期日前投票制度(きじつぜんとうひょうせいど)とは、日本の選挙または国民投票における事前投票制度の一つ。公職選挙法48条の2において2003年(平成15年)12月1日から設けられた制度および日本国憲法の改正手続に関する法律60条において設けられた制度。なお、マスメディアによっては、「きじつまえとうひょうせいど」と読まれることもある。選挙の期日(いわゆる「投票日」)に投票できない有権者が、公示日又は告示日の翌日から選挙期日の前日までの期間に、選挙人名簿に登録されている市区町村と同じ市区町村において投票することができる制度である。2003年の公職選挙法改正により、これまでの不在者投票制度のうち「選挙人名簿に登録されている市町村と同じ市町村において有権者が投票する」場合について要件を緩和する形で新しく設けられた。従来あった不在者投票制度は、その対象となる有権者の範囲を縮小して存続している。 制度開始以来、期日前投票の利用は順調に広まった。東京都選挙管理委員会の調べによれば、2007年(平成19年)の参議院議員選挙では、東京都の当日有権者のうち10.81%, 投票者のうち18.68%が期日前投票を利用した。これらの割合は2004年(平成16年)の参議院議員選挙と比較してそれぞれ3.92ポイント、6.39ポイント上昇している。同選挙管理委員会はこの増加について、不在者投票からの制度改正の目的どおり、それまで多忙のため棄権していた有権者を投票に向かわせることができたためだと分析している。以下の記述には、2015年(平成27年)6月17日に選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げることを主な内容とする改正公職選挙法が成立し、2016年(平成28年)6月19日から施行されるより前の内容を含んでいる。2016年6月19日以降に公示・告示された選挙については、下記「20歳」および「19歳」を「18歳」と「17歳」に読み替える必要がある。基本的な手続は次のとおりである。以下、個々の点について詳しく述べる。通常の投票との違いの一つは、「宣誓書」を提出しなければならない点である。「レジャー・観光・買い物」などの曖昧・簡潔な理由でよい。このことについて、公職選挙法施行令49条の8では「選挙の当日自らが該当すると見込まれる事由を申し立て、かつ、申立てが真正であることを誓う旨の宣誓書を提出しなければならない」と定められている。通常の投票と同じく、投票所入場券が既に郵送されている場合はそれを持参することによって、入場券がまだ届いていない又は持参できなかった場合はその他の方法で、選挙人の本人確認が行われる。印鑑などは必要とされない。身分証明の方法については選挙事務を処理する現場の各市町村選挙管理委員会によって判断が分かれており、運転免許証などの身分証明書の提示を求められる場合も少数ながら存在する。投票を行うことができるのは、平日・土曜日・日曜日・祝日・休日のどの日であっても原則として、期間中の毎日8時30分から20時までである。ただし、一部の地方自治体や施設では若干異なる場合がある。期日前投票に出向く都合が限られるなどの必要に応じて、選挙管理委員会に問い合わせをするのが望ましい。特に最近では市町村合併の影響で、同一市町村であっても衆議院議員選挙区が違う場合などがある。選挙期日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれていて、期日前投票日に選挙権がある有権者は、期日前投票をすることができる。1998年(平成10年)の公職選挙法改正以前の不在者投票制度においては、「見込み」ではなく「確実に選挙期日の投票が困難」であることが必要条件であった。さらに上記のうち第1号については投票区の区域外に行くこと、第2号については市町村の区域外に行くことも条件であった。このように要件は極めて限定的であり、実際の運用でも不在者投票の窓口で行き先や理由をしつこく尋ねられたりする場合が多く、有権者にはプライバシーの侵害だと感じられることもあった。また不在者投票の管理運営がずさんであったとして、選挙そのものが無効になったものもあった。1998年(平成10年)の公職選挙法改正では、不在者投票制度の利用に必要な条件が現在と同じ程度に緩和された。これにより、不在者投票の利用者は大幅に増えた。しかし不在者投票制度の実務面では投票・開票に関わる事務手続について、手間を要することに変わりはなかった。また、選挙管理委員会が不在者投票について、開票するのを忘れたまま選挙結果を確定させてしまうなど、不在者投票にからんだ事件・事故が依然として続いた。2003年(平成15年)12月の公職選挙法改正により、現在の期日前投票制度が設けられた。投票率の上昇を追求する総務省・選挙管理委員会、選挙管理事務の簡素化を求める選挙管理委員会より、利用しやすい投票制度を求める有権者らの要望が一致した結果だといえる。不在者投票と異なり、本制度は投票箱に直接票を投じることで投票行動が完遂する。同時に、平等選挙と秘密選挙であるため、いかなる理由があろうとも有権者が期日前投票後に投票の取り消しや再投票を行うことができない。そのため、以下のような事態が生じる。他の問題点としては、複数の選挙が実施される場合、期日前投票の開始日が選挙によって異なっている点がある。特に毎回この問題が発生するのが衆議院議員総選挙と同日に実施される最高裁判所裁判官国民審査で、期日前投票の開始日は衆院選は公示日の翌日から、国民審査は投票日の7日前からとなる。先に衆院選のみの投票を済ませていた場合、国民審査の投票は後日改めて行う必要がある。しかし、改めて未投票分の投票を行う際に投票済みの選挙の投票用紙を再交付して二重投票させてしまうなどのミスも発生している。なお、期日前投票は、投票日当日に投票できない見込みであることを宣誓して投票するものであるが、未投票分を投票日当日に投票することも可能なようである。期日前投票の要件が緩やかであることは、各陣営の戦術にも影響を及ぼしている。(一例として、2009年(平成21年)の兵庫県知事選挙で同県姫路市家島町での期日前投票において地元の漁協が、投票所に来た有権者や清掃奉仕活動に来た有権者に現金2,000円を渡し投票を呼び掛けていたケースがあり、公職選挙法に抵触するおそれがあるとして問題となっている)。公職選挙法には、投票するに当たって身分証明書の提示を求める規定は設けられていない。期日前投票所の現場では投票所入場券を持参しなかった有権者について、宣誓書の提出と生年月日などの口頭での確認だけで投票できる場合が多く、身分証明書の提示を求められることは少ない。東京都選挙管理委員会の調べによれば、選挙人が入場整理券を持参しなかった際の本人確認の方法に関して、東京都内の地方公共団体のうち17.5%のみが身分証明書を要求するとしている。残りの82.5%のうちの多くは、身分証明書を要求しない理由として、宣誓書の提出で十分だと回答している。本人確認が徹底されていないことは、選挙違反・不正投票の要因ともなっている。このような状況を改善するため、総務省は通知(平成19年5月23日付総行管157号)を出し、本人確認の的確な実施を各選挙管理委員会に求めた。
出典:wikipedia
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