–22日(全14ステージ)、毎年クリスマスにブレヒトの芝居小屋にて上演中。世界初演。こどもの城主催、青山劇場。初演1995年8月3日–7日(全9ステージ)、再演1996年11月23日–30日(全11ステージ)。演劇集団キャラメルボックスの成井豊が宮沢賢治作品を数作品を組み合わせて上演したものの一編。銀河鉄道の夜のエピソードを簡潔に展開、ラストには広く知られている最終稿と言われているエピソードだけではなく、初稿から第3稿に入っているブルカニロ博士の台詞も使用している。劇作家の北村想が、本作をベースとして書き起こした戯曲。2010年1月21〜24日 東京都調布市せんがわ劇場で「調布市せんがわ劇場アンサンブル 第7回公演」として上演された。プロの人形遣と、オーディションで公募された出演者が、半年間のワークショップを経て上演した。桜美林大学プルヌスホールプロデュース/市民参加企画。2007年の初演より毎年夏に桜美林大学プルヌスホールにて上演。市民と学生とプロのアーティストで創るユニークなステージ。2006年制作。KAGAYA studio 制作、音楽は加賀谷玲。サンシャインスターライトドーム満天(現、コニカミノルタ プラネタリウム満天)で2006年6月17日から11月12日まで上映されたプラネタリウム番組。プラネタリウムの光学式投影装置では上映に使用されず、デジタルの全天周映像システムによりドームスクリーンに映し出される短編CG映画のような作りになっている。2007年よりコニカミノルタプラネタリウム、五藤光学研究所、リブラの配給により全国各地のプラネタリウムで上映されている。また、2008年4月より70mmフィルム版がエクスプローラーズ・ジャパンの配給により全国各地で上映されている。サンシャインスターライトドーム満天上映版ではナレーションが女優の室井滋であるが、全国上映版のナレーションは声優の桑島法子と大場真人である。この作品はDVDで市販もされている。本編の長さについては、上映通常版が38分、短縮版が28分なのに対し、DVDは48分と作りこまれている。2009年、上映版については場面追加や音響面でのバージョンアップがなされ、コニカミノルタ プラネタリウム満天で上映された(2009年6月20日 - 11月23日)。VOICE LANDより1996年3月5日に発売。モモグレより、宮沢賢治生誕111周年記念アルバムシリーズとして2008年12月25日に発売。CD「銀河鉄道の夜」久石譲1985年7月7日:朝日新聞紙面、手塚治虫の新聞エッセイ記事:「『銀河鉄道の夜』を読む」※ 第2回日仏文化サミット'85 に参加のためにフランス滞在中に書かれた。アップルが開発したiPad用、iPhone及びiPod touch用のアプリケーションとして2011年から市販されている電子絵本。イギリス人翻訳家による英語版も存在する。4次稿を底本とした全文の絵本化が行われておりアップルジャパンはこのアプリケーションを国語の教科書アプリケーションに推薦している。(2014年9月9日にこの小説の朗読を交えたライブが行われた。翌年の4月4日、4月29日にアンコール公演が行われた。)
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。